アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA   作:春雨シオン

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 夏真っ盛りの初投稿です。今回からアフターストーリーという事で、第一弾のシエスタ動乱編をお送りします。なお、第2弾はウルサスの子供たち+1名です。誰なのかはこうご期待。

 最近コロナがまた流行り出して外に行けないと悲しむホモの心を、少しでもこれが癒してくれるといいなあ(願望)


シエスタ旅行に行こう(提案)Part1

【デートに行こう(提案)】

「ねードクター。次の休暇、シエスタに行くってマ?」

 

 きっかけはアンブリエルのそんな何気ない質問だった。今日は珍しく彼女一人だけが休暇の日であり、サクラやウタゲといった面々は事務作業のために出勤していた。そのため彼女は暇を持て余し、こうしてドクターの執務室になんとなくやってきたのだ。

 

「……それより、私としてはアンブリエルさんがいくら休日とはいえ執務室のソファーで寝ていることの方が気になるのですが?あまり言いたくはありませんが、ドクターの邪魔をしない方がいいのでは?」

 

 そう苦言を呈したのは今日の秘書官であるプリュムだ。ドクターが帰還してすぐの頃は、秘書官をアーミヤやフロストノヴァが務めることが多かったのだが、ドクターが他のオペレーターとの交流を図るべく、週替わりで秘書官を務めるオペレーターが変わることになったのだ。秘書官は「楽な仕事なのに手当が出る」「お高いお菓子がたまに出てくる」「ドクターと話せる」などの理由で人気があり、中には交代を交渉する者もいるほどだった。

 

「あー……そういうことね。ま、なんたってプリュムはドクター専属の護衛になりたいくらいだもんね?わかりみわかりみ。」

 

「なっ……そ、それとこれとは関係ないでしょう!何をわかった気になっているんですか!」

 

 顔を真っ赤にした彼女を無視し、アンブリエルはドクターに向き直る。

 

「で、よ。結局のところどーなんドクター?それによってあたしの休暇がステキな物になんのかどうかが変わるんだけど?」

 

 実際のところ、彼女にとっては長期休暇というだけで小躍りしてしまうレベルにステキな物なのだが、それがロドスの中で過ごすのかあの観光都市シエスタで過ごすのかというのは全く違う意味を持っていた。新し物好きな彼女にとって、あの都市は憧れの的だったからだ。

 

「ああ、そうだよ。いろいろ大変だったことだしね、皆で羽を伸ばしてくるといいとお墨付きをもらったよ。」

 

「マ!?」

 

「本当ですか!?」

 

 ドクターの何気ない肯定の言葉に対する女性陣の食いつきはすさまじかった。

 

「ドクター、私はそのような話をお聞きしていません!いつから出発なのですか!?」

 

「え、えと確か2週間後だと……」

 

「2週間!?ちょっとそんなん全然準備期間ないじゃん!しかも今月ピンチなのに!あ~もうドクター!あたしのこれからの買い物、全部来月の分前借しといてね!」

 

 嵐のように去っていったアンブリエルを、ドクターはポカンと見つめることしかできなかった。しかしプリュムにはその気持ちが痛いほどよくわかり、自分はどうすべきなのかと思考を巡らせ始めた。

 

 

――――――

 

 

「えーっ!?何、マジでシエスタ行けんの!?最高じゃん!」

 

「ホントに?ホントに行けるのアンブリエル!ボク、雑誌で見てから憧れてたんだよ!」

 

「シエ……?」

 

「スタ……?」

 

 天使の運んできた「シエスタで休暇を」の知らせに、いつものメンバーの反応は真っ二つに分かれた。シエスタの誇る青い海、白いビーチ、そして最高にアガるイベント、黒曜石祭……ウタゲとロープの心は既に、ドリンクと共に日焼けを始めていた。対照的なのはサクラとフロストノヴァの二人である。どうしてアンブリエルを含めた3人がそんなに興奮しているのか全く分からず、ポカンとした顔をしている。そんな顔を3人が見逃すはずもなかった。

 

「ちょっとサクラマジ?あたしが買ってきたKyanKyanちゃんと読んだの?」

 

