アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
今回はRTAのパートと小説のパートがどっちも中途半端になりそうだったのでこんなにも長くなってしまいました。読みにくいと感じられたら申し訳ナス!ちょうど半分くらいで区切れるはずなので、休憩挟んだりしてくれよな~頼むよ~。
一難去ってまた一難なRTA、 第14部はーじまーるよー!
前回はオリジムシの大群が集落に迫り、それをどげんかしようとしているところでしたね。サクラにアンブリエル姉貴との会話を任せたらブチャラティ並みの迫真スピーチをしだしたことも印象的でした。いつの間にか、こんなに立派になってたんやなって…(感涙)
しかしRTA的に大切なのはこれからです。まずは群れに対処しましょう!えー、そして調べてみた結果、この大群はランダムで発生する殲滅作戦のようです!RTAする前に調べておけやオラァン!!と思われるかもしれませんが…極々低確率のイベントのため、自分から探しにいかないかぎり、ほぼ遭遇する確率は0という…。つまりはいつもの、一族特有の屑運ですね。biim一族の魔の手からは誰も逃れられない!
しかし殲滅作戦とわかっていれば気は楽です!ほんへで何度も周回してますからね!問題は高台から範囲攻撃をしてくれるようなオペレーターが一人もいないことですが…まあこれは機転で何とかしましょう!
「サクラ!そろそろ出るぞ!」
お、時間のようです!ではいざ鎌倉!
今回の作戦は強い奴だけアンブリエルが撃ち、残りを何とかする、です。何を言っているかわからねーと思うが以下略。もちろんこれだけだと圧倒的な物量に押しつぶされて終わりですので、そこは我に策ありです!それがこの、ジープを使った作戦!私たちが乗ってきたジープと、集落で使われていたトラック。こいつらにありったけのガソリンを載せて奴らの中に突っ込ませます!特に頑丈なジープは真正面からカチコミましょう!
運転手はクオーラ姉貴が務めます。トラックを猛スピードで突っ込ませた後、自分は飛び降りるという狂気的なドライビングは彼女でなければ任せられませんね。
そこまでやって数をできるだけ減らしたらあとは根性にすべてがかかっています。腕が使い物にならなくなるまで振るう勢いで戦い続けましょう!
「クオーラ!いいよ、やっちゃって!」
「うん!いっくよー!!」
クオーラ姉貴の乗ったトラックが群れの側面から突っ込み、そのまま爆発炎上!運転手は直前で飛び降りているのでセーフ。このスタントにはジャッキーチェンもにっこり!クオーラ姉貴じゃなかったら道端のガムみたいになってそうですね…!
「大丈夫か!?」
「へーきへーき!ちっとも痛くないよ!」
さすがだあ…。では次のトラックに行ってもらって、私たちも集中しましょう。今はまだ少ないですが、もうすぐ大量に押し寄せてきます。ここで手傷を負うわけにはいかないので慎重に、かつ大胆に。まさかこの刀…羅刹も、焼け落ちた家から掘り出されたと思ったら、ムシの殻を掻っ捌くために使われるとは想像もしなかったでしょうね。
「次のトラックについたよ!いつでもオッケー!」
「よっしゃ、突っ込め!こっちもそろそろムシどもが来る!お前の判断で行け!」
「わかった!今から突っ込むよ!」
その通信から少し後、爆発オォン!が響きました。よし、ここまでは順調です!我々の方からは何もわかりませんが、おそらくは群れに大きな風穴が空いたことでしょう。空いててほしい(本音)。
「サクラ!そろそろあたしらのところに大群が来るよ!しっかり気張ってて!」
おっとこれは隣で戦うウタゲ姉貴の声!どうやら修羅場が迫っているようですね!ここからが本番です!持てる力のすべてを以て、自然の脅威を乗り越えるのじゃー!
