一真SIDE
ウザい
この一言に尽きる
コイツの、亜瑠のこの性格には何度か救われた。
チームに1人居るだけでも雰囲気的に強くなる。
だが今はウザい、鬱陶しい。
俺なんて放っておいてくれ、構うな、見捨てろ、関わるな
「亜瑠、提案だ」
「内容によっちゃ受けるよ」
「銃を貸してやる、俺に負けたら二度と構うな。俺を忘れろ」
「もしも勝ったら?」
「どうしてほしい?」
「武偵高に帰ってきて中空知さんに告白すること」
「良いだろう」
亜瑠らしい。
だが負けられない。ジャンヌを裏切らない為にも
「あとコレ、ありがとってさ」
そう言って携帯と同じ大きさ位の端末を投げてきて、落とさずに受け取る。
ソレには見覚えがあった。かつて中学時代に知り合った少女と亜瑠が知り合いになり、日本語が話せなかった彼女にこの翻訳機を亜瑠経由で贈ったもの
「クレシアがありがとって」
「…そうか」
いや、今は感傷に浸ってる場合じゃない
「始めよう」
亜瑠にコルトM1900を渡し、こちらも同じモノを構えた。
「勝負!!」
ダン!
亜瑠が叫び、撃つ
俺は冷静に交わし、こちらも撃つ
ダン!
「甘いよ!!」
しゃがみこみかわす亜瑠
そして、対峙する
「一真、一つ聞いて良いかな?」
「なんだ?」
「もしも一真は、優姫ちゃんが帰ってきたらイ・ウーを抜ける?」
どうだろう?
俺は抜けるか?いや、抜けないだろうな。俺はジャンヌの生きる意味だから
そして救われちゃいけないから
「抜けないな」
「それは、ジャンヌダルクの為?」
「お前には関係無い」
そう言うと亜瑠は笑った。いつもの優しく暖かい、そして今の俺には不快な笑顔
「やっぱり一真は変わってないね、帰ろう?今ならまだ間に合うよ」
「黙れ」
「早く…早く帰らないと、一真は意識を保てなくなるよ!」
もう止めろ
うんざりだ…これ以上、俺を苦しめるな
「訳が分からない。もう構うな、どうしたら放っておいてくれるんだ!!」
「放っておけないよ!!」
響く、亜瑠と会うべきじゃなかった…
「放っておける訳ないじゃん。君は出会った頃と変わらない!
いつも不安定で壊れそうなのに…でもいつも自分のことは度外視してさ。あの旅に行く前に少しだけ本質が見えたけど、ロンドンで君と戦った時には既に壊れてて。
直ったように振る舞って、気丈に振る舞ってさ。皆分かんなかった」
「止めろ!!黙れ!!」
「黙んないよ!!君の嘘の振舞いに気付いたのはナッツと僕と中空知さん。分かる?中空知さんは君のことをとても心配してたんだよ!!」
「知ってる!!なんでアイツもお前も俺なんかに…」
こんな人殺しのクズに構って、来ない返事をいつまでも待って
「ただのバカじゃねぇか!」
ダン!
銃弾が頬を掠める
「僕はバカだよ、そんなこと昔から分かってる。でも中空知さんをバカにするな」
「バカだろうが!!俺が入学して一目惚れしたのに、俺に彼女が出来てどんなに酷くしても、俺が大量殺人を犯したって分かってんのに……なんでアイツの眼差しは変わらねぇ!!なんで俺の写真を捨てねぇ!!
なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで………なんで俺を嫌ってくれねぇんだ…」
頭の中にはカメラで見た中空知の姿。そして涙が頬を伝う感覚
なんでこんなクズに皆構う。
マリアも亜瑠も中空知もジャンヌも…見捨ててくれた方がどんなに楽か。
「一真は一真らしく生きなよ」
「俺らしくってなんだよ!!」
「僕は知ってるよ。君は欲張りで我が儘。子供みたいだけどとても優しい。それが君『菅原一真』だよ」
そう、なんだ……
俺は…俺、らしく。
いや、今さらだ。俺には戻る権利はない。
復讐を終えて、千紗とマリアに会いに行くんだ
「悪い、やっぱ無理だ。俺は変わらない、だから…勝負で決着を着けよう」
「…分かったよ」
これで、良いんだ。
ジャンヌも武偵高に編入すれば、生きる意味もすぐに見つかるだろう
ダンダン!
