アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
絆が紡いだRTA、第27部はーじまーるよー!
前回、空飛ぶ糞喰漢ことヒョウバクバチのミサイルから仲間を防衛したところからですね。いやあ、アンブリエル姉貴からたまたま銃をもらっていなかったら刀で迎撃しなくてはならないところでした。当然あの空飛ぶ斬撃を使う羽目になるのですが、あれめちゃくちゃ燃費が悪いんであんまり使いたくないんですよね。まあサクラは領主型じゃないっぽいし多少はね?
あ、そういえばあの後いろいろ質問されたのは特に重要な部分もないのでカットしよう!!(迫真)その後、少しだけ休憩を取ってから合流しようという流れになり、現在は腰を下ろして小休憩中です。RTA中にそんなことしてる暇あるのかと聞かれそうですが、私もあるものを待っているため大丈夫です。それが来るまでなーんにもやることありません。
今重要なのはこっからほんへへの軌道修正です!皆さんもお気づきのことかと思いますが、実はこのゲーム、RTAにまったく向いておりません(問題発言)。というのも原作の展開をなぞっていく都合上、オリジナルオペレーターのレギュレーションだと、日程とかいじりようがないんですよね。ケルシーやアーミヤといったロドスの重要人物になって操作するいわゆる憑依レギュだとその限りではありませんが。つまりどういう事かというと、短縮ポイントがほとんどありません。よく言えば初心者向け、悪く言えばつまらないRTAになります。
そして数パート前で述べたように、私は今回貴重な短縮ポイントでガバをやらかしております。メフィスト札害の失敗ですね。先ほどからメイン敵になりつつあるこの特殊感染者たちですが、こいつらは全員メフィストのアーツによって生み出されています。そのためメフィストさえ頃しておけばこいつらは全員いなくなり、平和そのものの龍門にてフロストノヴァ姉貴と雌雄を決することが出来たというわけです。まあその場合、ファウストが主人公をひたすら付け狙うストーカーと化すので、どっちから先に始末するかはお好みです。
あ、もろちん二人とも懐柔してロドス入りさせることも不可能ではありません。ただその場合、スカウトすべきなのはメフィストになるのが厄介なところです。あのホモガキは皆さんご存じの通りかなり歪んでしまっています。ファウストの方はメフィストが行くならととりあえず納得してくれるから楽なんですがねえ。あの歪みを矯正しつつ、正しい心を覚えてもらって…ってやってたらかなりの時間を要します。このRTAはフロストノヴァ姉貴の生存を目的にしてるので、その片手間に行おうとしたら大ロス確定です!よって、このRTAでは原作通りの結末を辿ってもらうとしましょう。フロストノヴァ姉貴戦以降はもう知ったこっちゃないからね!
『サ、サクラ……サクラ……』
むっ!これは…ロープ姉貴じゃな?
「ロープか?どうした、何かあったのか?」
『あ、あのね…なんか、変な黒い奴らが……す、スラムにいて……』
なんか声が震えててわかりにくいですが、『黒い奴ら』というワードを引き出せました!これで今の状況を把握できます。
『そ、それで、それで、すっごい、血まみれで…と、とにかくこっち来て。おねがい…!』
「血まみれ!?何があったんだロープ!?お前は大丈夫なのか!?」
「サクラちゃん落ち着いて。もう通信切れちゃってるよ。」
「しかし!ロープが危険かもしれないんだ!」
うーむ、ここでサクラの扱いにくいところが出ましたね。情に厚いのはいいことですが、そのせいで暴走することがあります。
「とりあえずさー、あたしらだけでも行った方がいいんじゃない?ブレイズ姐さんはそろそろ小隊に戻らないと、ファイアーマンの胃に穴開けそうだし。ドクターは言わずもがなって感じだけど。だからさ、ほらサクラ。ブリさん誘って行っちゃお。」
ここでウタゲ姉貴の迫真のフォローが光る!戦闘力以外にもこういうところを評価してたんですよね私は!
「…わかった。指揮官としては止めなくてはならないのかもしれないが、君たちの熱意は止められないだろう。だが、危なくなったらすぐに連絡してくれ。」
「……ドクターがそういうならしょうがないか。それじゃ、とりあえずあたしたちは戻ってよう!とにかく、ケガだけはしないようにしてね!」
Foo!なんかいい感じに話がまとまっていいゾ^~コレ。やっぱ…ウタゲ姉貴のコミュ力を…最高やな!
「…よし、ならまずはアンブリエルと合流しよう。スラムに行くなら、何があるかわからないからな。」
「おっけー。そんじゃ、連絡入れてサクッと移動しよっか。」
―――――――――
「……ふぅー。ついこないだまでここにいたはずなのに、なんだか遠い昔のことみたいだなあ。」
ボクはサクラにお願いされて、ロドスの偵察任務の合間にスラム街へやってきていた。サクラが言うには、スノーデビル小隊っていうめちゃくちゃ強い奴らがここから来るんじゃないかってことで、それをいち早く察知するためにボクをここによこしたってコトらしい。面倒だしお給料もでない仕事だったけど、サクラがボクのことを頼りにしてくれたってのが嬉しいからまあいいかって感じ。それに、ここはボクの庭ってレベルに知り尽くした場所。そんなに大変にはならないだろうって思ってたし、ボクには秘策があった。
「ふっふーん。地獄の沙汰も金次第ってねー。」
ボクの秘策。それは、「スラムの住人にお金を握らせて情報を聞き出す」こと。ウタゲやアンブリエルに話したらその程度?って思うかもだけど、これが効果覿面なんだよね。なんせ、スラムには結構顔なじみも多いし、お金が絶対の価値観なここだと買った情報は信用できる。役に立つ情報を売ることが出来れば、次もその次もとリピーターになってもらえるかもだからだ。
「さて、それじゃひとまず…『卸屋』のところだよね。」
ボクらスラムの子供にできる仕事は多くない。男の子なら源石を扱う危険な力仕事、女の子ならお店でお客さんを取るっていう仕事くらい。ボクだって女の子だし、そういうスカウトを受けたことだって一度や二度じゃないけど……病気になってお客さんを取れなくなった子のことを考えると、そんな気にはなれなかった。
だからケチな盗みをやってたわけなんだけど、単純にお金を盗むんじゃなくて高価なアクセサリーなんかを盗んだ場合が問題だ。そのまま持ってても意味ないし、かといって普通に店に売りにいけばすぐ捕まっちゃう。だから、ボクたちはまず『卸屋』に紹介される。その人のとこに盗品を持っていけばいくらかのお金にしてくれるってわけだ。もっとも、ほとんどの売り上げを取られてたんじゃないかと思うけど。それでもスラムの中では結構デカい顔できるし、裏に通じてて情報網も多い。ボクが会いに行って襲われないかが心配だけど、堅気に手を出したら『鼠王』が黙ってないだろう。そもそも、サクラやウタゲに鍛えられてボクもだいぶ強くなってるし!
