強襲科の試験を終えた次の日には通信科の試験があった。
俺が目指すのはRランクではない。俺がなりたいのは完璧な人間、何でも出来る人間。
もう何も失わないために、後悔をしないために。
通信科の試験には個室が用意された。
試験は4度。
正誤入り交じった情報が10分置きに更新され、1時間で全ての情報が更新される。
受験者は、その雑音入りの音声の聞き取り、取捨選択をし、簡略化して分かりやすくマイクに話す。
情報は実戦に近付ける為、デパートで立て籠りしている犯人グループの全員を戦闘不能にするために侵入する武偵に安全な侵入ルートを伝えるという設定で行われる。
尚、設定では1時間経過後に人質が1人ずつ殺される。というものと、伝えられる情報は諜報科を介してのものなので、短く粗い情報となる。という追加設定もある
そして、それはデパート、武偵病院、敵の本拠地(ビル)、ランダムの4度となっている
「合計4時間の試験となる。試験の間には20分の休憩があるが、くれぐれも試験には遅れないように。ちなみに我々試験官が時折妨害を行うから覚悟しておけ」
男の武偵がそう言った後開始まで、一つの大部屋に集められていた。
そこでは試験前の緊張感はほとんど感じていないかのように駄弁り合う生徒が多かった。
受験者の割合としては男子2の女子8という割合だ。
女子特有の雰囲気に多少居心地の悪さを感じていた時、大きなグループが喋りかけてきた。
「ねぇねぇ、君どこから来たの?青い髪中々カッコいいよ」
「北九州武偵中からだ」
「ふーん九州か〜。1回は行きたいよね〜」
「そうか」
「何処かオススメなスポットとか知ってたりする?」
「いや、知らないな」
素っ気なく返す。今は話なんてするつもりはない。
「何アンタ?田舎者の癖に調子乗っちゃってる訳?」
ああ、そういうタイプだったか…
「お前も周りに色んな奴侍らせて、合鴨の真似事か?」
「ふん、その青い髪の毛もカッコいいとか思ってるわけ?正直マジキモいんですけど?」
「記憶力がない猿は黙ってろ」
「なっ!?。ウチの兄貴はねぇ、ココで、Aランクの通信科やってんのよ!アンタとは頭の出来が違うのよ!!」
「虎の威しか借りれねぇ鼠が…」
「もういい!!アンタ覚えてなさいよ!」
どこ行ってもあんな馬鹿は居るもんだよな。
他人を見下すことで優越感に浸る馬鹿が…
そう思っているとあの馬鹿達は携帯を弄りながら、艶のある長い髪を伸ばして顔すら良く見えない女子の下に行った。
「ねぇ、アンタ名前何?まさかあの屁理屈野郎と同じで話さないなんてこと無いわよね?」
「あの…な、なかそ………です…」
「はぁ?聞こえ無いんですけど?あーもう良いや、正直アンタみたいな根暗と話すのも嫌だったし…」
お前の耳がおかしいんだろうが、きちんと中空知美咲と言ったのも聞こえ無かったのかよ。
「ああ、めんどくさ。そうだ、アンタにも面白いことしてやるよ」
馬鹿がそう笑うと同時にチャイムがなり、それぞれ割り振られた個室に向かった。
「おいおい、あの馬鹿の兄貴はデスクトップパソコンをノートパソコンに入れ替えるようなマネまでするのか?」
上等だよ、やってやる!
パソコンのスペックは明らかに劣っていたが、幸いノートパソコンには何の細工もしていなかった。
音声をクリアにはしづらいが、そのパソコンを使い試験を突破して再び休憩所に戻った。
そこには先程の馬鹿の取り巻きが更に大きくなっていた。
「アンタもクリア出来たんだ?ナルシスト」
「ああ、丁度良いハンデだ」
「チッ。あの陰気女に続いてクリアしたんだ。ウザいなぁ!」
馬鹿は机を思い切り叩き、大きな音を立てた
周りの取り巻きに属していない奴らがビビる
「このナルシストとそこの陰気女以外も今の内にウチらに属しな。じゃなきゃどうなっても知んないよ?」
「うるせぇな!くそ女!正々堂々試験を受けろよ!!」
男子武偵が立ち上がる。
「正義感とか感じてんじゃねーよ。何?英雄症候群ですか?マジキモいんですけど?」
また、口論となる引き金を引いた馬鹿と男子武偵
再びチャイムが鳴るまで続いた。
そして二度目の試験
次はパソコンにロックがかかっていた
「おもしれぇじゃんかよ」
そのロックは思った以上に簡単に解除出来た。
とてもAランクが行ったとは思えない程に…
その後も軽く試験をこなした。
そして休憩所
「見なよ皆!あの英雄症候群、落っちゃった!!