2発の銃弾を冷静にかわす。
ダン!
今度はこちらが撃つ
それは、的確に亜瑠の防弾制服をとらえる
「ぐうっ!!まだまだぁ!!」
ダン!
「当たらねぇよ」
当たらない、どんなに想いを込めた銃弾でも左右されるのは射手の腕。
どんなに想おうが、亜瑠の想いは届かない…。
「さすが一真、全然当たらないや」
「避けてくださいって言ってるような弾丸が当たるかよ」
「僕だって練習したんだよ!!」
ダン!
その言葉を裏付けるかの如く、亜瑠の銃弾は右肩を貫通する
「ぐっ!?」
「それ、防弾じゃないんだね」
「悪いか?」
ダン!
「ぐあっ!?さっきと同じ…」
負傷した右手から左手に銃を持ち変え先程と同じ左太腿を狙い撃つ
「諦める気になったか?」
「ま、まさか?諦めないよ」
ダン!
キィン!
最後の七発目となる亜瑠の弾丸を左手で弾いた
これで終わり。
こちらは残り四発
「弾切れだろ?諦めろ。」
「まだナイフがある」
白銀ナイフを構える亜瑠。諦めろよ…
「あーッ!!うざったい!!」
ダンダン!!
「うぐっ!?があっ!?…まだまだぁ!!」
「諦めろ!!」
ダン!
最後に放った弾は貫通弾、その弾はいとも容易く防弾制服を貫き、亜瑠の右足を貫いた
「ぐあぁぁぁ……くそ。」
まだだ、亜瑠は気絶するまで諦めない。
それはパートナーだった俺が一番知っている、どんなに不利でも諦めずに食らいつき、勝利を勝ち取る。そして亜瑠は何故か死なない
だから気絶をさせる
「甘いよ一真、僕には仲間がいるんだよ!!」
突如、ナイフが飛んできた。
バタフライナイフ。かつて戦った相手の物だ
「キンジ…お前も邪魔すんだな」
「俺だけじゃない!!」
「神崎に星伽…蘭華さんはどうした?」
「倒したさ」
キンジが言う。
嘘だな。蘭華さんはあの薬を持ってるし、何より強い。
「お前らも邪魔だ」
「うるさいわ!アンタみたいな自意識過剰のバカはアタシ達が…」
達?あの神崎がキンジを認めたのか?それとも星伽を認めたのか?
まぁどちらでもいい。今はこの不快なこの場を立ち去れれば
「まず、1人」
ダン!
亜瑠に向かって撃つ。だが銃弾は亜瑠に当たる前に消える。
まただ。この奇々怪々な出来事。
原因はわかるが信じがたい
「お前らが束になった所で俺は倒せない」
80%解除
超能力強化
眼前の景色全てに青いフィルターがかかる
これで終わる。コイツらと居ると暖かくて苦しいくてたまらない
「倒す?だから違うって言ってるでしょ自意識過剰バカ」
「倒すじゃねぇよ一真。助けるんだ」
「一番辛いのは菅原君って皆分かってるよ」
「だから助ける。一真は僕達を頼ってよ。仲間じゃん」
止めろ。
それが…痛いんだ
いい加減に…
「いい加減にしやがれ!!構うな!
お前らは暖か過ぎるんだよ!!お前らと居ればお前らに縋っちまう。心の底でもういいんじゃないか?苦しいのはたくさんだ。助かりたい、楽になりたい。消し去ったはずのそんな思いが…。
お前らに…亜瑠に会って、話して、戦って。どんどんそれが膨らむんだ!! 俺が心に決めた何もかもを押し退けてくんだ!俺は救われる権利すら無いのに…救われたいって思うんだよ!!」
「一真…」
「でもそれはマリアと千紗を裏切ることになる。だから……もう、俺に縋らせんな!!!!」
苦しいんだよ、亜瑠といると今にも心が…粉々になる気がして
亜瑠が叫ぶ、またしても暖かい声で
「救われて良いんだよ!!」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
『水竜壱ノ型改式』」
俺の怒声と共に負傷した右手を亜瑠に向かってかざす。するとどこからともなく水が集まり球形を成す
「『蛟』!!!!」
その掛け声と共に球から出現した竜は、かつて一真が出した『青龍』とは似ても似つかぬほど緑に濁った竜だった。