アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA   作:春雨シオン

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眠れない夜なので初投稿です。今回区切りのいいところまで進もうとしたらかなり長くなってしまいました。正直二つに区切ろうかとも思ったけど、なんか微妙になる気がしたので許し亭許し亭。


Part6 神曲

 唐突に悪の経典になったアークナイツのRTA、第6部はーじまーるよ―!

 

 今回はショッピングモールがいきなり感染者集団に占拠され、皆殺しが始まったところです。テラってホンマ…。警察に助けを求めようにも、携帯が妨害電波により使えなくされてしまいました。そのため現在はウタゲ姉貴とその他二名を避難させ、桃ちゃんは単独行動をとっています。

 

 目的はもろちん事態の収拾です。桃ちゃんやウタゲ姉貴に氏なれるわけにはいきませんし。しかも見方を変えればこれもレベリング代わりになりますからね。しかし現在の桃ちゃんは何の武装もしていない状態です。まあまさかショッピングモールに帯刀していけるわけないからね、しょうがないね。

 

 そのため現在、一心不乱にある場所を目指しています。モールに入る前に、マップを確認していたのは、このためだったのさ!お、噂をすれば目的地、スポーツショップにつきましたね。ここには多種多様なスポーツ用品がありますから、いくつか武器になるものを拝借していきましょう。ちょうどいい具合に店員もいないので、必要なものは根こそぎ持っていきます。

 

 まずはバットです。棒状のものはやはり鉄板ですからね…。通常の金属バットでもいいのですが、真剣の重さに慣れている桃ちゃんだと、それでは軽すぎます。だから、トレーニング用のものを選ぶ必要があったんですね。日本刀の重さは1kg前後で、素振り用のバットと同じくらいの重さです。プロ野球選手が使うものなら大体1kgくらいなのでそれでもよかったんですが、この店にはおいていないようです。

 

 たくさん入るタイプのバットケースに二、三本バットを入れて背負います。ゴルフクラブは先っちょに重心があるので勝手が違い、使いにくいので今回はスルー。それと、キャッチャー用のプロテクターをつけるのはどうか、という話ですが、ボウガンの矢を受け止められるならいいんじゃないですかね(白目)。加えてガチャガチャとうるさい点、動きの邪魔になる点を踏まえてパスです。あっそうだ。アイシングスプレーも何本か持っていきましょう。避難の際に足をひねっているかもしれませんし、いざという時、催涙スプレー代わりになるでしょう。準備オッケー!さあ、テロリスト解体ショーの始まりや…。

 

 「やっと見つけた!桃、何してんの!」

 

 ファッ!?ウタゲ姉貴!?なにしてんすか!まずいですよ!

 

 「桃が一人で行くからでしょ!?桃も早く逃げないと!」

 

 クゥーン…。ウタゲ姉貴からの好感度を稼ぎすぎたのか、ここまでついてきてしまいました。ここは論理だてて説明し、納得してもらいましょう。警察に通報できない以上、隠れていてもいずれ見つかって殺される可能性の方が高いです。それなら戦って少しでも数を減らしておいた方が確実ダルルォ?それに、数ならこっちの方が圧倒的に多い。桃ちゃんのような戦える人物が反抗すれば、たとえ奴らがライオンでも、草食獣の群れには踏みつぶされるだけだって、はっきりわかんだね。

 

 「…わかった。確かに桃の言うとおりだね。」

 

 お、わかってもらえたようですね!桃ちゃんのネゴシエーションも捨てたもんじゃないですねえ!

 

 「だから、あたしも行く。あたしだって、母さんと桃に、たっぷりしごかれたんだから。」

 

 ぜ、全然わかってねええええええ!何言ってんだこのアマああああああ!お前に氏なれるわけにはいかないから避難しろっていってんだろうがああああ!

 

 …失礼、少々取り乱しました。冷静に現状を分析しましょう。現在の桃ちゃんの最優先目標はウタゲ姉貴と生還することです。その手段として、テロリストどもの殲滅を掲げたわけですね。そして現在、それにウタゲ姉貴が同行を申し出ている、というわけです。

 

 …これは、チャンスか?おそらくここが感染の原因となったイベントです。そのため、ウタゲ姉貴と一緒に行動した方が感染をコントロールしやすいかもしれません。その時ついでに桃ちゃんも感染してしまえば、その後のゴタゴタもなくて、すべてが丸く収まる可能性が微レ存…?