「さーてさて、今のボク見てどんな顔するかな~っと…」
ボクは何も考えず、ごく普通に卸屋の隠れ家のドアを開ける。ここは飲み屋のふりをしてるけど、立派な犯罪者の巣だ。もっとも、スラムにはそうじゃないところの方が珍しいんだけど…。
「……ヒッ!?」
でも。こんなんじゃなかった。
「な、なにこれ……血!?」
おかしい。ボクの中で警戒心がメチャクチャに反応して、心臓がバクバクして痛い。こうじゃない。あの人はクズだし犯罪者だけど、こんな……
「卸屋……!?」
ドアを開けた後、その裏側に。卸屋がものすごく恐ろしい何かを見たような目で死んでいた。
「……。」
ボクは本当に怖かったけど、震える手で死体に触れる。ひょっとしたら、これをやったのがレユニオンかもしれないからだ。サクラのために、少しでも情報を持ち帰らないと。
「喉を切り裂かれてる……。でも、傷はそんなに深くない。」
ということはつまり、これをやった刃物はそう大きなものではないという事だ。卸屋を殺すぎりぎりのサイズの傷をつけたってコトなんだろう。死体を探るのはそれくらいにして、ボクは家探しを始めた。もちろん金目のものはないかなってわけじゃない。それでも、なにか情報が得られるかもしれないからだ。だけど、不思議なことに金庫にこじ開けられたような跡はなかったし、これ見よがしに置いてあるお金にも手を付けていないようだった。
「……とりあえずボクにはこれ以上わからないし、スラムに戻ろう。」
いくら相手がクズとはいえ、顔見知りが死んでいい気になるわけがない。それでも、ボクの頭は考えることをやめない。ボクの知る限り卸屋は感染者だったはずだ。それをレユニオンが襲うだろうか?それにどうしてまったくお金に手を付けていないんだろうか?―――――ひょっとして。
「うわあああああ!!やめ、やめてくれ!!」
「!?」
突然、そう遠くないところから悲鳴が聞こえる。それ自体はここで珍しいものでもないけれど、ボクは思わず走り出していた。サクラたちと一緒にいるうちに、助けを求める声に敏感になったのかもしれない。それに、この状況で誰かを襲うなんてレユニオンしかありえないとも思った。
「た、助け……!! ぎゃあっ!」
死んだ。今、目の前で人が殺された。ボクが今貼りついている角を曲がれば、すぐそこに死体が転がっているはずだ。それに、それをやったやつも。絶対に見つかってはいけない。心臓がバクバクしてうるさかったけど、何とか平常心のふりをした。少しでもいい。サクラのために、これのことを知らないと。そう思っていた、その時だった。
「……次の目標を確認。殲滅する。」
そんな声が小さく聞こえて、ボクの体はあっという間に組み伏せられていた。
「え!?な、何!?何、なんで!?」
気づかなかった。どんな小さな物音でも聞き逃さない自信のあるボクの耳が、まったく反応できなかった。本当に、微かな足音さえしなかったのだ。
「……」
必死に体をばたつかせるけどビクともしない。すると、ボクの手を抑えていた手の内、片方が外れた。その行為と、さっきの『殲滅』って言葉がボクの頭の中で結びつき、すぐに恐怖が襲ってきた。
「や、やだ!やめて!!」
「喚くな。一瞬で終わる。」
見えないけど、はっきりわかった。手に刃物が握られてて、それでボクの首を狙っていることが。あの卸屋のように、ボクをこれから殺すつもりなんだってことが。
「手を離せ。」
その時。また、まったく気配を感じなかったのに、別の人の声が聞こえた。それとほぼ同時に、地面に転がるナイフの音。何かはわからないけど、この人が助けてくれたらしい。
「! なぜ……?」
首をひねって振り返れば、そこにはまったく同じ格好をした男が二人いた。一人はボクを抑えてる奴、もう一人はボクを助けてくれた人。でも、恰好を見るに多分仲間なんだと思う。ボクは流れる冷や汗の気持ち悪さに耐えながらそう考える。
「この方は我々の協力者、ロドスの者だ。その程度のことにも気づけないのか、若輩者。」
「……失礼しました。」
どうやら、この二人は上司と部下みたいな存在らしい。ボクを襲った方が部下で、今怒られているみたいだ。ボクは急いで二人から距離を取り、逃走経路をちらりと確認する。何とか一番のピンチは脱出したみたいだけど、まだ油断はできない。
「ロドスのオペレーターとお見受けします、お嬢さん。知らぬこととはいえ、ご無礼を。ですがここは危険です。早く本隊に戻られたほうがよろしいかと。」
言葉は丁寧だけど、放つ雰囲気はすごく冷たい。自慢じゃないけど、人の顔色を伺う生き方をしてきたからそういうのには敏感だ。仮にボクがこいつらの意図に沿わないことを言えば、多少強引な手段を使ってでも追い出すつもりだろう。それなら大人しく従うのがいい。そう思いながら、ボクは口を開く。
――――――――
「そ、そっか。ならボクはこれで失礼するよ。お手数おかけしました~。」
長い髪をしたコータスの少女が、かぎ縄を器用に扱いながらスラムを去る。黒づくめの装束を身にまとった特殊部隊――ウェイの私兵である影衛二人は、その姿を見送った。
「……所詮、製薬会社の社員ですね。何の覚悟も、気概もない。自分の身が危うくなれば、あっさりと職務を投げだす。」
