ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第23話 疲弊する戦翼

 

 

 

 

4月10日 沖縄近海ー

 

 

 

「『敵空母への突入コースへ移って下さい!!』」

 

 

「『了解!!…桜井少尉、沖田一飛曹!ここまで護衛して下さって感謝します!!』」

 

 

「大塚少尉!」

 

 

「『最後は笑顔だったと、妻の玉代と息子の勝太によろしくとお願いします!!』」

 

 

学徒出陣、特攻隊員の大塚豊少尉はアメリカ海軍空母に突入、大破した。

 

特攻隊の護衛をしていた進次郎と洋介は悲しみに暮れ、散って逝った彼らに敬礼し、鹿屋基地に帰投した。

 

 

 

後日、二人は陸軍重爆撃機の護衛の任務を担った。

 

その任務も特攻、落下傘を持たない空挺隊員による沖縄にアメリカが占領している飛行場の強行着陸、空挺隊員たちも生きて帰らぬ任務だった。

 

 

5月24日、12機の九七式重爆撃機が熊本の健軍飛行場から離陸、夜間に飛行。鹿屋基地から2機、進次郎と洋介が扱う零戦が合流した。

 

「(…この機に搭乗している空挺隊員たちも、生きて帰らぬ戦場へ…)」

 

 

機内から空挺隊員が安心した顔をしながら手を振った。

飛行中、4機がエンジン不調で引き返した。

 

 

「(…静かな夜だ…)」

 

 

再び沖縄本島に接近、遊覧飛行の如く静観した飛行だったが、洋介機が左旋回した。

 

 

「桜井さん!?」

 

 

「『敵機だ!!夜間戦闘機だ!!』」 ダダダダダ

 

ドカアァン

 

 

「敵機だ…!」

 

 

洋介が放った機銃弾が敵機に被弾、爆発。彼の鋭い反応に心底驚いた。

 

その矢先、海上の各艦艇から弾幕が張られ侵攻を拒ませた。

 

 

「くっ、夜間でも弾幕が激しいな!」

 

 

「『ガガ…ザー…海軍機に告ぐ、ここまでの護衛に感謝する!あとは我々だけ飛行場まで飛行する!さらばだ!』」

 

「空挺隊員の皆さん、武運を祈ります!!」

 

 

ギュイイィィン

 

 

進次郎と洋介は義烈空挺隊員が搭乗する爆撃機に敬礼し、鹿屋基地に引き返した。

 

その後、洋介と進次郎は特攻の護衛任務を外され、本土防空の任務に就いた。

 

呉軍港で燃料不足により停泊していた空母葛城に転属。葛城を中心に敵の戦闘機と爆撃機を迎撃した。

 

「墜ちろ!!」 ダダダダダ ドカアァン

 

 

「『祖国を汚してたまるかぁ!!』」

 

 

進次郎と洋介は命を懸けて、B-29とP-51ムスタング、F6Fヘルキャットの大群と戦い、生き延びて生還した。

 

 

空母葛城ー

 

 

「洋介、進次郎!やっと部品が、それに新兵器の…あ…」

 

 

整備員のトチローが入手困難な64型の部品が届いたことに喚起していた時、二人は艦橋の壁に背もたれながら精神的に疲れ、眠っていた。

 

 

「…無理もねぇか…休んでな…」

 

 

トチローはそっとその場を後にして、格納庫へ向かった。

 

 

ハワイ、オアフ島。海軍基地の隅、格納庫。

 

 

「…これか…?」

 

 

黒人の整備員パトリック・フォードことパンサーが、指定された格納庫の扉を開くと、1機の新型戦闘機が置かれてあった。

 

 

「パンサー…これは…?ヘルキャットじゃねぇな…なぁ?」

 

 

バッキー・S・五十嵐がパンサーに訊くと、彼はリストを開いた。

 

 

「えっと…これは、F6Fヘルキャットの後継機…F8Fベアキャットです!!」

 

「……F8Fベアキャット……」

 

 

いつも使用してきたF6Fヘルキャットより一回り小型であり、風防はムスタングの水滴型。プロペラは4翔、12.7ミリ機銃4挺。

 

 

「…このベアキャットなら、桜井洋介を落とせる…なぁ、トム!あ…」

 

 

バッキーが振り向くと、そこにはトムの姿は無かった。

 

そう、トム・M・五十嵐は戦闘機部隊からウィリアム・J・スパロウのPBYカタリナの後方哨戒部隊に転属した。

 

