アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
足元が崩れ、体が重力に引っ張られる。なぜロープの縄を掴まなかったのかは…自分でも、よくわからない。ただ、なんとなく…この地面の下に、なにかとてつもなく貴重な出会いがある気がした。極東の伝説にある、埋蔵金でも見つかるのだろうか?でもロドスの製造所で大量に作っているところを見たことがあるから、大した価値はないだろうな。そんなくだらないことを考えながら、降ってくる瓦礫に目をやった。
超集中。ゾーン。
私のあの「ゆっくりな世界」は、そういう風に呼ばれているらしい。師匠との立ち合いの際に初めて出たそれは、今では自由に出し入れが可能になっていた。目にぐうっと血液が集まる感覚ののち、崩落の音は消え、羽根がひらひらと舞い落ちるように、私の頭より大きな瓦礫が無数に降ってくる。私はともかく、一緒に落ちたドクターが、これを喰らったら死ぬだろう。まあ、そんなことはさせないが。
刀を振り、瓦礫を粉々に粉砕する。師匠にどんな体制からでも刀が使えるようにしごかれた私なら、足の踏ん張りがきかない今、斬ることはできなくとも、砕くことくらいはできる。そうやって上からの脅威を排除したら、次は下だ。落下の衝撃にドクターの体は耐えられない。そう思ったが、今の自分がなんだか暖かくてふわふわした感覚なのに気づき、考えるのをやめた。きっとあのブレイズという人が、空気を温めて膨張させているのだろう。自分の雷のアーツは便利だなあと思っていたが、熱も悪くないな、と思った。
落下した距離からは考えられないほど穏やかな着地をしたのち、すぐに超集中を解除し、ドクターの姿を探す。あの不審者としか言えない格好をした人のことを、私は理由もなく信頼していた。ドクターの指揮は正確だし、私の意見を積極的に取り入れてくれるところもいい。それから、全体の指揮をドクターに任せれば、私は自分に集中できるというところを、私は特に気に入っていた。
私たちが落ちてきた穴は倒壊したビルにふさがれたのか、明かりはほんの微かにしか届かなかった。指先に小さな雷を作り、辺りを照らす。紫色の目に優しくない光が満ちたが、贅沢は言っていられない。何か…地下に部屋でも作る予定だったのか、かなり大きな空間が出来ており、探すのには苦労するかと思われた。しかし、幸いにもドクターは私のすぐそばに落ちたようで、簡単に見つけられた。すぐに体を確認し、目立った外傷はないと分かった。ひとまずは一安心だ。
「ドクター。ドクター、起きてくれ。」
「…う、うう……?サクラ、か?」
「ああ。どこも痛むところはないか?瓦礫は全て砕いたはずだが、口に入ったりしていないか?」
「…大丈夫だ。このバイザーのおかげかもしれないな。」
「そうか、不審者ファッションもたまには役に立つんだな。」
ドクターはすぐに立ち上がり、腕を回してみたり足を上げ下げしたりしていたが、どこにも異常はないらしい。二人で話し合った結果、すぐに地上に戻る手段を探そうということになった。一応レユニオンが一緒に落ちてきて、なおかつピンピンしている可能性を考え、ドクターのそばを離れないように行動する。どこかから登れないかとウロウロしているとき、私たちは
病的なほどに白い肌。長く、元の美しかったであろう面影が寂しさを起こさせる銀の髪。そして、長い二つの耳。見間違えるはずもなかった。先ほどまで私たちを苦しめた、『フロストノヴァ』が、そこに眠っていた。
その姿を認めた時、私はなんのためらいもなく刀を抜いた。指先の紫電からあふれる光が『羅刹』の白い身を染め、てらりてらりと輝いていた。彼女が生きていようが死んでいようが、やるべきことは変わらない。彼女には、死んでいてもらうべきなのだから。
「…覚ませ!」
「目を覚ませ!」
「…もう目は覚めている。…お前は、ロドスの指揮官?なぜ私を殺さなかった?」
「…それに、お前は。サクラ…だったな。お前なら、簡単にできたはずだろう。なぜやらなかった?そんなに自信があったのか?」
……私は。なぜか、彼女を起こすドクターをぼうっと見つめていた。彼女が私に、『なぜ殺さなかった?』と聞いてくる。
「…わからない。」
「何?」
