アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA   作:春雨シオン

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 喉が痛むので初投稿です。塩水うがいってほんとに効くんすねえ。

 それと今回、また独自設定が生えてきたうえにクソ長いです。RTAパートと小説パートに分けて読んでもらったも大丈夫なように区切ったので許し亭許し亭。


Part20 信じているから

 ミーシャ姉貴の運命を変えたRTA、第19部はーじまーるよー!

 

 前回、W姉貴を撃退することでミーシャ姉貴の保護に成功したところですね。今はレユニオンに囲まれて身動きの取れない龍門近衛局を助けに行っている最中です。アンブリエル姉貴に援護させながら、ウタゲ姉貴と一緒によし、じゃあぶち込んでやるぜ!といきたい所さんですが、無策で突っ込んでも意味がありません。できる限り鮮烈なイメージを近衛局にもレユニオンにも刻んでおきたいんですよね。理由は単純、レユニオン達の注意を引くことで近衛局から注意を逸らし助けやすくするためと、近衛局からの尊敬を得られるためですね。

 

 そこで雷のアーツを全身に纏い、スーパーサイヤ人2状態になりましょう。あれとは違って紫色の電流ですし、別に強くもならないので完全に演出用ですがね。

 

「ウタゲ!飛び上がるからいつものを頼む!こっからはド派手に行くぞ!」

「りょーかーい。桃さんのーちょっといいとこ見てみたいーっつって。」

 

 あの腕組んだとこ踏み台にするジャンプで飛び上がり、ダイナミックエントリーしましょう!ドーモ、レユニオン=サン。サクラデス!上空から落雷と共に急襲!性技の刃、覚悟しろ!

 

「ぐわああああ!」

「な、何だ!?近衛局の増援か!?」

 Foo!レユニオンが吹っ飛ばされて俺の心の傷が、どんどん癒されていきますよ!(マイナー語録)いきなり飛んできた人間と落雷の音、光、衝撃により完全にレユニオンは浮足立っています!こ↑こ↓は前座もいいとこなのでさっさと片付けましょう。

 

「…! 君は…。」

「ロドスのオペレーター、サクラ。ここからは私たちも手を貸そう!」

「それからミーシャは既に保護した!あとはこいつらを片付けるだけだ。」

「そうか、感謝する!全員、今のうちに態勢を立て直せ!奴らを押し返すぞ!」

「了解!!」

 

 ようやく近衛局も本来の状態に戻ったのでこれなら大丈夫でしょう。というかアンブリエル姉貴の狙撃が強力すぎて全く苦戦しません。さすがにかち合ってる最中にはいくらアンブリエル姉貴と言えど、誤射を恐れて狙撃は出来ませんが、こちらを取り囲んでいる敵を一人一人確実に減らしてくれています。そのおかげで敵はこちらに近づくことが出来ず、非常に動きやすくてタスカルタスカル。

 

「これで、終わりだ!」

 

 チェン姉貴が最後の一人を切り裂き、戦闘終了。終わってみれば楽な戦いでしたね。

 

「あー終わったー?何かあっけなかったねー。」

 

 ウタゲ姉貴の方も怪我がないようで何より。このレベルの相手であれば、何の問題もないようですね。さてと、帰る前に本来の目的、近衛局にたっぷり恩を売っておきましょう。もろちん標的はチェン姉貴です。明日の命も知れぬモブどもに用などないわ!

 

「大丈夫だったか、チェンさん。もうミーシャは保護した後だ。」

「そうか、感謝する…。すまない、ミーシャを奪われかけたのは我々の失態だった。」

「もう終わったことだ。それに、ロドスと龍門はもうパートナー、だろう?助け合うのは当然のことだ。…だが、礼がしたいのならアーミヤとミーシャに頼む。二人ともわからないことばかりで不安になっているんだ。その気持ちを汲んでやってほしい。」

「…そう、だな。わかった、君には伝えておこう。彼女は…」

「ねーそろそろ離れた方がいいんじゃない?またあいつらに襲われたらヤバいっしょ。」

 