斬って、払って、踏みつぶして。もうどれくらいそうしていただろうか?もう服はオリジムシの返り血?返り体液?で汚れきって、あのころのカワイさは影も形もなかった。普段のあたしならウザウザ言ってたところだけどそんなことを考えている暇もないくらい、その戦場は忙しなかった。はっきり言って一匹一匹はザコもいいとこだったけど、それが何匹も集まるとこんなにウザいなんて思いもしなかった。少しでも処理が遅れたらそのままズルズルいっちゃいそうで、必死に食らいつく。
アンブリエルが言ってたように、この作戦は誰がミスっても終わり。クオーラの爆弾ジープとか、アンブリエルの狙撃とか。そして何より、あたしら前線が一人でも崩壊すれば、その穴にムシたちが殺到して一瞬で総崩れになる。アンブリエルだって、もしも撃ち漏らした赤いやつ…なんか普通より強いやつがいたら、こっちの負担になるから絶対にしくじれない立場。あの子はそれをプレッシャーに感じたっぽいけど、あたしはむしろ、興奮したって感じ。絶対ミスれない仕事に、あたしをちゃーんとおいてくれた。あたしのことを信じてくれてるんだって信頼がひしひしと伝わってきて、ほんとーに最高の気分。
だからこそ、疲れて自分のものじゃなくなったような腕でも刀を振れる。数えきれないほどの敵を前にしても震えずここに立っていられる。ひょっとしたらこのまま、永遠にムシの相手をすることになるかもしれない。それでも、あいつがいるならきっと勝てるって思える。サクラ、あんた。気づいてないかもだけどさ。ちらりとサクラがいるはずの方角を見る。やっぱり見つけられなかったけどそれでもいい。あいつがここに立っているってだけで、あたしには勇気が湧いてくる。
あんたがいるなら、多分無敵だよ、あたし。
ファーストコンタクトからどれくらいたったでしょうか。まだムシの群れは続いています!もう何体斬ったかも忘れてしまいましたが、この刀は全然切れ味が鈍りませんね。本物の極東の刀は天文学的な値が付くと言われていましたが、その分の性能ということでしょうかね?なんにせよ心強いです!折れた刀で戦うのなんて想像もしたくありませんし!
「サクラ!大丈夫か!」
ファッ!?ガヴィルさん!?ちょっと何してんすか!?持ち場を離れたらマズいですよ!
「お前が端っこの方に配置しやがったからな!もうこっちは片付いてんだよ!」
そう言いながら暴れまわるガヴィル姉貴。マジでなんであの人医療オペレーターやってんですかね…?しかしこれは心強い援軍です!その上ガヴィル姉貴の担当エリアは少なくとも大丈夫という事が確定しました!精神的にもありがたいです!
「ルーキーくん!もう群れの終わりが見え始めてるよ!今からあたしも援護に行くから頑張って!」
これはエフイーター姉貴!彼女もガヴィル姉貴の反対側に配置したのでウェーブを乗り切ったようです!よしよしよし、これなら何とかなります!
「クオーラ!こっちは何とかなりそうだから、ジープの突進は少し待て!一応いつでも発進できるよう準備しとけよ!」
「わかったー!」
「おら、最後だ!気張れよお前ら!」
よーしよしよし、こっちからだとまだムシがわらわらいるだけで何も変わりませんが、かなり数が減った模様!これはもう最後のひと踏ん張りです!意地でもクリアして見せるのじゃー!
「ホームラ―ン!!!やったやった、みんなすごいよ!」
「よっしゃー!帰ったらみんなで乾杯しないとね!あ、もちろん新人君たちはジュースだからね?」
「はぁ、ったくはしゃぎすぎるなよ?アタシは避難させた奴らの様子でも見てくるか…。」
お、終わった…。マジで死ぬかと思いましたよー。ですが!負傷者0でこの量の敵を処理できたというのはかなりうまあじイベントです!おそらく今回のメンバーの好感度はかなり稼げたでしょうし、戦術立案や戦闘技術の能力が向上したかもしれません!ただ、少し不安なことがあり、アンブリエル姉貴の好感度です。サクラに会話を任せたところ、ブチャラティ並みの説得力を見せてアンブリエル姉貴を口説き落としましたから、そんなに心配はしていないのですが…。
「サークーラー!もーほんっと疲れたんだけどー!ジープが無事ならさっさと帰ろーよー!」
うおっとウタゲ姉貴が覆いかぶさってきました!背中に柔らかい感触が当たりますが、ホモの私には何の影響もありません!(天下無敵)そもそもサクラも私も、普段からこういうウザがらみには慣れてますし。ええい離れんか!
