ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第10話 南洋の大対決

 

 

43年中盤、北方のアッツ島守備隊の玉砕以降、日本軍は戦線と内域が崩壊。本国から戦地までの輸送船がアメリカ潜水艦による相次ぐ被害。中部太平洋とビルマの区域に新型機による空襲。

最前線のラバウルでも100以上の敵機と交戦、伊号作戦に続き呂号作戦を発動。ラバウル航空部隊は戦い、敵を撃退したが味方の損害も出た。

 

そして、世界が一変する西暦1944年1月1日、最前線のラバウル基地ー

基地の門と司令部、兵舎には門松やしめ縄が飾られ、神社の参拝や獅子舞いなど、パイロットと整備員、基地の兵は一時の戦争を忘れ、正月を楽しんだ。

 

基地の兵舎にて、6人のパイロットと整備員と給士、原住民の少女が正月の料理を堪能した。

 

「初めてだな~日本のお正月料理は~」

 

「おっ、そうなのねぇ~」

 

秋山敏子=トチコは原住民の少女サンに日本料理を味会わせた。

 

「久し振りだな、雑煮はともかくこの御節料理は~♪」

 

「てやんでぃ、一部は代用食だな!」

 

輸送船がアメリカ潜水艦の被害により物資の確保が困難している。給仕のトチコでさえ頭を悩ましている。彼女は原住民のサンと御節に近い食材を調達した。若人の大賀虎雄一飛曹は長い間の南方暮らしで歓喜したが、秋山敏郎=トチロー兵曹長はやや不満がちであった。

 

「ん…戦時で何回お節料理が食えるのやら…」

 

「「……………」」

 

「おい、新一郎!正月そうそう不吉な事は無しだ!」

 

「そうですよ!せっかく正月の雰囲気を壊さんで下さいよ。」

 

沖田新一郎少尉の言葉で、みんなの箸の動きが止まった。すると厚木十三中尉は正月の和みを壊さない様に忠告、彼に続き桜井洋介飛行兵曹長も助言した。

 

「はぁ~…(みんな、楽しそうだな)…」

 

「ですね、おらの三線を奏でますからご覧あれ~♪」

 

「「「いいぞ~幸吉~♪」」」

 

幸吉が奏でる三線で雰囲気が出る中で、新一郎の弟、沖田進次郎二等飛行兵曹は何事も無く息を吐いた。彼は戦地で戦って2年、特殊部隊ことラバウル六勇士の一員、幾つもの激戦で戦い、生き延びた。

 

1月17日。0230時、ポートモレスビー連合基地ー

 

滑走路にはグラマンF6FヘルキャットやR4Uコルセア、P-38ライトニングの戦闘機。爆撃機B-24、SBDドーントレス、雷撃機TBFアベンジャーが出撃の準備を整えていた。

一人の黒人青年は作業服を油まみれにしながらメンテナンスをしていた。

 

「ん……よしっ!」

 

「さすがに早いなパンサー!」

 

「あっ、アイリッシュ大尉。おはようございます!」

 

「うん、おはよう!」

 

パトリック٠スペンサー上等兵ことパンサーはヘルキャットのパイロット、ランスロー・W・アイリッシュ大尉に挨拶した。

 

「なぁパンサー、バッキーはどこだ?」

 

「はい、バッキーさんはさっき搭乗する戦闘機のメンテナンスをしています!」

 

「そうか、さすがは日系人だな!」

 

「ちょっと様子を……」

 

パンサーはバッキー・S・五十嵐少尉の様子に向かった。彼は愛機の操縦席で拳銃(M-1911)のマガジンを装填した。胸ポケットから家族写真を取り出した。

 

「母さん、トム……」

 

「バッキーさん!!愛機の使い心地はどうですか!?」

 

「あぁ、パンサーありがとう!君のメンテナンスをしてくれた機体でやり遂げるぜ!」

 

PBY-5カタリナも出撃態勢を整えた。機長のウィリアム・J・スパロウ中尉と衛生看護婦のシャルロット・F・トラインが搭乗していた。舵には赤十字のペイント、搭載物は医薬品であった。

 

「ごめんなさいウィリアム機長、わたくしはただ基地で待っていること以外できません!」

 

「シャルロット嬢ちゃん、僕からは言うことはない。ただ、生き延びろ。」

 

「………はい!!ちょっと無線をお借りしますわ!ステラ!」

 

彼女は機内の無線機を使用した。陸軍のロッキードP-38ライトニング戦闘機の胴体に虎を描いたパイロット、ステラ・A・エヴァンス曹長に連絡を取った。

 

