「千紗……嘘だろ」
身体を串刺しにされた槍を司馬が抜き、千紗は力なく倒れた
失敗だ…司馬を…失念していた…
「約束の時間はとっくに過ぎていましたし、時間が来そうだったので刺させていただきました」
「いやだ、千紗ぁ!!」
思わず駆け寄る、千紗の身体に出来た穴からは血がどくどくと出ている
「別れの挨拶を済ましてください」
「千紗!」
「か…ずま君……刺されちゃった…」
掠れた声で作れる精一杯の笑顔で言うが、苦しそうだ
「千紗!喋んな!!待ってろ、今すぐ病院に連れてってやる」
「無理…だよ」
「無理じゃねえ!!なんとかなる、だろ?」
「へへ、…うつっちゃった…ね」
嫌だ!!死なないでくれ!!
「もう、喋らないでくれ」
「ううん。お…願い、聞いて」
「聞く!帰ったら聞くから黙れ!」
「今…言わせて……」
小さな掠れた声で懇願する千紗をついに喋らせた
「分かった。なんだ」
「今まで…騙しててごめんね。私……
人間じゃないんだ」
こんなときに…
「笑えねぇ冗談はよせ!」
「違う…よ?身体の傷…見てみて」
千紗に促されるように4つの傷を見る。
驚くことに血が止まっていた、そして流れていたはずの血も無くなっていた。
いや、違う。傷自体がない。
千紗の傷口は千紗の服ごと紫色の結晶に変質していた
「私ね…紫巫女の分身…なんだ…」
しみこ?
「でも…色金とのリンクをほとんど切ったの…、だから生命活動どころか、…身体の形質の維持すら出来ないんだ。」
「分かった!わかんねぇけど分かった!。帰って兄さんや父さん達にも対策法を聞く!!。だから喋らないでくれ」
「私ね、リンク切れてよかった。……これで心の奥底から一真を好きになれるよ。」
「死んじまったら意味ねぇだろうが!!」
「死なないよ、ただ消えるだけってね…」
消えんなよ…ずっと、ずっと俺の側に…いてくれよ
「そう…だね、心残りは一真君…と、一夜を過ごせなかったこと…かな?」
「生きろ!心残りなんて帰ったら叶えてやる!」
「私の身体…そういう風に…出来てないよ」
「やるから!!生きろ!」
「へへへ、それじゃ強姦みたい…だよ?」
「それでも……生きていてくれ…」
瞼から熱い水滴が千紗の頬に幾度となく落ちる。
「マンガだったら、逆だけど……これで良かった」
「嫌だよ、千紗…千紗ぁ。逝かないでくれ…」
既に千紗の足はなく、あるのはスカートから伸びる足の形をした紫色の結晶で、それも徐々に風化している
「優那のこと、よろしくね」
「勿論だ、大好きな彼女の妹だから!!…だから…」
「一真…君。私に骨抜きにされちゃったね?」
「ああ、お前無しじゃ……」
「でもね、嬉しいよ。自分の存在が無くなってまでも守りたい、好きになりたいと思う人に出会えて。」
「俺だって一緒だ!!」
「あはは、もうお腹の感覚も…無くなってきちゃった。」
「千紗…」
既に千紗は肩まで結晶化が進み。お腹は風化していた
「一真君、私が消えたらね。最後に残る結晶をずっと持っていて欲しいの。そしたらまた会いに来るから」
「分かった。」
もう千紗は無理だ。最後にどんな願いでも叶えてやる
「何か願いはあるか?」
「じゃあさ、キスして。」
「分かった」
目を閉じ、千紗とキスをする。
そのキスは、初めて千紗とキスをした時と同じで、どこか柑橘系の甘い味がした。
「へへ、こういう…時って。ありがとうがテンプレだよね?」
「ああ」
「大丈夫だよ、また会えるから。会いに来るから」
「分かってるよ…」
「私に縛られないでね、…一真君は好きな人見つけ…て、その時の…一真君は強…くなるから…。」
千紗は既に喉まで結晶になり、声すら出せなかった。
俺も頷くしか出来ない
そして最後に唇が動いた。
『バイバイ』と
「千紗、バイバイ」
いつしか止めどなく溢れていた涙は止まり、千紗の居た場所には小さな紫色をした水晶があった。
俺はそれを握り締め、司馬と向かいあった。
「終わりましたか…では貴方も同じ運命をたどってもらいましょうか」
「ふ…ざけん…な」
頭を激痛が襲う。脳を酷使しすぎたんだ…
歪む視界の中で司馬がこちらに槍を向けるているのが見えた
避けないと
飛んできた槍は寸前で、電光に包まれ爆散した。
「菅原家継承者補佐 秋月マリア!見参!」
最後にそう聞こえ、視界は闇に包まれた。
目が覚める、ここはどこだ?
