アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
冬の終わりのRTA、最後の部はーじまーるよー!
前回、やたらと強かったビッグベアを倒し、いよいよフロストノヴァ戦にのりこめー^わぁい^という所でしたね。繰り返し言っていたように、スノーデビル小隊は出来る限り頃さないようにした方がうま味なので、自分としては…頃すつもりはなかった。ただあいつやたら強くて、碌に手加減できませんでした。しょうがないね。
そして現在は、気絶させたスノーデビル小隊のメンバーを縛り上げ、サクラ・ウタゲ・ガヴィルの3人がそれぞれ担ぎ上げて、決戦のバトルフィールドへと向かっております!全員オーロラ姉貴みたいにお米様抱っこなんですがそれは……。いやまあ、戦場で女子力なんて全く必要ありませんが。
さて、もう少しで戦場にたどり着くという場面ですが、ここで皆さんにお知らせがあります。本RTA最後の戦いにして最大の見せ場になるはずのこのフロストノヴァ戦ですが、おそらくものすごい塩試合になります(問題発言)。
というのもですね、フロストノヴァ姉貴を生存させるための大前提として、『アーツを出来るだけ使わせないようにする』というものがあります。アーツを使えば使うほど体に負担がかかり、命を縮めてしまうためですね。今抱えているスノーデビル小隊たちはアーツを抑止するために連れてきています。原作ではただ一人になってしまったがために周囲に遠慮することなくアーツを使えましたが、今度はそうさせないというわけです。
また、戦闘においてもアーツを使わせないようにします。具体的には『囲んで殴る』!!これですよ。アーツは多少なりとも発動に詠唱を必要とするので、詠唱する暇を与えません。アンブリエル姉貴やグレースロート姉貴、そしてCEOにお越しいただき、遠距離からチクチクすると同時に、サクラやウタゲ姉貴、ブレイズ姉貴らがフロストノヴァを囲んで叩きます。矢とか弾とかは気合で避けるよ!そしてロープ姉貴とガヴィル姉貴は人質の見張りです。ガヴィル姉貴には戦闘後に延命治療をするという役割がありますが、ロープ姉貴のあまり物感感じるんでしたよね?スラムの道案内役に組み込んだから、最終戦では役割が特にないねんな……。
とまあこんな感じで、いくら強力なアーツの使い手と言えど、それを封じられた上で囲んで殴られてはどうしようもないだろう、というのが我々の作戦です。うーん、完璧なチャートだあ……(うっとり)。
お、話をしてたらそろそろドクターたちとのランデブーポイントですね。少し休んでから戦いに……いや、一方的なリンチに赴くとしましょう!
―――――――――
「ゴホッ、ゴホッ……。ここは、どこだ。」
私は見知らぬ場所で目を覚ました。兄弟たちと共にいたあのビルではなく、駐車場のような場所だ。
「あっ!気が付いたのか、フロストノヴァさん!」
レユニオンの仮面を被った男が、心底安心したといった風に声をかけてきた。おそらくはこの男がここまで運んできてくれたのだろう。だが今の私に、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「……一つ、聞きたい。」
「何だ?何でも言ってくれ。」
「私の、兄弟たちと……ロドスは、戦っていたか?」
聞きながら、それはないだろうと思っていた。敵と和解しようとするような甘い奴らに、顔見知りと殺し合うような真似はできないだろうと思った。しかし彼から帰ってきた言葉は、予想だにしなかったものだった。
「……ああ。紫の剣士が、そのほとんどを雷のアーツでやっていた。」
私の体を電流が駆け抜けた。雷のアーツを操る、紫の剣士。そんな奴は一人しか知らない。
「サクラ……?」
「ん、知っているのか?……それは、その、気の毒だった。もし、もしだ!あんたが辛かったら、代わりに俺が……」
男が遠慮がちに問いかける。私の知り合いが兄弟姉妹たちを殺したと考えているのだろう。
「いや、違う!そうではない!ひょっとしたら……ひょっとしたら、奴は!!うっ!ゴホッゴホッ……。」
そうだ、違う。奴と最初に戦ったときの記憶がフラッシュバックする。兄弟たちを一人で倒し、私たちの仕掛けを見破ったあの剣士。彼女は、ただの一人も
(ひょっとして、生きているのか……!?私の兄弟姉妹たちは、殺されなかったのか!?)