 ネイルを気にしながら話すウタゲ姉貴、まったく緊張感ないっすね…。

 

「ひとまず後でアーミヤに連絡を入れておいてくれ。私たちは…」

「ああ、急ごう。ところで、ミーシャはどこにいる?」

「ロープに匿ってもらっている。こっちのビルだ、来てくれ。」

 

 よし、この後はミーシャ姉貴を引き渡して帰るだけです。おーいミーシャやーい。

 

「! サクラ!大丈夫だったの!?」

「ああ、どこにも怪我などしていない。ミーシャの方こそ、怖かっただろう。だがもう安心だ、皆やっつけたからな。」

「失礼します。ミーシャさん、先ほどは我々の失態によりあなたを危険にさらしたこと、深くお詫びいたします。ですがここは依然危険な場所です。まずは移動しましょう。」

「…それだったら、サクラも来てくれるのよね?」

「…ええ、我々の失態をカバーしてくれた恩人ですので。それで問題ないな?」

 

 あっ、いっすよ。近衛局だけじゃ心配だから、楽しみっすよ(嘲笑)。 

 

「…もちろんだとも。近衛局に思う部分がないわけじゃないが、ミーシャのためだからな。」

「感謝する。では早速移動しましょう。奴らの増援がここをかぎつける前に。」

 

 何か成り行きでついて行くことになりましたがまあいいでしょう。この後に起こる戦いのことを考えると、早めに準備に入りたかったんですけどね。と、いうのもこの移動時間を使って説明しておきましょう。

 

 ほんへではミーシャ姉貴を奪われたあと、何とか取り返そうとレユニオンが潜伏しているところを近衛局とロドスが協力して襲撃します。そこで待ち受けていたのはスカルシュレッダーというレユニオンの幹部。ちょっと前に襲ってきたガスマスクをつけた奴ですね。実は奴はミーシャ姉貴の死んだと思われていた弟で、ミーシャを助けると本気で思って人殺しに手を染めていました。自分が病に苦しむ中、医者を殺して葬儀屋に金を払うようなものですね。

 

 その戦いの戦況はどうだったかというと、ドクターの指揮によって数では圧倒的に勝るレユニオンが攻めあぐねている状況でした。最終的にはスカルシュレッダーがドクターもろとも自爆しようとしますがアーミヤに防がれ犬氏にしてしまいます。

 

 こんな執念を持った奴が一度や二度の失敗でめげるかと言われると、もちろん答えは(諦め)ないです。おそらくは龍門近衛局を襲ってでも取り返そうとすることでしょう。だから、ミーシャ姉貴を近衛局に送る必要があったんですね(屑)。仮にロドスに連れ帰って本艦を襲撃でもされたら厄介ですし。

 

「…よし、これでようやくスラムを抜けられた!これで安全なはずだ、ミーシャ。」

「ああ。ここからは我々だけで十分だ。サクラ、ウタゲ、君たちの協力に感謝する。」

「はいはーい。今度は奪われないようにしててよね。」

 

「…行っちゃうのね、サクラ。」

「ああ、他にもやるべきことが山盛りだからな。…でも大丈夫、またすぐに会えるさ。今度会う時はロドスの中だ。いいところだから、きっと気に入るさ。それで、鉱石病が良くなったら色んな所に行こうじゃないか。」

「…ええ!私、頑張ってみる。約束よ!」

 

 ミーシャ姉貴を連れて近衛局は離れていきます。これで一安心といったところです。

 

「いや~、一件落着だね。何とかなってよかったよかった。あたしらも帰ろっかサクラ。」

「そうだな。アンブリエル、ロープ。撤収しよう。」

「りょー。今から合流するから待っててー。」

「ボクもすぐそっちに向かうよ。もーほんと疲れたんだから。」

 

 二人と合流したらさっさと帰る…といきたいところですが、まだもう一仕事残っています。いつものフラグ立てですね。狙いはスカルシュレッダーの潜伏場所の発見です。

 

