ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第22話 さらば、ベルリンと仲間

 

 

 

 

 

 

ドイツ軍は先のアルデンヌの戦いで失敗に終わり、外地に出陣する物資が枯渇、戦闘が困難な状況で西部戦線からアメリカ、イギリス軍、東部戦線からソビエトロシア軍がドイツ本国に侵攻、首都ベルリンまで戦闘に至った。

 

 

だが、その時点でドイツの総統、アドルフ・ヒトラーが自決した。

 

 

指導者が亡くなったドイツ兵士は戦闘能力を失い、民間人は廃墟瓦礫化した市街地をさ迷い混乱。ソ連軍兵士は無差別に虐殺や略奪、強姦されて市街地は地獄絵図に変化した。

 

 

5月2日、混迷したベルリン市街地にて一輛、狼の首元に真っ赤なスカーフと刀のマーキングで、豊田純子上等兵が扱うパンターⅡ戦車が走行、ソビエトロシア軍の戦車を駆逐していた。

 

「車長!前方にIS戦車!」

 

「車長、晴香姐さん、砲弾を装填完了!!」

 

「晴香、撃てぇ!!」 

 

パウラ・M・オットー伍長が砲弾を装填、桜井勇介少尉の合図で大賀晴香曹長が引き金を絞り、IS戦車を撃破した。後続からT-34戦車が出没した。

 

 

「っ!?ロシア戦車の後方に後続戦車が接近、パウラ、次弾装填!!」

 

 

「了解!!…装填よし!!」

 

 

「撃てぇ!!」 ドカアァン

 

 

再びT-34戦車を撃破。戦車に隠れていた歩兵が出現、小銃やマンドリン銃を乱射しながら接近、パンターⅡの車載銃が火を吹き、車長の勇介もキューポラからSTG-44小銃で撃ち倒した。

 

 

「…はぁ…はぁ…」

 

 

「車長、本部からの指示です!シュプレー川を防衛線として後退せよと!」

 

 

「わかった!純子、動かしてくれ!!」

 

 

「了解です!!」

 

 

通信員のアリシア・A・フェアバンク曹長が息切る勇介に伝達、勇介はシュプレー川に後退する様に純子に命令した。

 

 

一部、橋を越えたシュプレー川防衛線では、満足な武器を持たない国民突撃隊やヒトラーユーゲントなどの義勇兵が溜まり、その大半が負傷者で溢れていた。

 

 

勇介はパンターⅡから降りて、指揮官に尋ねた。

 

 

「なに…逃亡しただと?」

 

 

「はい、先ほどの砲撃で戦死。副官が本部に向かったきり、戻ってきません!」

 

「なら、無傷な者は負傷者を運び、戦線を後退させる。我々が殿を務める!!」

 

「はい!」

 

 

義勇兵たちが負傷者を引き連れて後退する間、勇介たちのパンターⅡが殿を務めた。

 

 

パンターⅡの乗員は、命を賭けてベルリンの難民を守るために戦い、ソ連軍の侵攻を少しでも拒ますために橋を破壊した。

 

反対岸からの攻撃が激しく何発も戦車で攻撃、ソ連兵が川から越えた時に勇介が軍刀狼虎で斬り倒し、晴香は九九式狙撃銃で指揮官を撃ち倒した。

 

 

既にベルリンのドイツ軍は混乱、戦闘能力が既に損失。

 

 

 

「10時方向にT34、距離300、撃てぇ!」

 

 

主砲が火を吹き、1輛のソ連軍の戦車が撃破した。

 

 

「よしっ!!ん…!?」

 

 

市街地の右方向の通路から退避をし損ねた、年端もいかない丸腰の少年少女こと、ヒトラー・ユーゲント3人がソ連兵士に追われていた。

 

 

「助けて…助けて下さい…!」

 

 

「…私たちは兵隊じゃありません…!」

 

 

「逃がすか、ナチスの害獣を駆除だ!!」

 

 

5人のソ連兵がマンドリン銃を向けた時

 

 

「させるかっ!!」

 

 