 

 それどころか、ロドスに行く前にウタゲ姉貴のレベリングをすることができるかもしれません。本編では作戦記録を見ることで経験値が入るという演出でした。まあそのせいで、短時間に初級ビデオを40本以上連続で見せられるオペレーターたちが続出したわけですが…。しかし、初級ビデオですか…。上級になると、無修正の糞喰漢を見せられたりするのかな…?(辞職不可避)

 

 話を戻すと、札人DTを捨てる時には少なくないメンタルダメージを受けます。ですがこのような非常事態だと「お前と同じだよ。仕方なかったって奴だ。」という具合に、自分の中で受け止められることが多いのです。そこに親友の桃ちゃんがいれば、ダメージはごく軽微で済むことでしょう!

 

 うむ、考えれば考えるほど、ウタゲ姉貴を同行させた方がいい気がしてきた!ここまでくれば腹は決まりました。無理やり説得するのもロスいでしょうし!ウタゲ姉貴、114!514!逆らう奴ら全員ぶっ頃していこうぜ!

 

 「そーそー、それでいいんだよ。あたしと桃ならきっとだいじょーぶ!それに、あたしもあいつらにかなりムカついてるしねー。」

 

 それではウタゲ姉貴にバットを一本渡し、持っていてもらいます。最初に見つけた奴を頃し、装備を奪うのが第一目標です。特に刀を持った奴は最優先で狙います。ウタゲ姉貴を守らなくてはならないので、可能な限り不意打ち、アンブッシュを狙います。だからこっからはこそこそするからな~、見つからないよう、頼むよ~^。

 

 「り、りょーかい。あたし、桃の言う通りに動くからさ。今だけはめんどくさいとか言わないから、なんでも言って。」

 

 ん?今なんでもって…!氏体を発見しました!これはつまり、この付近に奴らがいるということですね。ホトケさんを軽く調べてみましょう。ふむふむ、背中にボウガンの矢が二本。仰向けに倒れています。これは背後から撃たれて必死に逃げたものの、力尽きたってところですかね。

 

 「つまり…この人が逃げた方と逆の方にあいつらがいるってこと?」

 

 そうだよ(便乗)。足音を立てないように、向こう側に行ってみましょう。こうしてみるとなんか、獲物を追うハンターのようで、立場が完全に逆転してますね…。奴ら、もう二度と、明日の太陽を見ることはないかもね(暗黒微笑)。

 

 そのままゆっくり移動すると、見つけました!黒づくめ、ボウガン、完全にあの人を頃した犯人です。ただ、いる位置が厄介ですね…。呑気に椅子に座って、喫茶店のコーヒーを勝手に飲んでいます。ムカつくことこの上ないですが、場所が開けているため不意打ちは出来なさそうです。…こ↑こ↓は真正面から行きましょう。相手がどのくらいの強さなのかわかりませんし、ちょっと確かめてみましょう。

 

「え、桃、あんた一人で行くつもりなの!?さっきそういうのはなしって…」

 

 大丈夫だって安心しろよ~。仮に危なくなったらウタゲ姉貴だけが頼りだからさ~^頼むよ~^。このスプレー缶渡すからさ。

 

「…わかった。要は桃がヤバかったら、これ投げて、あいつの気をそらせばいいんだね。」

 

 ウッス!よろしくお願いしまっす!それじゃあ対テロリスト第一戦、イクゾー!

 

――――――――――

 

「あー、やっぱ一仕事終えた後のコーヒーは染みるぜ…。自分でいちいち注がなきゃなんねーのが面倒だがな…。」

 

 俺は喫茶店からパクったコーヒーを飲みながら、労働の疲れを癒していた。いや、実をいえば、あくびが出るほど楽な仕事だったんだがな。

 

「ククッ、だが撃たれた後のあいつの顔…。マジに傑作だったな。うああああ!なんて叫んでよ、死に顔が見られなかったのは残念だが。」

 

 恐怖と絶望でぐちゃぐちゃになった顔を思い出す。昔っからそういう面が好きだった。それを見るたびに、俺はこいつより強ええんだって優越感に満ちた。野郎もいいが、それよりもっといいのは…

 

 女。女だ。曲がり角から女が出てきた。見たところ女子高生くらいか?しかもかなりの上玉だ。面もいいし、胸もでけえ。バットなんか持っちゃってカワイイねえ。やっぱ今日はツイてる。他人をいたぶって、金がもらえる。これぞ趣味と実益ってな。心の中でほくそえみながら、ボウガンを手に取り、標準を女に合わせた。

 

「おいそこのねーちゃん。俺の酌をするか今すぐ死ぬか、どっちか選ばせてやるよ。」

「…悪いが酌とはなんだ?そんなものは知らない。」

 

