ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

17 / 28
第16話 雪原のアルデンヌ 

 

 

 

 

1944年6月、英米連合軍によって周到に用意された『オーバーロード』作戦が、ついに開始された。曇天をついて一気に英仏海峡を越えた連合軍が、フランス北部ノルマンディーの海岸に殺到した。

ドイツ軍にとって大西洋の海岸線はあまりにも長く、その壁は脆く、制空権もない中で苦戦に次ぐ苦戦が始まった。

 

アメリカ陸軍、第100連隊に所属する日米のハーフであるフィリップ・W・エヴァンス少尉。ヴェン・タタンカ上等兵の戦車部隊がイタリアに上陸。幾つかの激しい戦線を潜り抜け、ノルマンディー上陸部隊と合流、フランスの首都パリを解放した。

 

雪が積もる12月末、ドイツ軍の戦線を押しながらベルギーのアルデンヌに迫った連合軍の間に勝利感が満ち満ちていた。

 

日系部隊が陣地で束の間休息してクリスマスパーティーしながら、インディアンフルートを吹くヴェン・タタンカ上等兵はフィリップたち日系人も白人兵士の心を和ませていた。

 

「~♪~♪~♪」

 

「(みんな、どうしているかなぁ~…父さん…母さん…ステラ…ランスロー、ウィル、バッキー、トム、シャルロット、マリー、パンサー)」

 

フィリップは故郷にいる家族、太平洋区域で戦っている自身の妹と友人、関わる仲間がどうしているか考えていた。

 

するとー

 

「ん…地響き?……」

 

ヴェンは演奏を止めた。地面が揺れ、どこからか金属音が鳴り響いた突如、森林の奥から戦車が現れた。

 

「戦車だっ!!」

 

「新型のM-10駆逐戦車、どこの部隊の戦車だ!?」

 

「あっ、あっちにも!」

 

「しかし、妙な角張だ…」

 

「ぎゃっ…」

 

真っ昼間に出現した戦車は次々と出現。だが、その戦車部隊は次々と機銃を発砲、日系兵が次々と撃たれて倒れた。

 

「あれは、アメリカ戦車と違う…敵だ!!」

 

それは、アメリカ戦車に擬装したパンター戦車だった。

戦車に続き、ドイツ歩兵が出現。戦車隊と共同しながら辺りの味方の兵や車輛、施設を掃討、撃破。

蜘蛛の子の様にバラバラに散り、フィリップとヴェンは咄嗟に堡塁に隠れ、彼らの所持するM-1カービンとM-1タンクライフルで応戦。

 

「くそっ!真っ昼間に堂々と現れるなんて!」

 

「ヴェン!僕たちの戦車は無事か!?」

 

二人の搭乗するM-4戦車、数台のトラックとジープは森林の中で擬装網を被せながら破壊を免れた。ドイツ兵が次々と行進する中、フィリップとヴェンは生き残った日系、アメリカ兵は塹壕、森林に隠れながらゲリラ戦で戦闘。

二人は物陰に隠れながら、搭乗する戦車の10メートルまで迫った。

 

バァン バァン  「弾は大丈夫か!?」

 

「この弾薬クリップが最後です!……それに、途中で拾ったバズーカと弾一発。」

 

「よし、この武器で僕を援ご…」

 

「僕が行きます。」

 

「なに!?」

 

ヴェンは軍靴に忍ばせていたインディアン手製のナイフを左手に持った。フィリップはホルスターからM-1911ガバメント拳銃を抜き出した。

 

「なら、僕のガバメントを貸す。行ってこい!」

 

「はい!」

 

そして、ヴェンが飛び出したところ、横一列で5人のドイツ兵が現れ、前進している時、小銃と短機関銃を向けられた。

 

「しまった!!(ここまでか…)」

 

バァン バァン 「進めぇ、ヴェン!!」

 

フィリップは小銃とカービン銃で二人薙ぎ倒し、ヴェンは拳銃で乱射、一人倒した。

 

「(やった…)」

 

「「うおおーっ!!」」

 