 KyanKyanとは極東のティーンの間で大流行している雑誌であり、ほとんど読書というものをしないウタゲにとって唯一の愛読書と呼べるものだ。サクラとウタゲ以外には極東語が読めないため、仲間内ではあまり人気がないのが彼女の不満ではあったのだが、それを差し引いてもファッションの情報や次に来るであろう飲食店情報など、ウタゲのJKライフに大きく貢献した本である。ロドスに来てからもその習慣は変わらず、ウタゲは最新号が出るたびに取り寄せ、バックナンバーも大事に保管していた。彼女はやれやれといった風にその保管場所に向かうと、一冊を取り出して戻ってくる。

 

「ほらコレ。“夏のシエスタ大特集!”ってやつ。これ読めば大体わかるから。」

 

 手渡された雑誌を興味深そうに眺めるサクラとフロストノヴァ。見れば、ド派手な色遣いでシエスタのすばらしさを謳う文字が踊っている。透き通るような海、所狭しと並んだオシャレな店、そして思い思いに着飾った観光客たち。まさしくこの世の楽園と呼ぶべき場所がそこにはあった。

 

「おお……これはすごいな。」

 

「そうか?私にはただ妙な格好をした連中にしか見えんが。」

 

 サクラにもシエスタの熱が伝わったが、フロストノヴァはいまだ冷淡だ。このままでは盛り上がっている気分に水を差される。そう判断したウタゲはフロストノヴァを何とかシエスタの沼に突き落とそうと画策する。

 

「まーまーそう言わないでよノヴァちゃん。しょーみ、休暇を過ごすならシエスタ以上のとこなんてないと思うよ?とりま行ってみればさ、良さがわかるって。」

 

「……そんなものかもしれないな。」

 

 フロストノヴァも一応の納得を見せたところで、話題は当然シエスタでの計画についてだ。どんな店に行こうどんな服を着ようなどと、雑誌やサイトを見ながらわいきゃいしゃべる。この騒がしい日常を享受できることを、フロストノヴァやサクラのみならず、この場にいる全員が噛みしめていたことだろう。もっとも、彼女らの胸中は一人を除いてそれだけではなかったのだが……。

 

 

 

(夏、シエスタと来ればもう水着だよねー。やっぱドクターもオトコなわけだし?何とでも出来るんじゃないかなー。)

 

(いくらドクターが仕事人間だからってシエスタにまで持ち込まないっしょ。てか絶対ちょっとは浮ついた気分になるはず。……仕留めるならそこっしょ。)

 

(観光客がたっくさん来るところなのにボクを野放しにするはずないよね?ってことはドクターの視線はボクに釘付けってことになって……えへへ。)

 

(さっき見せてもらった雑誌……そこの人々は露出度の高い服装で、皆キラキラとした表情をしていた。……私も、ドクターと……。)

 

(観光都市シエスタ……きっと、集まる材料も料理人も一級品に違いない。いやロドスの食事に不満はないがそれはそれとしてな?)

 

 

 ―――なんだこれは……たまげたなあ……。

 

 

 サクラの中の『声』がこの状況を見たらきっとそう漏らしていただろう。まるで思春期の男子中学生のような色ボケっぷり。しかもその対象は全て同じ男ではないか。いや約一名、まったく関係のないことを考えている者もいるが……

 

 

 しかしこうなったのは全面的にドクターに問題がある。そこまでの経緯を簡単に説明するとこうなる。レユニオンとの激戦の後、体が癒えたサクラは時々ドクターの執務室に様子を見に行っていた。理由は一つ。フロストノヴァがここで秘書業務にあたっているからだ。いくら治療を受けて劇的によくなったとはいえ、未だ鉱石病は彼女の体に残っている。彼女の体調を心配してのことだったが、サクラが行くところ例の3人ありである。執務室はすっかり溜まり場のようになってしまっていた。

 

 しかしそれはドクターの望むことでもあった。もともとフロストノヴァの事を他のオペレーターにも知ってもらおうと始めた取り組みであったし、まだまだドクター自身もオペレーターのことを知りたいと思っていたからだ。ドクターとオペレーターたちは言葉を交わしあい、親交を深めた。戦場に出ればどんな苛烈な戦いでも、味方のオペレーターの一人にも怪我をさせまいと細心の注意を払い、帰還した誰もが口にした。『ドクターが連れて帰ってくれた』と。