そのうちの一人は軽蔑のこもった声でつぶやく。既に彼に名はなく、ただ“影衛”を構築する一つの器官でしかない。どんな任務だろうと命を懸けて実行し、龍門のために命をささげる。それを脳に染み込ませた彼にとって、彼女の態度はあまりにも軽薄に映ったのだ。
「それに、聞けば奴はかつて龍門に暮らしていたというではないですか。全く、嘆かわしい。」
また、彼女がかつて龍門人であったということも彼を苛立たせた。龍門のことを命を捧げる価値のあるものだと認識している彼は、当然の帰結として自分以外の人間にもそうあることを求めた。つまり、龍門に生きていながら、龍門を愛さない人間が理解できなかったのだ。
「……。」
もう一人の影衛はそれを黙って聞いていた。その要因を一言で言えば、彼は大人であったという事だ。若気の至りにいちいち反応するほど、彼は暇ではなかった。
「……満足したら、仕事にもどれ。まだ全てが完了したわけではない。」
「了解です。すぐに戻ります。」
短く返事をし、移動しようとする彼の背中に、それでも男は声をかけずにはいられなかった。
「……だが、彼女に対する評価を改めておけ。あれはまだ諦めていない。そのうち手を噛まれるぞ。」
その言葉に思わず立ち止まる若者。男は続ける。
「あれの目の中から光は消えていない。油断するな。」
「……しかし、あの者が我々に傷をつけることが出来るようには思えません。」
男はその言葉には答えず、次の仕事場へと向かった。まるで、その答えは自分で考えろとでも言うかのように。後には一人の影衛が残ったが、それもやがてその場を離れ、後には何も残らなかった。
――――――――
「……とにかく、あいつらが何をしてたのか調べないと。」
ボクは自分の言葉とは裏腹に、まだスラムでの調査を続けていた。といっても、大したことは出来ていない。あいつらがやろうとしてることを止めるなんてもってのほかだ。こそこそと怪しい場所を嗅ぎまわっているだけ。スラムはアリの巣みたいに細い道が張り巡らされてる。ボクらが逃げ込むのはそういう場所だし、もしあいつらがスラムの住人を襲ってるなら、ひょっとしたら生存者がいるかもしれないと思ったからだ。
「ここは……ヒッ!」
そういう場所を調べ始めて4番目。ボクはとうとうアタリを掴んだ。……全然、嬉しくはなかったけど。
「こいつら、ブローカーだ……。」
そこに転がってるたくさんの死体は、残らずブローカーだった。ボクらみたいなスラムの子供に仕事…つまりは犯罪を斡旋するやつら。悪い奴らだってことは間違いない。この人たちを殺すのは、普通からしたらいいことなのかもしれない。
「でも……でも、こんなこと……!!」
そこに死んでる人たちの中に、まともな死体は一つもなかった。皆に共通してるのが、アキレス腱が切られてることだ。きっと足を切ったあと、逃げられなくしてから殺したに違いない。手を見ると、爪の下に土が詰まっている。よく見ると爪が剝がれてる死体もあった。
「あ、ああ」
そこまで来てボクはやっとわかった。この人たち、足を切られたあとに逃げようとしたんだって。動かない足をほったらかして、何とか腕だけで這ってたんだ。それなのに、それなのに。
「殺され、たんだ…。」
その時。ボクの頭に、はっきりしたイメージが浮かぶ。足も体もズタズタにされたボク。なんとか逃げようとして、手の指の爪が剥がれる痛みも忘れて。それでもそのうち、追いつかれて……
「や、やだ……こんなの、やだよ……。」
やっと掴んだのに。やっと、普通になれるかもって思ったのに。ボクは、やっぱりこの場所で死ぬのかな。この場所から、離れられないのかな。
―――――また会ったな、ロープ。
「……そ、そうだ!そうだよ!」
いきなり思い出したのは、あの日のサクラのセリフだった。生まれて初めて出来た、大切な友達。利用するだけされるだけの関係じゃない、お金じゃなくて心で繋がった人。
「お願い、出て……!」
必死にお祈りしながら通信機のボタンを押す。もしこれで、サクラが出なかったら?そんな最悪の事ばっかり頭に浮かんできて、ボクの気持ちは沈んでいく。
『ロープか?どうした、何かあったのか?』
サクラ!サクラだ!!よかった、無事だったんだ!ボクはすっかり安心しちゃって、今まで起きたことをサクラに上手く話せなかった。それでもすぐに来てくれるって言ってくれたから、体からへなへなと力が抜けていった。よかった、これで安心だ、って。
でも、このすぐ後に。ボクはこのことを後悔することになる。
―――――――――
というわけで時は流れてスラム前。アンブリエル姉貴と合流してから移動するとしましょう。あの後通信を入れたところ、『今度はすぐ行けるからよろ』とのことでした。仕事モードの彼女はきっちりやってくれるのでそのうち来るでしょう。
「サクラ!それとウタゲっちも。あたし行けなかったけど、大丈夫だった?」
お、来た来た。彼女にはまだまだ役に立ってもらわなくてはならないので、軽く体の様子を確認しておきましょう。ないとは思いますが、仮にケガを隠されたりしてたら迷惑なのでね。
「ん~?あー大丈夫だって。あたしより、なんかロープちゃんがヤバいんでしょ?さっさと助けに行かなきゃじゃん。」
お、おお…。すごく成功を感じるセリフ。涙がで、出ますよ……。しかし感傷に浸っている暇はありません!急ぎスラムに突入し合流ポイントへ!ロープ姉貴と合流しましょう!