「だ、大丈夫か!?興奮してはダメだ、リラックスしてくれ……。いや、それも酷な事とわかってはいるが……。」
「大丈夫だ。それよりも、私の言う事をよく聞け。
「な!?何を言っているんだ、フロストノヴァさん!俺は彼らに、あなたをパトリオットのところに連れて行けと……」
「いや、行かない。どうせ私は長くない。それよりも、確かめなくてはならないことが出来た。……お前は好きにしろ。もう龍門が感染者を追うことはないだろうから、好きなところへ往くがいい。」
「……それとも、私と負け戦に付き合うのか?それもいいかもしれん。」
私の言葉を聞き、かつて迷彩狙撃隊の一員であった男は、本当に迷っているようだった。だがそれも終わり、ここを離れることを決意したらしかった。男は敬礼をすると、出口に向かって走っていった。これでいい。
「……さあ、来い。サクラ。ドクター。そしてロドスよ。」
私はふらつく足でなんとか立ち上がり、かの者たちを待つ。運んでくるであろう答えに、思いを馳せながら。
――――――
「サクラ!それにみんなも!」
お、ドクターがやっと来ましたね。遅い遅い遅い。これで我々の戦力はいつものJKの集団(平均17歳)と、ほんへのフロストノヴァ戦メンバーと、わし(18)にアーミヤ小隊およびブレイズ小隊のメンバーを加えた大所帯になりました!人質をとってフロストノヴァ姉貴の全開のアーツを妨害している今の状況だと、集団レ〇プ!おやつと化したフロストノヴァ!になりかねないよヤバいヤバい……。まあ本当にやろうとしたら多分凍り付いて使い物にならなくなると思うんですけど(名推理)。
「……って、そいつら!サクラちゃん、ひょっとして殺さずに済んだの!?」
ここでようやく拘束したスノーデビル小隊に気づいたみたいですね。あまり騒がれてこいつらが起きたら面倒なのでちょっと静かにしててもらいましょう。暴れ馬よ…暴れ馬……。
「あ、そ、そうだよねゴメン!……でもね、これだけは言わせて。ありがとう、サクラちゃん。」
「……ああ、その通りだ。サクラ、彼らは彼女のアーツを封じるために?」
さすがドクぴ、話が早くてタスカルタスカル。その流れでこの戦いは少数精鋭で挑むことを提案しましょう。具体的に言うと、小隊のモブオペは全員(参加)キャンセルだ。流石にこの人数で言ったらもう話をするとかそういうレベルじゃねーぞ!になりかねないですしね。
「そうですね。皆さんには地上で待機していただいた方がいいかもしれません。それで、突入のメンバーですが……」
もろちんサクラは行きます。当たり前だよなあ?サクラが行くので3人もついてきます(自明の理)。それから温度管理にブレイズ姉貴、ロドスの責任者としてアーミヤ。ドクターとガヴィル姉貴を加えて合計6人じゃな?それと……
「私も行く。」
「……! グレースロート。」
ブレイズ姉貴の顔がこわばります。このメンバーの中では最高の狙撃手ですね。あ、アンブリエル姉貴とはrangeが違うからノーカンね!
「……サクラ。あなたの通信で言ってたこと、私は完全に納得したわけじゃない。」
「だから、確かめさせて。あなたが人を救うところを見せて。……あなたが、死を肯定するところを見せて。」
な、何か変なスイッチ入りましたかね?思えばサクラにコミュを任せたが最後、ロクな結果になってない気がします。まあ特に断る理由もないのでもーまんたい!
「……もちろんだ。さて、それじゃアーミヤ、音頭を頼む!」
「はい!皆さん、今まで本当につらい事ばかりだったと思います。私たちの救うべき相手であるはずの感染者たちと争い合って…数多くの理不尽な死を目にしてきました。」
いつの間にかロープ姉貴に手を握られていました。こうして触ってみると、タコやつぶれたマメの跡が分かりますね。いい手だと思いました(小並感)。話をしっかり聞いているのか、何もしゃべりません。
「……ですが、この戦いは!正真正銘、救命のための戦いです!!目標はレユニオン幹部、フロストノヴァ!!制圧後、速やかにロドスに搬送し、しかるべき治療を受けてもらいます!!」
もう片方の手はアンブリエル姉貴に握られていました。いい材質のグローブしてますよねぇ……(ねっとり)。でも両手がふさがるからやめてほしい(切実)。
「皆さん、ご自分の命を最優先に!!それでいて、それぞれの使命を果たすことを期待します!!私たちロドスが!彼女を……感染者を、救うために!!」
そしてウタゲ姉貴が……オイオイオイオイあすなろ抱きだわコイツ。いくら両手がふさがってるからって強引スギィ!最終戦の前に何やってんだこいつら……(呆れ)。
「それでは、くれぐれも安全に気を付けてください!フロストノヴァ制圧作戦、開始します!!」
――――――
コツーン、コツーンと靴音が響く。作戦の内容としては、まず私たちだけで何とかフロストノヴァを説得できないか試してみるというものだ。私とブレイズさんで周囲を警戒、ドクターの傍にはアーミヤがついている。まずはこの4人で説得を試みようというのだ。人質に連れてきたスノーデビル小隊のメンバーは私以外の3人にそれぞれ背負ってもらっている。完全にフリーな私が、もっとも重要なポジションと言ってもいいだろう。
……だというのに、ブレイズさんはかる~くドクターに話しかける。
「ねえドクター。本当についてくるの?……死ぬかもしれないよ?」
「……いや、最後まで見届けるよ。君たちと運命を共にする。」
ふーんと呟くブレイズさんだが、その声色からは嬉しさが隠しきれていない。アーミヤもきっと同じ気持ちだろうし、私もそうだ。意外なところで勇気をもらってしまった。
そんなことを考えていると、次第に気温が下がり始めたのを感じる。一歩、一歩と進むたびに、さらに深い冬へと落ちて行くかのようだ。やがて凍り付いた地面が見え始める。壁面が白く染まっているのもわかる。全員何が起きているのはわかっているので、もはや口を開くこともない。私も逸る血潮を抑え、確実に歩を進めていく。
―――そして、その時は訪れた。
「……サクラ。」
「……フロストノヴァ。」
どちらともなく口を開く。ほんの一日かそこらしか時間は経っていないはずだが、私は千の秋を超えて再会したように感じた。
「約束通りだ。“どんな手を使ってでもお前に勝つ。”……まずは舌戦ってやつから始めよう。異存はないな?」
私がそう聞いた次の瞬間、急激に気温が低下した。すぐにブレイズさんがアーツを展開し、周囲を温めてくれたが、何重にも気温を下げられるとマズい。
「異存はないな、だと?」
あまり大きくはないのによく通る声で、フロストノヴァは続ける。
「あるに決まっているだろう。何故、私の兄弟姉妹たちがここにいる?……私が、仲間の遺体でひるむとでも思ったのか?」
「待て!お前は誤解している。彼らは死んでいない。ただ眠っているだけだ。それに、ここにいる3人だけじゃない!あのビルにいたスノーデビル小隊は全員……!いや、違う。すまない。ビッグベアを名乗る男だけは、助けられなかった。」
慌てて否定するが、信じてもらえるかどうかはわからない。最悪、彼らの身柄を引き渡すことになるか……と覚悟をしたが、返ってきた答えは意外なものだった。それに、ビッグベアを助けられなかったと言ったとき、隣のドクターの表情がほんの少しだけ曇った。ひょっとしたら言わない方がよかったのかもしれない。
「……そう、か。やっぱり……」
「フロスト、ノヴァ……?」
泣いている?彼女が、涙を流しているのか?