 言い忘れていましたがスカルシュレッダーはまともに戦うとクソ強いです。具体的にはホシグマ姉貴の率いる近衛局の増援を一人で足止めできます(驚愕)。そんなスカルシュレッダーを野放しにしているとどうなるかというと、この後起こる近衛局をレユニオンが占拠するイベントの際、メフィストとファウストに合流するという形で参戦してきます。二人ですらジリ貧だったのにそこにスカルシュレッダーまで加わったらアカンチェン姉貴が氏ぬぅ!というわけなのでここで叩いておかなくてはなりません。

 

 理想としては生け捕りにしたい所さんです。先述したように、フロストノヴァ姉貴の印象をよくするためですね。まあその後なら煮ようが焼こうが勝手にしてください(屑)。

 

 ではフラグ立てですが…いちいちスカルシュレッダーの場所なんて捜索してられません。そこでまたまたロープ姉貴の出番です!

 

「えー、まだボクを働かせようって言うの?サクラってば人遣いが荒いんだからもう…。」

「そう言わないでくれ。こんなこと、ここに慣れてるロープしか頼めないんだから。」

「ボクにしか…えへへ。じゃあ行ってくるよ!先に戻って待っててよね!」

 

 そう言ってロープ姉貴は再びスラムに戻っていきました。長年あそこで暮らしてただけあって慣れたもんですねえ。

 

「サクラ、ロープちゃんに何頼んだの?」

「ん?ああ…。」

「まあ、すぐにわかるさ。」

 

 よし、仕込みは終えました。後は大切な仕事が残っています。改めて、ここにいる2人の意志を確認しておくことです。というのもここから事態はほとんどノンストップですからね。

 

「…なあ、二人とも。」

「んー?」「どしたの?」

「その、今更かもしれないが…本当に私についてきていいのか?ここからは多分、もっと厳しくなる。もし、嫌なら…。」

 

「…え、今更そんなん聞く?」

「もーちょっとウタゲっちー。サクラの教育行き届いてないんじゃないのー?」

 

 お、これは…。

 

「あたしらはさ、自分でこの道を選んだんだよ?今更後悔もなんもないっしょ。」

「そーそー。何不安に思ってんのかはわかんないけどさ―。あたしは今のあたしが一番好きだよ?サクラを義人と定めてから、あたしの人生は変わったんだから。」

「ちょっとサクラ!ボクもおんなじだからね!」

 

 ロープ姉貴!?無線切るの忘れてたあああ!

 

「ボクだって、今の方がいいよ!サクラの役に立ちたいって、心から思えるもん!こんなの、スラムじゃありえなかったんだからね!」

 

「…ま、そーいうことだからさ。ついてくよ、あたしら。だからさ、サクラもあたしらの事、信用して頼っちゃってよ。あんたブリさんばっか頼ってるし。ちょっと妬いちゃうんだけど?」

「あーわかりみ。ウタゲっちとかロープちゃんがあたしの分までやってくれたら楽なんだけどなー!」

 

 何か…あったかい!(感涙)

 

「そうか…そうか!よし、わかった!皆ありがとう!この作戦、私は一人で何とかするつもりだった。だが今は、皆に頼りたい気分だ!」

「ウタゲ!本隊に連絡を入れてくれ!」

「ん、おっけー。何て入れる?」

「ドクター宛てだ。『ここで、決着をつける』と!」

 

――――――――――

 

「何だと…!ミーシャは、奪われたままだと!!!」

 

 スカルシュレッダーは荒れていた。増援を絶ち、完全に包囲したはずの近衛局がミーシャを守れるわけがないと踏んでいたからだ。

 

「Wは!あの女はどうしていたんだ!」

「スカルシュレッダー、それが…」

 

 そこで伝えられたのはありえない真実だった。曰く、突然ロドスの増援が現れたこと。曰く、その増援は紫髪の剣士が指揮を執っていたこと。曰く、奪還に向かった小隊は全滅したこと。

 