「私だって、何で殺さなかったのかわからないんだ。命を奪う事なんて、もう慣れっこのはずなのに。理性では、殺すべきだとわかっているのに。ドクターにそう言われたからかもしれないし…、私の『本能』が、殺さないように止めたのかもしれない。」
「……そうか。」
「ならば、私は今お前たちを殺さないことで、その借りを返したことにしよう。出口は、見つからなかったようだしな。」
奇妙な時間だった。私たちは敵同士のはずなのに、そこには不思議な穏やかさがあった。私と、ドクター。これはいい。上司と部下として、普通の光景だろう。だが、そこに異物…『彼女』が加わっているはずなのに、妙にしっくりくる感覚があった。空の花瓶に花が生けられた状態とでも例えるべきか、初めからそうであったような…いや、そうあるのが理想的だ、という感じだろうか。
「ところで、その…君が寝言で言っていた『父さん』というのは何なんだ?」
「………。」
しばしの沈黙。その後、彼女はゆっくりと、ドクターの問いに答えた。
「私が父と呼ぶのは、かつてウルサスの英雄と称えられたボジョカスティという男だ。本当の両親は、とうの昔に死んでいる。男はとある女を、矢からその身でもって守り、その女は私を胸に抱き、二本目の矢を背中で受けた。」
「…それを、見たのか?」
「ああ。もっとも当時の私に、それは理解できなかったがな。」
――――――――
…やはり、思い起こされてしまった。私にもかつて、両親がいたことが。私の父は、おそらく戦場で死んだのだろう。母は、私がこの目で看取った。いや、正確に言えば看取ったわけではないのかもしれない。まだ未熟だった私の脳みそは、あまりに多くの出来事が起きすぎて、情報を処理しきれなかったのだと思う。母を襲っていた男たちの首を斬り、血まみれになった母を、ぼやける視界の中で捉えていた。痛かっただろうに。苦しかっただろうに。母は、私を両腕で抱きしめ、子守唄を歌ってくれた。暖かい腕に抱かれ、すっかり安心した私は、そのまま眠りについた。それが、最後だとも知らずに。
目が覚めると、母の目は光を失い、体は冷たくなっていた。私を抱く腕は既に固まってしまって、私はそこから抜け出すことが出来なかったし、したくもなかった。ずっと抱かれていたかった。たとえ冷たくても。たとえ硬くても。そこは確かに、母の腕の中なのだから。…しかしどうしても、子守唄が頭を離れなかった。子守唄を歌う前に、いつも母がしてくれた話が、頭を離れなかった。
「いい、桃?子どもはね、ぐっすり寝るのも大切な仕事なのよ。ぐっすり眠らないと、明日を元気に生きられないでしょう?明日を生きるために、今日を眠るの。明日を生きるために、私は子守唄を歌うのよ。」
明日を、生きる。そのために、歌う。
生きる。生きよう。涙をこらえ、硬直した腕を無理やり振りほどいた。あの時の気持ちは、今でも忘れられない。母の遺体を樹の下に埋め、男たちの死体を切り裂こうとしてやめた。私にとって、それは大事なことではなかったからだ。私はひとりぼっちになって、それでも生にしがみついた。
そうして私は孤児となり、父の遺した刀で脱走兵を殺し、母の遺した櫛に語り掛け涙をこらえた。そのころからだっただろうか?頭の中に響く、声に気が付いたのは。きっと最初の声は、私の初めての殺しの時だ。山から野犬が降りてきて皆怖がっていると駄菓子屋で聞いたとき、私はなぜか「チャンスだ」と思った。母が疲れて眠っている時を見計らって、武器を持って山に入った。野犬を殺し、その肉を解体し、次の獲物を待った。…考えてみれば、狂気的な話だ。10にも満たない子供が、いくら害獣とはいえ自発的に殺しを行おうとは。
しかしそれがなければ、あの男たちに立ち向かえなかったかもしれない。隙だらけの首筋に刃を突き立て、その命を奪うことを躊躇したかもしれない。…そう考えたら、あの「チャンスだ」という声は、私の助けになっていたのかもしれない。それからも声は度々聞こえた。頭の中に、まったく知らないはずの罠の作り方が浮かんだ。その罠でリスを捕まえ、私はご飯にありつくことが出来た。考えたこともない集団戦の戦法が聞こえた。そのおかげで私を狙った襲撃を退け、敵の装備を売っていくらかの金を手に入れられた。「声」の力を借りながら私は生き延び、そして…「ウタゲ」に、出会えた。
――――――――
「おい、聞いているのか?」
「サクラ、君の話だ。」
