ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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元ネタは『音速雷撃隊』です。

沖田進次郎の人生にて、最後の特攻機護衛の任務が待っていた。


第24話 音速雷撃隊

 

 

 

かつてのラバウル六勇士のパイロットたちが九州の鹿児島、鹿屋基地に集結。

 

沖田新一郎大尉、金城幸吉一等飛行兵曹のペアは零式水上観測機で本土近海の哨戒。

 

桜井洋介中尉、沖田進次郎少尉は零式艦上戦闘機64型での防空任務だが、上層部の命令により、迎撃中止。本土決戦に備えて温存、待機命令を下された。

 

 

8月5日 鹿児島 鹿屋基地

 

 

 

珍しく、敵機来襲のない鹿屋基地にて、少尉になった進次郎は基地内の木陰で寝転がっていた。

 

 

「…はぁ…厚木隊長…虎雄さん…純子…ん?」

 

 

フィリピン、シンガポールで戦死、ドイツで行方不明になった者たちの名前を呟いた時、開聞岳の方向から6機、損傷を受けた零戦が帰投した。

 

滑走路の脇から基地司令官自ら出頭した。

 

 

「桜花は!? 桜花はどうなった?何機敵艦に命中した!?」

 

「し……司令…敵艦に遭遇どころか…全16機、全て落とされました!!」

 

 

護衛小隊の隊長からの報告では護衛の戦闘機32機を伴っても返り討ちに遭っていた。

 

6月後半、沖縄がアメリカ軍の手に落ちて1ヶ月。敵が本土侵攻作戦で続々と沖縄を拠点として集結、3月末から特攻隊の出撃が今に続いていた。

 

 

「(畜生…未だに特攻か…何人犠牲すれば気が済むんだ…)」

 

 

進次郎は心底悔しい思いをしながら、負傷したパイロットを医務室に運んだ。

 

その後、進次郎と洋介は司令の命令により、明朝、桜花部隊の護衛を務める任務を再度受けた。

 

鈴虫が鳴く夜、格納庫でトチロー整備士と共に、愛機の整備作業を手伝った。

 

 

「はぁ…こっちはこんなものか。」

 

「桜井さん、兄ちゃんから聞いたのですが、今日の桜花隊で、落下傘で生き残ったパイロットが帰還したらしいですよ!」

 

「えっ!?…信じられん…死と隣り合わせの特攻で生きて帰れたなんて…」

 

進次郎の言葉に洋介は驚いた。だがー

 

 

「二人とも!口を動かす暇があるなら手を動かせ…が…洋介、進次郎!早いから明日に備えて休んでおけ!!」

 

「「 はいっ!! 」」

 

 

進次郎と洋介はトチローの指示で兵舎に戻る途中、中年の陸攻パイロットと若き学徒出身のパイロットと鉢合わせた。

 

 

「ん、あんたらは?」

 

「あっ、明日の桜花護衛に勤める戦闘機パイロットです!」

 

「右に同じくです!」

 

「そうですか、心強い。」

 

 

洋介と進次郎は敬礼、彼らも返礼した。

 

 

「どうかね、あんたらもわしの陸攻搭乗員と酒を飲もう!」

 

 

二人は陸攻隊員に案内され、兵舎に到着した。

 

 

「長目二飛曹!」

 

 

「沖海上飛曹!」

 

 

「畑二飛曹!」

 

 

「大川二飛曹!」

 

 

「遠山上飛曹!」

 

 

「股上一飛曹!」

 

 

「そして、機長の山岡中尉だ!」

 

 

「零戦隊の桜井中尉です!」

 

 

「同じく、沖田少尉です!」

 

 

「野上少尉です!明日はお願いします!」

 

 

最後は野上靖少尉の自己紹介を終え、陸攻隊員はとぼとぼしながら席に着いた。

 

 

「どうしたみんな、元気を出さんか!桜花を積んだって、死ぬと決まった訳じゃないぞ!」

 

 

山岡中尉が激をしても沈黙していた。

 

 

「必ず死ぬと決まっているのは野上少尉だけです…」

 

 

「うん、…母機のほうが全滅して、おれだけが帰ってきた………」

 

 

「(…そうだったのか…)」

 

 

股上の言葉で進次郎は内心驚いた。

 

死と隣り合わせの桜花部隊で生き残ったことは奇跡的だったが、彼は落ち込み、気持ちが沈んだままだった。

 

 

「護衛の零戦ですら6機しか戻れなかったんですから……今や、敵の搭乗員は全員が玄人…こちらは半分以上が素人…」

 