「シャルロット!?」

 

「『ステラ、アリシアやパウラに再会するまで、生きて下さいましね!』」

 

「……当然、死んだら許さないよ!」

 

「『えぇ!』」

 

『「ステラ、シャルロット。さて、大事な任務をやり遂げましょう!」』

 

『「「えぇ、マリー!」」』

 

マリー・熊井曹長は爆弾を搭載するB-24に搭乗。

ポートモレスビー基地のアメリカ戦爆連合の襲撃目標は日本軍ラバウル基地。それぞれの機体のエンジンが鳴り響いた。

 

「いよいよ発進ですね、ご武運を!!」

 

パンサーはランスローとバッキーに敬礼した。

 

「ランスロー・W・アイリッシュ、出撃する!!」

 

「バッキー・S・五十嵐、発進します!!」

 

「ステラ・A・エヴァンス、出ます!!」

 

「ウィリアム・J・スパロウ、行きます!!」

 

「シャルロット・F・トライン、推して参ります!」

 

5人が搭乗した航空機は戦爆連合117機の一角としてラバウル基地襲撃に出撃した。

 

0744時

 

朝焼けのニューブリテン島、ステティン湾上空で一機の零観が哨戒していた。担当は新一郎と幸吉のペアだった。

 

「静かな空ですね~」

 

「……そうだな……戦争が無ければいつか、静かな空を迎えたら……」

 

「ですね……ん………」

 

幸吉は持参の双眼鏡で覗き、空域を確認した。

 

「幸吉?」

 

「敵機発見!!」

 

「何!?数は!!」

 

「数は……約110、ラバウルに向かっています!!」

 

「直ちにラバウル基地に連絡!!」

 

「了解!!……後方にP-38ライトニングです!!」

 

「しまった!雲に逃げる、連絡を怠るな!!」

 

「はっ!!」

 

ステラが扱うライトニングが新一郎٠幸吉機を襲撃した。

 

「落ちろ!!」  ダダダダダダっ

 

「「ぐっ……」」

 

二人の零観は雲に突入したが、雲から火の固まりが墜ちた。

 

「はぁ…はぁ……やった!」

 

「『ステラ、編隊に戻れ。やったのか!』」

 

「えぇ!」

 

ステラは墜としたことに満足して編隊に戻った。

 

零観の新一郎、幸吉ペアの連絡を受けたラバウル基地で騒然、トチローたち整備員はパイロットが搭乗する戦闘機の燃料と弾薬を補給と整備を整えた。

 

「急げえぇ!!敵は待ってちゃくれん!!」

 

「燃料、弾薬よし!!」

 

特殊部隊の兵舎から十三と洋介、虎雄と進次郎の4人のパイロットが出てきた。

 

「虎雄、また後でな!」

 

「はい!隊長の健闘を祈ります!洋介、進次郎も無事にな!」

 

「おぅっ虎雄!!」

 

「虎雄さんも!!ん……?」

 

虎雄が愛機の二式水上戦闘機の元へ駆けつけた時、進次郎は司令部である一行を視認した。

 

「隊長、あの御一行さん方は!?」

 

「あぁ、昨日トラックからきたニュース映画のスタッフさん方だ!」

 

「映画スタッフか~♪桜井さん、おれたちの活躍が写りますね♪」

 

「そうだな~♪しかし進次郎、墜ちる場面は撮られないように!!」

 

「お前ら、そんな話は生還してから話せ!急いで愛機に搭乗するぞ!!」

 

「「 了解!! 」」

 

進次郎と洋介が愉快な話しをする中で十三は一喝。3人が搭乗する戦闘機は物資不足の状況でラバウルに配備された新型の零式艦上戦闘機52型に搭乗した。

 

「厚木十三、出撃する!!」

 

「桜井洋介、行きます!!」

 

「沖田進次郎、発進します!!」

 

水上機桟橋ー

 

「大賀虎雄、出ます!!」

 

4人の戦闘機を含む陸海軍の戦闘機が離陸、日照る太陽へ向かって飛行した。

 

アメリカ戦爆連合ー

 

「『ラバウルまでもうすぐだ!!敵の拠点にジャップどもを殲滅だ!各員、戦闘配備!』」

 

「「『了解!!』」」

 

B-24の編隊が爆撃体勢を整え、爆弾倉がオープンした時ー

 

先頭の隊長機のB-24が爆発を起こして墜落。そして、一機のニ式水戦が飛行して再びB-24を撃墜した。

遠距離から進次郎は心底驚いた。

 