「……まずは、お前たちの行動に感謝する。ビッグベアは、そういう男だ。誰よりも使命感が強く、実直で、真面目な男だった。最後まで自分の信念に殉じたということなのだろう。それに関して私が怒りを覚えることは断じてない。それはビッグベアを侮辱することと同じだからな。」
「だからこそ、今はただ感謝を伝えよう。お前たちのおかげだ、ありがとう。」
そういって頭を下げるフロストノヴァ。これはいい流れが来ているのかもしれない!そう思った。今勧誘すれば、戦わずに済むかもしれない。だがそんな甘い考えは、すぐに次の言葉に打ち砕かれた。
「……だがそれと、私がお前たちの仲間になるかどうかは別だ。私は指揮官としては敗北したのかもしれないが―――」
「―――戦士として、敗けたつもりはない。」
瞬間。低下する気温。急激に下がる周囲の温度に、私は思わず『彼女が本気になってしまったのではないか?』と肝が冷える。もし本当にそうであれば、私の今までの企みは全てオシャカだ。ここに至るまで、本当に、本当に入念に準備をしてきた。仲間たちの意思を確かめ、戦力になってもらったこと。スノーデビル小隊を人質に取り、アーツを抑止したこと。全て、全てが無駄だったのだろうか。
――――ヘーキヘーキ。大丈夫だって安心しろよ~。
(――――!!)
『声』だ。私を今まで幾度となく助けてくれたあの声がまた、私の頭の中に響く。何の根拠もない、軽い言葉だった。そのはずなのに、私の心はじんわりと暖まっていくのを感じる。大丈夫、大丈夫だ。わけもなくそう思えた。考えてみれば、この『声』は私が小さい頃からずっといる。そう考えると、私のもう一人の家族という事になるのかもしれない。それなら、妙に安心感があるのも当然だ。
「―――サクラ。」
フロストノヴァがゆっくりと声をかけてくる。私の心は既に勇気で満ち、体もブレイズさんの手で温められていた。お互いをまっすぐ見据え、私たちは通じ合った。
「お前は確かあの時、私のことをもっと知りたいと言っていたな。フッ、本当に変わった奴だ。」
「……ああ。その気持ちに今も変わりはない。いや、それどころかもっともっと強くなった気がする。」
「フッ……。ならば喜べ。私のことを一つ教えてやる。―――私は、負けるのが嫌いだ。」
「……奇遇だな、私もだ!」
「……ならば。」
「ああ、ならば!!」
「サクラ!!」
「かかってこい!!」
「フロストノヴァ!!」
お互いにもう、言葉はいらない。私たちの間に必要なのは戦いだけだ。お互いをわかり合う、最もシンプルな方法だ。そしてその勝負に、横槍は必要ない。
「タイマンだ……!いくぞ!!」
――――――――
いやちょっと待ってくださいよぉ!!なんで?なんで?なんでいつの間にかタイマン張る流れになってるんですか……?フロストノヴァ姉貴に集団暴行キめるぞおおおって話だったはずなのに!
あーもうめちゃくちゃだよ。今まで考えてたチャート、ぜーんぶ崩壊しました!こっから仮に仲間の力を借りて勝ったとしても、お互い絶対納得してくれないよ!ま、まあ悪い事ばかりではありません。現に、フロストノヴァ姉貴のアーツの本気は抑えられていますし、パトリオットから貰ったお守り的な奴も確認できませんし。これなら多分、アーツのせいで氏ぬことはない……はず。
とにかくもうここまで来たらやってやろうじゃねえかこの野郎!!で行くしかないですね。ここまで積み重ねてきた戦闘の経験、培ってきた技術。全てを駆使して、春を迎えに行くとしましょう!
―――――――――
「行くぞ!フロストノヴァ!」
宣言と共に前方へ駆けだし、距離を詰める。すかさず展開される氷柱の群れを躱そうとするが、密度が高すぎてかわし切れない。仕方なく足を止めて刀で迎撃する。超集中も併用だ、出し惜しみはしない。自分の体に近い順に狙いをつけ、最小限の振りで撃ち落とす。
――――爆風と共に飛んでくる破片に比べれば、この程度何ということはない。
「――流石だな。ならこれはどうだ?『眠れ、雪の下で~♪』」
歌と共にアーツが切り替わり、巨大な雪崩が津波のようにやってくる。これで本気でないというのだから恐ろしいことこのうえない。サクラ、と叫ぶ声やこちらに駆けだそうとする足音が聞こえるが、そんなことはどうでもいい。
――――オリジムシの海を斬った私たちなら、これだって超えられる。
すぐに飛びのいて回避するが、奴はそれも予見していたらしい。
「氷の矢……!!」
「~♪」
次々と飛んでくる細い氷柱をギリギリで躱しながら、それでも何とか前に進む。
――――ファウストの狙撃に比べれば、月とすっぽんというべきだ。
「フロスト、ノヴァ!!」
「―――もうここまで来たか。強いな、お前は。」
ようやく彼女が歌をやめ、こちらを見据える。だが、もう遅い。
私は既に刀を抜き、斬る態勢に入っている。もちろん峰打ちであるし、相手が重病人であるのだから大きく手加減をした上でだ。もらった、そう確信した。
「―――だが、未熟だ。」
「――ッ!? 何!?」
確信の一振りはしかし、フロストノヴァの氷で作られた刃に止められた。彼女は本当にひ弱な人間だったのか?と思わざるを得ないほど、鋭い剣筋だった。
「アーツと近接戦闘の組み合わせは、お前の専売特許ではない。……さあ、続きだ!」
「―――ッ! ああ!」
先ほどまでとはうって変わって、接近戦が繰り広げられる。
刃を振るうスピードは私の方が遥かに上だ。だがフロストノヴァもまた、ビッグベアのようにこちらをけん制するアーツの使い方をする。飛んでくる氷柱、冷気。なかなか決定打を与えられない。
(ならば、搦手で……!)