二人のドイツ兵が銃剣を抜き出し、ヴェンを襲った。

 

「ああああー!!」

 

ヴェンは雄叫びを挙げながらドイツ兵を刺し、首元を切った。

 

「あ、あぁ…やった…」

 

「ヴェン、後ろだ!!」

 

彼の後ろを振り向くと兵員を乗せた装甲車が走行する敵兵が機銃を発砲してきた。

 

「野郎、やらせるか!!」 バシュッ ドカアァン

 

バズーカを構えたフィリップが発砲し、撃破した。

 

「ヴェン、大丈夫か!!」

 

「はい、この通りかすり傷で…」

 

「…よかった…よし、急いで戦車に搭乗して、本部に合流だ!!」

 

「えぇっ!!」

 

フィリップとヴェン、その陣地を生き残った仲間と共に戦車やトラックなどの車輛に搭乗。本部へ向かった。

 

西暦1945年1月。このアルデンヌの戦いが始まって一月が過ぎても膠着が続いた。

森林地帯をアメリカ陸軍戦車四輛の小隊が縦列に走っていた。

 

「いいか、何としてでもナチスの豚を見つけ次第殲め…」

 

先頭の戦車のキューポラに立っていた車長が頭部を撃たれて即死した。

 

「停車!!」

 

「緊急警戒を!!」

 

「どこだ、どこに……」  ヒュウッ ドカアァン

 

ある滑空音が、最後尾の戦車に被弾して撃破した。車長を失った先頭の車輛は混乱したのか

、すぐに前進した。だが、再び滑空音が鳴り、撃破され、炎上した。

そして、炎上した車輛の間の残りの車輛も次々と被弾、撃破された。

森林から出現したのはドイツ軍の中型戦車パンターⅡ。砲塔から刀を持ち、首に赤いスカーフを巻いた車長が下車した。

 

「この…ナチス野郎!!」

 

「「「 っ車長…!! 」」」

 

一人の生存兵が鉄パイプを殴りにかかった時、車長は軍刀を抜き、弾き飛ばした。

 

「動くな!」

 

「ひっ…」

 

「命を無駄にするな!」

 

軍刀狼虎を鞘に入れながら告げるパンターⅡ車長、桜井勇介日本陸軍少尉。先ほどアメリカ軍戦車車長を狙撃した大賀晴香曹長。

 

「桜井車長、ラスナー隊長から連絡です。すぐに本隊と合流せよと。」

 

「ラスナー隊長か、あの人には頭が上がらねぇな。純子、本隊に転進だ?」

 

アリシア・A・フェアバンク曹長の連絡で勇介は帽子を被りながら操縦士の豊田純子上等兵に指示を出した。

 

「了解です!」

 

「車長~、このアメリカ兵はどうする~?」

 

パウラが生き残った米兵をどう処分するか尋ねた。そして、勇介は決断を下した。

 

「俺のところに捕虜は必要ない…ふっ、武士の情けだ、逃がしてやれ。」

 

「了解!ほらっ行きな、生きて故郷に帰るんだ!」

 

パウラ・M・オットー伍長がC96拳銃を突き付けながら米兵を逃がした。

 

勇介たちパンターⅡはラスナー隊に合流、勇介がラスナー隊長に報告している頃、パンターⅡの純子たち乙女は束の間の休息で羽根突きを楽しんだ。

 

「いくわよ~!それっ!」

 

「さぁ~こいこい、それっ…あつ…」

 

「うふふ!晴香さん、またやられましたね~」

 

「もう、やだ~」

 

負けた晴香は墨の代わりに、水で灰を溶かした代用インクで顔に塗った。そして、羽子板と羽は勇介が軍刀で材木を切ったお手製で一目付かないところで快楽していた。

 

「さぁ~次は負けないよ、純子!」

 

「えぇっ、晴香さん!」

 

「おーい!お嬢ちゃんたち、楽しそうだな~!」

 

数人の若きドイツ戦車兵が様子を見にきた。 

 

「羽根突きです。まぁ、和製のテニスです!」

 

