ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第20話 南海に消えない肖像

 

 

 

 

 

 

二機の零戦64型が厚木基地から飛来、隊長機の洋介と進次郎、操縦席後部にはトチローが座り込んでいた。

 

 

「もうすぐ鹿屋基地ですよ~」

 

 

「あ~、やっと狭い機内から出られる」

 

 

「『今から着陸しま…っ!?左舷方向に一式陸攻だ!』」

 

 

洋介が示した方角に、被弾した一式陸上攻撃機が鹿屋基地に帰投したが、車輪を出さず、滑走路に不時着した。

 

 

 

 

 

 

 

桜井洋介少尉、秋山敏郎(トチロー)兵曹長、沖田進次郎一等飛行兵曹は鹿児島の鹿屋基地に到着した。

 

 

「桜井洋介少尉以下三名、本日付けで鹿屋基地に配属しました!!」

 

 

「うむ、ご苦労!ラバウル六勇士のパイロットが鹿屋基地に配属してくれたことは鬼に金棒だ。」

 

 

「司令官、我々が転属した理由は特攻隊の護衛ですか?」

 

 

そう、アメリカ軍は本土上陸に備え、硫黄島に続き、沖縄近海にアメリカ艦隊が集結。

鹿児島の鹿屋基地はアメリカ艦隊を撃退するため、特攻隊の基地に指定され、続々と特攻の機体とパイロットが転属。さらに、特攻隊を護衛する戦闘機パイロットも必要不可欠だった。

 

 

「話しは早いな、来たまえ。」

 

 

三人は、司令官自らに案内した格納庫には新型兵器が置かれていた。

 

 

「司令官、これは…?」

 

 

「特別攻撃機、桜花だ!」

 

 

桜花一一型

全長 6.066メートル

全幅 5.120メートル

戦闘重量 2.14トン

航続距離 約37キロ 

瞬間最大速度 1040キロ

推進動力 四号一号ロケット3基

 

 

 

 

 

先端部には1200キロの徹甲爆弾を装備、一撃のもとに敵艦を沈める性能を持つ。

初期の特攻が爆装した飛行機であったのに対し、桜花は最初から特攻機として開発され、戦局の挽回に投入された。

 

 

 

 

「洋介、進次郎よぉ、あの羽根は木材だぜ…」

 

 

司令官の解説を聞いたトチローは桜花を擦った。

 

 

「桜花の操縦は極めて難しいか…、こいつを扱うパイロットがな…」

 

 

「ばっはははは!そいつが兵器なら、アホウドリとハヤブサやなぁ!!司令官殿もそうやろ?」

 

飛行服を着た中年太りの腕章少佐で、関西訛りの男が大笑いしながら格納庫に入って来た。

 

 

「な…中野!!何の用だぁ!!」

 

 

「これはこれは、本日配属した護衛戦闘機隊の諸君と整備士、ご苦労さんで。ワイは敵まで運ぶ一式陸攻隊の隊長、中野五郎や!よろしゅうな」

 

 

 

「貴様の来る所じゃない、帰れぇ!」

 

 

 

中野五郎少佐が入ってきたことに司令官は険悪になった。

 

 

「そうはいかん!一式隊の隊長として、一言あるんや。第一神雷部隊は敵機動部隊まで100キロの距離で敵艦載機の攻撃を受けた。一式陸攻は桜花を抱いたまま全滅やった。」

 

 

「「「 全滅!! 」」」

 

 

進次郎たちは悟った。あの滑走路に不時着した陸攻は桜花を抱き、敵の艦隊付近で敵機と遭遇、命からがら生き延びた機体であった。

 

 

「そこの戦闘機パイロットと整備士の坊やたち、名前は?」

 

「桜井洋介少尉です!」

 

「沖田進次郎一等飛行兵曹です!」

 

「秋山敏郎兵曹長です!」 

 

 

進次郎らは中野少佐に自己紹介しながら敬礼した。中野は進次郎に質問をした。

 

 

「あっ…えと…2トンと聞いております!」

 

 

進次郎が応え様にも、焦り気味になった時。トチローが解答した。

 

 

「少佐、陸攻の積み荷に2トンじゃあ、スピードがガタ落ちるでぃ」

 

 

