瓦礫を踏み砕きながら二メートル近い巨体が動く。
「親父!!」
「「「組長!!」」」
え?あれ鉢柿郷三郎!?巨人じゃないの?
「ふむ、翔次郎と花が首謀者か。拳骨では済まんぞ」
「くそ、皆逃げるぞ!!唯、こっちだ!!」
ビッチを除く皆が近くの窓や扉に向かう。
「なにしてんのさビッチ!!早く逃げなきゃやられるよ!」
「黙ってろヘタレ。オレなら拳骨一発だがお前は殺されるんだぞ!」
手錠を壊そうと必死で鎖の部分をナイフで叩く。
その間に郷三郎は壁を剥ぎ取りその巨大な瓦礫を掴み、窓に向かって投擲して完全に脱出口を塞いだ。
「残念じゃのう、貴様らは武偵を呼び込んだ。死んで償うべきじゃな」
郷三郎は両手を叩いた。
すると残りの出口だった2つの階段からそれぞれフルフェイスのヘルメットを被り、防弾ジャケットを着た男が四人が表れ進路を塞いだ。
そしてそれぞれその人垣を分けてスーツ姿の青年と40代位の男が現れた。
「袋の鼠じゃな。そこの武偵よ、恨むなら自分の運を恨むが良い」
「御生憎さま、手錠は外れたよ。まだ終わりじゃない」
「ふむ、潜入する度胸だけは誉めてやろう。井上達、そこの3人の女共を殺せ。橋田と他の4名はそこの武偵じゃ。翔次郎に花は儂自ら引導を渡してくれようぞ。」
上着を脱ぎ捨てた郷三郎はとても老人とは思えない体つきで、足がすくむような威圧感を感じた。
ダメだ、彼らだけじゃ勝てない。僕が手伝って勝てるか分からないけど少しは足しになるよね。
「行かせないぞ武偵」
「くそ、邪魔しないでよ!!」
「田中さん、頼みます。」
青年が言うとフルフェイスの中から1人出てくる
「おい武偵、悪いが組長の命令だ。ここで死んでもらう!!」
ボクシングの構えから高速のジャブが飛ぶ
それを両腕をクロスして辛うじて防ぐ
「はやっ!」
「戦闘中に喋んな!!」
呟いた次の瞬間にはガードを掻い潜った右の重い一撃が腹に入り、痛みに意識をとられた瞬間に右顎に衝撃が走った
「がっ!?」
地面を転がり、意識も薄れる。
「弱いな。所詮度胸だけか」
「油断しないでください、田中さん」
「あいよ」
くそ。
なんて早さだ。それに重い。武藤くんでももう少し遅くて軽いよ。
「せめ…て。ナイフがあれば」
「ナイフひとつで変わるかよ!!」
「がはっ!?」
言い放つと共に腹を蹴られ、地面を転がる
「く、そ…」
混濁してきた意識の中、凜とした声が聞こえた。
「ヘタレ!!何サンドバッグになってんだよ!」
「う、るさいよ。ビッチ…。今に、見てなよ」
「受けとれヘタレ!!」
うつ伏せに倒れる僕の右手に何かが当たった。
「刃無しのダガーナイフだ!!。んなもんしかねぇけど。ここで負けたら一生ヘタレって呼ぶぞ!!志摩ぁ!!」
うるさいって言ってんじゃん
「刃無し一本で変わるかよ。ナイフってのは刃が付いてこそだろ」
近づいてくる足音に小さく金属音が鳴るナイフを出したのだろうか?
