呉軍港に到着したかつてのラバウル六勇士の沖田新一郎と金城幸吉は戦艦大和、秋山敏郎(トチロー)は空母瑞鶴に配属された。
厚木十三、桜井洋介、沖田進次郎は霞ヶ浦、横須賀海軍航空隊で予科練習生の教官に着任。日々、練習生に指導しながら一月が経った。
5月、横須賀航空隊基地、教員室ー
「ふぅ~…」
「ヒヨッコどもの指導、お疲れ様だな進次郎教官!」
「桜井教官、…内地に帰国して、教官となって一月、年端も往かない少年を指導する側も大変ですよね…」
「そうだな、俺たちも練習生時代に教官から色々と指導を受けたが、その苦労がわかるなぁ~」
進次郎と洋介は練習生の思い出話に浸っていると
「桜井、進次郎!」
「「 あっ厚木教官!? 」」
「上からの転属の指示書を受けた!」
「指示書をですか?」
「内容はなんて書いているのですか!?」
『厚木十三大尉、桜井洋介少尉、沖田進次郎一等飛行兵曹ハ、5月10日ニテ佐伯湾ニテ空母飛鷹ニ集ウベシ』
「…ってことだ!」
「つまり、また戦場へ転属ですね!」
「そう言うことだ。本日付けで教官の任務を解き、明日は空母搭乗員に復帰だ。今日中に荷物整理せよ!」
「「 はっ!! 」」
進次郎が教卓に自分の私物を整理する時、洋介は十三からある電報を受け取った。
翌日の早朝、海軍横須賀航空隊の滑走路には進次郎たちの愛機、零戦52型が駐機。そして教え子たちが滑走路の脇に詰まり、見送りながら日の丸の国旗や帽子を振った。
「厚木教官ーっ!桜井教官ーっ!沖田教官ーっ!」
「次の戦地でお気をつけて下さーい!!」
「ご武運をーっ!!」
進次郎たちは零戦に搭乗、発動機を鳴らし、機体を滑走路に移動した。
「『厚木十三、出撃する!』」
「『桜井洋介、行きます!』」
「沖田進次郎、発進します!」
三機の零戦は九州の佐伯湾に向けて飛行した。
佐伯湾には空母6隻を含め、巡洋艦や小型艦艇が停泊。夕暮れまで、厚木小隊は空母飛鷹に着艦。
「ふぅ~、瑞鳳以来だな~」
「そうだな、あの着艦は流石のオレもヒヤヒヤして緊張したぞ。」
熟練パイロットの十三でさえ、ラバウルで生活していたブランクにより、サイパンに停泊した瑞鳳に着艦するのに冷や汗を掻いた。
翌日、空母部隊を含んだ艦隊は出航。パイロットや乗組員はデッキに上がり、本土を目に焼き付けた。
「(これで三度目の南方かぁ〜、純子。次の戦地で戦い、生き抜いてやるぜ)」
16日、フィリピンのタウイタウイ島に到着。主力の空母部隊と合流したのち、空母瑞鶴に転属。瑞鶴にて整備員のトチローと再会した。
5月後半、地球の反対側であるフランスのノルマンディー地方にて豊田純子上等兵が操縦する一輛のドイツ戦車、パンターⅡ試作戦車が(資材を運搬)走行していた。
留学した純子を含め3人はドイツ軍外人部隊に編入、軍刀を腰に携えたパンターⅡの車長、桜井勇介少尉が下車。
「コンクリート及び、マジノ要塞からの鉄鋼資材をお持ちしました!」
「わざわざフランスからの運搬、ご苦労!次の任務が出るまで休憩せよ。」
「はっ!!」
勇介は乗車するパンターⅡに戻り、副長兼砲手の大賀晴香曹長。通信手のアリシア・A・フェアバンク曹長。装填手のパウラ・M・オットー伍長。そして純子に指示を出した。
「…ということだ。ここのところよく働いているから、暫く休憩。時間までに解散!」
「「「「 はいっ! 」」」」
純子たち4人、パンターⅡの乙女たちはノルマンディーの海岸で擬装網と上陸防止の冊で即座のバレーネットを作り、男性兵士に紛れてビーチバレー大会を開いた。
「へいっパスパス!いったよアリシア!」
「トース!パウラ!」
「いっけぇー純子~!!」
「アターック!!」
ピリリーッ 「試合終了!」
審判のホイッスルが鳴り、試合が終了。パンターⅡ乗員チームが勝利した。
勇介は土嚢に腰掛けながら、彼女たちの勝利に拍手した。
「みんな、よくやったな!」
「いやいや、そんなことないですよ車長!」
「桜井車長とパウラのフォローがあったまでですわよ。」
勇介は頭を掻きながら照れていると、ある人物が気になった。
「ははは…あれ?晴香と純子は?」
「えっ?晴香姐さんと純子は……」
晴香と純子は脚に海水を漬きながら夕日が沈むドーバー海峡と大西洋を眺めていた。
「…この欧州にきて1年、早いですねぇ…」
「えぇ、戦火が混じる留学でこんな展開になるとはね」
「はい!でも、こんな留学がなければアリシアさんとパウラちゃんとメンバーになることはありません。」
純子と晴香、勇介たち留学生はこの戦況により、松本中佐の命令により外人部隊編入と同時に戦時昇級した。
そして、松本の推薦により語学堪能の通信士のアリシアとスポーティーなパウラが編入した。
だが、編入したにも関わらず、肝心な戦車がなかった。下級貴族のアリシアのコネでなんとかパンターⅡ試作戦車を支給したが、暫く実戦に出せずテストを命じられた。
アリシアのコネで支給して貰った条件として、いつかパウラとサムライの国である日本へ連れて行かせることを勇介は妥協した。
「おーいみんな!次の任務に向かうぞぉ~!」
「「「「はーい!」」」」
