アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
「よっ。ようこそサクラ、あたしの部屋へ。とりま適当に座っちゃっていいよ。あたしはジュース出してくっからさ。」
あたしは平静を装いながら、部屋にとある人物を招き入れる。紫色の髪をした彼女はサクラ。あたしと同じオペレーターであり、あたしの義人だ。あたしたちサンクタにとって義人は世界の何よりも大切にするべきものであり、一番大切な人という意味がある。まあ義人って呼べるレベルの人に出会えるサンクタは相当少ないらしいから、あたしはマジでツイてる。もっとも、ラテラーノの奴らに言わせたらそれも主の導きらしいけど。
「お邪魔します。部屋のつくりは私たちの部屋とそう変わらないんだな…。」
「まーそんなもんなんじゃない?あれ、てか他の人の部屋まだ行った事無い感じ?」
「ああ。私たちはロドスじゃまだまだ新顔だからな。誰か別の人の部屋に入るのは今日が初めてだ。」
そっか、あたしがサクラの初めて。悪くない響きだ。にやける口角を抑えて冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。あたしは朝弱いから、たまにこれ一杯だけで朝ご飯のかわりにすることもそこそこある。まあ後でお腹減ってサンドイッチとかつまむんだけど。
「ほいジュース。にしてもウタゲっち説得すんの大変だったしょー?なんか“うちのサクラをそんなとこにやれるかー”とか言ってきそ―。」
「おお、ありがとう。いや、それがアンブリエルのところならおっけーとお墨付きをもらったぞ。それとあいつも別の友達のところに行っているらしいからな。確か安心院、とか言ってたかな。あいつ、『アンジェのコーデに付き合うからブリさんと遊んでて~。迷惑かけたらダメだよ~。』とか言ってた。」
「何それウケる。扱いが子供のそれじゃん。」
こんなありきたりのやり取りでも心が弾む。どっかの誰かが、「あなたと交わした言葉は、どれも大切な宝物です」とか言ってたけど、確かにこれは宝物かもしれない。
「あ、そーそー!今日はさ、一緒に映画見よーと思って誘ったんだよね。サクラは普段、映画とか見んの?」
「映画、か…。たまにウタゲたちに連れられて映画館に行ったな。そういえばあの日も…。いや、まあそれはいい。とにかく、そんなには見ないかな。」
「ふーん、まあいいや。いろいろ用意したけど何見る?アクション?それともラブロマンス?」
「そうだな…。これ、かな。なんだか惹かれるような気がするんだ。」
「あ、そう?じゃー見よ見よ。」
最初の映画はこてこてのラブロマンスだった。同じ水泳部の男女が衝突しながらも仲良くなってって、最終的には幸せなキスをして終わるっていう作品。でもそれだけで終わらなかったのが印象的で、特に試合の緊張でよく眠れなくなった男の方に女がこっそり睡眠薬を盛るシーンはマジ?と思ったけど、まあそのおかげでいい結果を残せたしよかったんだろう。それがバレたあとには男から問い詰められて、クライマックス前のケンカにつながるわけだけど。まあ最後は幸せなキスで終わったからセーフ。
「ふー、どーだったサクラ?映画ってのも悪くないでしょ?」
「ああ、すごいな…!特に女優さんの演技の方がまさしく迫真って感じだった。有名な人なのか?」
質問が出るってのは興味を持ってたことの証拠。ひとまずは気に入ってくれたようでほっとした。
「んーどうだろ。あたしが持ってきた中に、その人が出てるのないかなー…お、あんじゃーん。今度は空手?ってのの部員らしいよ。」
「おお、空手ってのは極東の武術の一つだ。まさかこんなところで故郷の風を感じるとはな。」
「いいじゃんいいじゃん。じゃあ次これ見よっか。あ、その前にお菓子持ってこよーっと。」
ポテチの袋を探しに棚へ向かう。てきとーにいろいろ放り込んでおいた棚の中はぐちゃぐちゃだったが、やっとの思いで見つけ出したポテチはなんとか無事だったようだ。ラッキーと思いながら彼女のところに戻ると、まだパッケージをじっと見つめていた。
「サクラ―。まだパケ見てんの?そんなに気になる?」