 

3日前ー

 

 

「…もう、戦闘機に乗れないのか…」

 

 

「…ごめん…ごめん兄ちゃん…乗りたいけど…手が…手が震えて…」

 

 

戦艦大和の戦いで、トムは進次郎に撃墜された影響により負傷した。

 

その後、ハワイ軍病院で入院、一月で身体が回復して退院。だが、戦闘機の操縦席に乗り込み、操縦桿を握ろうにも、撃墜された恐怖が脳裏に蘇り、握れなかった。

 

トムは空を飛ぶことは諦めておらず、結果として知人のウィリアムのカタリナに搭乗することを考え、転属する申請を提出した。

 

 

「…戦闘機だろうが哨戒機だろうが、場所は違えど同じ青空で飛ぶパイロットに変わりはない」

 

 

「兄ちゃん…」

 

 

パンサーは真珠湾上空にてバッキーが扱うベアキャットを観察した。

 

 

「凄い…究極のジークキラーと言うべき戦闘機だ…これなら日本本土の戦闘機を叩き落とせる…あ…」

 

 

バッキーのベアキャットが低空に飛行、操縦席のバッキーがパンサーに手を振った。

 

 

3日後、パンサーとバッキー、トムが乗艦する空母が出港。再び沖縄に向けて航海した。

 

 

6月23日、三人は沖縄に到着。

 

沿岸、水上機基地ー

 

 

「スパロウ機長、シャル。トムをカタリナのメンバーとして、よろしくお願いします!」

 

 

「あぁ、任せとけ。」

 

 

「バッキーさん、トムさんは日系人ですがわたくし達の大事な仲間です。他の方からいじめることがあれば、全力でお守りしますわ」

 

 

「ははは…シャルロット、ありがとう…///」

 

 

トムは赤面になり、どことなく照れていた。

 

 

「トム、元気でな!」

 

 

「兄ちゃん、ありがとう!」

 

 

「トム、機長、シャルロット。この戦争が終わったら、フィリップさんとステラと共に、アイリッシュ隊長やシャルの関わる者の慰霊を行おう。」

 

 

「あぁ、何年掛かろうと、ランスローの墓参りを!」

 

 

「えぇ、わたくしもアリシアとパウラにも花束を捧げなければなりません」

 

 

バッキー、トム、ウィリアム、シャルロット、パンサーは互いに手を握り会い、約束を誓った。

 

 

太陽が水平線に沈む頃、バッキーとパンサーは空母に戻るモーターボートに乗挺、海岸から手を振るウィリアムとトム、シャルロットと別れた。

 

 

だが、パンサーとバッキーはまだ分からなかった。この光景が終戦を迎えても、彼らと再会はすることなく、永遠の別れになるのを思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月26日、高知上空ー

 

 

「喰らえ!!」 バシュッ  ドカアァン 「やった!!」

 

 

進次郎と洋介が扱う零戦64型の両翼に新兵器のロケット弾が飛翔、高知を空襲しに飛来したB-29を次々と撃墜した。

 

「くそっ…俺の故郷に飛来したB公め、地獄へ叩き落としてやるきに!!(父ちゃん、母ちゃん!喜三郎、喜四郎、信子、佳代子!無事でいてくれ!!)」

 

 

自身の故郷である高知がB-29の爆撃により市街地が火の海と化していた。

8発の対重爆用ロケット弾が尽きた後、ロケット弾を撃ち尽くした洋介機と合流して2機のみの暴風戦法で数機のB-29を撃墜した。

 

 

空母葛城の母港、呉を中心に幾つかの都市への空襲で進次郎と洋介は緊急出撃。

半径、神戸近辺から博多、四国全域を飛行。幾多の戦闘機と爆撃機を本土の空に落とし続けた。

 

 

7月23日。呉軍港、空母葛城。飛行甲板ー

 

 

「久しぶりだなぁ…この海と空…」

 

 

飛行甲板の先端に居座る進次郎は呉で静かな空と海を眺めた。だかー

 

 

ガキイィン  「痛ってぇ~!!」

 

「進次郎!!整備を手伝え、べらぼうめっ!!」

 

 

進次郎の頭部を強打、片手にスパナを所持したトチロー整備士が現れた。

 

 

「んで、洋介はどこだ!?」

 

 

