アークナイツ トロフィー「雪ウサギは春に遊ぶ」取得RTA 作:春雨シオン
あたしは桃と別れたあと、二人のところに戻っていた。さすがにさ、桃にあそこまで言われたら戻ってくるしかない。
「しずか、いざという時、あの二人を守れるのはお前しかいない。お前の力を信用してるから、任せたいんだ。」
自然と笑みがこぼれる。そんなこと、言われたらさー。こっちもマジになっちゃうじゃん。任されたからには、応えないとだよね?
「まい!よかった…あれ、ももっちは!?」
「桃はなんか確かめたいことがあるとかなんだってさー。そんで、それが終わったら合流すんの。それまであんたたちを守れるよう、あたしをここに行かせたってわけ。」
「そっか…。でもほんとよかった!アキが動けないから、急に逃げることもできなかったんだよね。でももうまいが来てくれたから安心したよー。」
「うんうん、まああたしに任せなって。誰も近づけさせないから。」
その後は、やっといつも通り。そういえば高校で進路相談とかあったよねーって話になって。あたし含め誰ひとり、それに何を書くか決めている奴はいなかった。何になりたいかなんて、そんなのわかんないし。アキが働きたくねーって、クラスのイケメン君のお嫁さんがいいなーなんてふざけて「もうカノいるらしいよ?」っていったら、世界が終わったような顔をして、それがおかしくてみんなで笑って。
なんであたしがそんなに強いのかって聞かれて、桃とあたしの稽古を教えてやったら、「マジ?」って顔してたのが笑えた。この騒動が起こってからようやく、日常を取り戻せた瞬間だった。ここに桃がいればカンペキだったなって、あいつのことをまた考えてた。その後、30分くらいたった後だろうか?それは突然流れだした。
内容は要するに、もうすぐ爆弾が爆発するよってこと。それと、そのせいで鉱石病になっちゃうかもねってこと。爆弾の場所を知ってるのは、黒幕を殺した救世主だけってこと。
「な、なんだよそれ…。」
「ま、まい…。マチ…。ど、どうしよう?」
二人の声が震えている。当然だ。だってこんなん、わけわかんないもん。せっかく安全になったと思ったのに。悪い奴が死んで、万々歳じゃないの?
「おい!ふざけんな!なんで爆発なんてするんだよ!」
「もういや!帰らせて!」
「爆弾ってなんか商品の中とかにあるんじゃねえか?ぶっ壊して探せ!」
あたりも急にパニックになっていた。男の人の怒号だとか、女の人のすすり泣く声とか、いろんな音が混じって騒がしい。きっとあの人たちもどこかに隠れて息をひそめていたんだ。それが急に爆発するっていうんだから、ハチの巣をつついたような騒ぎだった。どうすればいい?どうすれば。そうだ、桃ならこんな時どうする?そこまできてやっと思い浮かんだ。
「そうだ、そうだよ!」
二人の注目が私に集まる。それでいい。二人を集めて声を潜める。周りの声がうるさくて、こうでもしないと聞こえないってのが一つ。もう一つは、他の人に聞かせたくなかったから。
「ね、救世主ってさ。桃しかありえないよね?だからここで待ってればさ、きっと助けに来てくれるよ。」
「!!」
二人が同時にはっとした顔になる。その顔は困惑から、希望に満ちたものになっていた。そうだ、桃しかありえない。多分桃はあたしと別れたあと、黒幕に接触したんだと思う。あそこで急にあたしと別行動したのも、何か罠とかが仕掛けられてると思ったからだろう。それであたしを引き離したってのはすこしムカつくけど、多分そいつを斬ったんだ。それで桃もあの放送を聞いたはずだから、きっと今はこっちに向かっているはずだ。
「頼んだよ桃…。もうあんたに任せるしかない。」
桃があたしに任せてくれたのは、この二人を守ること。だからさ、桃。あたしのことは、あんたに任せてもいいかな?