 おいおいマジかよ。そんな初心な女を好きにできるなんて、やっぱり今日はサイコーだ。

 

「なんだよ知らねーのか?なら俺が手取り足取り教えてやるよ。その体にたっぷりな。」

「…さっきからやたらと私の胸を見ているが、そんなに気になるものなのか?」

 

 本当に何も知らねー女らしい。これからたっぷりいろんなことを仕込んでやるのが楽しみだ。

 

「おおもちろんだ。男ならだれでもお前みたいなやつを抱きてえって思うさ。もっともそれができるのは、もう俺しかいないんだけどな。」

「なるほどな…。だいたいはわかった。その点に関しては感謝する。だが、さっきの質問に関してはどちらもあり得ない。死ぬのはお前の方だ。」

「おいおい、強がっちゃってほんとにカワイイな。だが楽しみだぜ、そんな風に強がりを言うお前の顔がぐちゃぐちゃにゆがむのを見るのがな!」

 

 言い終わると同時に引き金を引く。すぐには死なねえように、太ももを狙う。飛んで行った矢が突き刺さり、悲鳴と鮮血が噴き出す。そう思ったが女はなんともない。たまたま狙いがずれたらしい。運のいい奴だ、それもいつまで続くかわからんがな。

 

「運がいいなねーちゃん!だがそう何度もミラクルは起きねえぜ!」

「いいからさっさと次を撃て。時間がもったいないだろう。」

「ハッ!いいねえ、もっとたぎらせてくれよ!」

 

 すぐに次の矢を装填し、放つ。次のもはずれ。俺も運がいいが、女も相当ツイている。さっきから一歩も動けていないのに、矢が当たっていないからだ。そう思いつつ、次の矢をつがえる。

 

 ……ありえねえ、こんなミラクルは。俺の矢はとうとうあと一発になっていた。ありえねえだろ、全部外すなんて。大量に客どもに打ち込んでやったときは、一発も外れなかったのに。ふざけんな!そう思って最後の狙いを心臓に定める。殺さずになんて思ってたがもうやめだ。今度は確実に当てる。

 

「…こんなものか。撃つ瞬間が見えているなら、天地がひっくり返っても防げるな。」

 

 何いってんだ、目の前の女は?見ると、女の前に最後の矢が転がっていた。たまたまバットに当たったらしい。

 

「…ふざけんなよな、てめえ!バカツキも大概にしやがれ!さもてめえが防いだみてえな面しやがって!」

「…お前には今のが偶然に思えるのか、なるほど…。では次だ。さっさとかかってこい。その腰の刀は飾りか?股にぶら下げた貧相なものと同じように。」

 

 切れた。完全に切れた。少しは優しくしてやろうと思っていたが、もうそんな気持ちはどこにもない。目の前の女は、少しずつ、いたぶって殺してやる。

 

「調子に乗ってんじゃねえぞクソアマ!指の先から切り刻んでやる!」

 

 ……ありえねえだろ、ありえねえだろ!なんでおとなしく斬られねえんだこいつは!俺の刀をひらひら馬鹿にするようにかわしやがって!どんだけツイてやがんだこいつは!だが、所詮それだけだ。何度もそのバットで俺をぶん殴るチャンスはあったはずなのに、何もしてきやがらねえ。こいつはただ単に、ラッキーが続いてるだけのチキンだ。そのうち刀が当たって、ピーピー泣くに違いねえ。

 

「はあ、はあ…。逃げてるだけじゃどうしようもねえぞ雑魚が。そろそろてめえのバカツキも消えんだろ。そうなったらてめえの最期だ!遺言を何にするか考えとけよ!」

「……うむ、そうだな。そろそろいいだろう。そのままお前に下手に振り回されて、刃こぼれでもしたらかなわんからな。」

 

 …何言ってんだ、こいつ?恐怖で心が折れて、逃げ回るのを諦めたのか?ハッ、だが俺の気持ちは絶対に変わらねえ!このクソアマに、最大限の恐怖を味合わせて…はっ?なんで俺の視界が、薄茶色に染まって、

 

 バキィッ!!

「ブッブッゲエエエエエ!」

「よし、少なくとも叫ぶ元気はあるな。」

 

 何なんだよこれ、おかしいだろ!急に女が、バットで俺の顔面をぶったたいた。俺は2,3メートルぶっ飛ばされたみたいだ。鼻がひん曲がったみたいで、鼻血が止まんねえ。おかしい、おかしい。こんなことはありえねえ!