「…まあな。私もどうやら故郷に未練があるらしい。もっとも、やるべきことを果たすまで帰る気はないがな。」
そう言いながらビデオデッキに向かうサクラ。しかし、テレビの前でじっとして動かなくなった。
「え、まさか使えないの?噓でしょサクラ、ドン引きー。」
「う、うるさい。まだ使えないだけだ、一回見ればわかるはずだ。」
「でも今は使えないんでしょ?」
「…ああ。」
目に見えてしょんぼりする。さっきまであんなにかっこいいこと言ってたのに、と笑いながらデッキにDVDを挿入する。配給会社のロゴが映り、いよいよ映画が始まった。
内容は痛快アクションって感じ。それぞれ歳の違う三人の空手部員が、悪の限りを尽くす
「そうだ、そろそろお腹が空かないか?何か食堂まで食べに行こう。」
「おけー。じゃあちゃちゃっと着替えるから待ってて。」
「え、それは外出用じゃなかったのか?」
「ないない、さすがにこれじゃダサくて外出れねーっつーの。サクラも中々センスいいの着てるんだからわかんじゃないの?」
「いやこれはウタゲに着せられた奴だ。というか、私の私服は全部ウタゲに選んでもらったやつだからな。」
「マジでおかーさんじゃん草。まー服取ってくるからさ、とりあえずちょいまちー。」
そう言ってロドスの制服ではなく、私服を見繕ってクローゼットから取り出す。せっかくならカワイイって言ってほしいし、ここは真剣に選ばなきゃね。いつになく真剣に吟味した服を持って、部屋に戻る。なにげなく今着ている服の裾に手をかける。
「ちょ、ちょっと待てアンブリエル!まさかここで着替える気じゃないだろうな!」
「え?別にいーじゃん女の子同士なんだし。」
「と、とにかく私は向こうを向いてるからな!じゃないとR18になってしまいかねない!」
そう言ってサクラはダッシュで向こうに行ってしまった。妙なところで初心なやつだなーと思ったけど、冷静に考えたらあたしでこうなったってことだよね。サクラが、あたしでねー…。…ふーん。
妙な高ぶりを覚えつつ、服を着替える。もと着てたやつは適当にそこらに放り出し、サクラのもとに向かう。いつの間にか平常心に戻っていたようで少し残念な気もしたが、まあお腹減ったしいっか。
「よっ。じゃあ行こっか。」
「フゥ―…。よし、行ける。ああ、何を食べようか。」
あたしの部屋を出て食堂までは数分でつく。映画に夢中になってたせいでピークの時間は過ぎているから人はほとんど通らなかった。
「あれ、サクラじゃん。あんたらも今からゴハン?」
「え、じゃあこの子が?ciao!初めましてサクラ!あたし、安心院アンジェリーナ!気軽にアンジェって呼んで!それで、こっちのあなたは…?」
お、珍しく人と会った。しかもウタゲっちじゃん。それと、このヴァルポの子がアンジェってコトか。
「ああ、よろしくな。それからこっちはアンブリエル。私の友達で、優秀な狙撃手だ。」
「ちょっとサクラ―。その紹介の仕方はなくねー?まいいや、よろしくねアンジェ。あんたらもってことは、ウタゲっちたちも?」
「そだよー。今の今までアンジェのコーデ選んでたらゴハン忘れちゃってさー。あんたらは今まで何してたの?」
「ああ、聞いて驚け。私たちは今までおうちデートというものをしていたところだ。」
「そーそー。なかなかラブラブだったかんね。」
「デ、デデデート!?女の子同士で!?」
「アンジェ、サクラの方多分意味わかってないよ。どうせブリさんの言ったこと適当にオウム返ししてるだけだって。…ま、デートってんならしゃーないか。一緒に行こうかと思ったけど、二人っきりでたっぷりイチャついてきなー。」
マジか。絶対一緒に来るじゃんと思ったのに空気読んでくれたっぽい。さすがウタゲっちだわ。
「さんきゅー。じゃあ行くよサクラ。ウタゲっちに言われたんだからイチャイチャしないとね。」
「イチャイチャとは何をすればいいのかわからないが…まあ私も腹が減ったからな。」
それから、ピークを過ぎてガラガラになった食堂で二人っきりのランチ。前まではどんよりとした雰囲気に見えたここも、今はなんだか活気があるというか、いきいきしてる感じがする。これはやっぱりドクターって人が帰ってきたからなのか、それともあたしの気持ちが変わって見え方も変わったのか。どちらにせよ、今のあたしはこっちの方が好みだからこれでいい。サクラはほんとに腹ペコだったみたいで、おかわりした上にデザートもつけていた。