クソ、クソクソクソ。必死に階段を駆け上がる。エレベーターは壊れているのか使えないから、4階まで走るしかない。いつ爆発するのかはまったくわからないから、否が応でも焦ってしまう。なんとか、なんとか間に合ってくれ。
だが、悪いことは続くものだ。再び、今度は別の声で放送が流れる。
「皆さん!私は泥中の蓮のリーダー、その教えを継ぐものです!私は彼の理念に深く共感し、自ら源石を体に突き刺し、感染者となったのです!そしてその後、皆さんに感染のすばらしさを布教してまいりました!今日、その素晴らしさにやっと気づいた私を彼は暖かく迎え入れ、私にその偉大なる計画の全貌を示してくださったのです!」
「彼はおっしゃいました。『いつか必ず、“救世主が現れる”』と!そしてその予言通り、救世主が現れました!私は彼を殺した彼女が憎い!しかし、しかし!それでも彼の意志を継ぐため、その手助けをいたしましょう!救世主は、
「おい、冗談だろ…!余計なことしかない“極東スラング”め!」
まずい。これはまずい。一刻も早く、みんなのところに行かないといけないのに!階段を駆け上がり、一階にたどり着く。予想通り、地上は地獄の様相を呈していた。泣き叫ぶもの、爆弾を探そうとしているのか破壊を繰り返すもの。何とか外に出ようと、出口のがれきを素手でどかそうとし、手から血の滲んでいる者。それらが死体の山と血の海とともに行われているのだ。
早く、速く上へ!まだ爆発するんじゃないぞ!そう祈りながら走る。幸い喧噪にまぎれられたのか、バレずに2階へ移動することが出来た。このまま何とか4階まで…!
「い、いた!あんた、救世主だろ!おい、みんなこっちだ!」
「!」
「こっちだこっち!おい、あんた、爆弾の場所を知ってるんだろ!?助けてくれ、まだ死にたくねえんだ!」
「お願いします!私たちを救ってください!」
まずい、見つかった!それにどんどん人が増えていく。みんな救ってくれと騒ぎ立て、私の前に壁を作る。こんなことをしている時間はないのに!
「違う!私は違うから、道を空けてくれ!」
「嘘だ、そんなはずがない!放送で紫色の髪だって言ってたんだ!」
周囲からもそうだという声が上がる。らちが明かない。こうなったら…
「わかった!これが爆弾の場所を記した地図だ。これに書いてある!」
そう叫んで、地図を私から遠いところに投げる。これがなければ、もう私にも安全な場所はわからないが、背に腹は代えられない。周囲の人間が叫び声をあげながらそれに殺到する。今はもう構ってはいられない。わき目も降らず4階へ駆ける。
ようやく目的の写真屋にたどり着く。しずかやアキ、マチが座り込んでいるのが見える。
「立て!逃げろ!」
そう叫ぶが伝わっていない。私の姿を確認できたのか、嬉しそうな顔はしているが、言っていることが理解できるほどの距離ではないようだ。それでももう一度伝わるようにと、大声で叫ぶ。
「そこには爆弾がある!早く離れろ!」
あの放送が聞こえてきたとき、嬉しさ半分怖さ半分だった。嬉しさはもちろん桃が救世主だったこと。やっぱり桃はすごい。あたしも早く並びたいって心から思った。怖さは桃を他の人が邪魔しないかってこと。桃は優しい奴だから、パニック状態とはいえ一般人を斬れないかもしれない。どこか怪我したりしていないだろうか。ちゃんとここまで来てくれるだろうか?そんな心配が浮かんでくる。
「ん?ねえ、あれももっちじゃない!?」
「ほんとだ!絶対そうだよ!ももっち、こっちこっち!」
ハッとして二人が指さす方を見る。桃、桃だ。あたしがあいつを見間違えるはずがない。思わず走り出しそうになったとき、足が震えているのを感じた。そこでようやく、あたしがビビってたんだって理解した。悪い奴はザクザクいったけど、全部桃がそばにいてくれた。あたし、まだ桃がいないとダメなんだなって思ってちょい情けないけど、今はとにかく再会を喜ばなきゃ損っしょ。
桃は何かを言っているようだったが、聞こえなかった。でもその様子から、多分ただ事じゃないんだって察した。すぐに頭の中が切り替わる。自分にできることをしなくては。
「…マチ、先行って!アキはあたしと一緒に立って!」
「え?まい、何を…」
「そこには爆弾がある!早く離れろ!」
「!」
急いでアキの脇の下に腕を差し込み、肩を貸して無理やり立たせる。そのまま3人で桃の方へ走り、やっと合流できた、その時。激しい熱と爆風があたしたちを襲った。
「まい!アキ!マチ!」