純子たちはパンターⅡに乗車して、次の任地へ向かった。そして、副長の晴香が訪ねてきた。
「車長、任地先はどこですか?」
「マジノ要塞に戻り、物資をパ・ド・カレーへ運搬する。」
「大西洋の防波堤計画、…なぁアリシアさん、米英などの連合軍が上陸するのはノルマンディーで間違いないんだな…」
「はい、恐らく6月中に上陸します!」
アリシアはひっそりと情報を収集する。ノルマンディーに米英連合軍が上陸するのを予測した。
「ノルマンディーのシェルブールを防衛せねば、日本に帰国は難しい……もとい、あそこは元々よそ様の領土、全く矛盾だなぁ~!」
「はい、…この状況で不謹慎ですが、フランスにはわたくしの友人がいますが…アメリカに亡命したと…」
「…そうかぁ、また異国の地に移動して安心したな!」
「はい」
「車長!この戦争が終わったら何しますか!?」
パウラの言葉で、勇介キョトンとして、空を見上げた。
「あ…い、いやぁ~…考えてないなぁ~///」
「車長、顔が赤いよ~」
「……赤い夕日のせいだ…///…んで、パウラ…?」
「あたしはスポーツ選手!!オリンピックに出場するのが夢です。」
「わたくしは音楽家ですが、日本の徳島で公演するのが夢でございます♪」
「あたいは狩人。」
勇介を除いて、乙女たちは戦争が終結後の将来の夢を語りあった。
「純子は?」
「え…?」
操縦席の蓋を開けて走行に夢中になり、何の話しをしていたのか分からなかった。
「戦争が終わった後、何をしたいのか聞きたいのですのよ♪」
「そうそう♪」
「…そ…それは……///」
純子も赤面して、操縦席に踞った。彼女は隠れながら、胸ポケットから写真を取り出した。呉で撮った記念写真を見た。
「(進次郎さん、アリシアさんとパウラちゃんの友人ができて。毎日が女子会のようで楽しいです。もし、戦時でなければもっと楽しく過ごせたと思います…)」
同日アメリカ、サンフランシスコ海軍基地ー
海軍上等兵パトリック・フォードことパンサーが配属して乗艦する空母エセックスの格納庫にて、新たなる機体と補充パイロットの要員が乗艦。
「海軍兵曹、トム・K・五十嵐!本日付けでアイリッシュ戦闘機小隊に配属しました!!」
トムの前に出迎えたのは整備員パンサーの他、彼の兄、日系人のパイロットのバッキー・S・五十嵐少尉。隊長のランスロー・W・アイリッシュ大尉が待ち受けた。
「アイリッシュ小隊へようこそトム・五十嵐兵曹。」
「よろしくお願いします!」
トムがランスローとバッキーに敬礼すると、彼らはトムに抱きついた。
「よく来てくれたなトム!」
「これで、兄弟揃って闘えるなぁ〜!共に、この戦争を終わらせる為に、日系人の意地を見せてやろう!」
「うん!…あっ!」
トムは二人と意気揚々していると、愛機を整備しているパンサーに気づいた。
「パンサーさん!!僕の戦闘機をよろしくお願いします!」
「おいらこそ、トムさんの機体は100%全開にしますよ!!」
オーバーホールを終えたエセックスは出航。第58,4任務群を構成する。攻撃目標は日本の南鳥島、ウェーク島を奇襲することだった。
パンサーはランスローたちが帰投するまで飛行甲板で水平線を眺めている頃、奇襲した機体が帰還。次々とエセックスの飛行甲板に着艦した。
エセックス飛行甲板ー
「お帰りなさい!収穫はどうでした!?」
「少数のみだが、ほとんど撃墜した!トムなんかは、一機撃墜した!」
「へぇ〜!やりましたねトムさん!」
パンサーはトムに声を掛けたが、彼の身体は震え、空と海を見つめた。
「あぁ、これが…戦争なんだ…僕は軍人……」
トムはこの手で日本人を殺したことに正気を失い、小声で呟いた。
「(…トムさん……)くっ…!」
パンサーは彼の襟を掴み、悲しみと怒りを述べた。
「トムさん!あなたがかつての同胞を殺して、恐怖に怯えたら、この先の戦いで生きては行けません!殺人鬼になっても、戦い、生きて下さい!」
「「…っ!!」」
ランスローとバッキーは驚いた。いつも敏腕で仲間思いのいいパンサーがトムに渇を入れていた。
「…おいらだって…飛行機のパイロットになりたかったのですが、……視力が悪く、なれませんでした…整備員に配置に換えて…おいらたちメカニックマンはパイロットの命を預ける身分です。どんなに自信を否定してでも戦い、生きて下さい!」
「……………」
パンサーは背を向け、三人の愛機のメンテナンスを始めた。
「…パンサー、ありがとう。僕はまだ配属したばかりで、なにかの礼はできないがパンサーの手伝いをさせてくれ。」
「トムさん…ではこのコードを……」
トムはパンサーと共にメンテナンスを始めた。彼の行動が後の別世界で役に立つことは、まだ誰にも分からなかった。
「(…これから南洋諸島以上に、激しい戦いが待っている……入念にメンテナンスしないと!)」
パンサー本人は気付かなかったのか、鬼気迫る幻影の中、ランスローとバッキーのヘルキャットを整備していた。
横須賀、ノルマンディー、サンフランシスコから出陣した勇士たち。のちに、歴史的戦場になる陸海空が血に染められる悲運が待っている。
君は、生き延びることができるのか…?