「つれないじゃーん、せっかくあたし頑張ったのになー。」
「おいウタゲ!そんなに元気が余ってんなら討ち漏らしでも探しとけよ!まだけが人がいるかもしれねえんだからな!」
「あーはいはいわかったてばー。じゃーサクラ、また後でねー。」
むぅ、少し冷たすぎましたかね?まあでもウタゲ姉貴とは長い付き合いなので今更どうこうなることもないでしょう。それより今はアンブリエルです!誰よりも早くお迎えにはせ参じることで好感度を稼ぎましょう!
「あれ、おいウタゲ!村長たち見てねえか?村の奴らに聞いても、心配ありませんとしかいわねえからよ。」
「えー見てないけど。てか心配ないって言ってんだからいいんじゃない?お腹すいたら帰ってくるでしょ。」
集落から少し離れた薄暗い洞窟の中。ガヴィルが探していた村長は、数人の若衆と共にそこにいた。目的はただ一つ。
「トラディ…。貴様には失望した。」
トラディと呼ばれた男は、洞窟の奥でガタガタと震えるばかりで、その言葉には答えられなかった。村長は彼を、氷のような冷たい目で見つめていた。
「裏切りの代償、それはわかっていたはずだ。シラクーザにいたころ、お前にも裏切り者の末路を見せたのだからな。」
「だがもう私たちはギャングではない。ただの荒野の民として生きていくという誓いのため、一度は見逃してやったというのに。まさかオリジムシを操るアーツで、村を更地にしようとするとはな。」
「許せないのは二つだ。一つは一度ならず二度までも裏切ったこと。もう一つは救援にきたロドスの者たちを巻き込んだこと。」
「彼らは清いものたちだ。我々がもはや歩くことのできない、光の差す道を歩むべき者たちだ…。その道に、貴様のような汚らわしいものの死体があってはならない。」
男の震えが一層強くなった。歯ががちがちとかみ合わされ、悲鳴すら上げられない。
「故に、貴様の不始末は我々の責任だ。シラクーザマフィアの裏切りの末路、とくとその身で味わうがいい。」
ゆっくりとトラディに若衆が近づく。そこまで来て、ようやく彼の口から叫びが漏れた。その声は意味をなさない叫びだったが、最期の言葉がそれになることを嘆く余裕は、もはや彼には微塵もなかった。
―――――――――
えーと確か狙撃ポイントはここであってたはずですが…お!いましたアンブリエル姉貴です!ものぐさなことで有名なので、ここはすかさず労ってあげましょう!あ、会話はもう任せてしまいましょうねー!学校やウタゲ姉貴の効果なのか、サクラのコミュ力はかなりのものだと思われます!今のコミュ力なら、私が手を出すよりいい結果になりそう(小並感)。
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「アンブリエル!」
「!! サクラ…!」
私はアンブリエルを…この作戦の功労者の一人を迎えに来ていた。彼女の超長距離攻撃がなければこの作戦の成功はなかっただろう。普段はものぐさなのに、いざ戦闘となると確実に自分の仕事をこなす彼女のことを私は尊敬していた。
「お疲れ様だ、アンブリエル!どこか怪我とかはしていないか?」
「…心配してくれんの?」
「当たり前だろう。お前は私の大切な仲間だからな。」
「仲間…かー。いいね、そーいうの。」
おや、と思った。彼女はこういうのは嫌いなタイプかと思っていたからだ。仲間、友情、努力。知り合ったのはつい昨日のことだから、私の知らない一面があるという事なのだろう。話をして知りたいところだが、なにはともあれ撤収すべきだ。そう判断し、手を差し伸べる。
「さあ、帰ろう。疲れているなら、私がおぶって行ってもいいぞ。」
「…ホントに?」
おずおずと手を背中に回してくる。私は腕を彼女のふとももの下にくぐらせ、力を入れて持ち上げる。スリムな見た目通り、さほど重くはなかった。
「だ、大丈夫?サクラっちも戦ってたんだから、こんなんして平気?」
「全く問題ない。アンブリエルは軽くて助かるな。」
「そっか、なら、よかった…。」
「…?」