「にしても、やっぱだーれもいないんだね。何か緊張して損したかも。」
「それな。あたしのアーツにも全然反応しないし、もうどっか避難してるっぽい?」
「……いや、ロープからは『血まみれ』と聞いている。要領を得ない言葉だったが、何があるかわからない。合流まで気を緩めるな。」
話をしながら移動し、たどり着いたのはボロい小屋ですね。ランデブーポイントにここを指定してきたので、ロープ姉貴がいるはずですが…。
「サクラ!」
「!? うおっと…!」
Oops!いきなり飛びついてきました。仮に知らない人だったら即ぶった斬ってるところでしたよ!アブナイ!
「サクラ…!サクラ…!」
めちゃくちゃしがみついてきますね…。と、とりあえずRTA的に早いところ情報を聞き出さなくてはなりません。
「落ち着けロープ。何があったんだ?」
「あ、そ、そうだよね!ごめん、つい安心しちゃって…。」
「え、えっとね。ボクがスラムに行った後……」
ふむふむ。ロープ姉貴の話を要約すると、影衛がスラムの住人を襲っているということですね。影衛とは龍門のトップ、ウェイ長官の私兵です。めちゃくちゃ強いので絶対にエンカしないようにしましょうねー!
「……なるほどな、わかった。ありがとうロープ。そんなにも怖い思いをしてなお、私の頼みを聞いてくれたこと、本当に嬉しい。それに、役に立つ情報まで持ち帰ってくれた。最高の仕事だったぞ。」
「ホント?ボク、役に立てた?」
「ああ、もちろんだ。……怖かっただろう、ここからは私たちと一緒に行動しよう。」
「……うん。」
よし(適当)。ひとまずこれでロープ姉貴の方はいいでしょう。それではドクターの方に連絡を入れて、現在の状況を確認しておきましょう。今ほんへのどの辺りかってことですね。
『サクラさん!ドクターから話は聞いています。そっちは大丈夫ですか?』
「アーミヤか?ああ、全員なんともない。そっちは?」
『……こちらは、ファウストを含む敵部隊を撃破しました。』
「……そうか。」
ここで敵のボスをやったのに全く嬉しくなさそうなのは『感染者の救済を謳うロドスが、感染者を殺さなくてはならない』という矛盾に苦悩しているからです。難しい問題じゃよね……。まあRTA的にはどうでもいいので(無慈悲)話を続けましょう。
「そうだ。こっちでも調査をしているが、まだレユニオン達を発見できていない。何かそっちに来ていないか?」
『……実は、ガヴィルさんから秘密の通路を発見したという報告をもらっています。そしてスノーデビル小隊に、謎の黒づくめの武装集団まで……。はっきり言ってわけがわからない状況です!サクラさんはすぐにこっちに』
「どこだ?」
『……えっと、サクラさん?』
「その秘密の通路はどこなんだアーミヤ!これからすぐに向かう!」
『ダメです!あまりに危険すぎます!』
ああ~めんどくせえ~マジで。ガヴィル姉貴がスノーデビル小隊を発見するのはほんへでも起きた出来事なので、この状況はチャートに織り込み済みです。仕方ないので『殺し文句』を使いましょう。
「お願いだアーミヤ、早くしてくれ!! “スノーデビル小隊まで死んでしまう”!!」
『ッ!!』
『……わかりました。でも、絶対に無理はしないでください!それから、ポイントに着いたらすぐに連絡してください!私たちもすぐに援護に向かいますから!!』
うーん、ちょっと言いすぎましたかね?まあタァイムのためだからね、しょうがないね。
「サ、サクラ。今のはちょっと厳しかったんじゃない?アーミヤもびっくりしてたし…。」
やっぱり?(勇次郎)まあ後でフォローしておけばいいでしょう。とりあえず教えてもらった座標にイクゾー!デッデッデデデデ、カーン!デデデデ!カーンが入っている+1145141t点……ってあれ?何で動かないんですか?
「サクラ。あたし、上に待機してるから。」
「……来るね。構えとかないと。」
来る?何が?何の問題ですか?(レ♂)
「さ、サクラ?ウタゲ?アンブリエル…?なんでそんな、警戒して……ヒッ!!!」
「……また、会うことになるとはな。」
音も無く現れたのは、全身を黒づくめの衣装で覆った男だ。全身から放つ異様な雰囲気からは、血なまぐさい過去と冷たい殺意が感じられた。
「あ、ああ、うそ、だよ。こんな、こんな!」
現れたのは龍門の影。あらゆる真実を黒衣に隠した、謎の武装集団。……影衛が、一行の前に立ちふさがった。
え?(列海王)影衛が、ここに?私たちの敵に?
ああああああああ!ふざけんじゃねえよオラァン!?3人で勝てるわけないだろ!この影衛、ウルサスの国土主張おじさんこと『皇帝の利刃』ともやりあえるレベルに強いんですよ?そんな奴に我々だけで挑んでも勝ち目なんてありません!その上もうビンビンに殺意感じるんでしたよね?
あーあ、もう確定です!ここでサクラは殺されて、冒険は終わってしまったになるんです!皆さんありがとうございました!!