「その通りや!僅かに300キロや!こんなノロマの一式陸攻が600キロを出せる敵の戦闘機に出くわしたら一巻の終わりや!!しかも敵空母は高性能レーダーで150キロの距離でワイらを発見し、戦闘機を発艦させる…」

 

 

「「「………………」」」

 

 

中野の解説で三人は口を開いたままで閉じられなかった。

 

 

「敵に37キロまで接近し桜花を射出するやとぅ…敵機動部隊を見ることなく全滅や…ワイらも第一神雷隊のように無駄死にや!」

 

 

「黙れ!!黙れ!!黙れ!!そうならんため、零戦を護衛につけるんだ!!わざわざ厚木基地からラバウル六勇士のパイロットと新型の零戦を派遣させたんだ!!」

 

 

「司令官殿、いくら敏腕のパイロットと新型の零戦を護衛につけても、あれだけのF6FヘルキャットとF4Uコルセアに歯が立ちませんぜ」  

 

 

「だ…黙れぇ!!この作戦は上層部の命令だ!!貴様は命令に従えばいいんだ!!帰れ!」         

 

 

「へいへい帰りやす帰りやす。あっ!忘れとった司令官殿。司令官殿が桜花に乗って出撃する日はいつですかの?」

 

「だ…黙れ!!中野ぉ!帰れ!!帰れ!!帰れ!!」

 

 

深刻な顔をした司令官は中野を格納庫から追い出した。

 

 

「なぁ、洋介…進次郎…オレっちたちはべらぼうな基地に配属したな…」

 

「えぇ…思ったより…いや、異常に深刻です…まだ、帝都防空のほうがよかったかも…」

 

「掩護の命令を受けられた以上、やらねばなりません…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配属して3日後、トチローは二人の零戦の整備に着手。進次郎は洋介と共に桜花の飛行訓練を見物した。

 

 

 

だが、訓練用の桜花はまっ逆さまに落下した。

 

 

「あーっ!!まっ逆さまだ!」

 

 

「大丈夫か、あのパイロットは!!」

 

 

二人は慌てつつも、桜花は水平に飛行。正常に保たれたのか、無事に着陸した。

 

 

「はぁ~危なかったな…」

 

 

「アホゥ!!うまいとこ司令官に見せると真っ先にやど!!」

 

 

「「 なんだって!? 」」

 

 

進次郎と洋介のうしろに中野が立ち入り、一人の桜花の隊員が気がつき、敬礼をした。

 

 

「あっ中野少佐、桜井少尉、沖田先任!」

 

 

「誰や、あの桜花に乗っとるのは?」

 

 

「神崎です。うまいもんです」

 

 

「あぁ、あの坊やか。気になるわい、まるで早く特攻死してぇみてぇやな」

 

 

「「「 は? 」」」

 

 

神崎と聞いた中野は顔をしかめ、その場から去った。

桜花の訓練を終えた、神崎進一等飛行兵曹は司令官から特別休暇を頂いた。

 

 

だが、彼の出撃は3日後と決まった。

 

 

その後、進次郎と洋介は愛機を収納する格納庫で、トチローと共に愛機の整備点検を行った。

 

 

「おおーい、プラグを持ってこい!」

 

 

「はい!」

 

 

「トチローさん、航空オイルを持って来ました!どこにおいて置けばいいのですか?」

 

 

「あとで洋介の機体を整備するから、おめぇの機体のそばに置いとけぇ~」

 

 

「はい!ん…?」

 

 

進次郎機の整備を終えた頃、格納庫の扉に一人の少尉がスケッチブックを持って絵を描いていた。それに気付いた進次郎が赴いた。

 

 

「あの…あなたは?」

 

 

「あっ、学徒出の少尉。竹久利春です。」

 

 

「絵描きさんですか?見てもいいですか?」

 

 

「はい、どうぞ。」

 

 

進次郎は竹久利春少尉が描いた絵を見た。その絵は、零戦64型の整備している油まみれの桜井洋介と秋山敏郎、沖田進次郎の肖像画だった。

 

 

洋介の愛機の整備作業を終えた洋介とトチローも彼が描いた絵を目の当たりにした。

 

 

「ほぉ~いい絵だなぁ~」

 

 

「本当にいい絵です。竹久さんは、学徒出陣と聞きましたが、どこの大学出身ですか?」

 

 

彼は東京大学の美術出身であった。だが、学徒出のパイロットに与えられる機体は、特別攻撃機桜花だった。

 