これでわかるよね、誰につくか…?」
その一言で中空知と俺を除き、全員が馬鹿についた
「あれ?陰気女なにしてんの?空気読めよ」
「あの、こんなの…ちょっと……」
「はっきり喋れよ!!」
「ご、ごめんなさぃ…」
「うるせぇなぁ!!馬鹿」
もう沢山だ
「上辺だけのメッキなんざ直ぐに剥がしてやる」
「うるさい!!負け犬!!」
今回の休憩はあのチームが何もしてこなかった
だが、次の試験では妨害のレベルを越えた妨害をしてきた。
ノートパソコンの電源が急に落ちていった。
復旧したのは10分後ほどで、残り時間は10分も無かった。
その間の音声は全て聞けなかった
「あのクソ馬鹿、制裁を加えてやる。兄弟ともどもな!!」
が速攻で試験を終わらせて休憩所に向かった。
そこには、中空知を馬鹿達が囲っていた。
「アンタ、どんな裏技使ったのよ!!」
「なにも…」
「んなわけ無いでしょ!!あんなのクリア出来れば問答無用でAランクよ!!
さぁ言いなさいよ!!何したのよ!!」
馬鹿は中空知の髪を引っ張り上げ、無理矢理にでも聞こうとした。
ふざけんなよな。
個室にカメラついてんだぞ、出来るはずがない。
この女子は自らの実力でクリアしたんだ。
そう思うと中空知の前に立っていた。
「いい加減にしろよ?
取り巻きが居なきゃ何も出来ない馬鹿が」
「アンタにゃ関係無いでしょ!!邪魔しないで!」
「黙れヒステリック起こすんじゃねぇ
そんでお前もお前だ中空知!喋れ!大きな声で!下手に出るな!。顔をしっかりと見せやがれ!
そんなんだからこうなるんだ!!……と、可愛いんだったら余計顔を出せよ」
髪の毛の下は、メガネを掛けた可愛い顔立ちの少女だった。
「とにかく取り巻き!!そっちに付くんだったら後悔すんなよな」
そう言って、馬鹿を一瞥してから個室に向かった。
最後はなんの仕掛けもなく、ノートパソコンでクリアしようとしたとき。
わずかにドアの開閉音と小さな悲鳴が聞こえた。
遮音性の高い部屋だが、俺の耳はある程度までの音なら拾える。
そして今の一瞬の小さな悲鳴は中空知のものだと分かった
俺は分かった上で自分の作業を続けた。
彼女の性格なら拒否は無理だが、俺は忠告はした。
「だから行くわけにはいかねぇのによ…」
俺は弱い女子を見ていると、決意が鈍る
「だぁぁちくしょう、通信科なんて二度と来るかよ!!」
ノートパソコンに細工をして部屋を出た
それから彼女のいたはずの部屋に向かった。
「くそ、鍵かかってるのか…」
ドアノブは固く、鍵も内側から掛かっていたが。アズキが教えてくれた解錠術でドアの鍵を開けると。
手足を縛られて尚、目に涙を浮かべながら顔でひたすらキーボードを押す中空知がいた。
「よく頑張った。あとは任せろ。」
「ふぐ…ふぇ?」
半泣きの中空知の頭を撫でて、あの馬鹿の部屋に向かう。
「あら、何の用?試験中に他人の部屋に入るのは違反よ」
「よく言うな、クズが」
「なんのことかしら?」
「悪いな、さっきからの試験中に色々細工させて貰った。今頃試験官達は情報科の先輩方にも頼んで必死にハッキングされたパソコンとにらめっこしてるぞ」
「なっ!?。嘘よ!!そんな事が1人の武偵が出来るわけない!!」
「悪いな、俺は中学の時は情報科のSランクをやっていたんだ。お前とお前の兄貴が起こした不正も俺が使ったパソコンに集め終わっている」
馬鹿と監視カメラに向かって言った
「そんな…あり得ないわ!!」
「ふん。ちなみに高グレードの超能力保持者でもある」
水槍を馬鹿の頬を掠らない程度で撃ち込み、パソコンを破壊する。
彼女は僅かに悲鳴を漏らした後に、気絶した。
直後に爆発が聞こえた。細工していたノートパソコンが爆発したようだ、わざわざカメラを見た馬鹿の兄貴辺りが爆発に巻き込まれたのだろう。
「あぁ、やっちまったな」
試験後、馬鹿は再試験、馬鹿の兄貴はEランクに格下げ。中空知はAランクにて合格。
そして俺は通信科試験は失格、及び通信科には二度と転科出来なくなった。
パソコンには詳しくないので
デスクトップ>ノート
が間違いかもしれません。