 

「はー、はー…。はあっっっ!」

「む、立ち上がって逃げる元気もあるのか…。すこし加減しすぎたか。」

 

 とにかく今は逃げるんだ。逃げれば仲間と合流できる。そうやって仲間を集めてから、改めて奴を殺せばいい。今はとにかく、逃げ…。

 

「だが、ダメだ。」

「!」

 

 いきなりあの女の声がすぐ後ろからした。それと同時に、強く地面に押さえつけられる。ありえねえだろ。あいつから5メートルは離れてたんだぞ。その距離をひとっ飛びってか?ありえねえ。そんなの、人間じゃねえ。

 

「お前には聞きたいことが山ほどある…。大人しくしていろ。」

 

 女の声がする。ふざけんな。俺に命令するな。何とか振りほどこうとじたばたする。

 

「あくまでその態度か…。ふんっ!」

「!!!があああああっ!!」

 

 腕だ。腕を強く逆側に曲げられる。

 

「このまま腕をへし折られるのと、おとなしく従うの、どっちにする?従うなら、頷け。それで分かる。」

 

 腕の痛みに耐えられず、頷く。何よりも、この女は本気で俺の腕を折る気だと分かったからだ。

 

―――――――――――

 

 Foo!テロリスト制圧、気持ちぃー!社会の逆徒に!遠慮なんて、必要ねえんだよ!ではすべてが終わったので、改めてウタゲ姉貴を呼びましょう。もう出てきていいゾー!

 

「あ、う、うん、そうだよね。もう終わったんだよね…。」

 

 なんか目がとろんとしてるような、恍惚としてるような…?まあいっか。とりあえず目の前のこいつを締め上げて情報を吐かせましょう。ウタゲ姉貴には分捕った刀を持たせておきます。桃ちゃんが後ろで両手を極め、ウタゲ姉貴が横から刀で突っつきます。このままバックヤードまで連れていきましょう。

 

 さて、楽しい楽しい尋問たーいむ!こいつを絞りに絞りつくして、あらゆる情報を抜いてやるのじゃー!一つ逆らうごとに指を一本折るからな~^20本全部折れる前に素直になってくれよな~^頼むよ~。少し脅かしたら首がちぎれそうなくらい頷いています。すこし脅かしすぎましたかね…?まあいっか。とりあえずいろいろしゃべってもらいますかねデュフフフフ…。

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃあいろいろしゃべってもらおうかな。言っとくけど、変な気は起こさないでね。これからしゃべれるようにしてあげるけど、大声を出そうとしたらその瞬間首の骨を折るから。」

「!!!」

 

 男が必死に頷く。何も知らない人からみたらあたしたちって極悪人に映るのかなーなんてのんきなことを考える。こんなことを思う余裕があるのも、きっと桃のおかげだ。

 

 さっきの桃の戦い。あの時以来の、桃が明確に他人に敵意を向けた戦い。やっぱり、本当に美しかった。あの男には見えてなかったみたいだけど、飛んでくるボウガンの矢を、桃は最小限の動きでかわした。刀にしたって同様だ。相手の力量を測るためか、本気になればすぐ倒せる相手と遊んでやっていた。それがわかるのはその場であたしだけ、二人だけの交信のようでうれしかった。

 

 あたしは今、桃たちから少し離れたところで見張りをしていた。そのせいで桃と男の会話は聞こえなかったけど、桃の役に立っているという事実だけで十分だった。

 

「何だと!?それは本当か!!?」

「う、うそじゃねえ、うそじゃねえよ!あんたが本当のことを言えっていったんじゃねえか!」

 

 桃が突然声を荒げる。あたしに静かに、なんて言ってからのこれだから、桃らしくないと思い、声をかける。

 

「ちょっと桃、あんまり大声出すと気づかれるって、桃が言ったんじゃん。」

「…ああ、すまない。すこし、冷静じゃなかった。…()()()、こっちに来てくれ。」

 

 これは本当に驚いた。あたしの本名は絶対外でしゃべっちゃダメって母さんにきつく言われていたし、それを桃も、固く守っていたからだ。

 

「ちょっと、桃本当におかしいよ?その名前を他の人に言っちゃだめって何度も…」

「そんなことはどうでもいいんだ。こいつはもう死人も同然だからな。それよりも、もう一度だ。もう一度、同じ内容をここでしゃべれ。」

 

 桃が男にきつく言う。男は震える唇を、やっとのことで開いた。

 

「お、俺たちは…()()()じゃねえ。普通の傭兵だ。金で雇われただけなんだ。」

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

 

 

 

 

 

 どういうこと?だってこいつらは感染者で、迫害されてきた人たちで、だからこんなバカなことしたんじゃないの?怒りで、恨みで、こんなことしたんじゃないの?下で死んでた人たちや、ついさっき見た人たちは、金のために死んだの?こいつらみたいな悪い奴が、金を手に入れるためだけに?