などと、その気になっていたお前らの姿はお笑いだったぜ。(PRGS)龍門編の最大戦力影衛!その対処のやり方は出来ている!まあロスになるからあんまりしたくないんですけどね。ひとまずここを切り抜けて、さっさとポイントへ移動しますよ~するする。ヌッ!
―――――――――
失敗した。失敗した失敗した失敗した失敗した。ボクの頭がそんな言葉でいっぱいになる。ボクが、ボクがここにサクラたちを呼んだせいだ。そのせいで、皆が危ない。目の前の敵は絶対めちゃくちゃ強い奴だ。
「まず初めに聞いておく。あんたは何者だ?」
「……。」
「私たちに敵意はない。だが、あんたの方は……そうでもないらしいな。」
「……。」
目の前にいる奴は、ぱっと見だとただ立ってるだけに見える。でも、その気になれば簡単に殺される。それが確信できてしまうほど、ものすごい威圧感だった。
「……。」
後ろの方で震えながら見てたボクには、前で刀を構えてるサクラとウタゲのことが良く見えた。ウタゲの方は、構えを取ってはいるけど膝が笑っている。きっと怖いんだ。ボクもそうだった。
逃げなきゃ。何とかして、皆だけでも逃がさなきゃ。
そう思って、奴の注意を向けようとかぎ縄を握りしめた瞬間。
「!! ぐっ!!」
「……。」
ギィン!という鋭い音がして、サクラが吹っ飛ばされた。サクラは首の前に刀を持って、何とか攻撃を防いだらしい。ギリギリで踏ん張っているけど、かなりの力を使っちゃったみたいだ。
「サクラ!!」
「大丈夫だ、問題ない。……とは、行かないかなこれは。かなり効いた。」
手を軽く振って具合を確認してるけど、細かく震えている。このままじゃ、ほんとに殺されちゃう。
「ま、待って!ボク、ボクだけなら……ボクの命なら!」
好きにしていいから。そう言おうとした口は、サクラによってふさがれた。その時の顔は、あの時と同じだった。初めて会った日に、何度も見せてくれた笑顔だった。
「私に任せな、ロープ。話せばわかってくれるさ。」
「……。」
「なあ、そうだろう?龍門人に悪い奴はいないと、チェンさんからも聞いているぞ!」
「……なぜ、龍門の者だと?」
そこまで聞いてやっとわかった。そうだ、目の前の奴が何者なのか、ボクは何も知らなかった。
「いいだろう、そんなことは。それより、話をしよう。落ち着いて、ゆっくりな。それも、二人っきりで。」
「……ちょっと、サクラ。」
「いいんだ、任せてくれ。ウタゲはロープを連れて向こうに行ってな。…あなたの方も、その気になれば簡単に仕留められるだろう?」
「……いいだろう。だが、そこの狙撃手も下げさせろ。」
「もちろんだ。アンブリエル!降りてきてくれ!」
『……マジで?ホントに大丈夫?』
「私を信じてくれないのか?」
『……ハァ、りょー。そんじゃ任せたよ。』
話が済んで、ボクはウタゲに手を引かれた。ボクのことを向こうに連れて行くつもりなんだろう。ボクはこの時、サクラが何をしてほしいのか完全にわかった気がした。―――だから、叫んだ。
「だ、ダメ!!ダメだよサクラ!!そんな、そんなこと!!」
「何のことかわからないな。ウタゲ、頼んだぞ。」
「……はいはーい。」
鍛えてるウタゲにボクが勝てるわけもなく、あっという間に移動させられた。強く手を握られていて振りほどけない。
「ウタゲ、どうして!?だって、だってサクラは!!」
多分、死ぬ気だよ。どうしても言えなかった。声に出せば、現実になってしまう気がしたから。きっとサクラがボクをこっちに来させたのは、ボクらだけでも逃がそうとしたからだ。あいつと話して、戦って、ボクらが逃げる時間稼ぎをするつもりなんだ。
「……。」
「ねえ、どうして……?」
「……。」
「どうして、何も言ってくれないの……?」
何も言わないウタゲ。それと対照的に、サクラたちの話は続く。
「早速だが本題に入ろう。こんなところで私たちを襲う理由はなんだ?私たちは何も迷惑はかけていないと思うのだが?」
「私たちの姿を見た時点で不穏因子だ。一度は逃がしてやったのに、再びここに来るとはな。その上、それを防いだお前も危険だ。排除させてもらう。」
……え?つまり、こいつらがボクらを狙うのは、ボクのせい……?ボクのせいで、サクラも危ない……?
