金剛が金剛をナンパしようとするお話です。色々と身の程知らずな内容ですが、よろしくお願いします。※同一HNでPixivにも投稿済みです。

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金剛のナンパ

その日の夕方、交代要員に現場の引継ぎを済ませて、ワタシ・黒鉄金剛はK駅近くのブリティッシュパブに足を運びマシタ。

 

オーダーはいつも通り、ギネスビールとフィッシュアンドチップス。

提督がアルコールを飲まない所為なのか、ワタシもアルコールにこだわりはありマセン。

「とりあえず、ビール」というやつデス。

フィッシュアンドチップスと言えば…いつだったか、イギリス留学の経験がある俳優が、同じくイギリスに留学する後輩俳優に「これがイギリスの味だぜ」とビビらせようとして、あるブリティッシュパブでフィッシュアンドチップスを奢ったら普通に美味しくて当てが外れた…というエピソードを思い出しマス。

 

美味しいフィッシュアンドチップスを食べられる国に暮らす幸運に心からの感謝を捧げながら、ギネスビールとフィッシュアンドチップスをオーダーすると、お店の人がチョット目を丸くしマシタ。

 

「…どうかシマシタか?」

「あ、そういえば金剛さん、艦娘だったんでしたね。」

「?」

 

店員さんは窓際の席に視線を向けマシタ。

そこには…。

 

金剛が居ました。

 

「ビールしかオーダーされませんでしたし、いつもと着ている服の感じも違ってましたから、どうしたのかなと思ったんですが。…もしかして、お知り合いの方ですか?」

「No,見知らぬ金剛(ワタシ)デスね。」

 

知り合いに海上防衛隊S港基地の金剛はいマスが、彼女は防衛隊の金剛ではアリマセン。

と言うか、本当に見たことのない金剛デシタ。

もしかすると、県外から来た金剛だったのかもしれマセン。

 

窓際に座っていた金剛(カノジョ)の服は…ダークグレーのニット、ライトグレーのスカート、黒のストッキングに、やはり黒のショートブーツ。

(あと窓際に白のマフラーとライトグレーのコートが置かれていマシタ。)

対する金剛(ワタシ)の、この日の装いは…N3-Bジャケット(カーキ)、緑のセーター、赤いマフラー、アイボリーのパンツに、黒のスニーカー。

(あと、ベージュのトートバック。)

 

何と言うか、彼女の方が淑女(レディ)という感じがしマシタ。

何より…その愁いを帯びた(かんばせ)が、ワタシと決定的に違っていマシタ。

 

そしてその愁いを帯びた(かんばせ)は、確かにワタシのハートに触れたのデス。

 

ところで…ナンパという行為をどう思われマスか?

人間の女性の中には、迷惑だと思われる方も居られることでショウ。

ですが誰にどれだけ迷惑だと思われようと、性欲と、誰かを素敵だと感じる感性がある限り、ナンパという行為がなくなることはアリマセン。

 

「Hi! nice to meet you! 相席してもよろしいデスか?」

…少なくともワタシは、この命題が真であると確信していマス。

 

「………!」

彼女はワタシを見て、目を丸くしマシタ。

ワタシはその虚を突くように、彼女の返答を待つことなく、彼女の正面に座りマシタ。

「驚きましたカ?ワタシも驚いてイマス。金剛同士が、同じ艦娘同士がこうしてprivateな場で顔を合わせることって、ありそうでないことデスよね…。Oh!sorry!ワタシは黒鉄金剛といいマス。」

「…立花金剛…デス。」

 

 

こうしてワタシは初めてのナンパに挑みマシタ。

 

方針としては…。

・金剛同士が何の申し合わせもなく、こうしてprivateな場で顔を合わせることはなかなかないことだと強調する。

・「このことをどう思いマスか。」と問うて、「並々ならぬ縁を感じマス。」と()()()()

・それを受けて「デショウ?ワタシもそう思ってたんデス…。」と返し…。

・ファッションの話、鎮守府あるある、金剛型あるある…で会話を盛り上げ、()()()()()()()()()()、さらにワタシへの好感度を上げる。

・そしてホテルへご案内。目眩く素敵な90分を…。

 

………。

色々突っ込まれても仕方ないところがあるのは認めマス。

 

まずワタシはナンパ初心者…と言うか、ナンパをするのは初めてだというのに、いきなりホテルを目指すのは身の程知らずにも程があるんじゃナイか。

後述しマスが、このナンパは身の程知らずというだけではなくそもそも無謀デシタ。

デモ、ワタシはこの時、彼女とセックスする自分を空想…妄想することができました。

「人が空想できるすべての物事は起こりうる現実である。」という言葉もありマス。

確かにこの妄想が実現する確率はほぼ0デショウ。

でも「ほぼ0」であって「ズバリ0」ではアリマセン。

彼女とセックスできる見込みが万が一にも、億が一にも、兆が一にもあるのであれば、その見込みに賭けることはそれほど無意味ではないと思いマシタ。

 

先にワタシは彼女の愁いを帯びた(かんばせ)に惹かれたと書きマシタ。

それなのにワタシは何故彼女の愁いを取り去ろうとしたのか?

