四国の高知県、四万十川と土佐湾の貧しい漁村で生まれ育った。6人兄妹の次男坊であり、兄の沖田新一郎は海軍に入隊、海兵団を中退して航空隊に志願した。進次郎は兄の新一郎みたいに強く憧れ、そして休暇で帰宅した兄と相談した。
「おまんが海軍に入るのは構わん…だが、日本は戦争に突入する。命を粗末にするマネはするな!」
新一郎は基地に帰投した後、日華戦争が勃発して動員され、第2次上海事変に従事した。
「…兄ちゃん…大陸の空で何しているのやら…ん…?」
ある日、新一郎からの贈り物が届いた。それは第1次欧州大戦のドイツ空軍エース、マンフレート・フォン・リヒトフォーフェンに関する本だった。
難しい字が幾つもあったが何度も読み返し、どことなく理解した。
夏の季節の夜、兄妹部屋で蚊帳の中で夢を見た。
進次郎が草原に立ち、崖から大海原を眺める時、空から幾つもの飛行機が飛び立っていた。
「(…あれが飛行機か…赤い飛行機…?…リヒトフォーフェン…レッド・バロン…)」
マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン、通称レッド・バロンの赤い飛行機は空の遥か彼方に浮かんでいる一筋の雲に向かって飛んでいった。
そして1939年、沖田進次郎は海軍に志願し、霞ヶ浦の予科練に入隊した。入隊してから翌日、地獄の訓練が始まった。
5分前行動での朝礼台前へ集合の御製奉唱、皇居遥拝。遅れたら海軍名物バッターに尻を叩かれるのであった。くる日もくる日も訓練の繰り返し、機械の操作や体操、カッターや水泳、電信訓練を受けるのであった。
1941年12月8日
「ようやく訓練が終わったな進次郎~」
「そうだな、来年からようやく憧れの飛行機に…」
1日の訓練が終わり、進次郎たちが和む中だった。進次郎の同期が駆けつけにきた。
「大変だ!!我が国の海軍がアメリカのハワイを奇襲したぞ!!」
「「なんだって!?」」
この時、日本が米英に宣戦を布告。そして1月、進次郎たちは横須賀の海軍航空隊に転属。数日後に訓練飛行が始まった。九三式練習機、通称赤トンボが滑走路に準備待機していた。一番に沖田進次郎が赤トンボの操縦席、そして教官が搭乗した。
「計器点検燃料よし、油圧よし、エナーシャまわせ、コンタクト!」
エンジンのプロペラを回し、滑走路の誘導員が発進の合図を出した。
「発進します!!」
進次郎が扱う赤トンボが滑走路を走り、地面を蹴って離陸。今まで憧れていた大空を飛んだ。
「やった!!飛んだ、飛んだぞ!!」
「馬鹿野郎!飛行機が海に潜るか!」
進次郎が興奮する中、教官が進次郎の頭部に拳骨を受けた。
「すんませーん!いって~!」
その日から、進次郎たちの想像を絶する飛行訓練で滑走路の離発着や射撃訓練、空母に見立てた滑走路での着艦訓練。徹底的に連日繰り返された。
1942年4月19日
「進次郎よ、お前は短期間で飛行技術の呑み込みが早いな」
「まぁな、オレも覚えるのに必死だからな、それに昨日の米軍による東京空襲があって大変だったな…」
「あぁ、それに関西もやられたみたいだが、ここの航空隊の先輩が関西で空母の離発着訓練中に数機が迎撃、1機の九六艦戦が米軍爆撃機B-25を1機撃墜したそうだ」
「まっことかよ!お古の九六艦戦で…でかい爆撃機を撃墜したのかよ!?そのパイロット会ってみたいなぁ…」
進次郎がウキウキする時、搭乗機種の結果が発表された。戦闘機乗りに合格した。戦闘機乗りに合格後、進次郎は猛訓練に突入した。
月日が流れて6月、ミッドウェー海戦で海軍が大敗、空母4隻が沈められて優秀なパイロットが大多数を失った。
そして7月上旬、基礎教育過程を終了して早期卒業。進次郎は三等飛行兵曹の階級が与えられ、空母瑞鶴の配属が決まった。
横須賀航空隊ピストー
進次郎は部隊編成表を確認した。
「第1中隊、第2小隊の3番機か…」
「君が、沖田進次郎か!?」
進次郎の背後に一人の良い男前のパイロットがやってきた。
「はい!!あなたは?」
「俺は第2小隊2番機のパイロット、桜井洋介一飛曹だ。よろしく!」
「沖田三飛曹です!!」
「小隊長から招集がある、今から士官室にいくぞ!」
「はっ!!」
進次郎は桜井洋介と個人の士官室に向かい、ドアをノックして入室した。
「失礼します!!第2小隊、2番機の桜井洋介一等飛行兵曹です!」
「同じく第2小隊、3番機の沖田進次郎三等飛行兵曹です!!」
「よく来てくれた。おれが第2小隊の隊長、海軍少尉の厚木十三だ。はっはっはっ!よろしく!」
中には男優みたいでありながら、右頬に縫い糸が付けられた傷と額に×印の傷が特徴で豪快と歴戦の猛者、厚木十三であった。彼は二人の戦歴の書類を見ながら質問した。
「沖田進次郎三飛曹、航空操縦技術はピカ一。それに…沖田新一郎の弟とは!」
「小隊長!?」
「いや、すまない。桜井洋介一飛曹、操縦技術は上位。そして4月18日の訓練中の空襲でB-25を1機撃墜、見事だな!」
「恐縮であります!!」
「(この人が、あの空襲でB-25撃墜したパイロットだったのか…)」
厚木の顔が険しくなり、内容を変えた。
「いくら予科練習生の成績がよくても、空中戦で敵さんに落とされるのが目に見えるぞ!」
「「はっはい!!」」
「だが、荒削りながら才能がずば抜けている!おれと共にいれば立派な戦闘機パイロットになれる!」
「「 はっ!! 」」
「今からおれと貴様たちの相棒を拝ませてやる。ついて来い!」
進次郎と洋介は、厚木から案内された場所が飛行場の格納庫だった。中には3機の零式艦上戦闘機が駐機していた。
「厚木隊長…この戦闘機は…零戦!」
「そうだ、これがおれたちの愛機だ!」
だが、洋介はその零戦を疑問に感じた。
「しかし厚木隊長、零戦でも少し違う」
「はっはっはっ!よく見抜いたな桜井、これは22型甲だ!」
「22型甲…!?」
進次郎と洋介は厚木の解説で従来使用した零戦のエンジンの速度と20ミリ機銃の銃身が長く、20ミリの弾数が120発。そして、電信連絡が向上して性能が一段と上がった零戦であった。
「よし、お前ら!今からこの零戦で試してみるか?」
「「えっ?」」
厚木小隊が東京湾上空で飛行。進次郎は列機の3番機、最後尾に飛行。だがー
「なっ何者だーっ!!隊長はともかく、桜井一飛曹もこんな凄まじい機動ができるんだー!!ついていくのがやっとだ!!ちくしょう~(それまで、超一流のパイロットになってやるぞぉ~!!)」
やや置き去りにされながら飛行していた。これが沖田進次郎が戦中から終戦まで関わるパイロットたちであった。
沖田進次郎の日本海軍に入隊。
自身の青春が、この忌まわしい戦争に注ぎ込まれることになるのであった。
君は、生き延びることができるのか…?