「紫髪…!またあいつか!!やはり奴は、あのクズはロドスの人間か!クソ、ロドスのクズどもめ!!」

「落ち着けスカルシュレッダー!まだ終わったわけじゃ…」

「落ち着けだと!?こんな状況で落ち着けるわけがないだろう!!一刻も早くあのクズを八つ裂きにして、ミーシャを助けなければならないんだぞ!?」

 

 なだめる声も無視し、怒り狂う。その怒りを鎮火させたくば、奴の血を浴びるしかないのだろう。そしてその方法は、意外なほど早くもたらされた。

 

「スカルシュレッダー!!朗報だ、奴の場所がわかった!あの紫髪の剣士だ!」

「…!どこだ!奴はどこにいる!?」

 

 一人の兵士が駆け込んできた。彼らにとって、値千金の情報と共に。

 

「地図を…このポイントだ!ここで奴を見たという情報がスラムの住人から手に入った。」

「それは信じられるものか?」

「スラムの連中の中には、誰かを妬んで陥れようとする奴なんてごまんといる。そいつが言うには、高そうな刀を持ってうろついていたのが気に食わなかったそうだ…。それからそそる体をしていたからはっきり覚えているともな。」

 

 怨敵がいる場所がわかった。それだけで今の彼には十分だった。

 

「すぐに動くぞ!近衛局のことは一度放っておく。まずは、奴を殺さなくてはならない!」

 

 そこからの動きは早かった。もともと潜伏に向いていたレユニオン達は体を隠しながらでもすぐに目標地点に到着し、標的を発見することが出来た。紫髪の剣士。最初に会ったときにいた彼女の仲間たちは、今は一緒にいないようだった。そしてそれに対する解釈こそが、運命の分かれ道だった。

 

「いたぞ!奴だ!」

 

 すぐに一部の兵士が飛び出し、剣士を囲む。何も言わないところを見ると、まだ状況が理解できていないようだ。

 

「貴様…ミーシャをどこへやった。」

 

 スカルシュレッダーが一歩前へ出る。言葉だけは理性的だったが、銃口は既に剣士を見据えており、今すぐにでも殺させろとわめくように震えていた。

 

「何だ、あんたか…。思っていたよりは早かったな。」

「…何だと?」

 

「まあいいじゃないかそんなことは。それよりせっかく再会したんだ、話でもしようや。残念ながらアイスティーもアバ茶も用意はないんだけどな。」

「ふざけたことばかり言いやがって…!お前に構っている暇はない!さっさとミーシャの場所を教えろ!」

「そうそれだ。なぜそこまでミーシャに固執する?お前にとってミーシャとは何だ?」

「黙れ!お前には何の関係もない!!」

「そうだな…おそらくは肉親、例えば…兄か弟、とかか?」

「!」

「その感じだと図星らしいな…。それからレユニオンにいることから感染者。ミーシャの身内ならウルサス人だろう。二人ともレユニオンに加入したわけではないというところから見るに、先にお前が感染して放逐されたってところだろうな。レユニオンに大した資金がないことはお前たちの装備からわかる。なら栄養状態もそれほど良くないはずだな。…総合的に考えれば、お前はミーシャ以上にひどい病状のはずだ。」

 

(何を、言っているんだ?)

 

「私たちのところに来い。私たちはロドス。感染者の治療と救済が目的だ…。」

 

 スカルシュレッダーには目の前の女がなぜそこまで自分のことを知っているのかまるで理解できなかった。相手はたった一人で、自分たちの方が圧倒的に有利なはずなのに。言いようのない不安に襲われていたのだ。だが彼を凶行に走らせたのはその不安ではなく、次の一言だった。

 

「それから、ミーシャもうちで治療を受けると約束してくれたよ。きっとよくなる。」

 

 は?ミーシャが、治療を受ける?ロドスに入る?

 

 ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるな!