はっと記憶が過去から現在に帰ってきた。彼女の話はぼうっとして聞いていないはずなのに、なぜか頭に入っていた。彼女が劣悪な環境から、ボジョカスティによって救い出された話は。
「ああ、すまない。少し疲れているみたいだ。」
「…本当にお前は、私の前に立ちふさがったサクラか?私の氷を砕いてみせたあの戦士とお前とが、どうしても結びつかないんだがな。」
「む、失礼だな。仮にお前が悪心を抱いていたら、すぐに首を落とせるくらいの準備はある。極東の武士の娘として、常在戦場は基本だからな。」
「…フ、ならいいがな。それよりも、私のコートの左ポケットに、キャンディが入っているはずだ。一つ取ってくれ。…そうだな、お前たちも興味があれば、一つづつ取るといい。仲直りの印としようじゃないか。」
「なら、サクラ。私の分も取ってくれ。君はきっと、食べるだろう?」
「…うるさいな、私はもらえるものは病気以外何でももらうぞ。…今のはあまり笑えないな。」
そう言いながらキャンディを3つ取る。敵の食事など、毒を疑ってしかるべきとは思うが、そんなまどろっこしいことをするほど、彼女は殺し方に困ってはいないだろう。それに、何故だか信用してもいいと思えたのだ。
「とったぞ。どうすればいい?」
「私の口に入れてくれないか。悪いが今は、首から下を動かせそうにない。」
「…なるほど。確かにこれは、ドクターにはやらせられないな。」
私は素手で刀を握っているから、彼女の口や舌に触れて、雑菌を移さないように気を付ける必要があった。今日はまだ血を浴びていないからさほど汚れてはいないはずだが。彼女の舌は真っ赤と言えるほどの色ではなかったが、白い肌によく映えた。
彼女の口に飴玉が入り、気道をふさいだりしていないことを確認してから、私たちは自分の分の包み紙を剥いた。真っ赤な色をしたこれはイチゴ味だろうか?リンゴ、あるいはサクランボかもしれない。ドクターと一緒に、何の気なしに放り込んだそれは、口の中を甘味という幸せで満たし…てはくれなかった。辛い。とてつもなく辛い…というほどでもなく、ただ辛い。ドクターの方を見れば、素顔は見えないものの、なんだか雨に打たれた仔犬のような表情をしていた。
「ク、フフ…。その表情。お前たち二人とも、悲しげな顔をしているな。」
「おい!何だこれは、宣戦布告か!?」
「フ、フフフ…いやすまない。使い古した手でな、もう誰も引っかかってくれないものだから、つい試してみたくなった。フフ…久しぶりに、いいものが見られた。」
「はぁ、何だってこんなものを…。そんなに辛いのが好きなのか?」
私の何気ない問いに、彼女の表情に陰りが見えた。何か、よくないことだったのだろうか?
「…私の、冷たさが原因だ。」
「私は鉱石病の影響か、私の体温はごく低温どころか、少しでも皮膚に触れれば即座に凍傷を負うほどだ。私の体は外部からの熱を受け止められず、通り過ぎて行ってしまう。だからはじめ、熱い飲み物を好んだ。喉を通り過ぎるまでは、熱を感じていられるからな。だが、内臓がその熱を受け止めきれなくなってからは…このキャンディだけが、私の楽しみになった。」
「ドクター、そんなことがあり得るのか?」
「少なくとも、私の読んだ学術書にはそんな症例はなかった…。だが、鉱石病が原因ならば、我々の領分なはずだ。」
「フロストノヴァ、私たちは…」
「…やめてくれ。ええと…何と呼べばいい?」
「他のオペレーターたちと同じように。」
「…そうか、ならば『ドクター』。私は、戦士だ。ボジョカスティに育てられ、兄弟たちのためにこの力を振るう戦士だ。確かに、お前たちの信念は素晴らしい。だが、信じられないんだ。一度は信じたものを裏切って別のものを信じるなど、私にはできないことだ。」
「…だが。」
その時私は、確信した。こいつは、私だと。目の前に横たわる白うさぎは、私が辿っていたかもしれない未来なのだと。ひとりぼっちで生きていたころから、友を得て、師を得て、生きる意味を得た。一度得たものを、もう失いたくないだけなのだと。それがわかってから、私はさっきスノーデビル小隊を殺さなかったことに、心底安堵した。もし私が、目の前でウタゲやアンブリエルを殺されたら。そう思うと、あの時も「声」に従ってよかったと心から思った。『殺すな』という声に。きっと私の良心かなにかなのだろう。
「…聞こえるか、この音が。」