何か、おかしい。彼女はこんなにしおらしかっただろうか?私の持っていた印象としては、しずか…ウタゲを見ているようだなと思っていたのだが。疲れているからだろうかと少し心配になり、彼女の方に顔を向ける。背中側にあるためその顔を見ることは出来なかったが、意図は伝わったようだ。
「な、何?どうかしたの?」
「なあ、アンブリエル。何かあったのか?」
「い、いやいやいや!全然ダイジョーブ!なーんにもないから心配しないで!ね!」
嘘だ。火を見るよりも明らかなその嘘に少し笑いそうになってしまう。しかし、同時に心配になる。何か、悩みでもあるのかもしれない。こういう時、どうするべきか。私の話術の師匠である、しずかによれば…
「…なあ、アンブリエル。私は、お前のことがもっと知りたい。」
「え!?な、なーに言い出すの急に!?」
「いや、すまない。その、何か、悩みがあったりするんじゃないかと思ったんだ。ウタゲならこういう時、簡単にできるんだろうが、私にはどうにも上手くできないらしい。」
「な、なんだそういうこと。それならあたしは全然何も…」
そこで少し、彼女が言いよどんだ。やっぱり何かあるらしい。
「…あの、さ。さっき言った、戦う理由ってやつ。あたし、特にないんだよね。」
震える唇から、天使の告解の言葉が紡がれる。
「終わった…?」
あたしはスコープから目を離し、辺りを見渡す。あれだけたくさんいたムシたちの影はもはやどこにもなく、辺りはまた何もない景色を取り戻していた。
「ほんとに、勝っちゃったんだ…。これじゃまるで」
奇跡。そうだ、奇跡みたいな出来事だった。ひたすらに引き金を引き続けたあの時間を思い出す。普段ならめんどくせーとしか思わないムシの狙撃なのに、あの時は本当に素晴らしい時間だった。もちろん撃ち漏らしなんてあるはずがない。そこんとこに関しては、あたしには絶対の自信がある。
ふと、ラテラーノにいたころに狙撃を教わった教官を思い出した。典型的なラテラーノ人って感じの堅物だった。そんなんだからとーぜんあたしとはそりが合わなかった。そいつが言うには、狙撃手に必要な才能ってのは、獲物を追い詰めることに対する強烈な興味らしい。場合によっては同じ場所で何日も待たなければならないこともある狙撃手は、そうでなければ務まらないとかなんとか。今ならはっきり言えるけど、そんなのでたらめだ。あたしは人殺しが好きなサイコでもないし、かといって必死に努力して今の腕を手に入れたわけじゃない。あたしには才能があるけど、人殺しにはキョーミない。だからそんなのはまったくのでたらめだ。てかその理屈だと、一流の狙撃手はみんな人殺しに興奮してるってこと?あの教官ももとは狙撃手だったらしいけど、ハァハァ言いながらスコープ覗いてたんだろうか。きも。
なんて思ってたけど、さっきのあたしも多分、そうだった。ハァハァはしてなかったけど、熱い光輪とバクバクうるさい心臓がその証拠だ。あれが信仰を、神を、知ったってことなんだろうか。それもこれも全部あの新人のせいだ。
「アンブリエル!」
「!」
マジでびっくりした。心臓が飛び出るかと思った。いきなりあたしに声をかけてきたのは、あたしの心をかき乱す張本人だったからだ。サクラ。突拍子もない作戦をいきなり提案して、全員それに巻き込んだあいつ。そんなあいつだからこそ、いきなりおんぶなんて言うのも普通の事なのだろう。それなのにあたしのことをよくわかってるのは不思議でしょうがない。確実に勝てる、なんてセリフといい、納得が欲しい、というあたしですら知らない本音を導いた。
そんなサクラからいきなりおんぶしてやるなんて言われて、何か悩んでるんじゃないか、なんて言われたんだからあたしの驚きは想像できるだろう。ホント、ふざけないでほしい。どれだけあたしの心をかき乱せば気が済むんだろうか。サクラと言葉を交わすだけで、あの時の興奮がよみがえってくるようだった。しかし、悩み。悩みか。そんなもん、あるに決まってる。でも、それをこいつに言うの?