その搭乗機を聞いた三人は絶句した。あの重量のある機体を陸攻に抱けば、速度は300キロ、ただの的に過ぎなかった。

皮肉なことに、彼は先ほどの休暇で結婚式を挙げたばかりで、3日後の出撃が決まった。

 

 

「この絵を差し上げます。では、失礼します!」

 

 

竹久利春から絵を譲り受け、彼は格納庫から去った。その後、進次郎と洋介は司令室へ向かい、3日後の桜花出撃の許可を頂きに申し込んだ。

 

 

「そんなことは無論だ、諸君はなんとしてでも一機でも多くの桜花を抱いた陸攻を護衛して貰いたい。祖国のために!」

 

 

「「 はっ!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地から射出した高速偵察機、彩雲から連絡が届いた。

 

 

 

 

『"桃太郎の雉"から"狼の巣"へ、敵機動部隊を沖縄東方500キロ発見海上に発見!!空母5!ピケット艦20!ほか多数見ゆ!!』

 

 

 

 

位置 北緯27 東経134

 

進路 北北東

 

速力 25ノット

 

 

 

 

 

 

 

「接敵推定位置はこの海上である!!訓練の成果を今こそ発揮し、多大なる戦果を上げて貰いたい!!健闘を祈る!!以上!」

 

 

ピストに司令官が日の丸の鉢巻きを巻いた桜花の隊員に解説と訓示、敬礼をした。

 

 

「桜花隊員、搭乗かかれー!!」

 

 

進次郎と洋介は、中野少佐の陸攻隊員と交流していると、桜花隊員の神崎進一飛曹が駆けつけにきた。

 

 

「中野少佐、よろしくお願いします!」

 

 

「おう、坊やがウチのお客さんかい。」

 

 

「君が神崎一飛曹か、我々は全力を持って護衛する!」

 

 

「オレと少尉を信じてください。」

 

 

「はっはい!!」

 

 

二人は彼に敬礼し、この場を去った。

 

 

 

トチローたち整備員は進次郎と洋介の零戦64型の整備を整え、二人は搭乗した。

 

 

 

『間接掩護隊の零戦中隊は誘導路へ移動せよ!』

 

 

 

二機は誘導路に移動し、発進位置に着いた。

 

 

 

『直接掩護隊、発進せよ!!』

 

 

「『桜井洋介少尉、行きます!!』」

 

 

「沖田進次郎一飛曹、発進します!!」

 

 

洋介に続き、進次郎も発進した。陸攻隊が離陸するまで上空で旋回飛行していると、見送りに来た民間の女性がはみ出ていた。その光景はまるで、桜花隊員と別れを惜しみ、陸攻に乗り込んだかのように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸攻隊18、掩護の零戦隊30は開聞岳を飛び越え、太平洋上を飛行した。

 

 

 

 

 

「『すまん!エンジン不調で基地に引き返す!!すまん!』」

 

 

「『気ぃつけて帰れや、ご苦労さん』」

 

 

「『すまん、健闘を祈る!』」

 

 

1時間も経たない内に10機の戦闘機が引き返した。

 

 

「くそぉっ!これで10機目ですよ!」

 

 

「『言うな、中学生と女学生が組み立てたエンジンだ!』

 

 

進次郎と洋介が搭乗している零戦は他の零戦より数段性能が優れている上に、敏腕整備員のトチローにより故障が全くなかった。

 

 

すると陸攻隊が慌ただしくなった。

 

 

「『なっ…引き返した零戦隊から米陸軍機と空戦だと!?』」

 

 

「な…なにぃ!!うしろに敵ですって!?」

 

 

飛行航路の海面に潜水艦が航行、発信したのは米機動部隊ではなく、沖縄の飛行場から発進した米陸軍だった。

 

さらに、電探が敵空母のレーダー波を受信した。

 

 

「『くそっ!後方に陸軍機!!前方に艦載機!!挟み撃ちになる!…がどんな相手でも』」

 

 

「全力で尽くすぜ!!」

 

 

後方の彼方からP-38ライトニング20機が飛来、進次郎と洋介は零戦の増槽を落下して立ち向かったが、2、3番機が被弾、撃墜された。

二人は撃墜したライトニングの背後にまわり、機銃を吹かせた。

 

 

ダダダダダ 「墜ちろ!!」 ドウゥン

 