私の声に気づいたのか、しずかがアキを抱え、走ってこちらに向かってくる。さすがはしずかだ、やるべきことをすぐに察せる。その鋭さと人懐っこさのおかげで、彼女は学校でも人気者だったし、そういうところを私は尊敬していた。3人が走ってきて、手が触れあう距離になる。よかった、本当によかった!声をあげて抱き着こうとしたその時、3人の後ろに、微かに光が見えた気がした。
弾かれるように3人を抜き、抜刀する。自分でもよく動けた、と思う。あの放送が確かなら、爆弾に仕込まれた源石の破片が飛んでくるはずだ。爆風の速度とは、どれほどのものなのだろうか?少なくとも、あの男のアーツで飛ばされたナイフよりも速いだろう。しかも今度は、後ろに守るべきものが多い。防ぎきれるか、という思考を爆音がかき消す。やるしかない。私が何とかしなくては、全員仲良く鉱石病だ。
またあのゆっくりの感覚がきた。爆音、熱風。それらに混じって、真っ黒なものが飛んでくるのがわかる。ゆっくりだが、あのナイフよりはるかに速い。「どういう進路をとる?」なんて考えている暇もなく、刀の間合いに入ったものをひたすらに斬る。破片に追いつくだけでも精いっぱいなのに、爆風に乗ったそれは重く、刀を握る手の力を奪う。自分の腕が自分のものでなくなったように重い。すべてをはじききれるわけもなく、いくつかの破片が傷を作る。だが、それを気にしている余裕などあるわけもなく、無我夢中で刀を振る。
いったい、どれほどの時間がたったのだろうか?おそらくはほんの一瞬、ひょっとすると、一秒にすら満たないものだったかもしれない。気づけば、刀をとり落としてしまう。腕が震え、握っていられない。それどころか、足が震えて立っていることすらままならない。しずかの叫び声が聞こえる。
(ああ、でも、どうしてそんなに遠くで…)
そう思いながら、誘われるまま眠りに落ちていった。
何が、起きた?まったく状況が理解できない。まだ爆音で耳がキーンってしてるし。なんか体中がひりひりするし。ウザウザウザ。確か、後ろが急に熱くなって、どんって押されたみたいになって、桃があたしたちを通り過ぎて…。
「そうだ、桃!」
後ろを振り返ったとき、ぞっとした。刀をだらんとした両手で握って。生まれたての小鹿みたいな震える足でなんとか立ってる桃がいた。その体の両端の壁には、大小さまざまな真っ黒い破片みたいなものがびっしりと突き刺さっていた。こんな状況見せられたら、いくらあたしでもわかる。
「桃がこれ、全部弾いたんだ…。」
ありえない。そんなの、人間業じゃない。普通の人なら、普段のあたしならそう思っただろう。でもその景色には、否が応にも納得させるうすら寒いリアリティがあった。それをあたしが認識したとき、桃が倒れ伏した。そうだ、あたし、何やって、
「桃!桃、桃!しっかりして!」
すぐに呼吸を確認し、生きていることを確認する。ただ単に、疲れ果てて眠ってしまったようだ。はあ、よかった。安心してあたしまでがっくりと膝をつく。遠くから、バババババという音が聞こえてくる。これは、ヘリ?やっと救助がきたらしい。
「桃、終わったよ…。」
体に無理を言わせて、桃を背負って立ち上がる。ここから屋上までいけば家に帰れる。今はもう他の二人の事なんて忘れてゆっくりと屋上に向かう。お互い体は細かい傷だらけだったけど、桃がいなかったら、今よりももっとひどいことになっていただろう。せめて最後の一仕事くらい、あたしに任せてもらおう。
それからあたしたちはすぐに病院に入院することになった。なんかやけどの治療とか鉱石病検査とかいろいろされてる間に、警察が事情聴取にきた。あたしたちが困ってたときには来てくれなかったくせに、ってちょっとムカついたけど、あたしと桃とで悪い奴ら斬りまくったこと話してやったら、ものすごいびっくりしててウケたからちょっとはムカつきも収まった。斬りまくったのはなんか緊急避難?とかで罪にはならないらしい。ラッキー。
なんか悪い奴らは結局感染者の権利とかどうでもいい奴らだったらしい。入院中暇だったから眺めてたテレビで毎日のようにやってたニュースで、リーダーの遺書が見つかったとか言ってた。それによると、あのショッピングモールはもともと墓地があったところらしい。そこにあのおっさんの家族が眠ってたそうだ。おっさんはどうしても墓地を守りたかったらしいけど、ヤクザまがいの地上げをされて鉱石病にかかった。そのせいでひどい目にあったけど、なんかアーツのおかげで成功した。それでよかっただろうに、稼いだ金で傭兵を雇って、あのテロを起こしたらしい。目的はショッピングモールへの復讐、らしいけどバカな奴だと思う。そんな金があるなら、もっと立派な墓を建てるくらいすればよかったのに。