知るか。
そんなことよりも…
「おさらばだな、武偵」
降り下ろされるナイフ
知るか
頭を横に捻るとナイフが首を掠めて地面刺さった。
そのナイフを握る
「なに!?」
「誰が…」
「くそ、離せ!!どこにそんな力が!?」
「誰がヘタレだ!!このビッチぃぃぃぃ!!」
両手を地面に着けると同時に体を丸め、油断していた敵の顎に向けて思い切り体を伸ばして蹴りあげた。
「ぐふっ!!」
体を吹き飛ばされた口から泡を吹きながら倒れていた。
「はぁはぁ。まず1人!来なよ。今までの僕とは大違いだからね」
橋田は顔を顰めた。
「油断していたとは言え田中さんが近接で殺られるとは。仕方ない全員で叩く!!」
号令と共に刀を抜くフルフェイスと橋田。
なるほど、こちらは近接部隊。井上の方が銃撃部隊ってことか。
待てよ。ならビッチ達が
背後で戦ってるであろうビッチ達を見ると、瓦礫に身を隠し銃撃を避けていた。しかし1人は肩から血をながしている
マズイな、そう長くは持ちそうはないみたいだ
「よそ見すんなぁ!!」
「無駄だよ。その構えからは袈裟斬り」
右上から降り下ろされる刀の腹に左手の甲を当て、僅かに軌道をずらす。
そして軌道のずれた刀を掻い潜り、刃無しナイフを逆手に持ち回転しながら腹を斬りつける
「くっ!?」
顔を苦痛に歪める敵を回転の勢いを殺さずに回し蹴りをして吹き飛ばす。
「てめえ!!」
「その構えは横一文字斬り」
水平に斬りつけるような刃をしゃがむことで躱し、刀の鍔目掛けて思い切り蹴りあげて刀を弾き飛ばした。
「ちょこまかとぉ!!」
「投げ技なんて僕に効くかぁ!!」
掴みかかる両腕を両手を使って弾き、股間を蹴りあげる。
敵が悶絶した瞬間、足を持ってブン回す。
「そぉりやぁぁぁ!!」
先ほどの回し蹴りを食らわせた相手に向かって、敵を投げつける。
ぶつかった二人は完全に意識を失った。
「クソが、あいつらと俺を一緒にすんなよ。俺は剣道七段だ!!」
「唐竹斬り。悪いけど脅しにもなんないよ」
真上から降り下ろされる刀をナイフの峰で受ける。
耳障りな金属音が鳴り、ナイフにヒビが入る。素振りをしているだけあって降り下ろされる力は尋常じゃない
「けどそれだけだ!!」
ナイフを滑らせながら僅かに空いた足の隙間に潜り込み背後に立つ。そして首を締め上げた
「うっ…ぐ…」
数秒するとブクブクと泡吹き、気を失った。
「さぁ。あとは君だけだよ、橋田!!」
「ククッ。アッハハハ!!」
「何がおかしい!!」
「まさかAに近いランクの武偵が来るとはな。だが俺を倒しても井上さんも組長もいる。既にお前は手負い、動きが悪いのに組長に勝つ気か?夢見すぎなんだよ、寝言は寝て言え」
「夢の方がどんなにいいだろうね。夢なら僕は死なないし怪我もしない、僕は最強でハーレムでメインヒロインはレキさんで、一真ともキンジとも友達になった上でRランク。そんで日本の武偵としてテレビとか出ちゃってて。そんで、そんで」
「お前、妄想癖あるのか?」
止めてよ。そんな気の毒そうな目でこっち見ないで!!
「と、とにかく!!これは夢じゃない現実なんだ」
「なら現実を見ろよ」
「見てるさ。夢なら主人公でも現実はそこらへんの人と変わらないモブと一緒なんだ。ならモブなりに引っ掻き回してやる」
ナイフを逆手に構える
橋田も日本刀を構える
そして橋田が動いた。
袈裟斬り。僕は冷静にナイフで受けた、ヒビの入ったナイフで。
降り下ろされた刀の初撃を防いだナイフは耐久力を失い砕けた。
「しまっ!?」
「詰めが甘かったな」
防ぐ術を失った僕は橋田の二撃を防げずに、
横から飛んできた何かに橋田ごと吹き飛ばされた。