雪を蹴り上げ、相手の顔面を狙う。雪の飛沫で目くらましをするつもりだった。だが、彼女にはそれさえも児戯に等しいらしい。
「甘い!!」
即座に展開される氷の壁。私が既に斬りかかっていた刀も受け止められる。しかも、それだけでは終わらなかった。
「なっ、壁が……!!」
壁が砕け、こちらに向かって弾ける。何とか体をねじって破片をかわすと、見透かしたように回避先へ斬撃が来る。倒れ込みながらも剣を受け止め、鍔迫り合いが始まる。力を籠めやすい態勢という点では、立っている彼女の方が圧倒的だ。だが私も負けるつもりなどない。
「……くっ!」
「力は、ハァ!私の方が上らしいな!」
幼いころから何度も使ってきた蹴りで、彼女を吹っ飛ばす。腕でガードされたので、内臓にはダメージはいっていないはずだ。お互いに距離が離れ、仕切り直しと言ったところか。
「はぁ、はぁ……まだだ。まだやれる。」
……もっとも、いくら仕切り直しでも体力が回復するわけじゃない。体中細かい傷だらけだし、いくつか凍傷もある。体が震えるのは武者震いだけではないだろう。
フロストノヴァにしても同じだ。アーツを多用し、剣まで振るっているのだ。共に体力の限界は近づいている。
「……サクラーー!!頑張ってーー!!」
この声は、何だ?いや、知っている声だ。
「サクラ―ー!!」
「ロープ……。」
振り返ってみれば、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたロープが、こっちに声援を送ってくれていた。いや、ロープだけではない。
「サクラーー!負けんなーー!!」
「サクラちゃん!ふんばってーー!!」
「皆……。」
そうだ。皆、皆ついている。ロープやブレイズさんたちが、必死に私を応援してくれている。……ウタゲはなぜか、訳知り顔で腕を組んでいるが。十人十色のやり方だが、共通していることがある。皆、私を思ってくれている。
どうして忘れてたんだろう。あるじゃないか、私には。受け継いだものも、つかみ取ったものも。たくさんたくさん、残っている。
「……羨ましいな、サクラ。」
ゆっくりと立ち上がったフロストノヴァが、こちらを見据える。
「お前には、あんなにもたくさんの仲間たちがいる。……羨ましい。」
「……それを言うなら、お前だって。」
「何?」
彼女は何か勘違いをしているらしい。自分が一人だと、思ってしまったらしい。
「―――さん!」
「……え?」
思わず振り返るフロストノヴァ。だが私も、さすがにこの背中に斬りかかるような野暮はしない。……そんな勝機を逃してでも、彼女がこれを見ることには価値がある。そう思ったからだ。
「姐さん!負けないでくれーー!!」
「頑張れ、姐さーん!!フロストノヴァーー-!!」
「……ペドロワ。プラヴィルノ。テストック……。」
いつの間にか目覚めていた人質たち。彼らから、フロストノヴァに惜しみなく声援が送られる。
「お前、たち……。」
「……私の言った通りだろう?お前は、一人じゃない。私と同じでな。」
「……そして、敗けられないという点でも。」
フロストノヴァがゆっくりと振り返る。その瞳に、私と同じ色を宿して。お互いに体力は限界、決着は近い。
「もう……終わりだな、サクラ。信じてもらえるかはわからないが……楽しかった。本当に、本当に……お前との戦いは、胸が躍った。」
「……私もだ。だけどそろそろ、12時の鐘が鳴る頃らしい。決着はもうすぐそこだ。」
私たちは顔を見合わせ、どちらからともなく笑う。お互いが考えていることが、はっきり手に取るように分かったからだ。
「「……勝つのは!!私だ!!」」
次の技で決まる。私は何を使うべきだ?……今まで使ってきた多彩な技が脳裏に浮かぶが、使うべき技は一つしか思い浮かばなかった。……師匠に教わった、『
―――――
「いい?桃。これからあなたにぴったりの奥義を教えるわ。心して聞きなさい。」
いつになく真剣な表情で私に技を伝授しようとする師匠。その姿に私も思わず身が引き締まる。
「この奥義は、あなたのように強い脚力のある剣士しか使いこなせないとされているわ。……そして、うちの一族の技の中でも、最強の名をほしいままにしている。」
「師匠……。いいのか?そんな技を、外様の私に教えてしまって……」
「いいのよ。どっちにしろ、しずかに扱えるものじゃないし。そのまま滅んでしまうくらいなら、誰かに伝えて受け継いでいった方がいいでしょう?」
そう言ってにっこり笑う師匠。……それだけ私に期待してくれているのだ。これは何が何でもモノにしなくては!
「そうか、師匠……。そんなにも、その技を……。」
私はちょちょぎれた涙をそっと拭うと、決意をあらたにした。必ず、習得して見せる!