あたしには戦う理由なんてない。ただ単に今を楽しく生きられればそれで良くって。たまたま狙撃の才能があったから、狙撃手をしてるだけ。明日から戦わなくてもお金がもらえるってんなら、さっさと銃をケースにしまうかもしれない。客観的に見れば、情けない理由に思われるかもしれない。それが何より怖かった。せっかく得たあたしのカミサマに、失望されるかもしれないと思ったら、言い出せるわけがなかった。
――――――ああ、でも。
もしかしたら。そんな気持ちが顔を出した。もしかしたら、受け入れてもらえるかもしれない。本当にそうなったら、どんなにいい事だろう。あたしの生き方を、許してもらえたなら。
「…あの、さ。さっき言った、戦う理由ってやつ。あたし、特にないんだよね。」
「え?」
「あ、ち、違うんだってこれは!」
言ってしまった!ヤバい、ヤバい!何とかしてごまかさないと!
「アンブリエル。」
「!……なに?」
サクラの声が響く。ごく普通の彼女の声のはずなのに、今のあたしにはひどく荘厳なものに思えて、思わず息をのむ。どうか、どうかお願いします。悪いように、なりませんように。
「私は…それでもいいんじゃないかと思う。」
「…え?」
「私の昔の話は多分していなかったよな…。私はもともと、極東の北側…といってもわからないか。とにかく、極東に住んでいたんだ。武士、という簡単に言えば戦闘員の家に生まれてな。そこそこ幸せに暮らしていた…と思う。」
サクラが昔話を始めたが、あたしの頭には入ってこなかった。ただ、いいんじゃないか、という言葉があたしの頭に反響していた。
「でも、ある日。父が死んだ。」
「え?」
いきなりあたしの頭は現実に引き戻された。それに気づかず、サクラは話を続ける。
「いつの事だったのかはわからない。でも武士なんだから、きっと珍しいことではないんだろうな。それから母と二人暮らしになったわけだが…。その後、母に鉱石病が見つかったんだ。」
「今ならわかるが…きっと母は、私を養うために源石を扱う危険な仕事に就いたのだろう。あそこで女性ができる仕事なんて、農業以外ではそれくらいしかないからな。それで、鉱石病になった母は、ある日、男たちに連れていかれた。」
「サ、サクラ…。」
彼女の話の続きは想像がつく。この世界じゃあまりにもありふれたこと。辛い事なら、言わなくてもいいのに。そう思って止めようとした。
「辛いなら、話さなくてもいいんだよ…?」
「…いや、私も自分の気持ちを整理したいんだ。どうか、嫌でなければ聞いてほしい。」
そう真剣な顔で言われ、思わず頷く。サクラは安心したように、続きを始めた。
「ありがとう。…それで、多分想像している通りだ。母は、殺された。私も父の遺した刀を持って追いかけたが、間に合わなくて、それで…。それから先は、はっきり覚えている。3人の男の首を、私が斬り落としたのだから。だんだん冷たくなっていく母の体も。男たちの生暖かい鮮血も。…私は、ひとりぼっちになった。」
「それからは戦場の中で暮らした。敗走兵…極東では落ち武者というんだが。それを殺して、持ち物を奪って生きていた。」
「自分でも散々だなと思うが…一年くらいした後だっただろうか。私は金髪の子供と出会ったんだ。はじめは、綺麗な服を着た子供だなとしか思わなかった。山賊のような連中に襲われていたから、そいつらを殺したら懐かれてな。後からわかったことだが、その時はあいつも友達がいなくて寂しかったらしい。ひとりぼっちどうしの私たちは、すぐに仲良くなった。それが、ウタゲだ。」
「それから、学校にも行かせてもらえるようになって…。ウタゲの母さんから剣術を教えてもらって…。ある時、事件に巻き込まれて、二人とも感染者になった。それでロドスに治療に来て、いつの間にかオペレーターになっていた。」
