1944年10月25日。フィリピン決戦に始まった十死零生の作戦。
爆弾を機体ごと括り付け、敵艦と敵施設に体当たりする自殺攻撃こと神風特別攻撃隊が出撃。
戦果は敵空母の撃沈を発表した。
あのエンガノ岬沖海戦で生き残った厚木小隊はフィリピン、マバラカット基地に転属移動。小隊の一員である沖田進次郎たちの任務は特攻隊の護衛だった。
だが、彼らは戦うにつれて体力どころか精神に負担が掛かった。
「くそっ…また、…命が消えた…うぅ…」
数日後。フィリピン近海、アメリカ空母部隊付近にて、レーダーに発見防止で海面ギリギリに低空飛行。近付いたところで上昇、最後に敵艦に向けて速度を出して標的艦に突入。
「『厚木小隊、敵艦隊までの護衛を感謝する!!』」
「『うん、最後を必ず家族に報告します!』」
一機、また一機が敵艦に突入。撃沈に至らないが、アメリカ艦隊の被害は甚大だった。その光景を目の当たりにした進次郎は愛機零戦の操縦桿を強く握りしめた。
11月15日 急遽、厚木小隊はシンガポール海軍航空隊基地に短期転属。その場にて大賀虎雄飛行兵曹長と戦艦大和専属で進次郎の兄である沖田新一郎中尉、ペアの金城幸吉二等飛行兵曹と再会した。
かつてのラバウル六勇士が集まり、喜ばしい再会だったが、翌日に関しての説明があった。
「……説明は以上だ。しばらくシンガポールで羽目を外せ。解散!」
「「「「「「 はっ! 」」」」」」
進次郎たち六勇士はシンガポールのイギリス人が経営する喫茶店で色々と語りあった。マリアナ沖海戦の敗退、沖縄の空襲と台湾沖の誤報。フィリピン海戦の失敗。
そして、茶菓子を堪能しながら内地で十三と洋介が結婚式を挙げた事を語った。
「おぉ~♪ヒンナ過ぎるなぁ〜♪しかし、隊長!洋介さん、おめでとうございます♪」
「そうなんだよ兄ちゃん。トチローさんは式でも宴会で盛り上がったんだ~♪イギリス菓子のマカロン、旨いなぁ~兄ちゃん♪」
「あぁ、進次郎。明日に備えては欠かせない糖分だ。それに、補給間宮の和洋菓子のリストになかった物だ♪」
幸吉、進次郎と新一郎の兄弟がマカロンを頬張る時、十三と洋介、虎雄は紅茶を堪能していた。
「ん~菓子もいいが、紅茶の香りも良いなぁ~♪」
「俺は珈琲派ですが、たまには紅茶も~♪」
「ワシもだ。それに洋介、隊長、おめでとうございます。……ワシはシンガポールに配属してから珈琲が恋しいです。今度、貰いに行ってもいいですか?」
「ん…そうだな。この任務が終わったら、一旦フィリピンに戻り、在庫に珈琲があったらすっ飛んで行くゼ~」
「厚木隊長…ワシは待ってますよ!」
「我々、ラバウル六勇士は任務を必ずやり遂げればな!……あっ」
洋介がティーカップの取っ手を手にした時、取っ手が折れた。
その後、洋介は経営のイギリス人に叱られ、進次郎たちは呆れつつも、笑いあった。
夕暮れ、新一郎と幸吉は零観でブルネイへ帰投。
翌日、ブルネイ港からフィリピン海戦から生き残った残存艦艇が、内地へ航海する艦隊の上空に予定通り、ラバウル六勇士の十三と洋介、虎雄。そして、進次郎が護衛任務に就いた。
そして、四機は戦艦大和の上空を飛行旋回した。
「あれが、世界一の戦艦かぁ~」
「『そうだ、あの戦艦大和の乗り心地は最高だったゼ~♪』」
虎雄はあのフィリピン海戦で一時、戦艦大和に配属している間、新一郎、幸吉と再会していた。愛機の二式水戦と二人の零観と共に、戦艦を主力とする部隊を護衛に務めた。
そして、配属されている間はホテル並みに過ごせた。
戦艦大和、零観がカタパルトに配備されていた後部甲板に新一郎と幸吉は、海の潮風に当たりながら空を見上げていた。
「この光景を見るのはダンピール以来…」
「新一郎さん、おらたちもあの編隊の中に飛びたかったですね」
「ふっ…そうだな。」
『敵戦爆連合を確認!総員、戦闘配置!!』
「いつでも発進できるように、愛機に搭乗するぞ!」
「はい!!」
艦内部の知らせのブザーを聞いた新一郎と幸吉は零観に搭乗。同時に上空の進次郎たちは艦艇からの知らせを聞き、指定された空域へ直行した。
「いた、敵機だ!」
「『B-24が20、P-38ライトニングが25機確認!!』」
「『敵の陸軍機か、が…どんな機種だろうが叩き落とす!!』」
「『洋介、虎雄、進次郎!!クシダンゴは後回し、昨日考案した対重爆機による連携攻撃だ!!』」
「『『 了解!! 』』」
十三の指示で四機は上昇。
指定した高度に達して、B-24の編隊に向かって急降下しながら互いの機体の背中合わせしながら回転、8門の20ミリと8門の7.7ミリ機銃の銃弾をB-24に浴びせながら撃墜した。
「やった!見たか、オレたちの暴風戦法だ!!」
「『油断するな進次郎、次の獲物を仕留めるぞ!』」
「了解!!」
進次郎たち四機は急上昇と急降下を繰り返しながら日光と反射する光を利用してB-24を一機、また一機撃墜した。
「これで7機撃墜…しまった、突破された!」