 

「ふざけるな!鉱石病の治療など、できるはずがない!よくも、よくもよくもよくも!よくもミーシャを騙してくれたな!!」

「おい待て。ミーシャは私たちを信じて…」

「うるさい!知ったような口をきくな!もういい、お前を殺してからミーシャを探すことにする!全員、奴を殺せ!」

 

 剣を、槍を、弓矢を。各々が自分の武装を手に、かの剣士に襲い掛かる。それですべての方が付くはずだった。

 

「!」

 

 レユニオン兵を襲ったのは、彼女の持つ刀ではなかった。

 

 一人は頭に穴を開けられ、鮮血が宙に噴き出した。

 一人は足をかぎ縄に取られ、転んだ背中にナイフが深々と突き刺さった。

 一人は最初の太刀で足を斬られ、返す刀で首をはねられた。

 そして最後の一人は黒い弾のようなものに体を貫かれ、すぐに動かなくなってしまった。

 

「もう一度、言っておく。」

「!」

 

 彼女がゆっくりと口を開く。目からはいつの間にかふざけた雰囲気が消え、冷たい目でガスマスクの奥をにらんでいた。

 

「私たちはロドス。感染者の治療と救済が目的だ。今すぐに武器を捨て、投降しろ。でなければ私たちは、お前たちを斬らなくてはならない。」

 

 その声に呼応するように、どこからかスラムの住人たちが現れた。しかしよく見てみれば彼らの血色は良く、持っている武器も高品質だ。明らかにただの住人ではないことは確かだった。後ろを振り返ることは出来ないが、足音から判断するに囲まれようとしているのだろう。伏兵をしかけ、優位に立とうとしていた自分たちが罠にはめられたのは一目瞭然だった。

 

「…出てこい、お前たち。」

「…いいのか?スカルシュレッダー。」

「ああ。ここから先は、もはや伏兵は意味をなさないからな。」

 

 レユニオンの兵士たちもまた、物陰から姿を現した。いったいどこに隠れていたのか、その数だけで言えばロドスと近衛局を合わせてもまだ足りないほどだった。

 

「姿を見せたってことは、降伏とみていいのか?」

「黙れ。」

 

 返答は言葉の代わりに砲弾で。スカルシュレッダーの構えた銃から、敵を木っ端みじんにせんと砲弾が迫る。だが、それでやられるほどやわな相手ではなかった。

 

 サクラが師匠から教わった剣術は多岐にわたる。正々堂々、真正面から戦う正道。だまし討ちなどの卑怯な手が含まれる邪道。師匠はなぜかその両方に精通しており、サクラは一対一や対複数にも問題なく動けるように仕込まれている。そしてその中には当然、()()()()()()()()()もある。

 

 刀を握る手にアーツを集中。目標をまっすぐ見据え、刀を振るう。あくまでもイメージするのは、()()()ことではなく斬ること。己が腕からアーツが抜け、刃を成すに至ったならば、これ即ち斬れぬものなし。

 

 紫色の雷が斬撃として飛ぶ。そのまま砲弾とかち合い、真っ二つに切り裂いた。当然、砲弾は衝撃で爆発を起こすが、お互いの中間地点でのことだ。放たれた爆音は、この戦いの始まりを告げる号砲となった。

 

「行け!ロドスも近衛局も、皆殺しにしてしまえ!!」

 

 同時にロドスのCEO、アーミヤも声を張り上げる。

 

「皆さん!ご自分の命を最優先に!敵を無力化します!!」

 

 命と命がぶつかり合い、激しく火花を上げる。矢とアーツが戦場を飛び交い、その間を縫うように兵士たちは駆ける。数では勝るレユニオンが優勢になる、そのはずだった。

 

「ダメだ、スカルシュレッダー!このままでは押し負ける!」

 

 ロドスだ。厳しい訓練を積み、幾多もの場数を踏んだ近衛局ではなく、ロドスのオペレーターたちが戦場を支配していた。いや、正確にはオペレーターたちではない。

 

「あいつだ…!Wが言っていた、あの男のせいだ!」

 

 中心地から離れた場所で指揮を執っているロドスのドクター。彼こそがこの戦場の支配者であり、あらゆる点で勝敗を決める存在だった。レユニオンがこれまで快進撃を続けてこられたのは奇襲と待ち伏せを主とするゲリラ戦を展開していたからだ。いかに優れた指し手であろうと、駒が突然消えたり現れたりすれば困惑は免れない。だが今はどうだ?レユニオン達はサクラという餌に食いつき、深海の底から引きずり出された。打ち上げられた魚にできることは、ただ()()()()のを待つのみである。