「話が長くなってしまったな。つまり、何が言いたいかというと、何も、すぐに決めなくてもいいんじゃないかってことだ。私だって、普通に武士の娘として戦場に出ていたかもしれないし、どこか適当な家に嫁いでいたのかもしれない。あるいは普通に卒業して、どこか適当な企業に就職していたかもしれない。それが今はこうだ。」
「きっと人間ってのは、そんなに小さいものじゃないんだろうな。きっかけ次第で、なんにでもなれるんだろう。だから、いいんだ。今は理由がなくてもいい。これからゆっくり見つけていけばいいさ。」
「それに、私もまだ見つけられていないんだ。ただ、何かに突き動かされるようにオペレーターになった。」
「自分が何をしたいのか、何をすべきなのか。ただ、何か…誰かを、助けなければならないような気がするんだ。極寒の中で凍えるような寂しさに苦しんでいる人がいるような気がするんだ。だから私には力がいる。どんな苦境でも乗り越えられるような力が。どんな困難からでも、皆を守れるような力がな。でもそれは、私一人の力である必要はない。」
「これは、ウタゲから教わったことだ。私は一人じゃないってことはな。そして、アンブリエル。お前も、一人じゃない。お前さえよければ、私と一緒に探してみないか?自分が何をするべきなのか、どう生きるべきなのか。一人じゃきっと、見つけられない。きっと私には、お前みたいな仲間が必要なんだ。」
許された。あたしの今までの行いを、今までの人生を。それでいいんだ、と肯定してもらったのだ。それどころか、私の進むべき正しい道までも示された。この人は、どこまで。どこまであたしを喜ばせてくれるのだろうか。それなのに、こんなにも嬉しいのに。…あたしはどこまで、ひねくれているのだろうか。
「…はは、何それプロポーズ?悪いけどあたし、ノーマルだからさー。」
違う。そうじゃないだろう。あたしは本当は、今すぐにでもその手に縋りつきたいはずなのに。なのに、怖い。その手を取るのが、怖い。わかっているはずなのにだ。彼女の手を取って、自分の求めるものを探しに行くのが正しい道だと。それでも手を取ってしまえば、自分の世界が全く異なるものになる気がして怖かった。どうすればいい?あたしは、どうすればいいの?誰か、誰かが、教えてくれれば…
「アンブリエル。怖いのか?」
ドグンと、また心臓が脈打つ。目の前の人物は、あたしのすべてを理解しているのかもしれない。
「な、何いってんのさ。何も、怖い事なんて…。」
「…狙撃手とは、孤独なものだ。戦場を俯瞰し、己の一存で敵の生死を決める。それは強力なものだが、同時に危険なものでもある。一人でいれば、手が回らなくなることだってある。怖いのも、無理はないさ。」
そう言って、サクラはあたしをゆっくりと地面におろした。その後腰に佩いた刀を手に取り、半分だけ抜いてみせた。真っ白な刀身は神々しく見え、根元に彫ってある文字は読めなかったが素晴らしい装飾に思えた。
「だから。お前が許してくれるのなら、私がお前の剣になろう。私たちの道を、歩みを、遮ろうとするものたちから、私がお前を守ってみせる。」
(あぁ、そっか。)
日が沈みだし、真っ赤な光が彼女の背後から差す。だから皆、神様に聞いていたんだ。神様の言う通りだからって、勇気をもらっていたんだ。ははっ、ウケる。じゃあ何も、迷わなくていいんじゃん。
それまでのあたしの気持ちを何と言ったらいいのだろうか。はっきり言って、諦めていたのだ。確実な何かが欲しい。それが何かもわからないのに。何をすればいいのかわからないから、楽しいことをやっていた。傍から見たらそれはぐうたらで、誰にも理解されなかった。でも、今あたしを見つめているこの人はどうだ?