 

「次っ!!」 ギュイイイン

 

 

二人は次々とライトニングを撃墜し、他の掩護機も負けじまいと、ライトニングと交戦した頃に南西方向から機動部隊のF6Fヘルキャットが飛来した。

 

 

「『艦載機だ!…はっ…行くぞ、進次郎!!』」

 

 

「…は…了解です!!」

 

 

そして、進次郎も感づいた。あの編隊の中にライバルのバッキー、トム・五十嵐兄弟の存在を

 

 

 

二機のヘルキャットが低空から上昇、三機の陸攻を撃墜した。

 

 

ダダダダダ  ドウゥン

 

 

「『よしっ!』」

 

 

「『また、例の新型兵器だぜ兄貴!こいつらを落とすのは容易いな!!あっ…』」

 

 

トムは感づいたのか、背後の機銃掃射を回避した。

 

 

「『危ねぇ…この気配はあいつらだ!』」

 

 

「『…確かにあいつらだ…しかし、あのジークが違うぞ!』」

 

 

「『奴らに64型の力を見せてやる!!』」

 

グオォォォン

 

 

「そうですね!!」  ギュイイイン

 

 

バッキーとトムは洋介と進次郎と交戦したが、二人のヘルキャットの片翼がもがれ、バランスを失い、回転しながら落下。この空にて決着が着いた。

 

 

「『…うぅ…バランスで意識が…』」

 

 

「『意識を保てトム!!操縦桿を引け!!』」

 

 

二人のヘルキャットはフラップを作動させ、操縦桿を引き、なんとか回転が止まり、水平に飛行した。

 

 

「『…はぁ…止まった…』」

 

 

「『あいつら…の…あの新型に…対抗できる機体があれば…』」

 

 

彼ら兄弟はふらつきながらも母艦に帰投した。

 

この空で勝負を終えた二人は掩護に戻りつつも、生き残った陸攻は2機。

 

中野少佐、神崎一飛曹機。そして、竹久少尉が搭乗する陸攻であった。 

 

だが、彼らの陸攻は穴だらけになり、操縦手以外は死傷が出ていた。

 

「そんな…」

 

 

「『気にすんな、あんたら掩護隊がいたおかげで、被害は少なく済んだ!』」

 

 

 

 

しばらくヘルキャットの来襲は無く順調に飛行していると、目標の機動部隊を発見した。

 

 

陸攻から負傷し、操縦している中野少佐と香月少尉が無線に出て、洋介と進次郎に感謝を述べた。

 

 

「少佐…」

 

 

もう一機の陸攻からの無線で竹久少尉がでた。

 

 

「『本当にラバウルの勇士がいてくれて助かった!』」

 

 

「…中野少佐…ありがとうございます…竹久さん、神崎さん…武運を祈ります…」

 

 

進次郎と洋介はボロボロになった陸攻に向かい敬礼した。

 

 

「『…っ!?危ない!』」

 

 

後方から別のヘルキャットが来襲、洋介が庇い楯となった。

 

 

「『ぐっ…!』」

 

 

「桜井さん!!」

 

 

「『桜井!!』」

 

 

「『『 桜井少尉!! 』』」

 

 

「『野郎!!っ』」 ギュイイイン ダダダダダ

 

 

被弾しながらも洋介はヘルキャットを返り討ちに撃墜した。

 

進次郎たちが被弾した洋介を気にかけた。

 

 

「『俺に構うな…!!必ず、最後を家族に報告する!!』」

 

 

「『『はいっ!!』』」

 

 

神崎進と竹久利春が桜花に搭乗、陸攻から2機の桜花が射出、ロケットが点火した瞬間、肉眼では見えず、高速で一筋の炎の先に目標の空母と巡洋艦に命中。瞬時に轟沈した。

 

 

その光景を見た進次郎は涙を流した。

 

 

「(やった…やりましたよ…神崎さん、竹久さん…)」

 

 

「『…中野少佐!香月少尉!帰投を…』」

 

 

2機の陸攻は力尽きたかのように、海に墜落した。

 

 

「(中野少佐、香月少尉……)」

 

 

「『進次郎、鹿屋基地に帰投する!!』」

 

 

「はい!!」

 

 

 

洋介と進次郎は鹿屋基地に帰投、基地司令官に報告した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…以上です!!」

 

 