気づけば、上からパラパラと小さな砂粒が落ちてきていた。それだけでなく、何かをひっくり返すような音も。これは、きっと…。
「どうやら、兄弟たちが私たちを掘り起こそうとしているらしい。私の指も…ああ、もう動く。」
「…ありがとう。ドクター、サクラ。」
「私たちは、何も感謝されるようなことはしていない。」
「いや、暇つぶしに付き合ってくれただろう。本当に、感謝する。…穏やかで、幸せな時間だった。」
12時の鐘は近いらしい。魔法は解け、穏やかな時間に別れを告げる時が来たようだ。しかし、まだ。まだ私は、まるで話たりない。
「…どうだ、賭けをしないか?もし穴から最初に顔を出したのがロドスなら、私はお前たち二人と、ロドスの者たちを一瞬で殺す。もし顔を出したのが姉弟たちなら…お前たち二人を殺す。」
「…賭けが成立していないようだが。」
「フフ…どうだ?賭けるか?」
「フロストノヴァ。」
「…どうした、サクラ?きっとこれが最後になる。穏やかに言葉を交わせる、最後の機会だ。悔いのない言葉を、選ぶがいい。」
悔いのない言葉。最後に、ふさわしい言葉。別れの挨拶?感謝?懇願?……違う。私たちにふさわしいのは、そんなものではない。そうだろう?ウタゲ。アンブリエル。ロープ。
「…最近のトレンド、どう思う?」
「………は?」
「……え?」
あれ、おかしいぞ。ウタゲはこれを言っておけば大丈夫と言っていたのに。アンブリエルと会ったときもそんな話をしてたはずだぞ。
「…トレンド?なんだ、それは。」
「えーっと…何か、服の事らしいんだが。そう!例えば私が今着てるこれだ!これはウタゲっていう私の大親友に着せてもらったんだが、これが今のトレンドらしい!それをロドスが戦闘服に改造してくれたんだ。聞くところによると、何かこの色の組み合わせがエモいとかなんとか…。」
私の乏しい知識で必死に言葉を紡ぐ。こんなことなら、もっとまじめにウタゲの話を聞いておくんだった。昔からそうだった。彼女が化粧をしている隣で、私は顔を洗った後登校しようとして、師匠とウタゲの両方から説教をくらい、大遅刻したこともあった。
「…フ、フフ……あはははは!」
突然ドクターが大笑いし始めた。何がそんなにおかしいというのか。
「サクラ。君はつまり、こういうことか?ロドスとかレユニオンとか関係なく。ただ単に、彼女と仲良くなりたいと?同年代の女性同士がするような話を、ただ彼女としたいと?」
「お、おお!さすがドクターだ!そうそう、そういうことなんだ!なあフロストノヴァ、クレープを食べたことはあるか?ロドスの中でもあれは特に美味いものだぞ!それに、映画っていうのも面白くてな!親友のアンブリエルがすごく詳しいから、おススメを教えてもらおう!それから、私と一緒にファッションを学ぼう!ウタゲはかわいい女の子が好きだから、きっと気に入ると思うんだ!それからロープっていう子もいてな!私はもう妹が出来たようで可愛くて可愛くて…きっと仲良くなれる!」
「…。」
そこまで話したとき、ひときわ大きな音がしたかと思うと、さっと光が差してきた。
「ドクター!!」
「姐さん!!」
「サクラ!!」
穴からはアーミヤ、スノーデビル小隊の一人…それから、ウタゲとロープが顔を出していた。普通なら嬉しくなるものだろうが、今は悔しくて仕方がなかった。
「ああ!まだ伝えたいことがたくさんあるのに!」
「待っててくれ姐さん!今、引き上げるからな!」
「サクラ!今縄を下ろすから掴まって!」
もうすぐ、引き上げられるだろう。だがその前に。どうしても、伝えておかなくてはならない。
「フロストノヴァ。やっぱり私は、お前のことを嫌いになれない。だから、約束しろ。もし私たちがお前に勝ったら…その時は、ロドスに来い。そして、私たちの友達になれ。」
「私からも頼もう。もう君と、戦いたくはない。」
ロープの縄を掴み、ゆっくり上へと引き上げられる。フロストノヴァも同様に、スノーデビル小隊に引き上げられていく。お互いの間に言葉はなかった。語るべきことは語りつくしたからだ。
「姐さん!よかった、無事だったか!」
「ああ、問題ない。…お前たちは、ロドスと交戦しなかったのか。」
「ああ。なんせ、お互いそれどころじゃなかったから…。」