 

「ドクター…奴さえ殺せば…!」

「スカルシュレッダー?まさか、お前…。」

「ミーシャを頼むぞ。俺は頭蓋を砕く者(スカルシュレッダー)、奴らの脳みそを必ず破壊して見せる。必ず勝て、いいな!?」

「…ああ!お前のことは決して忘れない!スカルシュレッダー!スカルシュレッダー万歳!!」

「スカルシュレッダー万歳!スカルシュレッダー万歳!!」

 

 レユニオンの中に、再び狂気が舞い戻る。レユニオンの未来を、感染者の未来を。その犠牲によって開かんとする者、スカルシュレッダーよ。その名を叫び、賛美する叫びが戦場にこだまする。その狂乱は味方に勇気を、敵に対しては恐れを与えた。だが、それを。許せない者が一人、この戦場にはいた。

 

「スカルシュレッダー万歳!スカ…!があッ…!」

「…何が、万歳だ。」

「!」

 

 突然、すぐ近くの味方の叫びが途切れたことに驚き、スカルシュレッダーは振り向いた。そこには、やはり。ああ、やはり彼女がいた。紫色の長髪。古風な刀と、それに見合わない現代的な服装。…サクラはその真っ赤な瞳の奥に、静かに怒りの炎を燃やしていた。

 

「お前…お前はまた…!」

「何が、万歳だ…!死にゆく人がいるのに、それがおめでたいことなわけがあるか!」

「お前は殺す!あいつを殺す前に、必ず殺す!」

 

 叫びながら射撃を行うスカルシュレッダーだったが、サクラはそれを最低限の動きで躱す。仮に彼の弾倉に無限に弾が補充されるとしても、射撃は意味をなさないだろう。スカルシュレッダーもそれを理解し、接近戦用に武器を持ち直す。銃口の先についた刃でサクラの首筋を狙う。

 

 キィン!

 

「武器を、下ろせ。」

「黙れ!お前を殺して、ドクターとかいう奴も必ず殺してやる!勝つのは俺たちレユニオンだ!」

 

 サクラはそれを刀で受け止め、鍔迫り合いが始まる。得物はスカルシュレッダーの方がはるかに軽く小さいが、彼にはウルサス人のパワーがある。それでもなお、サクラの刀を押し込むことは叶わなかった。

 

「…!さっきから黙って聞いていれば、殺す殺すと喚きやがって!」

「!! うぐぁ!!」

 

 サクラの蹴りがスカルシュレッダーの脇腹に突き刺さる。リーベリのそれとは思えないほどの力で吹き飛ばされ、地面を転げまわる。

 

「ぐ、くそ…!お前らさえ…お前らさえ殺せれば…!」

「私たちを殺せば、それで全部が上手くいくとでも思ってるのか!?もし本当にそうなら!もし本当に、そんな元凶がいるのなら!私たちがこんなに苦しむことなんてないだろう!?」

「黙れ!うるさいうるさいうるさい!!大人しく死ね!!」

 

 再び弾丸を放つが、やはり命中しない。弾丸ははるか遠くまで飛んでいき、戦場から遠く離れた位置で爆発した。

 

「お前の話は、もういい…。後で聞かせてもらうことにする。」

 

 サクラが剣を一度鞘に納め、居合の構えをとる。その瞬間に周囲の空気は凍り、肌を刺すような緊張感に包まれる。体は左肩を突き出すような態勢で、半分しか見えないようにされている隙の無い姿勢だ。

 

「これから見せるのは、師匠に教わった奥義…その一つだ。」

「…そんなことでビビると思ったのか!お前は必ず俺が」

「動くな。そうしないと、変なところが斬れて死ぬことになる。」

「…!?」

 

 ただの脅しの言葉なのに、そこには妙な確信があった。動けば、死ぬ。目の前の女の言っていることは確かなのだと、脳よりも先に心が理解した。

 

