緋弾のアリア 守護者とFランク武偵   作:暇人鶯

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遅れました


第85話 新たな一歩

 

 

 

マリア…死ぬな…

 

 

 

 

 

気が付いて最初に目に入ったのは薄暗いが、白い天井だった。

 

「マリア!!っぐぅ…」

 

布団から起き上がると鳩尾に痛みが走ったが、構わずに周りを見渡した

 

 

「大きい声を出さないで下さい、傷に響きます」

「マリア、良かった…」

「傷に響きます。主に私の」

「わ、悪い。でも大丈夫なんだな?」

「ええ、幸い病院に運ばれたのが早かったようで」

 

後で兄貴にお礼言っとかなきゃな。あと腹蹴ったことも抗議しておこう

 

「で、マリアはいつ退院できるんだ?」

「私は来月の頭には退院出来る筈です。一真様は今日には退院ですよ」

「……マリア、悪い」

「はい?なにかなさいましたか?」

「あの時お前の言うことを正直に聞いときゃ、こんな風にはならなかったからさ…」

「一真様、経験は積めば積むほど良い武偵になれます。これからランクが上がっていくとより危険な依頼が増えてきます、今のうちのこういう経験は大切ですから」

 

体を起こそうとしたマリアを手で制して寝かせながら聞いた。

 

「ああ、分かった。次こそは俺が守る」

「はぁ、かずくん。そういうとこだよ。次こそは!じゃなくていいの、まだアタシの方が強いし経験だってある。時斗君たちのチームには敵わないけどアタシだって年上なんだから、まだアタシが守る側なの。だからゆっくりでいい、ゆっくりゆっくり助けて」

「…悪い、ありがとうマリア」

 

俺は直ぐにその部屋をでて病室の扉を背に座り込んだ。

 

似てない、似てないはずなのに似ている。

顔も髪も体型も声違う。同じなのは本当の性格だけなのに…

 

「なんでこんなに千紗に似てんだよ…」

 

千紗と同じ優しさ、同じ笑顔、暖かさ。

そうか、俺はまだ千紗の死に向き合い受け入れることが出来ていなかったのか。

 

だから……涙が出るのか。

 

「うっ、ちくしょう…泣き止めよ。涙なんか出るなよ…。これじゃ…。こんなんじゃ居なくなった千紗に顔向けが出来ねぇじゃねぇかよ…」

 

 

俺はその後も朝になるまでマリアに聞こえないように小さく泣いていた。

 

 

誰かが体を揺さぶる。

 

なんだよ、もう少し休ませ「よし、このクズ殺ろう」

 

「殺るな!!」

 

目の前を横切る薙刀を頭を下げて辛うじて躱す。髪斬れてないよな

 

「ちょっと夏希さん!何すんだよ!?」

「すんだよ?」

「す、するんですか!?」

「ふん、護衛だが女1人守れねぇクズを処分しようとしたとこだ」

「うっ……」

 

なにこの人?トラウマって言葉知らないのか?それとも超絶ドSなのか?

 

「うだうだしてんじゃねぇよ一真。守られて楽しいか?大将気分なんかになってんじゃねぇぞ。お前が今何が出来るかを考えろ。そんなザマでも武偵だろ」

「…ってるよ」

「あ?」

「分かってるよ!!俺がマリアに守られてばっかでさ。守られて楽しい?んなわけねぇよ!!俺が守りてぇのに弱くて守れなくて…。この苦しさは夏希さんにはわかるわけねぇよ!!」

 

夏希さんの胸ぐらを掴みながら怒鳴った

 

「はっ、そこまで言ったんだ。ついてこい」

 

夏希さんは少し乱れた真紅の着物を整えながら、病室の扉に一言かけた

 

「秋月マリア、一真借りてくぞ」

 

返事は聞こえない、恐らく寝てるのだろうか

一言掛けてから行きたかったが、仕方がない。

 

 

 

 

 

 

夏希さんに連れられて着いた場所は東京武偵高校の競技場だった。

 

「ここは時斗に頼んで今日一日貸し切りにしてもらってるから、今日は誰もココに来ないようにしている。制限時間は今日一杯、どちらかが負けを認めた時点で終了だ」

「まさか、戦うつもりか?」

「後ろに幾つかケースがある。それは全部お前の武器だ、マリアに確認を取ったから間違いない」

 

後ろにあったアタッシュケースを開けると、D.EとコルトM1900二丁に弾丸、そしてダガーナイフが3本

 

間違いないな、俺が使っていた装備だ

 

「準備は出来たか?」

「出来たけど、何で戦うんだよ」

「戦えば分かる。オレにはどうも戦闘狂のケがあるからな、口で説明なんてまどろっこしい真似出来ねぇからな!!」

 

語尾に力を込めながら、薙刀を降り下ろしてくる夏希さん。

それを間一髪で躱す。

 

「ちょっ!!夏希さん。真剣じゃねぇか!!」

「斬れなきゃつまんねぇだろ?」

 

くそ、なに考えてんだよ。

今は取り敢えず距離を取って…

 

「なっ、足が動かない!?」

「お前の薬学の師匠はオレだろ?気づけバカ」

 

笑みを浮かべた夏希さんは薙刀の柄を突き出し、なすすべなく喉を突かれる

 

「ガハッ…。ゲホッゲホッ。」

 

くそ、息が…

 

「だからソコで息を吸うな。相手は毒使いだぜ?」

「うぐ…」

 

全身が麻痺したように動かない。何らかの粉末の毒だったんだろう

そして何も出来ないまま、頬を掠めた薙刀は地面に突き刺さった。

 

「おい一真、口開けろ」

 

口の隙間から入った液体が喉を通過すると喉の痛みが引き、体も多少動くようになった

 

「お前さ、そんなんで守れんの?秋月を」

「……」

「お前は命千紗の件で死なせたのは自分のせいだと後悔した。自分が弱いからと自責した。なのに弱いまんまだな」

「俺だって努力してるよ!!でも強くなれないんだよ、夏希さんには分かんない!!」

 

そう言い放つと、夏希さんは着物を上半身だけはだけさせた。

 

そして俺は絶句した。

 

さらしを巻いた胸は年相応だが、そこ以外は女子高生とは思えないほどの傷の量だった

右肩にはなにかで貫かれたような痕が、左の肩口から右の脇腹までなにかで斬られた大きな痕が、他にも青アザや傷痕が無い部分を探す方が難しい程の傷の量だった。

 

「夏希さん…」

「右肩のはヘマして捕まったときに拷問を受けたヤツだ、んでこのデケェ切り傷はチームに来た特秘任務の途中でオレが先走って敵に受けたヤツ。後はいろいろやったな」

「何でそんなに」

「オレは時斗が大嫌いだ」

「知ってるよ、公言してるし」

「オレは時斗に追い付きたくて頑張った。いつもオレのずっと前を歩いてる時斗に追い付きたくてだ。そんで肩を並べれるまで強くなったらオレは何も気にせずアイツを好きになるつもりだった、こうやって自分の気持ちに嘘はつかねえつもりだった。

でもいざ追い付いた今を見てみろ。こんな女らしくねぇ体になっちまってよ。もう無理だ。

でも男のお前なら名誉の勲章だ、嫌いなヤツなんて滅多に居ねぇはずさ」

 

苦しそうに笑う夏希さん

 

「だからオレが修行をつけてやる。オレがした後悔を秋月にさせねぇためにお前を強くしてやる」

 

 

多分この人はどんな男よりも男らしい。けど多分誰よりも女の子になりたかったんだろう。

 

 

 

 




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