「「ぎゃっー…」」

 

 

勇介は車体のキューポラから身を乗り出し、所持していたSTG-44突撃銃を発砲、ソ連兵を薙ぎ倒した。

 

 

「あ…ありがとうございます…」

 

 

「困った時はお互い様だ!このベルリン市街地に避難ができる場所はないのか、アリシア…?」

 

 

「…今、無線で…あぁ、ベルリン駅で避難民及び異邦人のスウェーデン行きの避難列車が停車しているとの情報が!」

 

 

「パウラ、純子、パンターの弾薬、燃料は?」

 

 

「砲弾があと12発、車載銃はまだまだ!」

 

 

「まだ燃料はあと半分です!」

 

 

勇介は目を閉じて考え、開眼して決断を下した。

 

 

「これからベルリン駅に向かうぞ!」

 

 

「ベルリン駅へ!?」

 

 

「そうだ、ベルリン駅に非戦闘員と民間人、異邦人の護衛に往くぞ!!その道中に非戦闘員の回収も着手する!」

 

 

「「「 り、了解!! 」」」

 

 

「純子、ベルリン駅に進路を執れ!」

 

 

「了解!!」

 

 

 

純子が操縦するパンターⅡはベルリン駅へ走行中、逃げ遅れた幾人の難民を車体に乗せて向かった。

 

 

 

ベルリン駅ー

 

 

 

ベルリン市街から民間人と非戦闘員、異邦人が続々と集結。使用する列車の車両は客車のみならず、貨物車も動員する。

 

行き先はスウェーデン経由のキール港及びヴィルヘルムス・ハーフェン港行きの列車が難民を乗車させていた。

 

 

難民が溢れる現地の駅にパンターⅡが到着。砲塔のキューポラから勇介が拡声器を持って出た。

 

 

「『ドイツの難民、日本の異邦人の皆さん!我々が殿を務めます。慌てずに一刻も早く脱出して下さい!!』」

 

 

「…な…桜井車長、ロシア軍中隊戦力がベルリン駅に行進しています!」

 

 

「わかったパウラ!ふぅ、晴香、純子、アリシア、パウラ。君たちは逃げ遅れた難民と異邦人を駅に誘導させて共にスウェーデンへ行け!!」

 

 

「「「「 っ!? 」」」」

 

 

勇介が突然の命令で大賀晴香、アリシア・フェアバンク、パウラ・オットー、豊田純子は言葉を失った。

 

 

「……車長…何故ですか…!?」

 

 

「この戦場で、俺の命令一つで君たち乙女の手を血に染めた責任がある。その責任を負う為に……」

 

 

「車長!あたいは残るぜ!!薩摩の意地を見せてやる!」

 

 

「わたくしも残りますわ」

 

 

「車長!あたしも残ります!この国の首都ベルリンは大事な故郷です!ロシアの好き勝手にさせたくありません!」

 

 

「…みんな…すまない…すまない…」

 

 

晴香たちも残留するという言葉を聞いた勇介が目元を拭いた時、豊田純子も手を挙げた。

 

 

「車長!私も残り戦います!」

 

 

純子も残留することを志した時、勇介は左手を差し出し、制止した。

 

 

「純子、君はスウェーデンへ難民たちと行け!」

 

 

「っ!?なぜ私だけなのでしょうか?私と共に戦い…」

 

 

「落ち着け!どちらに行ってもどっちかが生き残る!生きて残ることが人間としての鉄則だ!!」

 

 

勇介の言葉で純子は涙を堪え、両頬を叩いた。

 

 

「……車長……最後とは言いません、何か形見を下さい!!」

 

 

「…ふっ…わかった。」

 

 

 

勇介はドイツの留学時から支給、ノルマンディー攻防から被ってきた国防軍の戦闘帽を純子に渡した。

 

 

「……この帽子を、俺が日本に帰還するまで預かってくれ!そして、姉さんと兄貴、澪にもよろしく頼む。」

 

 

「皆さん、車長、……武運を祈ります……」 ビシッ

 

 