「う、うああ…。」
ごめんなさい。ごめんなさい。そう言いたいのに、言葉が上手く出てこない。ボク、ボクはただ、喜んでほしくて。
「……ほらほら、シャキッとしてロープちゃん。サクラが何とかするって言ってたでしょ。」
「ウタゲ……?」
今まで何も言わなかったウタゲが、やっと口を開いた。すごいピンチだというのに、穏やかな顔をしていた。優しい声で続ける。
「サクラがさ、信じろって、任せろって言ったんだよ?そんならさ、何とかなるって。あいつ、嘘とかつけないタイプだし。」
「……ウタゲ、そこまで……。」
だから心配しなくていいよ、と言って、ボクの頭を優しくなでてくれた。不安が溶けて行って、何も言えなくなる。
「……そうか。でも、あなたは私を殺せないよ。殺したら困ったことになるからな。」
「何?」
「あんたらの正体はきっと、龍門の守護者なんだろう?その強さだけならともかく、その装備はとても個人で揃えられるようなものじゃない。それこそ、国ぐるみで作らなきゃならないものだ。いくら龍門が豊かでも、軍隊レベルの武力に対してしか支給されない。」
「それに、他の国の兵士ってのもあり得ない。ロープからの話は聞いているからな。『龍門の協力者』という言葉は出てこないだろう。」
「……。」
「その話を統合すれば、自ずと答えは見えてくる。……そこで提案だ。どちらも、何も見なかったことにして離れないか?」
「私たちの仕事は感染者を守ることだ。あなたたちの仕事は龍門を守ることだ。お互い、道はかぶっていないだろう。」
「私たちの助けるべき相手がこの先にいるという情報を掴んでいる。それを助けに行かなくてはならない。……見逃してくれ。」
「……すごい。」
ボクは思わずつぶやいていた。ただ喋っているだけなのに、サクラの背中が輝いて見える。
「……でも、これマズいね。無理矢理力で来たらヤバい。ロープちゃん、一応飛び出す準備しといて。」
「う、うん。」
「……その話を受け入れて、我々に何のメリットがある?」
「仕事が減るのはいいことだろう?うちの上司は、書類に囲まれてひいひい言っていたぞ。」
「……だが、ここで斬り合いになったらどうする?お前を斬ったところで、何も問題はないぞ。」
「いや、無理だな。私を殺せば、あなたたちは非常に困ったことになる。」
「……なぜ。」
そこでサクラは大きく胸を張った。
「私はチェンさんに貸しをつくっておいたんでな。」
「龍門の人間なら私よりずっと詳しいだろう。龍門近衛局のチェンさんだ。仮に私が殺されたとなれば、彼女は必ず仇を取ろうとしてくれる。」
「もともと正体不明の謎の部隊だ。個人的な理由ではなく、督察隊を動かすに大義名分は十分にある。」
「……。」
あの黒い奴は完全に黙ってしまった。自分たちの立場が分かっているからだ。
「龍門近衛局は龍門の治安の象徴、絶対的な正義の使者だ。それとあなたたちが殺し合うというのは、龍門にとってマイナスでしかないはずだ。」
「だから、ここはお互い何も見なかったことにしよう。あなたたちとここで傷つけあうのは、私たちの敵が得をするだけだ。」
そこまで言い切ってサクラはようやく一息ついた。話は終わりかと誰もが感じた。しかし、サクラにはまだ、一押しが残っていた。自分たちの安全を確定させる必要があったからだ。
「……だが、それでも。それでもなお、私たちを殺すというのなら。」
すらりと刀を抜く。あの攻撃を受け止めてなお傷一つつかなかった『羅刹』は、その美しい純白の刀身を惜しげもなく晒した。
「……この命と引き換えにしてでも。二度と戦えない体になってもらう。」
もう。誰も、一言も発せなかった。落ちる冷や汗の雫が地面に当たって立てる音すら聞こえるのではないかと感じるほど、絶対的な静寂だった。
その沈黙を破ったのは、影衛の方からだった。
「……いいだろう、ロドスの精鋭。お前の言うように、ここは退くとしよう。」
言うが早いが、影衛はどこかへ去っていった。その理由はなにも、彼女の説得に納得したからだけではない。彼女の実力を正しく評価したからだ。現時点で、その力量には大きな隔たりがある。だが、経験豊富な彼は知っていた。どんなに弱い相手でも、追い詰めれば思わぬ反撃をすることもあると。龍門を守るという使命のある彼にとって、そんな余計なリスクを背負うことはとても許容できることではなかった。
(……ひとまず、仕事に戻ることとしよう。グレイ氏からの依頼を果たさなくては。)
影衛は龍門の闇を往く。その先には、戦いしか存在しないことを知りながら―――。
――――――――
Foo!国家戦力の論破、気持ちぃ^~!まあかなりの綱渡りだったんですけどね、初見さん。ほんへでもチェン姉貴と影衛が戦闘を行わなかったことにヒントを得て、虎の威を借る狐のようになってしまいましたが、まあ悪くない作戦だったのではないでしょうか?
さて、作戦の成功に酔っている時間は終わりです。とっとと仲間を引き連れて、例の場所へ向かいましょう。
「終わった。出てきていいぞ、二人とも。」
声をかけた瞬間、飛び出してくるロープ姉貴。まるで仔犬みたいだあ…(直喩)。
「サクラ!ごめん、ごめんなさい!ボク、ボクのせいで、こんな!」
あら、そんなこと気にしてたんですか。大丈夫だって安心しろよ~。どっちみちスノーデビル小隊を救出する際に影衛たちと接触します。その時にビビらず行動できることを考えれば、むしろプラスになるかもしれませんし。
「気にするな。もともとあいつらと私たちは敵同士ってわけじゃない。ついてなかっただけさ。」
「そーそー。皆怪我してないんだし、それでいいじゃん。それよりホラ、サクラ。さっさと行かなきゃなんでしょ?」
ウタゲ姉貴迫真のパスが光る!ナイスなアシストだあ……(恍惚)
「その通りだ。ロープ、着いてきてくれるか?」
――――――――
「その通りだ。ロープ、着いてきてくれるか?」
「……え?」
いいの?ボク、役立たずなんだよ?情報を持ち帰ろうとして、皆を危険にさらすようなダメダメなんだよ?