彼女が「兄弟たち」と言った彼らのもとに、暖かく迎えられていく。彼女は熱を感じられないと言っていたが、そこには確かに温度があった。誰も凍えることのない、暖かさがあった。
「サクラ!どこも怪我してない!?何で早くボクのかぎ縄を掴んでくれなかったの!?」
「…悪かったな、ロープ。それからウタゲも。」
「んーまあ、信じてって言われたからよかったようなもののさー。ロープちゃんほんとに気の毒なレベルだったんだからね。ちゃんと埋め合わせしとくよーに。」
「ドクター!ご無事ですか?」
「大丈夫だ、アーミヤ。むしろ、楽しい時間だった。」
私にも、ドクターにも、迎えてくれる人がいた。今、この場所においては、もう誰もひとりぼっちではないのだ。誰も、孤独に凍える必要なんてなかったのだ。
「フロストノヴァ、さん。」
「…ロドスの子ウサギ。どうやら私たちは、この場所において敵ではないらしいな。だが我々にも任務がある。ここは退くが、次に会ったときは敵同士だ。覚悟を決めておけ。」
「…そんな。ロドスには、皆さんを受け入れる準備が…」
「…フッ。それは、そこのサムライが言っていた。『もし私たちがお前に勝てたら、私たちの仲間になれ』とな。…出来るものなら、やってみるがいい。」
「…そうだ、それからそこのキツネ。」
「何だ?これは…クリーム?」
フロストノヴァがフロストリーフに小さな容器を投げてよこした。それは乳白色の、ドロッとした何かを湛えていた。
「私が配合した薬だ。少なくとも、凍傷の痛みは消えるだろう。お前の強さに敬意を表し、それを渡しておきたかった。」
「…感謝する。」
「それではさらばだ。ロドスの戦士たちよ。…悪くない時間だった。できれば、もう会いたくはないものだな。」
ゆっくりと去っていくフロストノヴァとスノーデビル小隊。だが、最後に、どうしても伝えておきたくて、勝手に大声が口をついて飛び出した。
「…やっぱりお前はいい奴だ、フロストノヴァ!ますますお前が欲しくなった!」
「え、ちょっとサクラ何言ってんの?んなプロポーズみたいな。」
「忘れるな!次に会ったら、どんな手を使ってでもお前に勝つ!そして、お前も…スノーデビル小隊も!ロドスに入ってもらうからな!!!」
その言葉が、彼らに届いたのかはわからない。だが、去っていく中の一人が、手に持った酒瓶を掲げたのがわかった。こちらに少しだけ振り向いて…そのうち、見えなくなった。
「…サクラ。あの中で、何があったの?」
ロープがこちらを心配そうに見つめながら問いかける。こいつも本当に優しい奴だ。
「…絶対に、勝つぞ。フロストノヴァも、スノーデビル小隊も。
「…あーあ。こりゃもう話聞かない奴だよロープちゃん。あたしたちも、それに付き合わされるっぽいね。」
「…まあ、いいよ。ボクも役に立てるなら、何だってさ。戦うのはガラじゃないけど、背負って逃げるくらいならボクにもできるだろうし!」
私がやっていることは、愚かなことなのかもしれない。あまりにも強大な敵を相手にしておきながら、殺さないままに勝とうなどと。その上、それに大切な友達を付き合わせようなどと。だが、私の心に曇りがない以上、それできっと正解なのだ。
「…はい、こちらアーミヤです。…スワイヤーさん!?龍門が…!?わかりました、すぐに向かいます!」
「皆さん、すぐに次の任務です!龍門が狙われています!急いで、グッドガイ号に!!」
…まずは、目の前の雑事を片付けるとしよう。そう遠くないうちに再会するという確信のある、彼女との戦いのために。私たちに、止まっている暇はない。
「皆さん、準備はいいですか?発進します!」
目の前に着陸した飛行装置に乗り込み、窓の外を流れる景色を見つめる。ぼんやりとした目ではなく、決意を秘めた瞳で。
(まずは、あのアーツをどう封じるか…。)
氷漬けになった地面を見つめながら、私の思考は、遥か未来を見つめていた。すべては、
次回はメフィスト&ファウストわからせRTAですね。フロストノヴァに勝つという誓いを固めたサクラの勇姿を乞うご期待。
次回作、どっちがいいんすか?
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強面トレーナー、TSする。
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パワプロRTA北雪高校モテモテチャート