「は…桜井さんは休暇を取っています!何でも、桜井さんの奥さんが無事に出産したとのことです!」

 

 

「そぅか!そりゃめでてんでいっ!子供は国の宝だな!!」

 

「はい!!」

 

 

洋介の妻、雪が出産したとの電報を受け取り、1日だけ休暇を貰い、葛城から降りて、雪が勤務兼、入院する海軍病院へ向かった。

 

 

葛城に居残った二人は洋介の愛機の整備を終え、夕食まで呉港に停泊する連合艦隊を飛行甲板から眺めた。

 

 

「トチローさん、これだけの艦艇が内地に生き残りましたね…」

 

 

「てやんでぃ、進次郎…あの戦艦大和の航海以降、小型艦艇以外は燃料不足で出航が出来ん、皮肉にも水上に浮かぶだけの砲台に過ぎん!この葛城はまだ贅沢だ、燃料が無くとも、戦闘機とパイロットがいる!」

 

 

呉に停泊する連合艦隊の艦艇は燃料不足で航行不能、主な対空武装や電探などの装備が撤去されて陸上に移転、施されたのは迷彩塗料のみだ。

 

3月19日以降の呉軍港は幾度も空襲を受け、艦艇と市街地の被害が続出した。

 

 

来る7月24日、朝。進次郎が葛城の飛行甲板で何周か走っていた。

 

 

「(たまには走るのもいいなぁ~)ズズ…ん…あれは?」

 

 

走り終えて、艦橋付近でトチローと茶を煤っている時だった。港で洋介は慌てつつ、波止場と空母を繋ぐラッタルを架けて帰艦した。

 

 

「あの、桜井さん?」

 

 

「どうしたんでぃ洋介?休暇はどうした!?」

 

 

「進次郎、トチローさん!空襲だ、敵機が来襲するぞ!!」

 

 

「なんだって!?」

 

 

「合点承知!!今すぐ格納庫から零戦を取り出す!洋介、進次郎、手伝え!!」

 

 

「「 了解です!! 」」

 

 

進次郎はトチロー、洋介と共に格納庫へ向かい、三人は進次郎と洋介の愛機零戦64型を運びエレベーターに載せ、飛行甲板に移動した。

 

 

「エナーシャ回せ、コンターク!!」

 

 

エンジンを発動、数人の整備士が車輪止めを外した。

 

 

「桜井洋介、行きまーす!!」

 

 

「沖田進次郎、発進します!!」

 

 

葛城から二機の鷹が発艦した時、空襲のサイレンが鳴った。その先の敵機の大群へ向かって飛行した。

 

 

「性懲りもなく飛来したか!」

 

 

「『進次郎!いつも通り太陽へ向かって飛行するぞ!!』」

 

 

「了解!!」

 

 

洋介機は太陽に向かって飛行、続いて進次郎も操縦桿を手前に引き、太陽に向かって飛行した。

 

充分な高度に飛行、そして、竹製の増槽を落下。敵機の編隊に向けて急降下した。

 

「墜ちろ!!」 ダダダダダダ  ドカアァン

 

 

進次郎の攻撃で3機のヘルダイバーを撃墜。洋介、進次郎のはたった二人で次々と敵機を撃墜する最中ー

 

 

ドカアァン  「よしっ…う…しまった!」

 

 

進次郎の背後に敵新型戦闘機が取りついた。愛機を捻り込んで銃撃を回避したが、執念を持っているかのように、離れることが出来なかった。

 

 

「また新型戦闘機か…(尾翼の舵に刀マーク…あいつだ…)」

 

「『トムの仇だ!!…っ…!?』」

 

バッキーの直上から洋介機が銃撃、バッキーは咄嗟に機体を捻り、回避した。

 

 

「『進次郎、大丈夫か!?』」

 

 

「…桜井さん…」

 

 

「『…ガガ…洋介、進次郎!気をつけろ!!』」

 

 

葛城の艦橋付近を双眼鏡で覗きながら、進次郎、洋介機の無線スピーカーからトチローが掛けてきた。

 

 

「「『 トチローさん! 』」」

 

 

「『そいつは米軍最新鋭戦闘機、F6Fヘルキャットの後継機、F8Fベアキャットだ!!』」

 

 

「なんだって!?」

 

 

進次郎は勘づいた、あの沖縄近海で撃墜された刀マークのヘルキャットは、新型戦闘機パイロットと関わりがあること、そして、復讐しにやってきたのを恐怖した。

 