あたしが求めるものが何なのか、さらりと言い当てて見せた。まるで預言者のように。
あたしにできなかった生き方を、その身で体現して見せた。まるで求道者のように。
それでも前に踏み出せないあたしに、信じる勇気をくれた。まるで、
「サクラ…あたし、きっと何も変われないよ?」
「いいさ。」
「きっとものぐさなままで、戦うのもめんどくさがって、好きなことばっかやってるよ?」
「大丈夫だろう。生きていれば、何かの拍子に変わるかもしれないんだから。」
「…ありがとう。」
私は今日、生まれ変わったんだ。
“迷ったら撃つな”ラテラーノ人で知らない人はいないこのセリフは、遥か昔の聖人が残したものらしい。迷いは銃口をブレさせ、撃つべきものを見失わせる。人という弾丸が、どこに向かって飛ぶべきなのか。あの退屈な学校で、この話だけはなぜか覚えていた。でも、もう迷いはない。
守護銃を立てて体の前で持ち、彼女の前に跪く。
「サクラ…本名は、なんて言うの?」
「…本田桃。」
ほんだ、もも。それが、私の新たな主の名前。
「本田、桃。我が義人、我が主よ。このアンブリエルが、あなたの、そして私の道を遮るすべてからお守りすることを誓います。」
「ならば私も、この刀に誓おう。アンブリエルに、ウタゲに、私の大切なすべての人に。かかる火の粉を振り払ってみせる。」
祈りは必要ない。いるかどうかもわからないカミサマよりも、目の前の人を、自分の気持ちを、信じるのだと決めたのだから。
サクラが刀をもとの鞘に戻す。キンッと小気味良い音がして、刀は綺麗に収まった。だが、私は違う。放たれた弾丸は、もう銃には帰らない。だからこそ、祈りではなく、決意を。私たちの道が、どうか佳いものであるように。
しばらく、二人ともそうしていた。お互いの決意を噛みしめ、深く胸に刻み込んだ。そうしていよいよ太陽のてっぺんが、地平線に沈むころ。
「おい!!お前らどこほっつき歩いてるのか知らねえが、さっさと帰ってこい!!!暗くなる前に帰ってこなかったら、二人ともまとめてベッド送りにしてやるからな!!」
二人で思わず顔を見合わせる。
「や、やっば…!ガヴィル完全にガチギレじゃん!い、急いで戻るよサクラっち!」
「お、おお。早く行こう!抱えた方が速いな、舌を噛まないよう気をつけろよ!」
暗くなり始めた荒野を、いつも通りの二人に戻って必死に走る。佳い道には、やはり困難がつきものらしい。
(でも、さ。)
怖くはない。何も、怖くはないのだ。今はもう、一人ではないのだから。見た目よりずっと大きく見える背中に揺られながら、そんなことを考える。見上げた空には、普段よりずっときれいに見える星々が、何かを祝福するように輝いていた。
これにてアンブリエル姉貴との邂逅編は終了です。そしていよいよ本編に入れそうですねえ!できるだけ早急に投稿するのでしばらくお待ちナス!
次回作、どっちがいいんすか?
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強面トレーナー、TSする。
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パワプロRTA北雪高校モテモテチャート