 

「下手の操縦する戦闘機は、空飛ぶカモやさかいな…」

 

 

大川と長目の言い分は最もだった。

 

現時点で敏腕のパイロットは既に一割以下、その場にいた最前戦のラバウルで戦った進次郎、洋介の敏腕パイロットがいても敗戦が濃厚だった。

 

 

「なんとか、桜花を敵の37キロ以内に運んでくれたら、必ず命中させてみせる…命中したら、駆逐艦なんか消し飛んでしまう…」

 

 

野上の言葉で、全員がグラスをテーブルに置いて、耳を傾けた。

 

 

「…はっ...! 言っときますがあんたら、それでも母機が危うくなったら逃げろよ!…おれなんか、さっさと切り放して…」

 

 

椅子から立ち上がり、陸攻隊員と進次郎は洋介に忠告した。だが、彼は本日の神雷部隊の生き残ったことで恥じんでいた。

 

 

「そんなことないですよ、少尉!」

 

 

「「「 っ!? 」」」

 

 

「人間として、生きることは間違いではありません!」

 

 

進次郎は以前、特攻隊で出撃した熊井大二郎少尉の言葉を野上に述べた。

 

 

「…あ……」

 

 

「野上少尉はいるか!?」

 

 

「なんだ、貴様たちは…?」

 

 

本日の戦闘で戦った、二人の戦闘機パイロットが。一人は右頭部あたりを負傷して、包帯を巻いていた。

 

入室して野上の元に赴いた。

 

 

「君か、生き残った桜花の搭乗員は?」

 

 

護衛戦闘機隊の土方少尉の言葉で野上は無言で頷いた。

 

 

「今日のことはすまなかった、明日はなにがなんでも、完全に護衛するつもりだ!」

 

 

「許してくれ、それが言いたかっただけだ!」

 

 

「例え敵機に体当たりしてでも…ぐっ…」

 

 

「土方少尉!明日は我々も護衛部隊に参加します!」

 

 

洋介は立ち上がり、言った。

 

 

「貴様は…?」

 

 

「桜井洋介です!」

 

 

「沖田進次郎です!」

 

 

洋介に引き続き、進次郎も椅子から立ち上がった。

 

 

「…ラバウル六勇士の…君たちがいれば100人力だ。…失礼する!」

 

 

土方少尉ともう一人は進次郎と洋介に敬礼し、退出した。

 

 

「あんたらがラバウル六勇士のパイロットか…はぁ…今日の護衛戦闘機隊の連中か…」

 

 

「おれたちみんな…おかしくなっているのと違うかしら…」

 

 

「まぁな…」

 

 

「必ず死ぬ人間を運ぶんだ…仕方ないよ…」

 

 

「その死ぬ為に飛ぶ飛行機を造った奴は、もっとおかしくなっとんのかね…」

 

 

山岡機長と隊員たちの表情が暗くなりながら呟いた。

 

 

「今さらなにを…!?」

 

 

「えぇい!…みんなこの戦争で死ぬ!早かれ遅かれ死ぬと思っている!だから…どうせなら体当たり!…なんて事になる!でもな野上はん、決死の覚悟と戦うのと、必死がちゃうまっせ!ロケット特攻機の桜花は、人の命を部品にしてしもうたからな!」

 

 

「…決死と…必死…」

 

 

「みんな死んじまっては、戦にならんよ…」

 

 

「…そうですね…」

 

 

山岡機長の言葉で一理あった。

開戦前後、優秀な日本の兵士たちは戦争が長引く中で戦場の至るところで散って逝った。

 

ラバウル六勇士の隊長の厚木十三と大賀虎雄。桜井洋介の弟、桜井勇介。虎雄の妹、大賀晴香も戦場で戦い、散って逝った。

 

皆の気持ちが沈む時だった。

 

 

「ん…?」

 

 

「…え…?」

 

 

基地郊外から琴が奏でられている音だった。

気になった搭乗パイロットたちは兵舎から出て耳を傾けた。

 

 

「琴の音だ…」

 

 

「桜花搭乗員の誰かと知り合いらしい……お別れに弾いているのか……」

 

 

「…なんだか寂しい曲だな…あんたの知り合いか…?」

 

 

「…いいや、おれに女の友達なんか一人もいない。そんな暇なかった…」

 

 

山岡の質問で野上は否定した。しかし、洋介はその言葉に疑問を感じた。

 

 

「野上さん、この戦争にならんかったら何になっていた?」

 

