アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
紆余曲折ありはしたものの、ロドス御一行はシエスタに旅立った。ロドスの現在位置からシエスタまでは実に一週間近くかかるというなんとも過酷な道のりである。もっとも、これがロドスの限界というわけではない。飛行装置を使えばもっと早くたどり着くことは可能だ。公になってはいないものの、その使用申請をブレイズが行っていた。彼女は本編ではフロストノヴァとの戦いで負傷し、シエスタ旅行には行けなかった。しかしこの世界ではほとんどサクラしか戦っていないため、彼女の元気は有り余っていたのだ。
そのせいか、ケルシーに交渉を仕掛けるという蛮行を犯してしまったわけである。それも、「お願いがあるんだなあ^~」と極々軽い調子で。……エリートオペレーターである彼女は、地位としては相当高い位置にいる。故にケルシーと砕けた口調で話すことはそう間違いではない……ケルシーが三徹目でなければの話だが。
結果、ブレイズはあわや休暇を取り上げられる寸前まで行くという恐ろしい結末を招いた。噂では、とてもその年のある程度高い地位に就いた女性がやるとは思えないほどの懇願によって、辛くもバカンスを手にしたそうだが……。
話を戻そう。バカンスに行くためには一週間近くかかる上、それを希望するメンバーも数多く存在する。当然一台一台車を出すわけにもいかないので、ロドス本艦を航行させているのである。カレンダーにバツが増え、どんどん赤いマルに近づくにつれ、ロドスの雰囲気はどんどん熱を帯びていった。
そしてそれは、彼女の周りにおいても例外ではない――――
「姐さん!あと3日だぜあと3日!!」
「おいおい、あまり騒ぐなよ。……まあ俺も気持ちは同じだがな。なんなら、今からでも一杯空けたい気分だ。」
「……言っておくがペドロワ。もし乱痴気騒ぎなど起こそうものなら、お前は休暇中ずっと氷の中だからな。」
そりゃないぜ姐さん、と悲鳴を上げるウルサス人の男と、それを見て笑う周り。賑やかで穏やかな午後を過ごす彼らの名はスノーデビル小隊。そしてその中心にいる少女がフロストノヴァである。彼らは常に一連托生と思われていたのだが、ロドスに加入してからは別々に行動することが多かった。その理由は、中心のフロストノヴァの提言によるものだ。
「『我々はロドスに急ぎ馴染む必要がある。寄り添いあって寒さに耐えるときは終わったのだ。』……へへっ、今でも鮮明に思い出せる。あの時の姐さん、かっこよかったなあ……。」
「……その時の話はどうでもいい。それよりお前たちは、少しはロドスに馴染めたのか?」
スノーデビル小隊の面々は皆大きく頷いた。
「もちろんだ!皆いい奴だからな、すぐに打ち解けたさ。姐さんの方は……「あっいたいた!」
男の声を遮り、快活そうな女性の声が響く。振り返ってみれば、炎国風の衣装に身を包んだウルサスの女性と、どこかとげとげしい雰囲気のリーベリの女性がいた。
「……珍しい組み合わせだな。あまりつるむようには見えないが。」
「へへ、それいきなり聞いちゃう?それがね!」
「ちょっと。……スノーデビル小隊がいるでしょ。邪魔になってるんじゃないの。」
「いや、何も問題はない。兄弟たちよ、
その言葉を聞いた時、小隊の中に緊張が走る。
「おい!お前ら聞いたな!姐さんのご友人だ!」
「散れ!散れ!壁になれ!!」
慌ただしくどこかへ去っていったスノーデビル小隊。周りの職員たちは慣れっこなのか、特に気にする素振りも見せていない。残された3人も、呆れたように笑っている。
「いやあ、いつものことながらすごいよね。映画のセット片付けるみたい。」
「……いつもあんな風で、鬱陶しくないの?」
「フッ、いつもああだからこそ、だ。まあつまり、慣れだな。」
微笑しながら、訪ねてきた友人に着席を促す。エフイーターとグレースロートはまだ食事を済ませていなかったのか、手に持っていたプレートをテーブルに置き、フロストノヴァの向かいに座った。
フロストノヴァと二人の付き合いは意外と長いものだ。グレースロートとの出会いは戦場からで、貪欲に強さを求める彼女は、最近アーツの指導を受けている。適正自体はそれほどだが、矢を強化することが出来るのではないかと考えているらしい。