「ごちそうさま。はー、やっぱり米を食べないと食事って気がしないな。これからはいつでも食べられるようおにぎりを作って携帯しておこう。」
「ふーん、米ってそんなにいいもんなの?あたしはまだ試したことないんだよねー。」
「何!?それは本当か?それはもったいない、今度私が作ってやろう。」
「マジ?サンキュー、楽しみにしてる。場所は…あんたらの部屋でいい?」
「もちろんだ。今度、改めて招待しよう。そうだな、もうすぐ龍門につくらしいから、そこで材料を調達してからだな。」
ごめんねーサクラ。あたしが米を食べたことがないってのは嘘。大体新しいものに目がないあたしが、試したことないわけないっしょ。でも、そのおかげで部屋に入る口実が出来た。
ウタゲっちにも言ったけど、あたしは別に百合ってるわけじゃない。サクラに、義人に対して恋愛感情は抱いていない。あたしはただ単に、サクラの中の一番があたしであってほしいだけ。サクラっちもいつか結婚とかしたりして、子供が生まれたりするのかもしれない。彼女の中の優先順位は、きっと子供が一番になるだろう。あたしだって、その座を奪うつもりはない。でもあたしがサクラのことを思う時、サクラにもあたしのことを思っててほしい。誰かに助けを求めようとするとき、一番最初に思い浮かぶのがあたしであってほしい。ただ、それだけ。たぶんウタゲっちも同じような感情を彼女に対して抱いているはずだ。あの子はすっごいいい子だから、あたしと同じ立ち位置にいても許せる。うん、ウタゲっちなら隣にいてもいいかな。だから今は距離を頑張って詰めていく。絶対、あんたの一番になるからね。そう思いながらあたしは、トレーを片付けるサクラの背中を、食後のお茶を飲みながら見ていた。
「ねーサクラ。次はこれ見てみない?」
「ん?…な、な、なんだこれは!!」
あたしたちは部屋に戻ってきて、また映画を見始めていた。次はアンブリエルが選んでくれ、っていわれたから悪ふざけで選んだAV…ようはエロビデオを選んでみた。あたしはまあ年相応にそういう知識は持ってる。でも、友達とこういうものを見るって言うのはやっぱりわくわくするものだ。でも、サクラはそうでもないらしい。
「だ、だってこんなエ、エッチなのとか見たことないし…。」
「…マジ?ひょっとして今の今までウタゲっちに監禁されてたとか?」
「いや、ウタゲからこういうのは早いって言われて…そんなもんかと思ってたから…。」
顔を真っ赤にしながら、指の隙間からこっちをチラチラ見ている。やば、何かに目覚めそう。
「ねぇ~サクラ?あんただって、いつまでもそのままじゃいられなくない?あんただってそのうち、男と付き合ったりしたらさぁ、そういうことになるときもあるんじゃないの?」
「う、うぅ…。」
「大丈夫、大丈夫。あたしがついてるからさ。もし恥ずかしくなっちゃったら、目をつぶってもいいから。それにあたし、友達とこういうの見るの夢だったんだよねー。あたしの夢、一緒に叶えてくれない?」
「わ、わかった…。ちょっと、準備をさせてくれ…。ほんとにR18になってしまうから …。」
よくわからないことを言いながら、サクラが席を外して顔を洗っている。あたしはというと、自分の中に目覚めた感情をコントロールするのに必死だった。ただ単に、ちょっとキャーキャー言いながら時間を過ごしたかっただけなのに、とんでもないことになってきた。でも、何だろうかこの湧き上がるドキドキは。それはきっとウタゲっちへの申し訳なさからだと思う。今まで必死にそういうエロい話から必死に守ってきたサクラを今日、あたしは汚そうとしている。でも、さ。今までほとんど全部、サクラの初めてはウタゲっちに独占されてきた。だったらさ、これくらいあたしがもらっても良くない?そうだよ、あの約束の対価みたいなものだって!
「よ、よし…。ふ、ふつつかものだが、よろしく頼む…。」
「…なんか勘違いしてね?」
予想以上にテンパってて、その上顔を真っ赤にしたサクラ。彼女の姿はまるで、初めてを迎えるような…。ってあたし、何考えてんの!?