「行くぞ。」

「!」

 

 気づいたときにはもう遅かった。目の前から女は消えており、反射的に見た足元で、彼女は腰をかがめた低姿勢で抜刀に入っていた。

 

―――――――いい?桃、しずか。

 

 思い起こされるのは師匠との修行の日々。師匠は刀の手入れに始まり、基本から応用、戦う時の心構えまで、彼女の持つすべてを注ぎ込んでくれた。そしてある日、「今日はとっておき」という前置きから、その技は伝授された。

 

 刀にアーツを纏わせ、切れ味を格段に上昇させる。そして敵の血を吸い、己が力とする。武者の究極、刀の極致。だがその代償は重く、抜いているだけで術者を蝕む。

 

 故に、神速。故に、居合。

 

「特にしずか!あんたは獅子王があるでしょ。その刀は、私たちの種族的にヤバい代物なの。あんたは絶対にこれを習得してもらうわよ。」

「桃の方は…まあ、できないことはないかなって感じね。でも心配しないで、あなたにもピッタリのものがあるから…。それに、あなたならもっと上手く扱えるかもしれないし!」

 

 抜きはらったら、斬れ。血を浴びるまでは、止まるな。

 

「それじゃ、教えるわよ。まず刀にアーツを…」

 

 アーツを集中、姿勢をかがめて敵を見据える。

 

 抜いた刀に、妖しく光が宿れば合格。

 

 鞘からまばゆい光が放たれる。真白なそれは、どこか日の光にも似ていた。

 

「刀が抜かれたことに気づく前に。獲物が斬られたことを理解する前に。」

 

 ただ剣士だけが知っていればそれでいい。自分が何を斬ったのか、それを理解していれば十分。

 

 その剣、名を落地斬。後に続くは剣士の誓い。ある者は主への忠誠のため、誠と号す。またある者は剣の道を極めんとするがため、求道と号す。

 

 今、ここに再び、新たな名がつけられた。

 

「落地斬…曙光!!」

 

 全身のばねを使い、斬り上げる。力が引き抜かれていくような感覚と共に鞘走った刀は、スカルシュレッダーの銃を豆腐のように抵抗なく斬り、勢いのままガスマスクをも切り裂いた。もしサクラがその気だったなら、何の抵抗もなく人体を真っ二つにできただろう。現に、スカルシュレッダーは斬撃の余波…ほとばしるアーツの奔流により、完全に意識を奪われていた。

 

「う、ぐうう!」

 

 刀を鞘に収めた時、体の力がごっそりと抜けたのを感じる。しかしこれは当然のことだ。落地斬は敵の血を吸うことで完成する剣技。不完全な状態で終わった技は、次に術者に牙をむく。

 

「ス、スカルシュレッダー!」

「こいつだ、こいつがやったんだ!殺せ!」

 

 戦場でそれはあまりにも危険で、あまりにも稚拙だ。動けなくなった者など、ただ死を待つのみだからだ。だから、今まで使わなかった。一人で戦うつもりだったから。だが今はもう、違う。

 

 敵の陣形が崩れ、間を金色が駆ける。その刀は妖しい紫に染まり、返り血を吸っててらてらと輝いていた。――ある者は、友との未来を己が手で拓かんとするがため、突破と号す。

 

「ほーんと無茶苦茶するよねー。『大将を討ち取りに行くから後は頼んだ』なんてさ!」

「サクラさん!大丈夫ですか!?」

 

「…ああ、問題ない。」

 

 紫の剣士は、ようやく笑みを取り戻した。

 

「信じていたからな!」

 

 

 

 




 次回はミーシャ姉貴とスカルシュレッダーの邂逅を書かなきゃいけないと思いつつもロープ姉貴との出会いも書きたいしフロストノヴァ姉貴も早く出したいしでこれがなかなか難しいねんな…。

次回作、どっちがいいんすか?

  • 強面トレーナー、TSする。
  • パワプロRTA北雪高校モテモテチャート
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