たしかにかわいそうな奴なのかもしれないけど、あたしはあのおっさんを許さないし、おっさんを斬った桃が間違ってたとも思わない。ああしなきゃ死んでた。その思いに間違いはなかったと今でも思ってる。
それよりも桃だ。あんなに頑張ったのに、結局あたしたち4人は鉱石病に感染した。それでもほんの軽微なものらしく、医者のセンセーも「近くで源石爆弾が爆発してこれとは信じられない」って言ってて、桃が褒められてるようで嬉しかった。
それに、今日は特別な日だ。やっと検査やら操作やらが一段落して、今日ようやく、あの事件以来桃と会える日だからだ。たくさん話したいことがあるけど、まず最初に言うことは決まってる。
コンコンコン。「麻衣、私だ。…入っても、いいだろうか。」
桃の声だ。体に急に元気が満ちてきたようで、我ながら現金だと思う。でも、今日はそれだけじゃいけない。
ゆっくりと扉が開き、桃が入ってくる。その顔はどことなく暗くて、大丈夫かな、と思わず心配してしまう。緩い患者服だからなのか、それともあたしと同じように軽いものなのか、源石は見えない。
「その、麻衣。本当に…悪かった…。」
…は?桃がゆっくりと口を開き、最初に告げたのは謝罪の言葉だった。
「私がもっと…ちゃんとしていれば、もっと早ければ…!麻衣が鉱石病になることもなかったはずなのに。私のせいで、麻衣が…麻衣が死んじゃうんじゃないかって。だから私のこと、許してくれなくてもいい。それでもいいから、謝りたかったんだ。本当に…すまない。」
桃が深々と頭を下げる。どうやら本当にあたしに謝りにきたらしい。あ、ヤバ。そんな気持ちなかったはずなのに、急にムカついてきた。
「…桃、そこに座って。」
「わ、わかった。」
いそいそと地面に正座しようとする桃、あーもうムカつく。
「そうじゃなくて、ここ。隣に座ってってば。あたしたち、いつもそうしてたでしょ?」
「…!」
困惑したように、ゆっくりと隣に来る桃。うん、やっぱあたしたちはこうでないと。
「ねえ、桃。なんで謝んの?」
「…そ、それはだから、私のせいで鉱石病に…」
「桃のせい?違うじゃん、あのおっさんのせいじゃん。それに桃が守ってくれたから、あたし今、ここにいるんだよ?感謝はあっても、怒ってるなんてことあるわけないじゃん。こんなに一緒にいたんだから、あたしの気持ちくらいわかるでしょ?」
桃がハッとした顔になり、瞳が自然と潤んでいく。はーもうさ、あたしも謝るつもりだったのに、そんな感じじゃなくなっちゃった。母さんから耳にタコができるくらい聞かされた言葉。誰かに頼りすぎてはいけない、だっけ?あたしはそれをないがしろにしてた。桃がいなきゃまともに動けないくらい、桃に頼ってた。だから、反省した。
「その泣き顔もけっこーカワイイじゃん…。じゃなくてさ。あたし、これで気づけたよ。ずっとあんたに憧れてたけど、それだけじゃダメなんだって。」
桃が鼻をすすり、涙を拭いてこちらを見つめる。
「これからはさ、憧れだけじゃなくて、追いついてみせる。あんたの横で肩を並べて戦えるくらいに強くなったりさ、色々あるでしょ?だから、さ。改めて、これからもよろしく。」
「…私は、これからも麻衣の、いやしずかの友達でいいのか?」
桃が震え声で尋ねる。そんなの、返答は決まっている。
「当たり前じゃん。なんかさ、感染者になって、色々あるかもだけどさ。あたしたち二人なら絶対なんとかなるって!そうでしょ?」
そう、これがあたしの答えだ。頼りすぎるのはいけない。でも、お互いに頼るのならいいんだ、きっと。桃に守られるだけじゃなく、桃が背中を預けられるような人になる。ようやくあたしがなりたいものを見つけた。とてもじゃないけど、書類には書けないようなあやふやで、あいまいな進路。
「あたし、きっとなるからさ。きっと、桃に並ぶから。」
ようやく桃も笑顔になって、あたしたちの日常がかえってきた。いつ開けたのか忘れた窓からは、夏の終わりを告げるように、爽やかな風が入ってきた。
次回か次々回にようやくロドスへ行けると思います。というかそれまでロドスのロの字もないのにアークナイツを名乗っていたのか…(困惑)
次回作、どっちがいいんすか?
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強面トレーナー、TSする。
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