「へぇ〜。なぁ、僕たちも混ぜていいか?」

 

「ん~そうねぇ~…」

 

純子が羽子板を頭部を軽く叩きながら考えた。パンターⅡの仲間である晴香とアリシア、パウラと相談、暫く敵が来襲することが無く、にドイツ軍の戦車、歩兵と、羽根突きや駒遊びなど日本の正月文化的交流が始まった。

 

「悪くないな、この光景は…」

 

「ごもっともだな、桜井。」

 

「ん…ハイムマンか…そうだな」

 

勇介が倒れた丸太に座って、純子たちを見ているとき、彼の隣に一人のドイツ戦車兵がやってきた。

ホルスト・ハイムマン、ドイツ軍SS親衛隊少尉。ティーガーⅡ、876号の車長。ドイツに留学してからの数少ない桜井勇介の友人だった。

 

 

遊びが終わった後、四人の乙女たちは交流に参加した兵士にお礼の為に、ドイツの民族衣装ドレス、ディアンドルを着用。ソーセージ料理のポトフを兵士たちに配った。

 

「ポトフです。どうぞ~♪」

 

「あ、ありがとう♪」

 

「久しぶりだな~」

 

兵士たちは戦場で数少ない楽しみの料理を堪能した。だがー

 

「ひっ!?」

 

「お嬢ちゃん、いい脚だな~♪」

 

純子は別の兵士に脚を触られてゾクッとした。

 

「いい温さだ…あ…」

 

晴香が九九式狙撃銃でドイツ兵の頭を突き付けた。

 

 

「うふふ、お兄さん。これ以上、あたしの妹の脚をさわったら、頭部にズドンと…」

 

「…ひいい~!!」

 

「「「「 あははははは~ 」」」」

 

その場にいた乙女たちと兵士が笑い合う中、純子は腰を抜かしたまま座り込んだ時、車長の勇介が赴き手を差し伸べた。

 

「大丈夫か、純子!」

 

「あっ、車長!ありがとうございます」

 

「どんな場所でも、破廉恥な奴がいるんだな」

 

勇介が頭を掻いて呟いた時ー

 

「あぁ、志帆姉さんの送った電報で、あの兄貴が、雪さんと結婚とは。俺にもう一人の姉さんができた~♪」

 

「うふふ、車長も帰国したら澪さんと結婚ですね~♪」

 

勇介は兄の桜井洋介がウキウキしていると純子が彼に呟いた。

 

「それが恩人の俺に、言う言葉か〜?お前だって、太平洋で戦うパイロットさんが…」

 

「わーわーわ~///車長、言わないでぇ~///」

 

「ん~?聞き捨てなりませんね純子さん~」

 

「聞かして聞かして純子ちゃん~♪」

 

恥ずかしさの余りに純子が勇介の口を塞いだ時、アリシアとパウラが彼女を訪ねに近づいた。

 

純子は赤面して二人から逃亡した。

 

 

時に、西暦1945年1月。終戦の年に突入した時代に、豊田純子と沖田進次郎の関わる人物が、この世界と時代に戦場で消え去る事は、まだ誰にも分からなかった。

 

 

 

 

そして、3月24日。

 

アメリカ戦車、歩兵部隊を殲滅。

だが、本部の命令で激戦地から離れたサンセーヌという地区に赴任するように命じられた。

 

「達者でな、ハイムマン」

 

「ハイムマンさん…愛車が破壊されても…生き延びてください」

 

「ありがとう勇介、純子さん」

 

「この戦争が終わったら、彼女さんとあわせてくれよ!」

 

 

「あぁ」

 

純子たちは彼と握手し、ハイムマンはただ一人、ティーガーⅡと共にサンセーヌに残留した。

 

 

 

 

だが、ホルスト・ハイムマンはサンセーヌの森の実家で命を落とした。

 

 

 

 




西暦1945年 戦争が終わる年に突入した。
だが、純子が関わる者の命が戦場で散って逝った。そして、進次郎が関わる人物の風前の灯が近づいた。

君は、生き延びることができるのか…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。