―――――
超前傾姿勢。サクラのその構えを見た時、あたしの背筋は凍った。
「ウッソまじ?サクラ、あれやる気なの?」
「ねーウタゲっち。
その呟きにブリさんが目ざとく反応する。こういう時のブリさんほんっと鋭い。
「あー……まあ隠すようなもんでもないか。……すっごい強い技。その代わり、最悪死ぬかもだけど。」
「はぁ!?」
「え!!?ま、待って待ってウタゲ!それなのになんで止めないの!?命は大事だよ、早く辞めさせなきゃ!」
聞き耳を立てていたのであろうロープちゃんも乱入してくる。ほんとイイ子だ。
「……そりゃもう、信じてるからに決まってんじゃん。サクラが簡単に死ぬ奴じゃないって、わかってるでしょ?」
その言葉を聞いて2人はハッとした顔になる。きっかけは違えど、皆あいつに魅了されちゃった3人だ。私たちにはわかる。あいつが、とんでもない奴だってこと。何でもわかってるみたいに行動する癖に、肝心なところで抜けてる。それでもなんやかんや、最後は最高の結果をもたらす。私たちが、何よりも信じられるあいつ。
「……それもそっか。まあサクラなら何とかするっしょ。」
「そ、そうだよね!ボク、もっとサクラの応援してくるよ。」
そう言って3人が3人とも、戦いの行方を見守る。あたしは震える膝をなんとか隠せたことにほっとしながら、サクラを見つめる。
「お願い……なんとか、無事に帰ってきて、サクラ。……桃。」
――――――――
(何だ?何を考えている?あの姿勢は何だ?)
私の方を見ているのかどうかも分からないほどの前傾姿勢で、刀に手を添えている。奴が何を考えているのかはわからないが、私は私の全力をぶつけるだけだ。
「揺りかごが揺れる~♪」
アーツが展開され、あたりに冷気が充満する。仮に近づいてこようものなら、私が剣で受け止める。一秒でもこの冷気の中にいれば、たちまち氷漬けになるだろう。
(……感謝、している。だが、だからこそだ。)
恩人に手をあげることは不義理だと理解している。だがそれでも、戦わずにはいられないのだ。戦わなくては、私の中の怒りが消えないのだ。この大地に対する、この世界の理不尽に対する、終わりの見えない怒りが。
(命まではとらない……だが!勝つのは私だ!!)
―――――――
勝負は一瞬で着く。それはこの場にいた、誰もが確信していることだった。かたやアーツを展開し、十全の準備を整えたフロストノヴァ。かたや不気味なほどに静かな構えで、隙だらけに見えるサクラ。
―――先に仕掛けたのは、サクラだった。
「!?」
「ウソ!?」
「何だと!!?」
何と、サクラは。前傾姿勢のまま、
「バカな―――!?」
その行動に最も虚を突かれたのはフロストノヴァだった。絶対にありえないと考えていた全力の突進。しかし驚いたのはほんの一瞬。すぐに頭を切り替え、アーツを強める。……はっきり言って、この行動が出来ただけでもフロストノヴァは素晴らしい戦闘センスだと言わざるを得ない。そのまま突っ込んで来れば、サクラは氷像になっていたことだろう。
―――――普通のスピードなら、の話だが。
(冷気を、突き抜けた――――!?)
どんなスピードならそんなことが出来る!?それでも無傷では済まないはずなのに、なぜ何のためらいもなく動ける?わからないことだらけだが、たった一つだけわかることがある。私のもとに刀が迫っており、私は負けたということだ。
(……戦士としても、敗けたか。)
だがそれでも、私は晴れやかな気分だった。
―――――――
「この技の内容は『足にすべての力を集中させて、敵にまっすぐ突っ込む』……ただそれだけよ。」
師匠はさも大層なことのように告げた。ものすごく複雑な数式を考えているような顔で、とんでもなく単純なことを言っている。
「いや、あの……師匠……」
「あら、何かしら?何でも質問してちょうだい。」
「いやこの技……霹靂〇閃じゃ」
「いやオリジナルだけど?」
「無理があるだろ!やだよ何で私の奥義はパクリなんだよ!そもそもその技、再現できるわけないだろ!!」
桃は珍しく声を荒げて師匠に抗議した。口調も随分気安いものだが、それは2人の仲が非常に良好なことを表していた。
「まあまあそんなこと言わずにホラ。男も女も度胸!何でもやってみるもんよ。」
「はあ……もう、しょうがないな。で、どうすればいいんだ?」
こういうノっているときは本当に娘と似ている師匠に指導を受け、ひとまずサクラは霹靂いっせ……いや、奥義の稽古を始めた。
(……桃。その技、本当にあるのよ。)
それを見ながら、師匠は心の中で彼女に呼びかける。
(そもそも相手が捉えられないような速度で相手の首を取るなんて、誰が考えても最強に決まってるじゃない。誰もが考えて、そして諦めた究極の剣技よ。)
(何で出来ないのかなんて、そんなの決まってるわ。こっちの刀が届く前に、敵の攻撃でやられるのがオチだもの。いくら桃が素早いからって、捉えられないほどじゃないわ。)
(じゃあ、何で桃にやらせてるのか。)
「お、桃ま~た面白そうなことしてるじゃん!今度は何、どんな技なの?」
「あ~霹靂一〇だ。師匠がやれってさ。」
「何それウケる。あたしもなんかやろっかな~。流〇舞いとか出来たらカッコよくね?」
自分の部屋で雑誌を読んでいたしずかが、いつの間にか庭に出てきていた。あの子はめんどくさがりの癖に、桃のやることはすぐマネしたがるから面白い。無意識的に、置いて行かれないようにしているのかもしれない。あるいは――あの子が、桃が人を惹きつける何かがあるのかもしれない。
