緋弾のアリア 守護者とFランク武偵   作:暇人鶯

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あけましておめでとうございます。


第93話 第1の試練

一真SIDE

 

 

 

亜瑠が今の状況に疑念を抱いている。

確かに無茶な理由を幾つも並べ ていることは確かだ。

しかしまだ気付かれる訳にはいかない。

亜瑠の為にも、俺の為にも……

 

 

 

 

亜瑠SIDE

 

一真が翌日でなく2日後に作戦決行としたのはきちんとした理由があった。

ちょうど今日、遠洋に漁業に出る漁船に同乗させて貰う為だったらしい。

 

「今日はよろしくお願いします」

「なに、気にするな。武偵さんの頼みとあっちゃ断れんよ。ほら、乗りな。ちと天気はわりぃが、コイツの乗り心地は台風でも最高だ」

「ありがとうございます」

 

ねじり鉢巻をした典型的な漁師スタイルをした漁師さんは、顔に似合わずオープンな性格をしていたおかげで船では退屈しなさそうだ。他の人も皆人当たりが良さそうな人ばかりだし。

 

「お前らが行く予定の島まで2時間ちょっとだ。それまで船旅でも楽しんでくれ。そうだ、ちょうど今朝獲れた魚があるんだ。食べてみるか?」

「お、新鮮だな?やっぱり刺身か?」

「いやいや、それも良いが……やっぱり海鮮丼だな。漬けもあるぞ」

「うぉっ!?それオレも食う!」

 

そう言って鉢柿組の皆が魚を食べ始めた。

うぅ、美味そうなのに…

 

「ん?亜瑠は食わないのか?」

 

一真がお刺身を食べながら尋ねた。

違うんだ…

 

「今日動き回ると思って朝ご飯を一杯食べたから…今食べたら吐く」

「あーマジで美味い、これ食えねぇとかマジでかわいそうだな」

「このビッ……どうかしましたか翔次郎さん?」

「いや、学習するっての大事だよな」

「ですね!!」

 

その後、物凄い船酔いに襲われた僕の記憶はそこまでしかもたなかった。

 

 

 

 

次に気が付いた時には既に島に着いていた。

正確に言うと、島の北端にある波止場の灯台の中に居る

外は雲に覆われていて、紫色の稲光が所々で光っている。

 

「ていうか、なんで灯台?」

「既に敵の潜伏する島居るんだぞ。どこか屋内に居る方が安全だ。それに波止場の灯台なら見渡し易いから奇襲に対応しやすい」

「なるほど。それなら早く準備を整えて敵の捜索しようよ」

「ああ、分かった」

 

一真は頷くと1枚の地図を出した。円の形をしたこの島の地形情報等が事細かに記入されている地図だ。

 

「まず俺達が居るこの北端の灯台、ここが俺達の本拠地とする。

次に捜索チームだが、4つのチームを編成する。

1チーム目は俺と橋田さんの二人。2チーム目は亜瑠、翔次郎さん、田中さんの合計三人。3チーム目は唯さんを中心に計四人。

捜索ルートは、亜瑠達は東端にある洞窟。唯さん達は西端の小さな廃村。俺達は島の頂上付近にある大日本帝国時代の砲台跡地だ。

南端の森林地帯は翌日の調査とする。」

「おい、オレはどうするんだよ?」

「ああそうだ、加奈さんと由梨さんの二人は待機だ」

「待てよ!何でここまで来て留守番なんざしなきゃいけねぇんだよ!」

「由梨、止めなさい」

「でも!!」

「由梨、誰かがここに残らなきゃいけないの。なら一番弱い私達が残るしかないわ。私だって残りたくないの。でも助けるには強い人が行かなきゃいけないの。」

 

 

 

加奈さんが諭すようにそう言い、言われた由梨ちゃんは悔しさからか唇を噛みながら渋々頷いた。

 

「分かったよ。…ここに居りゃ良いんだな」

「ああ」

「亜瑠、親父を・・・頼むぞ」

「うん、絶対連れて帰るよ」

 

由梨ちゃんと拳を合わせて言った

 

 

 

そうして僕と翔次郎さん達三人で洞窟に向かった

 

「思っていたよりもじめじめしてませんね」

「ああ、ここいらは戦時中に火薬庫として使われていたらしいからな。湿気ないように工夫されてんだろ」

「きちんと火薬処理してますよね?探索中にドカンとか嫌ですよ、僕」

「幾ら湿気がすくねぇっつっても、んな時代の火薬、とっくに湿気てるさ。それに、降りだしてきやがった。」

 

洞窟の中にまで響くように雨音が聞こえる。と、同時に大きな雷鳴が鳴り響いた。

 

「うわっ!これ落ちたね、雷」

「なんだ?武偵の癖に雷なんて怖いのか?」

「怖くなんかないですよ!!」

「うるさいぞお前ら、集中しろ」

「はーい」

 

 