 

「…あ…ああ……」

 

 

「『進次郎!!』」

 

 

「はっ!!……」

 

 

「『あのベアキャットは俺の獲物だ、お前は呉軍港を襲う敵機共を頼む!!』」

 

 

「了解!!桜井さん、ご武運を!!」

 

 

ギュイイイィン

 

 

進次郎はこの空域を離脱、その青空で洋介はバッキーとの対決が始まった。

 

 

進次郎は一人の戦いで一機、また一機の戦闘機と爆撃機を撃墜。だが、たった一機で防ぐも、爆撃機が次々と艦艇に爆弾を数発命中して被弾。艦艇だけならぬ海軍工廠が被弾、爆発して炎上。

海軍の施設以外、病院は負傷者が溢れる時、ヘルキャットが機銃掃射。

 

 

「ああ…病院が…己れ!!」 ガチガチ 「あぁ…弾切れだ…くそっ!!」

 

 

襲ったヘルキャットの大群が嘲笑うかのように、母艦へ引き返した。

 

バッキーとの空戦を終えた洋介は進次郎と合流、海上の基地である空母葛城に着艦した。

 

 

「洋介、進次郎、ご苦労だったな…」

 

 

「トチローさん、…すみません…葛城が…」

 

 

「…言うな…至近弾でも、おめぇらがいたお陰で沈没は免れた…」

 

 

葛城は爆弾を受けたが、至近弾のみの被害で済み、沈没は免れた。トチローは進次郎と洋介を言葉で慰めた。

 

しかし、洋介はやや慌て心配そうに、軍病院にそっぽ向いていた。

 

 

「…トチローさん…夕方まで葛城に帰ります。」

 

 

「…洋介…?」

 

 

「桜井さん…」

 

 

「お願いします!」

 

 

「……合点承知!俺っちが上官に伝えておくぜ!」

 

 

「感謝します!!」

 

 

洋介はトチローに血を滲む気持ちで嘆願、トチローは了承、そして、洋介は急いで葛城から降りて、側車付きバイクに乗車、海軍病院へ向かった。

 

 

「(もしや、桜井さん……)」

 

 

進次郎はどことなく不吉な予感がした。

 

 

夕方ー

 

 

「あ…桜井さん…桜井さん?」

 

 

洋介は帰ってきた。だが、進次郎たちの光景からは、魂が抜けた様にトボトボ歩き、悲しみに涙を流していた。

 

 

「…洋介…?」

 

 

「…進次郎…トチローさん…雪が…雪が…」

 

 

「……桜井さん……」

 

 

「…洋介…まさか……」

 

 

洋介の話では、海軍病院が米軍に襲われた時、爆撃で破壊された建築物の破片が洋介の妻である雪の頭部に直撃、強打して意識不明の重体に陥っていた。

 

娘の亜弥は雪に庇われ、無事だった。雪の看護婦仲間、盟友である厚木柚子と西澤澪が全力で彼女の意識回復を努力している。

皮肉にも、進次郎の不吉が的中した。

 

 

「…そんな…」

 

 

「…うぅ…雪……うぅ……」

 

 

鷹のように戦う洋介は泣き崩れた。

その時、トチローが襟首を掴み上げた。

 

 

「べらぼうめ洋介!今日の戦い…いや、これまでの戦いでどれだけの民間人が犠牲になって、悲しみに暮れているんだてやんでぃ!!雪さんが意識を失っているが生きているだけでマシだ!!」

 

 

「そうですよ!柚子さんと澪さんの力を信じて、目が覚めるのを祈りましょう!!」

 

 

「……トチローさん…進次郎…そうですね…厚木隊長と雪、勇介と志帆姉さんに怒られてしまう…俺は隊長として立たねば…それに、これ以上の犠牲を増やさない限り、空へ…」

 

 

トチローと進次郎の説得で、洋介は悲しみを胸に秘めながら、立ち上がった。

 

 

28日、再びアメリカ海軍艦載機、沖縄から陸軍爆撃機B-24を伴い来襲。

 

進次郎と洋介は葛城から発艦し、他の航空部隊と合流して迎撃に向かい、飛行した。

 

「『伊勢が…!!』」

 

 

「『あぁ…榛名がやられた!!』」

 

 

「……くそったれー!!叩き落としてやる!!」

 

 

進次郎たちは重爆撃機を獲物に捉え、ロケット弾でB-24を撃墜した。

 