エフイーターはサクラたちとの付き合いの中で知り合った。映画など見たことがなかったフロストノヴァに大量のビデオを持ってきたことは記憶に新しい。どれもアクション映画で、戦場のリアルを知っているフロストノヴァにとっては冷笑ものだったが、自分のために何かをしてくれたことが嬉しかった。
「それでさ、最近どうなの?噂だとドクターとゴハン行ったんでしょ?」
「まあ、食堂で二人で食べただけだ。別段変わったことはない。」
「ほんとに~?」
ニヤニヤしながら真っ赤な麺をすするエフイーター。真っ白なタンクトップ姿なのに、器用に食べるものである。
「結構話題になってるんだよ?どうやって約束取り付けたんだろう、って。ほら、ドクターめちゃくちゃ忙しいじゃん?ねえねえ教えてよー。アタシもドクターとランチ行きたいし!」
フロストノヴァはちらりと横目でエフイーターの隣のグレースロートを見た。彼女は興味がないという顔で黙々と食べ進めていたのに、今は手が止まっていた。わかりやすい奴だと心の中で苦笑しつつ、どう答えるかを考える。
「……そうだな、真面目にやっていただけだ。お前たちにもそのうちチャンスがあるだろう。」
「えーっ、なにそれ!やっぱ簡単には教えてくんないかー。」
「……。」
「フフ、サクラに聞いてみるといい。私の言った事と同じことを言うだろうさ。」
その後も3人は様々な話をした。もっとも、ほとんどはエフイーターが話題を出し、フロストノヴァとグレースロートがそれに答えるという形だったが。次の任務の事、新しく出る映画の事、交友関係の事……。取り留めもない話だが、穏やかな時間は彼女にとってとても幸せなものだった。
「うっうう……。姐さん、ほんとに……よかった……。」
「バカ、泣くな……。ぐっ、うう……。」
「あー……あれはいいの?ほっといて。」
「……ああ。気にするな。」
……それを見ながら号泣するバックコーラスがうるさいことだけが不満だったが。
「さて、では……授業を始めよう。」
私は振り返り、こちらを見つめる数人の候補生たちを眺める。皆一様に真剣な顔で、一つも聞き逃すまいと耳を傾けている。それに満足したのか、ゆっくりとアーツ理論を解説し始める。
ここは訓練室・第1講堂。戦術やアーツ理論を学ぶカリキュラムを受けられる場所だ。私はその卓越したアーツを買われ、ここで教鞭をとっている。アーツ理論は個々人によって異なることが多く、人それぞれ違うやり方をしていることがほとんどだ。つまり、出来るだけ多くのアーツ理論に触れることこそ、アーツ上達の近道であるのだ。私も自分の経験が役立つならと、教えることに抵抗はない。
「――――と、いうわけだ。何か質問のある者は?いないな?よし、15分の休憩の後、実技に移る。それぞれ訓練室に言っておくように。」
一通りの説明を終え、ペットボトルの水で喉をうるおす。触れていても水が凍らないのは新鮮な気持ちだ。これもロドスの治療の賜物なのだろう。
「あ、フロストノヴァさん!お疲れ様です!」
私と同じように、別の講堂で講義をしていたオペレーターが声をかけてくる。名前はエイヤフィヤトラ。確か、山の名前からとったものだと聞いている。彼女もまた卓越したアーツの使い手で、重度の鉱石病患者と私と共通点が多くある。そのためサクラたちを抜きにすれば、私がもっとも親しくしている相手と言っても過言ではないだろう。
「お前の方も終わったか。どうだ?今日の奴らは。」
「そうですね、皆さん真剣に聞いてくださって、とても嬉しかったです!」
「……そうではなく、出来はどうだったかという意味だったのだが。」
首をかしげるエイヤ。しまった、忘れていた。彼女は鉱石病の影響で耳が遠くなっており、耳の近くまで行かなくては会話が滞るのだ。だが、私にとってそれは苦ではない。むしろ彼女はアーツのおかげか体温が高く、普通より体温の低い私がひんやりして気持ちいいと言ってくれる。……そういう風に言われるのは少し、こそばゆいが。
「……そろそろ時間か。では、実技は頼んだぞ。」
「あっ、はい!私の技を見せればいいんですよね?」
「ああ、イグニッションを使ってくれればいい。……ドクターはあの技がお気に入りのようだからな。」
「え!?先輩がそういう風に言ってたんですか?」
「ああ。『エイヤが3人くらいいてくれたらなあ』と、いつも作戦概要を見て呟いている。」
「先輩が、私の事……えへへ。」