ワタシは自棄酒など飲みませんし、人に自棄酒を勧めたりもしマセン。

アルコールもセックスも、ヤるに相応しい気分や雰囲気はある、とワタシは思っていマス。

彼女の愁いは確かにワタシを惹き寄せましたが、さあセックス!という段になれば、彼女の愁いはワタシにとって大きな障壁になるのデス。

 

愁いを取り去ってさらに好感度を上げようとするより、彼女の愁い・悲しみを慰める方が手っ取り早いんじゃナイか?

…正直ワタシも、そうは思ったのデスが…。

少し前に、そういう策を使う(ガキ)に関わったことがありマシタ。

(と言っても、直接言葉を交わしたりはしマセンでしたし、結局顔も見ませんデシタが。)

それでその時、その(ガキ)が使った…女の子の悲しみに付け込むという策に、何とも言えない厭らしさを感じたのデス。

…まあ、lustful(いやらしい)はwelcomeデスが、nasty(いやらしい)はunwelcomeというわけデス。

 

こうしてワタシは、急に湧きあがった情欲と、その場での思い付きと、突っ込みドコロだらけの方針を以て、初めてのナンパに挑みマシタ…。

 

それで結局…身の程を思い知らされることになってしまいマシタ。

 

「確かに並々ならぬ縁を感じマス。」

この一言を引き出すために、ワタシは言葉を重ねに重ねたのデスが、彼女の愁いはワタシの推定よりも遥かに深かったようデス。

ワタシが何をどう言っても、彼女の反応は鈍く、重く、手ごたえを感じないモノばかりデシた。

焦ったワタシはそこから更に言葉を重ねてしまい…一方的に喋りまくるという、おそらく最悪の悪手を打つことになってしまったのデス。

 

 

「結局一体何のご用なのデスか。ワタシをナンパしようとでもしているのデスか。」

…彼女の愁いを取り去ることができなかったばかりか、彼女の気分に「不機嫌」を追加してしまいマシタ。

ここでワタシは、初めてのナンパが失敗に終わったことを悟りマシタ。

 

「…Yes,その通りデス。この後90分程、休憩できる場所で一緒に遊びたいと思ったのデスが…。」

ワタシは観念して、彼女をナンパしようとしたことを白状しマシタ。

 

「…ワタシはそんな軽い艦娘(おんな)じゃアリマセン。」

ワタシの白状を受けて、彼女は両手を膝の上からテーブルの上に移しマシタ。

…左手薬指には、指輪が輝いていマシタ。

初めてのナンパは、そもそも無謀な企てだったというわけデス。

 

「重ね重ねsorry.ですが、少しだけ弁解させてクダサイ。」

「信じるか信じないかは勿論アナタ次第デスが、ワタシ…遊ぶということにかけてはeager and sincere(いたって真面目)デスよ。」

「ワタシにとっては、遊ぶことは生きること、生きることは遊ぶことなのデス。」

「特に提督との遊びは、ワタシの命デス。…この命が尽きるまで提督と遊び続けることはmon plus grand désir(私の、最大の願い)なのデス。」

 

ワタシの口から「提督」という単語が出たとき、彼女は視線を自分の左手に落しマシタ。

その様子を見て彼女の愁いが何であるか、大体想像がつきマシタ。

 

 

我ながら未練がましいとも思いマシタが、ワタシは最後の悪足掻きとして、彼女の愁いについて思うところを語ることにシマシタ。

 

「鎮守府という場所は確かニ、どっちを向いても美女/美少女だらけですよネ。」

「そして艦娘(ワタシたち)は、艦娘(ワタシたち)の肉体は、男も女も、艦娘も受け容れることができマス。」

「提督が男の人でも女の人でも、提督が艦娘(ワタシたち)に想いや情欲を受け容れてもらいたいと思うことは、そう不自然なことではないデショウ。」

「それに艦娘(ワタシたち)にだって性欲はありマス。」

「提督が素敵な人なら、あるい都合のいい人なら、艦娘が提督に想いを寄せたり、提督で情欲を満たそうとしたりすることも、不自然なことではアリマセン。」

 

「提督との遊びはワタシの命だと言いマシタが。」

「提督が他の艦娘(おんな)と遊んで、ワタシと遊んでくれないということも、よくあることなのデス。」

(実を言うと、これは何人かの艦娘が「提督の聖人君子面が気に入らない」と言って提督を責めたてている、ということなのデスが…。)

 

少し俯いていた彼女は、ここで視線を私の方に向けマシタ。

ワタシはそれを確認すると、そのまま話を続けマシタ。

「そんな時、ワタシだったらどうするかと言うと、デスね…。」

 

ワタシは身を乗り出し、彼女の耳元に顔を寄せて囁きマシタ。

「fuckするんデス。その艦娘(おんな)も、提督も。」

「ファ…ファ!?」

 

狼狽した彼女を見て、ワタシは自分の唇に人差し指をそっと当てマシタ。

 