純子は車長の勇介に敬礼、勇介も彼女に敬礼。

 

彼女は勇介たちを振り向かず、全力で駅のホームに向けて走った。

 

 

「ウラー!ウラー!!」

 

 

「あああーっ!!」 バァン バァン バァン

 

 

「ぎゃっ…」

 

 

涙を流し、無言のままベルリン駅のホームに向かい、侵入した数人のソ連兵を拳銃で薙ぎ倒し、スウェーデン行きの難民列車のホームに到着した。

 

 

「来るなっ!!」 

 

 

「この野郎~!!」

 

 

ホームに居残ったドイツ兵が応戦したにも関わらず、放たれた銃弾が流れ、市民の被害が相次ぐばかりであった。

 

 

「……うわ~ん……」

 

 

「早く出発させろ~!!」

 

 

「畜生っ!!松本中佐殿、我々も戦わせて下さい!!」

 

 

「お願いであります!!」

 

 

日本駐在武官の護衛兵士が次々と小銃を手にして、列車から降りようとした。

 

 

「それは駄目だ!!我々は日ソ中立の身だ!ロシアと戦ったら、両国に害する!」

 

 

松本義孝陸軍中佐が自ら身体を張って、兵士を制止した。

 

日本とソビエトロシアの関係は日ソ中立条約を結んでいる身であり、この場で戦ったら両国の関係が危うくなるのであった。

 

 

「皆殺しだっ!!」

 

 

「ドイツの害獣を生かすな~!!」

 

 

「(…もはやこれまでか…)」

 

 

ヴィルヘルムスハーフェン行き列車の難民は再度風前の灯火と思われた。するとー

 

 

「やめろ!!」 ダダダダダダ

 

 

「ぎゃっ」

 

 

「ああ……」

 

 

純子が鹵獲したマンドリン銃を乱射、ロシア兵を薙ぎ倒した。

 

 

「はぁ…はぁ…皆さーん、ロシア兵を薙ぎ倒しました!出発するのは今です!!急いで下さい!!」

 

 

「…わかった!」

 

 

 

汽笛が鳴り、汽車が出発した。だが、無数のロケット弾が着弾した時、純子は胸騒ぎした。

 

 

「しゃ…車長…晴香姐さん…アリシアさん…パウラ…あああー!!」

 

 

豊田純子は貨物車の隙間からパンターⅡが木端微塵になっている光景を瞬時に確認した。

 

欧州に留学して、2年半もパンターⅡ戦車で共に生死を分ける戦場で生き延び、先ほどまで操縦席に座り、走行していた車輛。

 

言葉を交わし、仲間であった車輛の桜井勇介少尉、大賀晴香曹長、アリシア・A・フェアバンク曹長、パウラ・M・オットー伍長がソビエトロシア軍のベルリン駅での戦闘で戦死した。

 

純子は両手で頭を乗せ、膝を着いて嘆き、叫んだ。すると疲労が出て倒れ、その後の記憶がなかった。

 

 

ヴィルヘルムスハーフェンへ走行中の列車が急停車。

 

列車の左舷側にアメリカ陸軍の歩兵及び戦車部隊が立ちはだかっていた。

 

 

すると、一輛のM-4戦車が接近

 

 

「『ドイツの兵士及び難民の皆さん、我々はアメリカ軍です!完全に包囲しています!投降すれば命を保障します!』」

 

 

車長らしき人物がスピーカーで拡声。

 

列車のドイツ難民、異留人は絶望的になっていた。連合軍相手でどんな仕打ちがあるのか恐怖で怯えていた。

 

その中の日本駐在兵は小銃、銃剣、手榴弾、まして鉄パイプを武装していた。

 

 

「畜生っ、来やがったか!!」

 

 

「一人でも多く、死に導いてやる!!」

 

 

「やめてっ!!」

 

 

目が覚め、貨物列車の前で身体を張って制止した純子だった。

 

 

「お願い…もうやめて…もう誰も死なないで下さい…」

 

 

純子は涙ながらに日本兵を説得した。だが

 

 