「一真様、ご無事ですか?」
「兄様……」
「……」
そこには白く長い髪をした少女に、黒髪の幼い子供が二人の三人でこちらをみていた
「なぁ……お前ら誰だ?」
俺はコイツらを知らない
「やはりリミットを100近く解放したせいで…」
「何言ってんだ?つか、なんで病院なんかに居る…ウグゥ!?」
頭痛…なんかの病気か?
「あれ?手の中に何かある…ブレスレット?」
「それらは一真様が倒れてなお、握り締めていたものです。」
「え?じゃあ、この綺麗な…紫色の……水…晶は。千紗!!」
思い出した。
最愛の彼女の事を、そして守れなかった事も。
「マリアか」
「はい」
そこの白髪がマリアで、千紗の妹で黒髪の優那、幼いながらも、整った顔をしている優姫。
「ごめん、優那、優姫」
「お兄ちゃん…」
「兄様、行きたい場所に行ってあげてください」
「ああ、ありがとう三人共」
俺はある山の頂上に来ていた。そこには一際大きな桜の木があった。
そこに、千紗からのプレゼントのネックレスを埋め、その上にそっとブレスレットを置いた。
「千紗、ありがとう。お前が守った俺はもう後悔せずに生きようと思う。お前との思い出を守って」
『うん、一真君らしいよ』
そう聞こえた気がした。それは空耳じゃない、千紗の思いだ
〜1週間後〜
ポケットの携帯のバイブに反応して電話に出る
『こっちの手続きは済んだッスよ』
「ああ、ありがとう龍」
『俺はまだアンタを許したわけじゃないッスから』
そう言われ電話を切られた。いいんだ、これで。
「はい、静かにしろ〜お前ら帰さんぞ、今日は菅原が北九州武偵中に転校する。あと1ヶ月無いがだったが、まぁ家の事情で仕方なくだ」
『え〜!!』
良かった、俺千紗のお掛げでクラスに馴染めてたんだ。
その日の放課後、即興でお別れ会をした。
千紗は風邪で寝込んでいるということにしてある。
そして最後にいつもの三人だけがクラスに残った。
「本当に行くのかい?」
「ああ」
「命さんはお前のせいじゃないだろ」
「兼岩、よく情報を手にしたな」
「……」
「とにかく俺は北九州に引っ越す。それだけだ。千紗の思いを守るために強くなりに。」
「そうか…分かったぜ菅…いや、一真」
「ああ、凛」
「向こうに行っても元気に過ごすのだよ?一真」
「勿論だ、春」
手を出した二人の握手にそれぞれ応じた
「あと。凛、春、お前ら付き合えよ」
「は!?男同士でか!?」
「凛、お前はアンビュラスだろ?気付いてないわけないだろ?春は女だよ」
「……へっ。やっぱ一真にゃ叶わんな。」
「な、な、…必死で隠し通したんだぞ!!」
赤くなる春、
「後悔はすんなよ、今を楽しく生きろ」
「ってことだ春」
「どういうこんむっ!?むーっ!?」
凛は強引に春に唇を合わせた
「ぷは、こういう事。だからさ俺と付き合ってくれ、お前チェンジなら仲間が居た方が得だろ?彼氏なら尚更。」
「ここまでされたら……」
「嫁になら貰うぞ?」
「ああ、頼んだぞ凛。ありがとう一真。おかげモヤモヤが消えた」
凛と春の笑顔はとても暖かく、優しそうであった
「そうだ。今を楽しめばいつかきっと大切なものを見つけられる。じゃあな凛。春」
「おう、またな」
「また会おう一真」
そうして俺は北九州武偵校付属中学に転校した。
千紗。次に会った時に俺の強さに驚くなよ。
これで過去編終了です。
次からは元の時間に戻るんで完全に話が変わります。
文章力も少し落ちるかもしれません。