(そういう奴なら、出来そうじゃない?敵の攻撃を、他の仲間に防いでもらったりさ。)
非常に優れた脚力は、捉えきれないほどのスピードを産む。搦手を使う機転の良さは、敵の隙を作り出す。仲間を惹きつける魅力は、勝利を導く道となる。
(桃。あんたなら出来るよ。霹〇一閃。)
……結局この技は〇靂一閃なのかどうか。それはきっと、彼女しか知らないのだろう。
その彼女は、キャーキャー言いながら稽古をする二人の娘を微笑ましく見つめながら、今日の献立を考えていた。―――彼女は今も、戦場にいるというわけだ。
――――――――――
「グッ、うううう……」
倒れるフロストノヴァの体を何とか受け止めたサクラの腕が、凍傷によって灼けるように痛む。すぐにブレイズが駆けつけ、腕を温めて応急処置を行う。続いてやってきたガヴィルが、治療アーツを使おうとする。
「私はいい!それより、フロストノヴァを早く!」
「何言ってんだ!お前も痛くねえわけねえだろ!」
「命に関わるものじゃない!こいつは死にかけなんだ!!」
「あーくそ、わかったよ!お前も後で治療だからな!」
ガヴィルはすぐに治療アーツをフロストノヴァに全力でかけながら、担架を組むよう指示を出す。その指示に答えたのは、意外な人物たちだった。
「……俺たちに、やらせてくれないか?」
「お前たち……!?スノーデビル!」
「……あなたへの感謝は、また改めてさせてほしい。でも今は姐さんの傍にいさせてくれ!何とか、何とか助けてあげてくれ!!」
「この防寒カバーを使ってくれ。こうすれば凍傷にならずに済む。」
フロストノヴァを柔らかな毛布のようなものでくるみ、抱えられる準備をする。そこまでやって、サクラはある人を呼んだ。
「彼女を運んでやってくれ、ドクター!」
「え、ちょっとサクラちゃん。私が……」
「いや、やるよ。やらせてくれ。」
「ドクター!?大丈夫ですか?」
サクラの方をちらりと見るドクター。二人の視線は交錯し、確かに意思疎通が為された。ドクターはフロストノヴァを体の前で抱え、駐車場の階段へと歩き始める。聞こえているかどうかもわからないが、声をかけ続けながら。
「ドクター、あなたなら大丈夫だ。……なんせ、チェルノボーグの地下から生きて帰ってきたんだろう?ツキがあるはずだ、あなたには。」
それを見届けると、サクラは糸が切れた人形のように崩れ落ちた。倒れ伏す直前に、紫色の髪が見えた気がした。
――――――――――
「ここ、は……?」
私は目が覚めると、初めて見る天井を見つめていた。寝かされている地面がとても柔らかい。これは、ひょっとしてベッドだろうか?
「目が覚めたのか?」
「!!」
ひどく聞き覚えのある声がして、すぐに横を向いた。隣のベッドに、サクラが横たわっていた。
「サクラ……!?ということは、ここは」
「ああ。ようこそ、ロドスへ。……とりあえずナースコールするべきなんだろうけど、ちょっとだけ待ってくれないか?お前も、今の状況が知りたいだろう?」
その言葉にうなずき、私はベッドに再び横たわる。サクラは一つずつ、ゆっくりと話し始めた。
「まずスノーデビル小隊だが、あの廃ビルにいた全員を――いや、ビッグベアを除く全員を、だな。保護して、現在入院中だ。この話が終わったら、会いに行ってやるといい。……あいつら、自分も歩くのでやっとの癖に、毎日ここに来てたからな。流石に鬱陶しかったよ。」
「お前は私に負けた後、医療オペレーターたちが総出で治療アーツをかけて延命したんだ。あの場所から運びだして、ロドスに担ぎ込んだ後緊急手術……ひとまず峠は越したらしい。もちろん戦闘は禁止、アーツもしばらく使うなとのことだ。死にたくなかったら従うんだな。……もしくは、暴れる患者をぶん殴って大人しくさせるお医者様にかかりたくなかったらな。」
「ドクターは……そう、その話をしなきゃいけない。ドクターやアーミヤは、チェルノボーグへ向かった。レユニオンを……タルラを、止めるために。」
その言葉を聞いた時、心臓がドクンと跳ねるのを感じた。チェルノボーグ。タルラ。……父さん。
「タルラは破れ、今はここの独房に入れられたらしい。何も話さないそうだが、逃げられはしないだろう。」
「それで、その……。パトリオット、なんだが……。」
「いい。」
「え?」
ぽかんとした顔になるサクラ。しかし、わかっているのだ。ここがこんなにも穏やかで、無事だということは、そういう事なのだろう。
「……そうか。だがこれだけは伝えさせてくれ。彼は最後に、こう言っていたそうだ。『我が、娘、を。……エレーナを、どうか、頼む。』」
「……!!」
思わず息をのみ、目の奥がじんわりと熱くなる。あの日に、両親が死んだ日に枯れたはずの涙が、私の目に帰ってきていた。
「……彼が最後に思ったのは、間違いなく君のことだ。彼は壮絶な最期を遂げたと聞いているが……」
「最後に娘のことを思いながら逝けたのならば、それはきっといい最期だったんだ。」
私はそのやけに実感のこもった声に、思わずサクラの顔を見つめた。……泣いている。遠い目をしながら泣いている。それを見ると、私もどうしてもこらえきれずに涙をこぼしてしまった。
父さん。ごめんなさい。でも、少しは喜んでくれるだろうか?私が久しぶりに泣けたのだといったら……あなたのために泣けたのだと言ったら、ほんの少しでも頬を緩めてくれるだろうか?