…口から出かかったアルファベット四文字をグッと飲み込んで、彼女はワタシに問いマシタ。

「…アナタから提督を奪った艦娘(おんな)とも…アナタを放ったらかしにした提督とも…その、するというのデスか?」

「Yes,その通りデスヨ。」

「Why?」

 

「繰り返しになりマスが、提督との遊びはワタシの命デス。」

「邪魔をされてしまったら…遊んでもらえなかったら…ワタシは…ワタシは…。」

ここでワタシは、提督と遊んでもらえない時の気持ちを想起してしまいマシタ。

その気持ちと、彼女と肌を合わせられない落胆が、私の情欲を更に燃え上がらせてしまったのデスが…。

 

何とかその情欲を抑え、ワタシは続けマシタ。

「だから邪魔をした艦娘(おんな)には、肉体で贖ってもらうのデス。遊んでくれなかった提督にも、肉体で償ってもらうのデス。」

「デスが…。」

「気持ち良いと泣き叫ぶ艦娘(おんな)を抱き締めていると、その艦娘(おんな)が無性に愛おしくなってくるのデス。」

「壊れるまでイかせてヤル、ワタシのbabyを孕ませてヤルという凶暴な劣情は消えて、この艦娘()を法悦境に導きたい、ワタシのbabyを産んでほしいという望みが、ワタシの心を満たすのデス。」

「提督の欲望と悦びをワタシの中で確かめると、私も嬉しくてたまらなくなるのデス。」

「ワタシの肉体に溺れさせてヤル、babyが出来るまで搾り取ってヤルという獰猛な情欲は失せて、ワタシの中に思う存分欲望を吐き出してほしい、ワタシにbabyを産ませてほしいという願いが、ワタシの心を占めるのデス。」

 

ワタシの語りを聞いて、彼女は少し引いたようデシタ。

「あ…頭がクラクラしマス…アナタの…アナタのmoralは、一体どうなっているのデスか…。」

 

 

「…広く受け容れられるようなことではないことは認めマス。『わたしを見習うんだよォーッ!』などと言うつもりもありマセン。(安易に見習われても困りマス。)でも…うちにも修羅場はありマスが、それは『修羅場』と書いて『平和』と読むのデス。まさにFaites l’amour pas la guerre(戦争ではなく恋をしよう、揉めるくらいならセックスをしよう)…というワケですネ。」

「セックスそれ自体は遊びデス。デモ、それは人間と人間を、艦娘と艦娘を、そして人間と艦娘を結び付ける、とても大切な遊びデス。」

「誰かがパートナー以外の相手とセックスして、二人の関係がCatastrophe(破局)を迎える…というのは、よく聞く話デス。」

「よく聞く話デスが…聞きたくない話でもありマス。」

「セックスは誰かと誰かを結び付ける遊びデス。セックスが原因で誰かと誰かの結びつきが途切れてしまうナンテ、こんなにワタシを嫌な気分にさせる話はアリマセン。」

「ドウシテ、二人はそこで終わりだと決めつけてしまうのデショウか?決めつけられてしまうのデショウか?」

「『あのひとも、自分のパートナーを好きになってくれたんだ』と思うことは、そんなにありえないことデショウか?」

「『あのひとより自分の方がずっと良いってことを思い出させてやる』と思うことは、そんなにありえないことなのでショウか?」

 

彼女は特に口を挿んだりもせず、ワタシの語りを聞いてくれマシタ。

「肌を合わせ、体を重ねることが単なる遊びではなく、愛と誠の証だとしても…No,アナタがそう信じているなら尚更、アナタにはするべきことがあるのではないデスカ?」

 

「………。」

彼女はグラスに残ったビールを一息に呷り、コートを羽織り、席を立ちマシタ。

 

「Hey.」

「………。」

ワタシは席を離れようとした彼女を呼び止めマシタ。

「…肝心なことは、あくまでもアナタの望みを成就することデス。敵を打ち倒すことではありマセン。そのことさえ忘れなければ、大きく道を外れることはないデショウ。」

「………。」

彼女はワタシに一礼してくれると、そのまま店を後にシマシタ。

 

一人残されたワタシは、そのままビールを飲み、美味しいフィッシュアンドチップスを楽しみマシタ。

(アァ、彼女にもワタシのフィッシュアンドチップスを勧めればよかったデスネ。)

 

悪足掻きもしマシタが、成果は「立花金剛」という素敵な金剛の存在を知ったことダケ。

ホテルにご案内して素敵な一時を共にするどころか、連絡先…どこの鎮守府の金剛なのかを知ることすら出来ませんデシタ。

初めてのナンパは、強がりや負け惜しみすら入る余地のない大失敗・完全敗北に終わってしまいマシタ。

 

…でも、マァ…愁いに沈み、次の一歩を踏み出せない様子だった彼女の背中を押すことはできたかもしれマセン。

彼女とのお話は、それだけでも意義はありマシタ。

そう思いながら、ワタシはフィッシュアンドチップスを平らげ、ビールを飲み干し…店を後にし、真直ぐ我が家・岩川台営業所に向かいマシタ。

 

…我が身の内に燃え続ける情欲を鎮めるために…。


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