「ふざけるな!!この場で奴らと戦い、東亜と日本が奴らに滅ぼされる!」

 

 

「生きて虜囚の恥ずかしめを受けずに戦おう!!」

 

 

「最後の一兵になるまで戦うぞ!!」

 

 

「友軍の仇を!!」

 

 

兵士たちは純子の言葉を聞き入れず、その中の一兵が銃剣で彼女を刺殺しようとした時ー

 

 

「…貴様、やめんか!」

 

 

「は…松本中佐殿……」

 

 

松本が兵の行動を阻止、そして命令を下した。

 

 

「…総員、投降する」

 

 

「「「「「 っ!? 」」」」」

 

 

その一言で純子たち兵士は驚愕し、身体が固まりながら注視した。

 

 

「中佐殿…いま、なんとおっしゃいましたか…?」

 

 

「投降だ!豊田君の言う通り、生きて、ドイツ難民、居留人と共に敵のアメリカに投降する。」

 

 

「国賊だ、…国賊の台詞だ!!」

 

 

兵が松本に暴言を吐いた時、松本が兵士の襟首を掴んだ。

 

 

「貴様たちの武器を見ろ、こんな貧弱な装備で奴らに勝てるのか!?あの市街地でどれだけの民間人が犠牲になったのかを忘れたのか!確かに、日本は奴らにより攻撃されている。やがて戦争が終わる日が近い。我が民族が滅びても、何が何でも生き延び、別の手段で仲間の仇を討つんだ!」

 

 

「…松本中佐……」

 

 

一両のM-4戦車が貨物列車に接近、砲身を向けられた時、私服を着用した純子が白旗を掲げて列車から下車。

 

戦車の砲塔キューポラからアメリカ陸軍中尉、フィリップ・W・エヴァンスが彼女に近づいた。

 

 

「我々の命を保障してくれるなら、あなた達アメリカ軍に投降します…!」

 

 

「ん…君は日本人か?」

 

 

フィリップの言葉に純子は頷いた。

 

その後、列車から次々と日本とドイツの難民、兵士が武装解除された。

 

日本陸軍中佐、松本義孝はフィリップの前に立ち、帯刀した軍刀を差し出した。

 

 

「受け取れ、我々の命だ!」

 

 

「…松本中佐、受け取らせて頂きます。(……これが…日本の刀か…)」

 

 

軍刀を受け取ったフィリップは鞘を握りしめながら震えつつ、彼に敬礼する。

 

彼は、日本刀を譲り受けた後、人が変わった様に、刀を扱う武人になる為に鍛練をするようになった。

 

アメリカ陸軍の戦車搭乗員で、軍刀を帯刀した軍人として知られた。

 

 

 

 

5月8日、ドイツ第三帝国は無条件降伏。

 

 

 

 

日本、呉海軍病院

 

 

 

「…勇介…さん…うわあぁーん…」

 

 

 

鹿屋基地

 

 

 

「……勇介…うぅ…うぅ…」

 

 

 

シンガポール基地

 

 

「…晴香…あぁ…あああー!!」

 

 

フィリピン、レイテ陸軍基地

 

 

「…そんな…アリシア…パウラ…」

 

 

ハワイ、オアフ基地

 

 

「…うぅ…アリシア…パウラ…ううぅ…うう~」

 

 

遥か母国と異国の地にいる桜井勇介の婚約者の西澤澪、兄の桜井洋介。大賀晴香の兄、大賀虎雄。アリシア・A・フェアバンク、パウラ・M・オットーの友人であったステラ・A・エヴアンスとシャルロット・F・トラインは訃報を聞き、嘆き悲しんだ。

 

 

 

 

 

生き残った豊田純子が故郷の地に帰国するのはあと1年先になるのであった。

 

 

 

 

 




欧州の戦いが終結、豊田純子はアメリカ軍の捕虜となり生き残った。

彼女と関わったパンターⅡの仲間と日米ハーフの戦車乗員の運命の歯車が動き出すのであった。

そして、戦場はアジアへ。

君は、生き残ることができるのか…?
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