「ボ、ボク……まだサクラと、一緒にいていいの?また皆に、迷惑かけるかもしれないんだよ?」
そう言うと、サクラとウタゲは心底不思議そうな顔をした。たくさんの顔色を見てきたからわかる。これは、演技じゃないって。
「何言ってるんだ、いいに決まっているだろう。もちろん、ロープがもう嫌だって言うなら別だが。」
「い、嫌じゃない!全然嫌じゃない!!」
「ならいーじゃん。さっさと行こ。ブリさんもう昼寝始めちゃうよ。」
『ちょっとウタゲっち~?流石にあたしも戦場で寝るほど図太くねーっつーの。』
そう言って皆が笑う。まるで何も起きなかったみたいな、そんな風に。ひょっとして、気にしてるのはボクだけなんだろうか。
「……ねえ、サクラ。」
「どうした?」
「ボク、頑張るからね。絶対絶対、次は失敗しないから。」
「……そっか、頑張れ。応援してるからな。」
そう言ってサクラはボクの頭を撫でた。ウタゲのよりちょっと乱暴で、ガシガシって感じの撫で方だったけど、不思議と不快じゃなかった。ボクは溢れそうだった涙を拭って、サクラたちと走り出す。……今度はきっと、役に立ってみせる。そう、誓いながら。
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さてさて、あの後は特に何の問題もなく、指定のポイントに到着しました。ここにスノーデビル小隊及びフロストノヴァ姉貴、そしてファウストの率いていたレユニオン残党が集まっています!本来なら今すぐ飛び込みたいところなのですが、一つ問題があります。単純にフロストノヴァ姉貴に勝てないという点です。
というのも、今回の作戦はフロストノヴァ姉貴が連れていかれる寸前に襲撃、彼女を死なない程度にボコってロドスに連れ帰ろうというものです。パトリオットはチェルノボーグにいるから安心!ですが、フロストノヴァ姉貴はスノーデビル小隊が全滅している状態だと、文字通り命を削ってアーツを使用します。だから、スノーデビル小隊も助ける必要があったんですね。
ですが今の状態では敵の数が多すぎます。フロストノヴァ姉貴の命が更に削れるというリスクはありますが、彼女らにまずは影衛たちを撃退してもらいましょう。そうすると、『せめて最期の時くらい、パトリオットと過ごしてほしい』とスノーデビル小隊が彼女を逃がします。そこを狙おうというわけですね。
そんなわけでここはドクターの真似事をして、仲間たちをそれぞればらけたところに配置しましょう。私はド派手に突っ込む係、ウタゲ姉貴は奇襲、アンブリエル姉貴とロープ姉貴は援護ですね。
「おい、アタシはどうすんだ?」
あれ、ガヴィル先生?まだいたんだ?ていうか、私の指示でいいんですか?
「何言ってんだ。アタシよりお前の方がそういうのは得意だろうが。あん時みたいに、作戦立ててんだろ?」
お、おお……。まさか初任務がこんなところで生きてくるとは思いませんでした!ガヴィル姉貴は医者の鑑なので(なお患者をぶん殴る模様)、死にかけてる奴がいればたとえ敵でも治療してくれます。そのため、フロストノヴァ姉貴の延命に貢献してもらおうと思っていたのですが……。これはもう、戦う気満々ですね。こういうのに無理やり我慢させてもいいことはありません。最低限の手綱を握ったら暴れてもらいましょう。
「お、そう来なくちゃな。まあ安心しな、後ろはしっかり守ってやるよ。お前らは怪我なんて気にせず、とにかく突っ込め。」
そう言って指定のポイントに移動するガヴィル姉貴。ああ言ってますけど、いざ本当に怪我したらあとが怖いので出来るだけしないようにしようね!
さて、一人になってしまいましたがまだ影衛たちはやってきません。それまで暇なので、皆さんのためにぃ^~……とはいかず、最後の仕込みをやっておきましょう。グレースロート姉貴の懐柔です。彼女は物言いがストレートですが、ファウストが氏んだ後はすこし柔らかくなります。そのため、こっちもストレートな言葉を伝えるのが良いでしょう。それでは通信、イクゾー!
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「……。」
私はあいつのクロスボウを握りしめて、ずっと考え込んでいた。あいつは最後、私に「撃て」と言っていた。どうして、あいつは諦めたんだろう。私たちについて来れば、助かったのかもしれないのに。
「……どうして、とか。知ってるのに。」
あいつの目には生きる意志がなかった。仮にこれからどんなに幸せな生活が待っていたって、あいつはきっと同じ結末を選んだはずだ。誰かがやらなきゃ、きっと自分の手で矢を撃ち込んだはずだ。自然と気分が落ち込んでいく。その時、いきなり通信が入った。
「……もしもし、こちらグレースロート。」
『もしもし。……話すのは初めてだな。私はサクラ。前衛オペレーターのサクラだ。』
サクラ?その名前は何度も聞いてきた。確か、ルーキーなのに既に大活躍してたオペレーターだ。私もついさっき顔合わせをしたばかりだから、わざわざ通信を入れてきた意味は分からないけど。
「何?私もあなたも、こんなところでおしゃべりしてる余裕なんてないと思うんだけど。」
『……実は、お礼が言いたくてな。』
お礼?一体何の事だろうか。私が覚えている限り、あの子に何かしてあげた覚えなんてない。
『ドクターから聞いたよ。ファウストを、終わらせてくれたんだろう?』
「ッ! ふざけてるなら、切るよ。」
口調は強かったけど、冗談抜きに背筋が凍った。何でちょうど私の考えてたことを言い当てたんだろう。
『いや、待て!待ってくれ、すまなかった。言い方が悪かったな。お前を馬鹿にしたり、傷つけたりしたいわけじゃないんだ。ただドクターに、お前の元気がないみたいだと聞いたんだ。』
「……だったら、何。あんたに元気づけられるって言うの?今まで話したこともないくせに、あたしの気持ちが分かるって言うの!?」
思わず叫んでしまった。……私は多分、この世界の理不尽に怒ってたんだと思う。どうして守るべき相手に弓を引かなくてはならないのか。どうしてあいつは生きようとしなかったのか。何もかもが私をイラつかせて、つい相手にあたってしまった。だというのにサクラは、あくまで優しい声で続ける。
『わかるよ。お前と話したことはないけれど、ファウストとは語り合ったからな。まあ、肉体言語ってやつだけど。』
『あいつ、さ。多分、
まただ。また、見透かした。私は味方と話しているはずなのに、どこかうすら寒いものを感じていた。まるで、そう、
『……やっぱりそうか。何かおかしいと思ったんだ。一本一本の矢に生気がないって言うか、幽霊が撃ってるみたいって言うか…。とにかく、生き延びたいって意志を感じなかったんだ。唯一の例外は、いつもあいつの隣にいたメフィストってやつを狙ったときだ。』
『話は変わるんだが、もうあの化け物どもには会っただろう?あの、言葉もわかってないようなバケモノたちだ。』
「……見たけど、それが何?話が見えてこないんだけど。」
私の声が震えているような気がしたが、きっと気のせいだ。
『……そのバケモノを生み出したのは、そのメフィストだ。』
「……!!」
息が止まった。嘘でしょ?あれが、一人の人間によってつくられたって言うの?