周りに注意を払いながら慎重に進む。

火薬庫として使われていたか、足場はしっかりしている上に凹凸が削られている。お陰で歩くのにはそこまで苦労しなくて助かる。

 

足元に錆びた薬莢や軍刀、壊れた木箱の破片など、当時のままの洞窟が残っている。

 

 

「本当にこんなところにいるのかなぁ、砲台跡とかのほうがよっぽど隠れてそうじゃない?」

「確かに。若はどう思いますか?」

「思わねぇってことはないが、俺らが思うってことは向こうも考えるだろうよ」

 

それもそうか、流石に考えが浅すぎた。

そういえば、今回の依頼も成り行きで来たけど、よくよく考えると結構すんなりここまできたなぁ。

まぁ、一真だし大丈夫か。

 

「おい、志摩。聞いているのか?」

「あ、ごめん。考え事していて…。で、なんだって?」

「だから、もう既にここは敵の手の中と言っても過言じゃないんだぞ?もう少し警戒しねぇと…」

 

 

 

 

「このボクサー崩れみたいになっちゃいますもんねぇ・・・」

「え、」

 

振り替えると眼鏡をかけたスーツ姿の男が、倒れた田中さんの上に座り込んでいた。

 

「いやいや、敵地のまん中で考え事とは、今の武偵校は何を教えているのやら?ね、Fランクの志摩君?」

「志摩ぁ、伏せろ!!」

 

その声に反応して伏せると、翔次郎さんが右腕を振り抜いていた。

見事その右腕は、眼鏡の男の顔面を捉え、吹き飛ばした。

 

「翔次郎さん、」

「構えろ志摩!、こんなんで倒れてくれるような敵じゃねえぞ!!」

 

翔次郎さんの言葉でやっと敵の方を向く

 

「いたた、私は戦闘型じゃないんですが・・・。ですが、いいパンチでした」

 

頬を擦りながら立ち上がり、眼鏡を整えながら話す男

 

「私はAランク武偵の、いえ、元Aランク武偵の長谷川と申します。今回の襲撃の武器全てを調達させられました、不運の男です」

「望んでやったことだろうに。人相から分かるんだよ、ヘラヘラした奴こそ信用できねぇ!」

 

大仰なジェスチャーを入り混ぜながら、まるで詐欺師のように振る舞う。

 

「そういうあなたは鉢柿組の郷三郎の息子さんでは?珍しい。どういった理由で武偵に手を貸しているんですか?」

「しらばっくれんのかよ!!」

 

怒声と共に、距離を詰める翔次郎さん。

いや、待って。本当に戦闘タイプでないのなら、こんな堂々と出てきたりするはずないじゃないか!?

 

「翔次郎さん、駄目だ!」

「吹き飛べえええええ!!」

 

翔次郎さんの拳があと一歩というところで拳を掴まれた

 

「ふむふむ、エンジンがかかると多少頭は回るようですが…少し遅すぎますね。一方こちらは郷三郎の劣化版としか言いようがありませんね。良いのはガタイだけですね」

「てめぇ、何で受け止めれる」

 

そして長谷川は耳元で呟く

 

「何でもなにも、あなたの右腕はもう使い物にはなりませんよ?」

「ふざけんなぁぁぁ!」

 

右腕を引き、再び振りかぶり殴り付ける。しかし、今度は指一本で止められる。

 

「愚行ですね、通じない手を二度使う。訂正しましょう、貴方は郷三郎の劣化版にすら遠く及ばない」

 

懐から銃を取り出した長谷川は、なんの躊躇いもなく翔次郎さんの頭に向けて銃弾を放った。

 

だが、銃弾が翔次郎さんに当たることはなかった。

咄嗟に僕が翔次郎さんを蹴り飛ばしたからだ

 

「ほう、咄嗟に鉢柿を蹴り飛ばすとはね、どんどんギアが上がっているじゃないですか?」

 

ナイフを握る手に一層力がこもる

 

「くそ、一体どんな手を使って翔次郎さんを…」

「ヒントをあげましょう私のランクはA、専攻学科は尋問科。装備科と思いましたか?」

 

なるほど、恐らくこの人が使ったのは催眠術の類い。綴先生から聞いたことがあった。

超一流の尋問科は相手が情報を喋ったことすら気付かせない。催眠術のようなものも駆使する人がいるって…

 

「でも、なんでそんな能力がある貴方は武偵を、政府を裏切るような真似をしたんだ!!」

「驚いた。君はそこまで頭がよかったのですか…」

「馬鹿にしてるのかな」

「いやぁすみません。他意はないんですよ、お詫びに君の質問に答えましょう。

私が裏切った理由だったね、それはね……

 

その方が面白そうだったからだよ。

当たり前じゃないか、日本政府を敵に回すなんて正気じゃない。人生一度きり、政府に従ってチマチマした線香花火を楽しむより。でっかい花火で人生を彩りたいんだよ。私は!!」

 