「見事だった!これで、上層部に素晴らしい報告ができる!」

 

 

司令官の表情は明るく笑みを浮かべていたが、洋介と進次郎は冴えなく、どことなく悲しい表情を浮かばせた。

 

 

「…司令官、…素晴らしい戦果を挙げました。彼らの最後を家族に報告させて下さい!」

 

 

進次郎が進言したが、その言葉で司令は険しくなった。

 

 

「ならん、それまで機密だ…」

 

 

「私からもお願いします!我々戦闘機乗りは、彼らの最後を家族に伝える義務があります!空母と巡洋艦撃沈の戦果の引き換えに、幾多のパイロットたちが犠牲になりました!散って逝った連中は死んでも死にきれん!」

 

 

洋介が進次郎の代わりに助言し、司令官に直訴した結果、神崎進少尉と竹久利春大尉(二階級特進)のみの家族に報告の許可を頂いた。

 

 

彼らの実家は鹿児島のために手間が省けるため、赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎家ー

 

二人は神崎家の事情を知って、内心驚愕した。

 

捕虜になった兄と非国民の家族の母親と二人の妹の汚名を晴らす為に、彼は特攻に志願した。

 

 

二人は掩護、戦果確認で最後を報告した。

 

 

「神崎さんの最後は、立派でした…!」

 

 

「そうですか、…息子の…進の最後を見届けて…感謝します…」

 

 

「……『今度は平和な時代に生まれる』…神崎さんの…最後の言葉です…」

 

 

「…不憫です…進が、わたしたちのために…犠牲に…」

 

 

また新しい位牌に線香をあげ、お辞儀した。

 

 

「「……失礼しました!」」

 

 

洋介の言葉で母親は悲しみで言葉を失った。二人は涙を堪えながら敬礼、退出した。

 

村の近所の住宅には日章旗が掲げられ、横断幕が貼られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹久家ー

 

 

 

ご両親と妹、式を挙げたばかりで、見送りに訪問して陸攻に乗り込もうとした女性の美緒だった。

 

 

「…そうですか…利春…うぅ…」

 

 

「…うぅ…」

 

 

「ねぇ、兵隊さんたち…お兄ちゃんは…?」

 

 

余り事情を知らなかった妹は進次郎の元に、兄の所在を尋ねた。

 

 

「…君のお兄さんは…永遠の空にいるよ…」

 

 

進次郎は妹の頭を撫でようにも、触ることができず、両手を握りしめた。

 

洋介は、美緒の背後にある目を通した。

 

 

「これが、竹久さんの描いた画ですね」

 

 

「………はい…」

 

 

「『君を、一生守り続ける絵だ』…それが、竹久さんの最後の言葉です…」

 

 

 

遺言を述べ伝えた後、新しい位牌と線香をあげ、二人は家族と妻にお辞儀して、基地に帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地の格納庫、トチロー整備員の指示により、洋介の64型の修理、整備を行った。

 

 

「うぉい!ネジ回しをくれ!」

 

 

「へぃっ!」

 

 

洋介が愛機の操縦席に座り、点検を行っている時に、進次郎が尋ねた。

 

 

「……桜井さん…」

 

 

「……ん……?」

 

 

「あの両家の訪問、神崎さんと竹久さんの最後の言葉、本当ですか?」

 

 

射出した桜花には無線機が無く、あの二人の言葉が本当なのか、疑問に感じた。進次郎の言葉に洋介は微笑んだ。

 

 

「…君には信じられないが、本当だ…どうも、俺の脳裏から神崎さんと竹久さんの言葉が瞬時に聞こえた。それに、射出前の敵機の予測ができて、防げることができた。どうも…この戦場で…新たなる能力に目覚めた。なんてな…」

 

 

「まさか、…ははははっ!」

 

 

「べらぼうめ!!笑う暇があれば、手を貸せ!!」

 

 

「「はい!!」」

 

 

 

あれから日にちが過ぎ、4月に突入した。もうすぐ、あの戦艦が航海する日が近づいた。

 

 

 

 




フィリピンに始まった神風特攻隊。本土に戻り、硫黄島に続き、沖縄に侵攻する敵艦隊に在来する特攻隊の護衛に就いた進次郎。

十死零生の任務で、成功した者と失敗した者の無念を胸に秘め、空を飛び続けるのであった。

君は、生き延びることができるのか…?
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