 

()()()()()()

 

 桃の声だ。どことなく震えているように思う。なんでだろ、ビビるべきなのは目の前の悪い奴であって、桃じゃないのに。急に頭が冷静になって、思考がクリアになる。だから桃は、あたしのこと本名で呼んだんだ。

 

「ねえ、桃。」

「…なんだ。」

「あたしわかったよ、桃があたしの本名呼んだ理由。確かにこいつはもう、死人同然だね。」

「…そうか。」

「ねえ、桃。()()()()()()()()()()()()?」

「しずか、それは…」

「お願い。」

 

 桃のことをじっと見つめる。あたしたちならこれだけで伝わる。二人とも同じ気持ちなんだって。同じくらい相手のことを大切に思ってて、同じくらい、目の前の男に怒ってる。桃のやさしさは、もう身に染みてわかってる。あたしにその味を知ってほしくないんだって気持ちも。でもね、桃。

 

「桃だって知ってるでしょ?あたしがけっこー負けず嫌いだって。桃に置いてかれるのが、嫌だってことも。だから、あたしにやらせて?桃があたしに傷ついてほしくないってことは、わかってる。でも、こいつなら。あたし、多分ひきずらないよ。」

「…わかった。やり方は、わかるか?」

「うーん…まあ、テキトーでいいでしょ。」

「そうか、わかった。おい、お前。()()()()。」

「…は?何いってんだよ?俺に何するつもりだよ!?」

「お前が人々にしてきたことが、まわりまわって帰ってきただけだ。暴れるな。ただでさえ素人なんだ、苦しみが伸びるだけだぞ。」

 

 桃が猿轡を噛ませ、男をうつぶせに寝かせる。うー、うーと何かをわめいているが、聞く必要はない。こいつもきっと、聞かなかった側だから。

 

 極東の北側には、打ち首って奴があるらしい。刀で首をスパッと落とすんだって。なんか骨とかに当たったらダメとかで、技術がいることらしい。当然あたしにはそんな技術なんてないけど、

 

 「一発でスパッときれますよーに。」

 

 神様にそう祈るくらいの慈悲がまだあった。その祈りがとどいたのか、はたまた運がよかったのか。あたしが振り下ろした刀は首の肉を裂き、骨の隙間を通り、反対側まで到達した。男の首がきれいに落ち、床にごろりと転がった。

 

「しずか…。大丈夫か?辛かったら、すぐにでもあいつらのところへ…」

 

 そう言おうとする桃を遮る。ほんとーに優しい、いい子。

 

「一緒に行くって言ったでしょ?あたしはだいじょーぶ。やっぱ最初に、悪い奴選んでよかったー。」

 

 この言葉に嘘はなかった。初めて人を殺したという事実より、桃と並んだ、という事実の方が大きかったのは、こいつが悪い奴だったおかげだ。そのおかげであたしは、自分のしたことにビビらずに済んでる。まだ、桃の隣で、桃の役に立ててる。その点に関してはなんか感謝しなきゃいけない気がした。金のためにたくさん人を殺した悪い奴だけど、最後はその命でもって、あたしを上に押し上げてくれたんだから。でもやっぱりありがとうっていうのは違う気がした。もっといい言葉があるはず。命を、死をもって、あたしの糧となった男に。

 

 あー、そうだ。ひとつ、あったわ。

 

「あんたの命、確かにあたしがもらったよー。…()()()()()()()。」

 

 

 

 

 




サブタイトルは「汝ら一切の望みを捨てよ」という地獄の門は開かれた的な意味と、ウタゲ姉貴にざーんしゅ!された悪人兄貴を、ウタゲ姉貴をその命で導いた、という点でダンテを導いたヴェルギリウスになぞらえたという意味があります。

嘘です「新世界より」と「ツァラトゥストラはかく語り」と来てたからなんかそういう作品名シリーズで行きたかっただけです。普通にこじつけるのきついんで次回からは普通になると思います。野獣先輩新説シリーズ並のガバこじつけ失礼しました。

次回作、どっちがいいんすか?

  • 強面トレーナー、TSする。
  • パワプロRTA北雪高校モテモテチャート
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