「……そうだな、話を続けよう。これが最後の話だ。……約束を、守るつもりはあるか?」
「……嫌だといったら?」
「その時は、そうだな……。もう一回ボコボコにしてやる。お前が泣いて謝って、仲間にしてくださいって言うまで殴るのをやめない。どうだ?」
「フッ、フフフ……。」
妙にふざけた言い方をするものだから、思わず笑ってしまった。涙を流して、笑う。こんな私にもまだ、これほどまでに豊かな感情が残っていたのか。悲しみ。愉快さ。……そしてその後に来たのは、憂慮だった。
「……だが、私は戦えないのだろう?それなら、私に意味などあるのか?私を抱えたところで、ただの荷物ではないのか?」
サクラはそれには答えず、黙って何かを投げ渡してきた。それはやけに見覚えのある、緑色の小瓶だった。
「これは……!」
「……あのキツネちゃん、喜んでたぞ。ひどい凍傷にもよく効いて、全然痛まないって。私も同じ意見だ。ドクターの発案でキツネちゃんから貸してもらったけど、今じゃもう跡すら残ってない。戦いの後はひどかったらしいんだけどな。」
薬だ。私が父さんのために調合し、ロドスの戦士に渡した凍傷の薬。
「研究部の人らもびっくりしてたそうだ。『民族的な薬も侮れませんね』だとさ。……それから、『ぜひうちに来てほしいです』ともな。
「……私が思うにさ、人間ってのはそんなにちっぽけなものじゃないんだ。私だってもともとは武家の娘だ。そのままどっかの家に嫁いで、子育てでもしてたのかもしれない。……だが現実は波乱万丈、JKになり、感染者になり、製薬会社に就職だ。」
「だからさ、お前にもたくさんの可能性があるんじゃないかと思うんだ。アーツが使えなくても、戦えなくてもさ。研究者になってもいいし、アーツ学の教師になってもいい。……なんなら、私たちと一緒に後方勤務でもするか?めちゃくちゃ地味な作業だから、私は戦場にいたいが。」
「どんな道を選んでも、大丈夫さ。私もいるし、ウタゲやアンブリエルやロープもいる。ドクターもアーミヤも、何よりスノーデビルがいるだろう?」
「ここからがスタートだぞ、フロストノヴァ。お前の道が正しい限り、私たちが共に歩もう。お前の道が間違ってたら、縄をかけてでも戻してやろう。……だからさ、これからよろしくな。」
私は、小瓶を握りしめて胸に抱えた。決して割れてしまわないよう、優しく握りしめてだ。この胸に湧き上がってくる熱を、どこにも逃がさないように。
「……サクラ。」
「何だ?」
「……お前の本名はなんと言うんだ?」
「ただじゃ嫌だな。……そう、ロドスに加入してくれるなら考えてやってもいいぞ?」
「フッ……約束は約束だ。これも含めてな。加入する代わりに名前を教えてくれ。」
「本当か!?桃だ桃!本田桃!言質とったからな!」
「フッ……やはり、お前はサクラの方がいい。春の花だからな。」
その言葉を聞いて、サクラは心底嬉しそうに笑った。奴の真剣な顔はたくさん見てきたが、満面の笑みは初めてだった。
「さ、そうと決まればこの書類にサインしな!そいつをドクターのところまで持っていけば、これで晴れて仲間だ!」
「落ち着け。今、読んでいるところだ。」
私は書類に一通り目を通すが、どこにも理不尽な点や呑めない要求はない。むしろ兄弟姉妹たちを受け入れてくれるなら、どんな契約でもよかったのだが。
「書いた?書いたな?よし持っていこう!歩けるか?何なら私が運んでやろうか!?いや運んだ方がいいなそうしよう!」
「いや、歩くさ。……これからも、歩いて行かないとなんだからな。」
サクラは不満げだったが、案内をしてもらってドクターの執務室へと向かう。あの男とも久しぶりに会えるのだと思うと、自然と足取りが早くなる。まだ少しふらついてしまうため、サクラが慌てて手を取ってくれた。手袋越しだが、しっかりとした熱が感じられた。
そうしてようやく立った執務室の前。私はノックを3回して、中にいるはずの男に声をかける。
「ドクター。フロストノヴァだ。……失礼する。」
期待に胸を膨らませ、ドアノブをゆっくりひねり、一歩足を踏み入れようとしたその瞬間。
パァン!パァン!
私は、撃たれたのか?
「わー!タンマタンマ!!銃とかじゃないから安心してって!クラッカークラッカー!!」
「……は?」
反射的に詠唱しようとしたアーツを引っ込め、改めて室内を見回す。見れば、壁にはキラキラとしたリボンや色とりどりの紙の鎖など、やけに楽し気に飾り付けられていた。そしてデカデカと吊るされた、「Welcome Frostnova」の文字。
「いやーまさかあたしのアーツで探知してサプライズすんのが裏目とか思わないじゃん。ここで襲われたらロドス終わりっしょ。」
「……お前たち、これは何だ。」
「それがさ、サクラが盛大に迎えてやりたいって言うからさー。それならパーティーするしかないじゃんってことで、ドクターにお金出してもらったんだよね。」
「そーいうこと。でも、やっぱ近くで見るとカワイイ顔してんじゃん。後であたしとサクラの部屋集合ね。メイク教えてあげる。」
ちらりと壁の隅に目をやると、涙を必死にこらえている様子の兄弟姉妹たち。お前たちも、あの日の約束を覚えていたのか。
「……ドクター。」
黒フードの上にピンクの三角帽子を被ったドクターに書類を提出する。この男の部下になるのかと思うと不安になる出で立ちだが、不思議とワクワクしてくる。
「新人オペレーター、フロストノヴァだ。これからよろしく頼む。」
「ああ、よろしく頼む!ロドスは、君たちを歓迎しよう!!」
その言葉を聞いて、私も兄弟たちも、涙をこらえきれなかった。ようやく見つけたのだ。私たちが受け入れられる新天地が。
誰も彼もが泣いていたが、笑顔でない者もいなかった。ロドス最初の日は、笑顔に満ちた日になったのだった。
――――――――
ここでタイマーストップ!