 

 ―――こうしてドクターは、多くのオペレーターの尊敬を集め、中でも複数の女性から熱い視線を浴びることになった。そんなドクターに彼女らが惹かれるのも、仕方のない事であるだろう。なにせ、皆恋に恋するお年頃なのだから。その上ウタゲ、アンブリエル、ロープ、そこにフロストノヴァを加えた少女達は、様々な理由で故郷を離れている。本来、まだまだ親の庇護下にあるはずの彼女らにとって、それはひどく心細いことであったことだろう。その心の隙間を埋めてくれたサクラ、そしてドクター。彼女らの心はその両名に支えられ、サクラが恋の対象になる性別でない以上、ドクターに恋慕の情が向くのは当然であった。

 

 そのくせ、ドクターは彼女らの想いに全く気付いていない。いや、彼女らのものだけではない。あのけなげにアピールを行うヴァルポの女学生も。夢に出るほど強く想い、二人きりのレジャーに誘う暗殺者も。作ったデザートを誰よりも先に食べてほしいと囁く少女も。……ドクターはひょっとして釣った魚に餌をやらないタイプなのではないかと思われるほど、彼は朴念仁を極めていた。嗚呼、彼の作戦に向ける理性の1%でも、こちらの方面へ向けられていれば……。

 

 

 

 話を戻そう。つまり多くのオペレーターたちが、これをチャンスだと考えていた。否応なく高揚する黒曜石祭。年頃の男女が共に軽装、何も起きないはずがなく……というのを期待するのは人情というものである。どこぞの貿易会社の社長の如く、彼をリゾート地までさらっていくような財力も権力もない普通の女性たちにとって、これは千載一遇のチャンスであったのだ。

 

 皆、感じ取っていた。戦の匂いをだ。これは戦争になる。誰もが確信していた。シエスタでの3日間のバカンス。滞在期間よりも移動時間の方が長いような旅行であっても、好機には違いない。

 

 だがこの状況は、本来ならばありえないものだったはずなのだ。というのも、箝口令が敷かれていたためである。アーミヤのCEOとしての権限によってだ。アーミヤは「皆さんにはサプライズという形でお伝えしましょう!びっくりさせたいですから秘密ですよ?」と、年相応の可愛らしい思いつきに、誰もが頬を緩ませた。その裏には、旅行への準備をさせまいとする悪魔のような陰謀があるとも知らずに。戦いというものは、始まる前から決着がついているものだ、というのはあまりにも有名な格言であるが、アーミヤはまさにそれを実行せんとしたのだ。自分だけが知りえた情報やコネを最大限に活用し、怪しまれないように偽装しながらかわいい水着を仕入れ、最終的にはドクターの予定をすべて埋め尽くすつもりだったのだ。まさに魔王!魔王的所業!!

 

 だがそれは今、他ならぬドクターの手によって暴かれた。アーミヤは外を警戒するあまりに、足元がおぼつかなくなっていた。ドクターへの根回しをおろそかにしていたのだ。その結果アンブリエルへと情報が漏れ、彼女の友人たちに漏れ、結果千里を走る勢いで情報が駆け抜けた。今年の休暇はシエスタ!ドクターも羽根を伸ばす!今ではもう、誰も彼もが顔を突き合せれば休暇の話しをするほどだ。その状況にアーミヤが歯噛みしたのは言うまでもない。いったいなぜ!?どこから漏れた!?

 

 

 

 さあ、戦いの前に、今一度状況の確認を。アーミヤの一人勝ちで終わるはずだったこのシエスタ旅行は、今や誰が自分の理想のバカンスを過ごすのか、まったく抜きんでたものがいないフラットな状況になった。ロドスはまさに乱世!魅力(ちから)ある者たちが、理想を求めて覇を競う!それぞれの思惑を載せ、ロドスは今日も航行を続ける。外は快晴だったが、中で嵐が吹き荒れるのは、そう遠くないことだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回は大量にオペレーターが出る予定なので、フロストノヴァ姉貴たちが霞まないよう気を付けナス!

次回作、どっちがいいんすか?

  • 強面トレーナー、TSする。
  • パワプロRTA北雪高校モテモテチャート
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