「(…さすが虎雄さんだ、一気にB-24を…っ!?)」

 

『「隊長!虎雄の後方に新型のヘルキャットです!」』

 

「『直ちに向かうぞ!』」

 

「『はっ!!』」

 

「ふぅ〜ニ丁上がり〜!!…っと来た来た~」

 

『ノロマのフロート戦闘機が、墜ちろ!!…っ!?…ぎゃっ…』

 

敵の新型のF6F戦闘機9機が虎雄に襲い、日光から降下する零戦3機の機銃弾が翔んで、6機が被弾して墜落。直ぐに反転して残りの3機を撃墜した。

 

「『お待たせ虎雄!』」

 

「『相変わらずだな洋介!、厚木隊長たちは連携が優れていますね!!』」

 

「『前衛の敵機は予め撃墜した!次の群集を迎撃するぞ!!』」

 

「「『了解!!』」」

 

「了解!!…っ!?10時方向に、低空にドーントレス及びアベンジャーが来襲!!」

 

進次郎が眼下に広がるジャングルにて、ドーントレスとアベンジャーの小隊がブランチ湾に向かって低空飛行。標的は停泊する艦艇と輸送船であった。

 

「『進次郎!ドーントレスとアベンジャーはお前に任せる!』」

 

「隊長…?ですが!!」

 

「『俺たちのラバウルを守ることに変わりは無いぞ、進次郎!』」

 

「『そうだ、進次郎!ワシたち六人は常に仲間だ!!』」

 

「隊長、桜井さん、虎雄さん……はい!3人のご武運を!」  

 

ギュイイィン

 

進次郎は十三たちの指示に従い、低空飛行するドーントレスとアベンジャーの小隊へ迎撃に向かった。

 

「墜ちろっ!!」 ダダダダッ  ドウゥン  

 

「はぁ…はぁ…やった!」

 

たった1機の進次郎の扱う零戦がドーントレスとアベンジャーの2個小隊を殲滅させた。

 

「思った以上に弾薬の消費が激しい、……一旦戻らねば…っ!?しまった…」

 

別方向から来た2機のアベンジャー雷撃機がブランチ湾に到達、目標の輸送船に向けて魚雷を投下した。

 

「野郎っ!!」 ダダダダ ドウゥン

 

進次郎は2機の雷撃機と1本の魚雷を破壊した。だが、彼の愛機の機銃弾を撃ち尽くした。

 

ガチガチ 「弾切れだ!各なる上は…」

 

魚雷に目掛けて体当たりを慣行した時ー

 

「『早まるな進次郎!!』」

 

「えっ!?」  ドカアァン

 

水中で走行してきて魚雷が爆発。進次郎機の後方に零観が右側に並んだ。

 

「『コラァ、進次郎!!この馬鹿たれが!』」

 

「…に…兄ちゃん…」

 

受話器のスピーカーから新一郎の怒号が鳴った。

 

「『お前さっき敵機の魚雷に体当たりしようとしたろ!あんな安い兵器に命をやるな!!』」

 

「兄ちゃん……ごめん……」

 

「(新一郎さん、弟に対して厳しいなぁ~)」

 

進次郎は兄からの説教を受け、操縦桿を強く握り締めた。一方、幸吉は弓矢を所持して警戒しつつ、二人の兄弟関係で内心怖れつつあった。

二人の零観は着水、進次郎は飛行場に着陸した。

 

「野郎ども!燃料弾薬を詰めろ!」

 

「「「 はっ!! 」」」

 

トチロー整備班長以下の整備員たちは急いで進次郎の愛機に燃料を補給、そして機銃弾を施した。

 

「トチロー整備班長!おれも何か手伝いを…」

 

「べらぼぅめ進次郎!お前はパイロットとして身体を休めておけ!!」

 

「はっはい!!(隊長…桜井さん…虎雄さん…待って下さいよ!)」

 

トチローに一喝を受けた進次郎は爆煙で黒く染まる空を見上げた。

今でも空で戦うパイロットたち。トチローたちは補給を終え、愛機に搭乗した進次郎と新一郎と幸吉ペアは再び空の戦場へ戻った。

 

ギュイイィン

 

「『進次郎!弾が切れても体当たりは無しだぞ!!』」

 

「はい!!」

 

そして、あの空域には十三とランスロー、洋介とバッキー、新一郎、幸吉ペアとウィリアム、シャルロット。進次郎、虎雄はステラと対峙した。

 

正午を過ぎた頃ー

 