勇士たちが共同で7機撃墜したところ、数機が空域を突破した時、雷の如く空が響いた。
戦艦大和の三式焼夷散弾で5機のB-24が落とされ、残った爆撃機は爆弾をばら蒔きながら引き返した。
「はっ…凄まじいな~」
「『ひゃ〜さすが、世界最強の戦艦だ!何度見ても、主砲の威力が半々ねぇ~!』」
進次郎と虎雄は大和が誇る46センチ砲の威力に度肝を抜かれた。
「『進次郎、虎雄!うしろにライトニングだ!!』」
「「『あ…』」」
洋介からの連絡で二人はうしろを振り向くと、二機のP-38が高速で接近、すぐに爆発した。
その正体は、大和から発艦した零観が上昇。進次郎、虎雄機に接近した。
「『おらたちも忘れないでくださいよぉ~♪』」
「『幸吉の言う通り、俺たちもラバウル六勇士だってのを忘れるな!』」
先のレイテ沖海戦で意気消沈した乗組員たちは、艦隊上空で5機の日本の翼が飛行した。その光景を目撃した艦艇の将兵は歓喜した。
「『貴部隊の上空援護、感謝する』か…」
大和から激励の無線を聞き、進次郎たち六勇士は向上した。だが、虎雄機から無線が発した。
「『厚木隊長、沖田さん!ワシは燃費の配慮で、シンガポールへ帰投しなければなりません!』」
「『『『 …っ!? 』』』」
虎雄の言葉で進次郎たちは絶句した。確かに虎雄と二式水戦はシンガポールに配属しているパイロット。このまま日本に帰る訳にはいかなかった。
「『…すまない虎雄、お前だけシンガポールで一人っきりに…』」
「『心配せんでください隊長!シンガポールは案外気に入っています。それに、仲間であるトチコさんもいますので、飯には困りません!』」
「『そうか、虎雄!俺も共にシンガポールへお供するゼ!!」』
「『洋介、すまん!!』」
虎雄と洋介は十三たち編隊から離れ、シンガポールの方向に進路を向けた。
「『虎雄、桜井、すまない!先に日本へ帰るぞ!』」
「虎雄さん!必ず生きてくださいよ!!」
「『戦争が終わったら必ず会おう!!』」
「『厚木隊長、沖田さん、進次郎、幸吉!武運を!!』」
「『隊長、進次郎!ちょいと行ってくる!!』」
ライトニングの編隊に向かって虎雄と洋介が突っ込みながら、敵機を撃墜しながらシンガポールへ飛行した。
この時点で、十三と進次郎、その後シンガポールからマバラカットへ引き返した洋介は、ラバウル六勇士の一員である大賀虎雄も十三と洋介を最後に目にしたことは、まだわからなかった。
そして、アメリカ軍艦載機が来襲。数が減っても十三と新一郎、幸吉ペア。そして進次郎が倍以上の敵編隊に向かい、奮闘した。
艦載機の中に、ランスローとトムのペアも含まれていた。
「『日本の戦艦、でっかいなぁ~』」
「『こらこらトム、敵を褒めるのは悪くないが、任務に支障するな』」
「『アイリッシュ隊長、兄貴が別任務とは寂しいですよ!』」
そう、バッキーはこの時だけ別の任務に就いていた。
「『敵機です!!』」
「『とうとうお出ましか!油断するなよ!!』」
「『了解!!』」
燃料タンクを落下した時、後方から別の二機が追い抜き、進出した。
「『じゃぁな!アイリッシュとジャップ!』」
「『ジャップの手にわずらせないように、俺たちが落としてやる!』」
二機のヘルキャットが嘲笑いながら通過して、三機の日本機に急接近した。
「『たったの三機の日本機で何ができる!』」
「『旧式な複葉機を落としても自慢に…がはっ……』」
「『どうした!?…ぎゃぁ……』」
数機のヘルキャットが矢に射ぬかれ、あるいは照準に入れた敵機が消え、瞬時に背後に回り込まれて撃墜された。
ランスローの視点から珊瑚海から戦った宿敵の厚木十三。そして、トムも忘れたことがないサムライが搭乗した零戦の進次郎。
その両雄がフィリピンの近海で激しい空中戦を展開した。
「あのジーク、一段と腕があっても、性能はこちらが上だ!くらえ!!」 ダダダダ 「またか、畜生!!」
トムは進次郎機に照準を捉えたにも関わらず、必殺の銃撃を回避され、悔しい思いをした。
「『トム、日本艦隊が射程限にでてしまう!我々の燃費も危ういから母艦に帰投するぞ!』」
「『り…了解!!』」
ランスローとトムは愛機の航続距離と燃費を配慮し、艦隊に向かって帰投した。
「た…助かりましたね…」
「『あぁ、しかし…我々も銃弾が尽き、燃料が危ない。進次郎そろそろ』」
「『十三、進次郎!共に戦えて感謝に忍びない。すまない、先に日本へ帰る!』」
「『あぁ!新一郎、幸吉。必ず日本で会おう!!』」
「『幸吉!新一郎兄ちゃんを頼むぞ!』」
「『了解です。進次郎さん!隊長、お先です!!』」
そして、艦隊を護衛した十三と進次郎は新一郎、幸吉ペアと別れてマバラカットに帰投。
だが、新一郎と幸吉、十三が互いに交わした連絡が最後になったのを、まだわからなかった。
フィリピン海にて、進次郎たちラバウル六勇士が集まり、最後の空中戦を展開し、残存する連合艦隊を守りきった。
そして、仲間の命が断つ1945年まであと僅かになった。