「それで、誰かが命を落としたとしてもいいの?」

「人はいずれ死にますからね、それが早いか遅いかの違いですよ。ただ巻き込まれて死んだ人は運が無かった、として諦めてもらうしかありませんね。あの人の考えなんて知りません。でかく大きな花火を」

 

なるほど、根本的に悪人なんだな。この人は。

だったら

 

「だったら武偵として君を捕まえるしかないね。

長谷川元武偵、貴方を暴行の現行犯で逮捕する!」

 

ナイフを左手に持ち替え、ニューナンブを右手に構える

 

「さて、やりましょうか。久々の運動です」

「戦闘には不向きじゃなかったの?」

「得意ではないとは言いましたが、それなりには出来るつもりですよ?」

 

下ろしていた腰を上げる長谷川。

しかし長谷川は武器を持たずにただ構えるだけだった。

もしかしたら何か武術をやっていたのかもしれない、

頭のなかにいくつかの武術を思い浮かべるが、どうにもただのファイティングポーズにしか見えない

 

「何の武術かな?それともただ構えているだけ?」

「さぁ?どうでしょうかね」

「まぁ、どっちでもいいけどさっ!!」

 

喋り終わると共に構えた銃を撃ちながら近づく

 

撃った弾は四発。うち直撃弾はゼロ。相変わらずの射撃センスに舌打ちしてしまう

たが、至近距離まで近づいた。この距離は僕の距離だ。

 

「くらえっ!!」

 

逆手にもったナイフを長谷川の右手にめがけ切り上げる

そのナイフは見事右手を捉え、確かな感覚が伝わる。

続いて、長谷川の頭の上からナイフを突き刺そうと降り下ろす。

かろうじて後ろにのけ反り、頭や胸への直撃はかわすが、予想通り。

最初から狙いは右足

邪魔が入ることなく、ナイフは長谷川の足と地面を貫く。

 

「ぐぅっ…」

 

呻く長谷川の頭に向けて、テコンドーのように蹴りを入れる。

これも直撃した長谷川は気を失うように倒れこんだ。

 

「ふぅ、あまりFランクを舐めないでもらいたいね。といっても、もう聞こえてないかな?」

 

ピクリとも動かない長谷川を背に、倒れていた翔次郎さんに駆け寄る

 

「翔次郎さん!!無事?」

「うぐっ…志摩。奴は?」

「僕がやったよ。ほら、気を失って倒れている。だからコイツを担いで一旦帰ろう」

「何言っているんだ…志摩。」

「何って、長谷川を倒したから、帰還し…え?……」

 

長谷川の方に振り替えると、右手が変な方向に向き、右足が地面に縫い付けられ、倒れこんでいる田中さんがいた。

 

「うそだ…そんな」

「志摩さん怖いですねぇ。気絶していた味方ですらそこまで痛め付けるんですか。くく」

 

洞窟の暗がりから歩いてくる長谷川は、不敵な笑みを浮かべていた

 

「くそっ!!いつなんだ!!」

「いつとは?…何のことですか?」

「いつ僕に催眠術をかけたんだ?」

「最初からですよ。僕と目があってから、少々かかりにくい催眠術でしたが、貴方が思い込みの激しいタイプで非常にかけやすかったですよ?」

「くそっ……」

 

悔しいが、確かに自分は思い込みが激しいタイプである。

そのせいで何度も仲間や友達とも関係が危うくなったりなんかよくあったけど、それのおかげで助けてもらったことだって何度もあった。

だからそれはデメリットじゃない。

弱点じゃない。

 

「真っ向からぶっつぶす!」

 

さっきまであーだこーだ考えたけど、頭が悪い僕が考えたって意味なんてほとんど無い。

よぉし、そうだ!

考えるな、感じろ!!

 

「ふふっ」

「何わらってるのさ?」

「いえ、目付きが良くなったな、と」

「それはどーも」

「それに二十代だけでなく十代の体も頂けるなんて、本当に有り難いですよ」

「いた、だける?」

 

まさか、マッドサイエンティストの類いかな?

確かに若い体はさぞ嬉しいだろうね

 

「涎がこぼれそうですよ。貴方達の体を想像するとね」

「へ?」

 

涎……ちがうよね、そっち系じゃないよね?

たしかに、昔に1度襲われかけたけど、僕って身長が低いから俗に言うショタって言われて……

 

「って誰がチビだぁっ!!」

「誰も言ってませんが?」

「……」

 

あ、恥ずかしいやつ

 

「何でもいいですが、今夜はとりあえずそこの鉢柿の息子で遊びましょうかね……」

「そういうのは、僕を倒してからに偵してくれるかな」

「ふふ、貴方が私に勝つんですか?冗談でしょう。貴方の強みはナイフのみの近接格闘。しかし貴方の催眠に掛かりやすい体質はどうあっても変えられない」

「そんなもの、やってみなくちゃ分からないじゃないか」

 

そうさ、やってやる。

絶対に捕まえて、師匠の手土産にしてやるんだ。




お久しぶりでした。
これからは月一で更新出来たらな、なんて思ってます。
思っているだけですが……
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