ダダダダッ  ガチャ ガチャ

 

「あ~弾が切れたか~……」

 

「『ワシもだ進次郎!それに、敵さんも引いて来たな!』」

 

虎雄と進次郎機は再び弾が尽きた時、空戦から生き残った戦爆連合は拠点であるポートモレスビーに引き返した。背後から十三たち3機が集結した。

 

「『進次郎、無事だったか!?』」

 

「厚木隊長、桜井さん!」

 

「『はははっ!進次郎!生き残ってよかったゼ!!』」

 

「兄ちゃん、幸吉!オレもほっとした!」

 

新一郎、幸吉ペアの零観が接近して歓喜した。

 

「『おいおい、隊長、沖田さん!洋介、幸吉!ワシの心配はそっちのけか…?』」

 

「『悪い悪い、虎雄!お前も無事でよかった!』」

 

「『ったく、悪い冗談ですよ~!』」

 

「『『『はっはっはっは~!!』』』」

 

「『笑ってないで、ラバウル基地へ帰投するぞ!!』」

 

「『了解!!』」

 

「了解!!」

 

新一郎の指示で全機のパイロットたちは笑いあいながら帰投した。

ラバウル基地の日本陸海軍の航空部隊は六勇士を含め、全機帰投。撃墜数は約70を越えて勝利を得た。

 

「はははっ、飲め飲め~!」

 

「洋介、お前の誕生日の次いでに祝杯だ!」

 

「隊長たちの前で恐縮ですが、頂きます!……ああぁ~旨い///」

 

「進次郎と幸吉、虎雄も飲め!」

 

「あぁ、頂きます兄ちゃん」 ぐいっ 「かぁ~訊くぅ~///」

 

「ひっく…きついが、旨いなぁ~///」

 

「あぁ~///ひっく…///」

 

この勝利でラバウル基地のパイロットは酔いしれ、ラバウル六勇士と一部の整備士のトチローは宴会で盛り上がり、未成年の進次郎を含めて酒を飲み交わした。

 

アメリカ戦爆連合ー

 

ラバウルを攻撃した戦爆連合の部隊が惨敗。残存機体の30数機がポートモレスビー基地へ帰投した。

帰投した戦闘機と爆撃機のパイロットは搭乗機から降りて、ただ突っ立ったまま歩いており、その場にいた整備士のパンサーは絶句した。

 

「そ…そんな……っ!?アイリッシュ大尉……バッキーさん…ステラさん…マリーさん……」

 

その帰投した機体の中にはランスローとバッキー、ステラの愛機とマリーの搭乗機があったが彼らの姿はなかった。

 

「スパロウ大尉!」

 

ウィリアムのPBYカタリナには、ランスローとバッキー、ステラ、マリーが機内から、海上で落下して救助した数人の負傷者を運搬。シャルロットは一人でも助ける為に手当てをして行動していた。

 

「…大尉…みんな…ステラさん!」

 

「パンサー、……この通り負傷者の運搬しているのよ…」

 

「じゃあ僕も、手伝いを……」

 

「…あぁ…お願い……」

 

「お待ちくださいステラ!」

 

ステラが手伝って貰おうとしたが、シャルロットとバッキーが制止した。

 

「手伝って貰いたいのは山々だが、パンサーは俺たちの愛機を整備してくれ!」

 

「しかし…!」

 

「バッキーの言う通りだ、パンサー!」

 

「スパロウ大尉!」

 

「パンサー、この通り我々は敵に惨敗した!いつ、敵の襲来に備えてメンテナンスをやれ!!」

 

「はっはい!!」

 

「そして、この任務を終えたら、酒を飲み交わすぞ!」

 

「了解です!」

 

パンサーは急いで自身の持ち場に戻り、ランスローとバッキーのヘルキャット、ステラのライトニング、マリーのB-24負傷者を運び終えたカタリナをメンテナンスした。

全員の役目を終えた後、約束通り酒を飲み交わした。無事に生きて帰投したことを。

 

進次郎とパンサーは、この世界で消える前の偉大な勇士を目撃したのであったー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、日本国内、呉の映画館にて『南海の決闘』の題名のニュース映画が公開。

劇場の観客席にて、六勇士のパイロットの姿を見て、親兄弟や姉と恋人たちは興奮した。

 

 




南洋のラバウルで、伝説の大戦果をあげた沖田進次郎のラバウル六勇士の一行。
このラバウル防空戦で、パンサーは傷付いた機体と搭乗員を目の当たりして再燃する。

君は、生き延びることができるのか…?
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