記録は■■■■■■!……普通だな!可もなく不可もなくって感じがぬぐえませんね。
完走した感想としては、RTAって難しスギィ!この一言に尽きますね。ほんの少しの運によって良い方向にも悪い方向にも転がり、しかし止まっている暇はないのでとにかく最善手を選び続けるという非常に神経を使う遊びでした。だがそれがいい。
あと、後続のためにアドバイスを残しておくとするならば、ロドスオペレーターチャートは遅いという事だけ伝えておきます。自信があるなら、最初からレユニオンに所属してロドスと内通するのが最も速いです。もろちん滅茶苦茶難しいので私はやりません。
さて、では普通なら戦犯リスト……もといスタッフロールを眺めるところですが、(このゲームにエンディングは)ないです。なので資料室へと向かいましょう。ここに来れば、私の今までの実績をアーカイブやトロフィーという形で確認することが出来ます。ここでトロフィーを眺めながら、本RTAの終了とさせていただきとうございます。
それでは長時間のご視聴、ありがとうございました!!
『君が泣くのは、この世に生まれてきたのが悲しいからか。』
テラに生を受けた。
『片翼をもがれて』
父親を喪った。
『ファーストブラッド』
初めて何かの命を奪った。
『もはや翼はなく』
母親を喪った。
『初めての経験』
初めて他の人間の命を奪った。
『新米兵士』
殺した人数が10人を超えた。(戦場限定)
『この場所の正義』
殺した人数が30人を超えた。(戦場限定)
『昇進間違いなし』
殺した人数が50人を超えた。(戦場限定)
『当然ではない』
10歳になるまで生存した。
『ウタゲとの出会い』
ウタゲと出会った。
『初めての学校』
学校に入学した。
『悲劇の始まり』
鉱石病に感染した。
『方舟へようこそ』
ロドスに入艦した。
『アーミヤとの出会い』
アーミヤと出会った。
『楽しいおしごと』
ロドスで初めての仕事をやり遂げた。
『体は闘争を求める』
ロドスで前線のオペレーターになった。
『アンブリエルとの出会い』
アンブリエルと出会った。
『轟く叫びを耳にして』
初めて任務に派遣された。
『INSANE』
仲間の数の100倍以上存在する敵と戦い、勝利した。
『異質との出会い』
ドクターと出会った。
『これこそが破壊である』
天災に遭い、なんとか生き延びた。
『爆炎女皇』
タルラと遭遇し、生き延びた。
『爆弾魔』
Wと遭遇し、生き延びた。
『また喪った』
初めて仲間を死なせた。
『ようこそ龍門へ』
龍門に初めて訪れた。
『信念の碧い龍』
チェンと出会った。
『ロープとの出会い』
ロープと出会った。
『触れてはいけない』
ミーシャと出会った。
『対爆シェルター』
Wと再び遭遇するも、撃退に成功した。
『悲劇の否定者』
スカルシュレッダーが生存したまま、ミーシャを保護することに成功した。
『運命の輪は不変なり』
スカルシュレッダーが死んだ。
『冬空より愛をこめて』
フロストノヴァと出会った。
『悪くない思い出』
フロストノヴァと語りあい、ロドスに加入する約束を取り付けた。
『龍の炉心へ』
龍門近衛局のビルへ乗り込んだ。
『比翼連理』
メフィストとファウストに出会った。
『比翼を断つ者』
メフィストとファウストに勝利した。
『殺すしかない』
メフィストの特殊感染者に遭遇し、命を奪った。
『ブレイズとの出会い』
ブレイズと出会った。
『才能あるのかも』
初めて扱った銃を命中させた。
『影より出でて』
影衛と出会った。
『闇を祓う者』
影衛を撃退した。
『あなたとならば』
ウタゲの親密度が最大になった。
『Deo Volente』
アンブリエルの親密度が最大になった。
『とんでもないものを』
ロープの親密度が最大になった。
『冬は終わらず』
スノーデビル小隊を倒した。(不殺限定)
『心まで融かして』
フロストノヴァを倒した。(不殺限定)
『雪ウサギは春に遊ぶ』
フロストノヴァがロドスに加入した。
―――――Never Ending―――――
というわけで無事、完結させることが出来ました!処女作という事もあり、完結まで走り切れるかどうかは本当に不安だったのですが、皆さんのコメントや評価のおかげでここまでこれたのだと思っています。本当にありがとうございます!
これからの予定ですが、フロストノヴァのオペレーター人物ファイルと、フロストノヴァを加えた日常の短編をいくつか書こうと思っています。それが終わったらアンケートで選ばれた次回作の、『ウマ娘の強面トレーナーがTSした話』を連載しようと思っています。原作が変わってしまいますが、そちらも読んでいただけると嬉しいです。
あっそうだ(唐突)。私の他にも、『俺の方がもっと上手くフロストノヴァ姉貴を救えるんだ!』とお思いの方がいらっしゃれば、遠慮なく投稿して♡見つけたら評価を入れる専門家を呼んでやるからな?
最後に一言、アークナイツRTAもっと増えて♡
次回作、どっちがいいんすか?
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強面トレーナー、TSする。
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パワプロRTA北雪高校モテモテチャート