「じゃ、じゃあ再生するよー。」
「う、うむ。」
それから毒々しいピンク色のロゴが出た後、ゆっくりと映像が再生されていく。その画面を見つめる少女が二人。一人は画面に何かの変化が起きるたびに小さな悲鳴を上げ、指の隙間から画面を眺める。もう一人は彼女に文句を言うこともなく、画面と少女の顔を交互に見ていた。そんな二人の夜はほんの3時間程度のものだったはずだが、二人には永遠のような時間であった。もちろん、ビデオには終わりがあるもの。しかし二人の間に流れる温度はまるで制限がないかのように、上がり続けていくのであった…
「で?サクラがこーなっちゃったってわけね?」
「いや、あの、ほんとすんませんでした…。」
あたしはサクラの部屋まで彼女を送り届けた後、ウタゲっちに詰められていた。戦場で見せるような半端ない威圧感でだ。あたしが言うのもなんだけど、無理もない。サクラは全編を見終わったあと、「約束は…果たしたぞ…」とか言いながらのぼせて目をぐるぐるさせていたのだから。まさかAV見てほんとにこうなる奴がいるとは思わなかったけど…。
「ふーん…。あたしが今まで頑張って守ってきたけど、それを全部アンブリエルさんが台無しにしたってわけね?一緒にサクラを守ろうって言ったアンブリエルさんがね?」
「ま、待ってでもさ?サクラだってもういい年なんだし、そういう知識も必要だと思うんだよね?いつまでも温室育ちじゃいられないってやつだって!」
「…まあそれは一理あるけどさ。にしたって急すぎるんであって…。」
「そうでしょ?それにさ、サクラの奴、めっちゃ可愛かったよ…。ちょっとシーンが変わるたびに、キャーキャー言ってさ…。」
「…。」
無言になるウタゲっち。ここがチャンス!今詰めるしかない!
「そこでね?そこで物は相談なんだけど…。実はさ、あたしその時のサクラ撮っちゃったりして…。」
「! アンブリエル…いや、ブリさん…。」
「ちょうどもうすぐ龍門に着くらしいし、そこに着くまでの楽しみにちょうどいいんじゃないかなーって…。」
「…わかった。今回はそれで許したげる。」
やった!あたしは生き延びた!!
「おけおけー!すぐ送るから待っててね!」
そう言いながら急いで端末を操作する。動画ファイルをメールに添付し、ウタゲっちの端末に送り付ける。これであたしの秘密の楽しみは二人の秘密になったという事だ。
「あたしの知らないサクラかー…。そう考えると、ほんとに赤ちゃんのころくらいしかないもんね。あれ、そう考えたらこれってめっちゃレア?」
「そーそー。あたしの手柄でもあるわけっしょー?」
「…まあいいけど。とにかく、このことは絶対サクラには内緒だからね。今は多分のぼせて聞いてないけど。これから三人でいるときは…」
「わかってるって。絶対話には出さないから。それじゃ、今日はもういい時間だからあたしは戻るね。それじゃお休み~。」
逃げるように挨拶をして自室に引っ込む。ムードが出るからっつって電気もつけずにビデオを見ていた部屋はいまだに真っ暗のままで、一人しかいないからかひどく寂しく見えた。オペレーター同士の部屋の出入りは特に禁止されていないから、いつか二人の部屋に泊まりに行ったり。逆に泊まりにくることもあるかもしれない。まあ今は、一人で寝るわけだけどさ。まあでも、そうだな。さっきもウタゲっちに言ったけど、龍門にもうすぐ着くそうだ。あっちに着けば、また新しいものがたくさん見られるだろうし、サクラが料理を作ってくれるとも言っていた。それを考えると、特に寂しくはなくなってきた。今日もゆっくり寝られそうだ。
サンクタの少女は眠りについた。いや、彼女だけでなく一部を除いたほとんどの乗員が、静かな眠りの中に落ちていった。彼らを乗せた揺りかごは、静かにかの地を目指している。虚飾と欺瞞に満ちた、温度のない発展を遂げた都市、虐げられた者たちが巻き起こす嵐、その次なる標的たる都市、龍門へ。
しかし嵐を止めたくば、別の嵐を要するもの。その台風の目となる一人の少女は、今はまだ熱にうかされ眠るのみ。
作中で「お兄さん許して!R18になっちゃーう!」(意訳)とか言ってたのは、RTA的にマズいとかハーメルンにR15で投稿してるからとか好きに解釈して、どうぞ。
次回から龍門編に入るのですが、原作とすり合わせようとストーリーを見返して改めて見るとおチェンの株、この段階だとストップ安ですね…。小説のネタとしてイジるくらいに留めてキャラディスにならないよう気を付けナス!
次回作、どっちがいいんすか?
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強面トレーナー、TSする。
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