『私たち……いや、少なくとも私は、奴を絶対に許せない。もう後戻りはできないところまで奴は行ってしまった。感染者全員がああなる可能性があるんだからな。……はっきり言って、この世にいちゃならない。』
『でも、それならファウストはどうなる?』
『あいつは、世界の敵になった友達を抱えて、世界の果てまで逃げるのか?生きるのにも、殺すのにも、心底疲れ果てて。生きたくも、殺したくもないのに?……そんな残酷なことがあるか?』
『……だから、お礼を言ったんだ。あいつを終わらせてくれてありがとう。あいつを楽にしてくれてありがとう。お前のおかげで、あいつは救われたんだ。』
一つ一つの言葉が、納得と共に心に染みる。私の感じていた不条理が雪のように解けていく。……しかし、それで終わるわけにはいかない。まだ、完全に納得したわけじゃない。
「……ねえ、それじゃあ何で?」
『うん?』
「何であいつは死ななきゃいけなかったの?人を殺したことに苦しむくらいなら、最初からクロスボウなんて持つべきじゃなかったのに!あいつは、あいつの死は…何の意味もなかったの?」
そう。当然のことだ。人を殺したんだから、人に殺される。そのことに文句を言う奴なんて一人もいないだろう。私だって、まともに死ねるとは思ってない。
じゃあ、まともに生きてきた人は?私の父さんは、何で死ななきゃならなかったの!?
「……どうして……?」
「どうしてこんなに、理不尽なの……?」
もうこらえきれなかった。声が震えて、涙がこぼれて止まらなかった。涙は良くない。目の前が濁るから。嗚咽は良くない。手が震えて、照準がぶれるから。
『……グレースロート。』
あの優しい声が聞こえる。きっと後には、耳障りがいいだけの薄っぺらい慰めが続くのだろう。
『お前は一つ、勘違いをしている。……死に、意味なんてない。』
「……え?」
『死はただの自然現象だ。この大地のどこかで、誰かが必ず死んでいる。それがたまたま、私たちの近くで起こっただけだ。』
「何を、言って……!!ふざけないで!父さんの、ファウストの死を馬鹿にするな!!ただの、ただの普通のことだなんて!!」
『落ち着いて。死そのものに意味はないさ。……だが、意味はたいてい後から生まれるものだ。』
『……私の両親も、既にこの世にいない。』
「……!!」
ヒートアップしてた脳が一気に冷えていく。サクラ、こいつは…私と、同じ?
『父は戦場で死んだ。母は私を守って死んだ。その死に意味はなかったが、私の生には意味がある。二人が死んだことに、私が意味をつくって見せる!』
『私は生きている!二人の死を、肯定するために!!二人の死を、無駄にしないために!!』
『私がこうして生きて、少しでも多くの人を救えば……そうすれば、二人の死も、生も、肯定されるはずだ!私を産んで育ててくれて、無駄じゃないよって教えてあげられるはずだ!』
サクラの声はいつの間にか、力強いものになっていた。まるで誰かに言い聞かせるみたいに。それは私に対してなのか、自分自身に対してなのかは、よくわからなかった。
『……すまん、すこし熱くなった。でも、お前もそう思っていいんじゃないか?』
『繋ぐんだ。死んでいった、去ってしまった者たちからの生を。少しでも善く生きて、あいつらの死を肯定してやるんだ。“無駄じゃないよ”って、言葉じゃなくて魂で示すんだ。』
『……ひょっとしたら、すごく傲慢なことなのかもしれない。でもほんの少しでも!ほんの少しでも、ファウストみたいに苦しむ人を、私たちの手で減らせたら!そしたら、あいつの死は価値あるものになるんじゃないのか?ただの自然現象じゃなくなるんじゃないか?』
聞きながら、涙が止まらなかった。そんなの、そんなのまやかしだ。そんな風に考えたって、父さんが帰ってくるわけじゃない。私たちを襲ったあいつらの、罪が消えるわけじゃない。それなのに、それなのに、どうして?どうして涙が止まらないの?どうして心が軽くなるの?
『……今は泣いてもいいさ、グレースロート。“迷ったら撃つな”だそうだからな。泣きたいだけ泣いたら、共に戦おう。この戦場を生き延びて、あいつらに報いよう。』
『私はお前の味方だ。……だというのに、今お前のそばにいてやれないことを許してほしい。胸を貸す代わりに、通信はずっとつなげておく。お前は一人じゃない。』
涙も嗚咽も止まらなかった。何度も止めようと思ったのに止められなかった。あの日、父さんの死因を聞いた時に、流れ出なかった涙が、今になってあふれ出した。何か月もの悲しみの中で、瞳に貯まった涙だった。
あと1…か2…くらいでほんへは終わりです。その後はフロストノヴァ姉貴が生存したロドスでの短編をいくつか書いて行こうと思いナス。完結にするけど思いついたら更新する感じでよろしくお願いしナス!
次回作、どっちがいいんすか?
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