すっかり自分の世界に入ってしまったエイヤをよそに、私も思考の海に沈む。彼女がドクターのことを先輩と呼ぶのは、彼女の本職が研究者であるからに他ならない。彼女の研究分野において、ドクターが既にいくつもの論文を発表していたため、勝手にそう呼んでいるそうだ。ドクターも嫌がってはいないようだし、それでいいのだろう。
(だが、そうか。呼び名か……)
他のオペレーターとは違う、自分たちだけの呼び名。……私ならなんと呼ぶだろうか?『貴様』……冷たすぎる。『君』……誰にも言ったことがない。
「あなた……」
「え?なんですかフロストノヴァさん。」
「!? な、何でもない。それより早く行くぞ。」
しまった。つい声に出してしまっていたらしい。……しかし、『あなた』。『あなた』か……。
(……再考の余地はあるな。)
心の中でつぶやきつつ、エイヤを促して訓練室へ向かった。余談だが、彼女は張り切りすぎたのか、少しイラプションになっているところもあった。火事にならなくて何よりだ。
「はーっつっかれたー!あ、ノヴァちゃんおつー。」
一日の仕事を終え、夜になった。ウタゲの挨拶に手を挙げて返しつつ、座布団という極東の敷物に腰を下ろす。この時間になると、私たちはウタゲの部屋に集まるのがいつもの習慣になっている。もっとも、作戦に出ることの多い私たちが全員揃うというのは中々稀なのだが。今日はもうすぐバカンスという事で、作戦や任務に出るのはやめ、ロドスでの内勤に徹している。そのおかげで、4人全員がそろうことが出来た。
「あ、エレーナオッツオッツ。どうだったんだ今日の仕事は。」
私の事をエレーナと呼ぶのはサクラ。……私の、命の恩人だ。彼女と本気でぶつかり合い、私は怒りを散らした。その後ロドスに救われ、今の暮らしを享受している。そう考えれば感謝してもしたりないほどだが、彼女自身はそれをひけらかしたりしない。あくまで自然体、どこまでもだ。
「今日も充実していたさ。アンブリエルとロープはどうした?」
「アンブリエルは熱心な女性ファンに、居残り練習をお願いされたらしい。まあ『あなたに憧れて狙撃を志したんです』なんて言われたら断れないだろうな。」
「ブリさんなんだかんだやさしいもんねー。あ、ロープちゃんはバイトね。シエスタでたくさんお金使うからーって張り切ってた。」
「そうか。なら、しばらく食事はお預けだな。あいつらの帰りを待たなくては。」
「あーそれなんだが……ドクターの執務室に行かなきゃならん。」
ドクター。その名前が出るだけで心臓が跳ねるのだから、我ながら単純な体だ。しかし、執務室に?何の用事で?
「……アカフユさんは知っているか?最近加入した極東のオペレーターだ。」
「……いや、知らないな。」
「あっそっかあ……。まあ私と同じサムライが来たと思っておけばいい。でまあその人と模擬戦をすることになって。ちょっと、やりすぎちゃった。」
「……どの程度だ。」
「……柱を2,3本、斬り落としました……。」
震え声で告げるサクラ。もちろん障害物として用意されている柱だろうが、勢い余ってロドスの柱を斬ったらどうするつもりなのか。
「……サクラ、そこに正座だ。」
「い、いや待ってくれ!やっぱりその、柱は斬ってなんぼみたいな……。柱を斬ったのはその、『私が新しいロドスの柱になる』決意表明的な……。」
「いいから正座だ。膝の裏とふとももを凍り付けてくっつかせてやろうか。」
「すいません許してください!何でも―――ッ!」
すぐに正座をするサクラとそれを見て腹を抱えて笑うウタゲ。私はこれから説教をしなくてはならないのに、つい笑みがこぼれてしまう。そこにアンブリエルとロープも帰ってきた。正座1名、直立1名、捧腹絶倒1名のカオスな状況でも、彼女らは「いつものねー」と呟いてお菓子を物色し始める。
(ああ、やっぱり―――ー)
「楽しい、な……。」
私の日々は十分すぎるほど楽しい。仕事があろうと、彼女たちに会うだけでいい。だというのに、この艦はバカンスに向かっているという。どんな楽しみが待っているのだろうか。ベッドに入り、眠りにつくのが待ち遠しい。ああ、いつぶりだろうか。今日よりも、明日が楽しみなのは。
あっそうだ(唐突)。この作品が完結したらへんで、ランキング入りしたのを大発見!したぜ。ああ^~たまらねえぜ。実力以上に評価されてる感半端ないけど、出来る限りやります……(MRNS)。
次回作、どっちがいいんすか?
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