 

「ザマァ見ろ…ザマァ見ろー!!」

 

 

「『さすがラバウルの勇…ぎゃっ…』」

 

 

突如、隣の二機の僚機が火に包まれて、呉の海に堕ちた。

 

「桜井さん!!あいつだ…あいつだ!サムライハンター!!」

 

 

F8Fベアキャットのサムライハンターこと、バッキー・S・五十嵐が飛来、奴に対抗できるパイロットの洋介が進次郎のもとに駆けつけた。

 

 

「『来たか、バッキー・五十嵐!!』」

 

 

「『桜井洋介!!』」

 

 

鷹の洋介と鷲のバッキーによる呉軍港上空の勝負が始まった。その光景は目に止まらぬ速さでの激しい空中戦が展開されていた。

 

進次郎は軍港防空の最中、赤十字の病院を襲うヘルキャットの群集を視認、急いで飛行した。

 

 

「やらせるか…これ以上、犠牲者を増やしてたまるか!!」

 

 

ダダダダダダ ドカアァン  ダダダダダダ 

 

 

あの時の二の舞をさせることなく、ヘルキャットの群集を撃墜した。

正午近くなると、戦爆連合は引き返した。だが、呉軍港の被弾は4日前と比べて甚大だった。

日本海軍が誇る連合艦隊の艦艇は爆撃により大破、着低。栄光と共に壊滅、落日した。

 

 

洋介とバッキーの勝負も引き分けに終わった。

二人の母艦である葛城にも爆弾が命中、飛行甲板とエレベーターがめくり上がり、大破した。

 

葛城の通信無線により急遽、岩国の海軍飛行場へ向かった。だが、飛行場に着陸しても、味方から白い目で見られていた。

 

呉軍港を死んでも守れなかった卑怯者、臆病者。敵のエースを仕留められなかった半端者。

 

どんな罵声を受けても罪悪と後悔はしていなかった。

 

その後、再び鹿屋基地に転属。桜井洋介は中尉、沖田進次郎は少尉に昇進した。

 

 

その基地でラバウル六勇士、兄である沖田新一郎、ペアの金城幸吉と再会した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、心が重くなる一報が届いた。

 

 

7月31日 日本海軍大尉 大賀虎雄 マラッカ海峡上空にて戦死

 

 

鹿屋基地

 

 

「…あ…あぁ…虎雄……」 

 

 

「…虎…雄…さん…ううぅ…」

 

 

「…虎雄…俺よりも偉くなったな……」

 

 

「…馬鹿野郎!!…俺っちよりも…早く逝きやがって……」

 

 

「…虎雄さん…ううぅ…あぁ……」

 

 

シンガポール基地

 

 

「…虎ちゃん…安らかに……」

 

 

鹿屋基地の格納庫にて。新一郎、幸吉、洋介、トチロー、進次郎。この場から離れたシンガポールに滞在するトチコは嘆き、悲しみ。徳利に注がれた酒を無くなるまで喉に呑み通した。

 

 

悲しみに暮れたのは他にもあった。

 

 

7月30日 アメリカ陸軍大尉 ステラ・A・エヴァンス シンガポール上空にて戦死。

 

 

アメリカ サンフランシスコ港 揚陸艦

 

 

「…ステラ……そんな……そんな……あああぁ…」

 

 

「…ステラさん…ぐっ……」

 

 

沖縄、水上飛行基地

 

 

「…ステラ…」

 

 

「…ううぅ…ステラ……」

 

「…ステラさん………」

 

 

アメリカ空母 エセックス飛行甲板

 

 

「……バッキーさん……ステラさんが…」

 

 

「…パンサー…すまん…一人にしてくれ……ううぅ…うわあぁー…」

 

 

ステラと関わる人物が嘆き、彼女の兄であるフィリップは艦の甲板で悲しみ。

 

 

友のシャルロットは沖縄の海岸で悲しんだ。

 

 

そして、バッキーも飛行甲板から太平洋の夜空を見上げ、嘆き叫んだ。だが、彼はあと1年後、ステラの意志を継いでバミューダ海域に行くのかは、まだ分からなかった。

 

 

 

 

 




あと1ヶ月弱で終戦を迎える前に、再び特攻隊の護衛の任務と、人類史に刻む程の悪夢が刻々と近づいていることを、進次郎はまだわからなかった。

君は、生き残ることができるのか…?
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