 

「それが、皮肉なことにロケット技師……」

 

 

「「「 え…? 」」」

 

 

野上の言葉に皆が反応、彼は月に顔を向けて語った。

 

 

「敢えて…桜花にか…」

 

 

「せめて、あと30年生かしてくれたら……おれは、あの月までロケットを打ち上げてみせる、それがおれの夢だった……」

 

 

「この戦争で死んだ、世界中の若いのがあと30年生きていたら……みんな、色んなことをやったろうになぁ……」

 

 

この戦争で散った者たちは、どんな未来を作りたかったのか。

進次郎は考えつつも、終戦まであと10日近くも明日はある地獄が迫っていることはまだわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ海軍 第58機動艦隊 空母エセックス 

 

 

月明かりが照らすアメリカ艦隊にて、一角の空母エセックスの格納庫で、パトリック・フォードことパンサーは、バッキー・S・五十嵐の愛機F8Fベアキャットをメンテナンスをしていた。

 

 

「…はぁ…」

 

 

「パンサー!」

 

 

「…っ!バッキーさん…」

 

 

「取り敢えず一休みしとけ、コーラを持って来たから一緒に飲もう!」

 

 

「はい!」

 

 

パンサーはバッキーからの差し入れのコーラを飲んだ。

 

 

「…はぁ……」

 

 

「どうしたのですか…?」

 

 

格納庫から左舷デッキに移動して、バッキーは何処となく、ため息をついた事にパンサーは気づいた。

 

 

「もしも、戦争が無ければ…僕は…どうしていたのやら…」

 

 

「…戦争が無ければ…ですか…考えたことがなかったな…」

 

 

パンサーは黒人であり、人種差別で家が貧しく、差別間が少ない軍隊に徴兵された身分だった。入隊して整備関連の任務に就いた。少しでも生存制を高める為と除隊後に社会に馴染める様に整備員になった。

 

 

「…君も考えるなぁ…」

 

 

「バッキーさんは…?」

 

 

「…戦争がおわったら…ハワイの実家に帰り、親の農園を継ぐつもりだ。なんせ、さとうきびとパイナップルとバナナを育てているからな。」

 

 

「…アイリッシュ隊長やステラさん…いや、戦争で死んだ方々が…30年…生きるチャンスがあれば…」

 

 

「……そうだな……」

 

 

二人が感傷に浸っている時。

 

 

「バッキー、パンサー。感傷に浸っている時に済まない」

 

 

「ランバート!」

 

 

ランバート中尉、日本の陸海軍機を撃墜した凄腕のエースパイロット。写真を片手に眉を潜めて二人の元に赴いた。

 

 

「本日の戦闘で現像した写真を見てくれ」

 

 

バッキーとパンサーは写真を目の当たりにした時、バッキーの身体が震えた。

 

 

「…桜花だ…人間ロケットの桜花か…」

 

 

「そうだ…、ロケット特攻機の桜花だ!この艦隊の犠牲を防ぐために、母機から切り離す前に叩き落とすぞ!クレイジーな連中を!」

 

 

「わかった、相棒!」

 

 

「…クレイジー…クレイジーだな…こんな兵器は…」

 

 

パンサーは桜花の写真を握りしめながら呟いた。

 

 

日本近海の南西諸島にて、沖縄へ航行する強襲揚陸艦が、日本海軍潜水艦の魚雷により沈没。

 

戦車乗員、アメリカ陸軍大尉フィリップ・W・エヴァンス、ペアの陸軍上等兵ヴェン・タタンカは殉職した。

 

この時のパンサーとバッキーはこの後に知り、嘆き悲しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月6日 鹿児島、鹿屋基地

 

 

野上靖少尉は基地の一角にある丘で朝日を見つめた。

 

 

「野上さーん!出撃です!」

 

 

「わかった!」

 

 

進次郎の声に反応して、滑走路の脇に駐機する母機の陸攻に搭乗する前ー

 

 

「沖田少尉」

 

 

「はい…?」

 

 

「…この時に済まないが、琴を扱う女性がいたら、この包みを渡して欲しい…」

 

 

「わかりました!野上少尉、ご武運を!!」

 

 

「ありがとう!」

 

 

進次郎は桜花の母機である陸攻に搭乗する野上から包みを受け取り、彼に対して敬礼。

 

陸攻の発動機が轟き唸り、滑走路を走り離陸、開聞岳へ向かって飛行した。

 

 

「べらぼうめ、進次郎!!零戦に搭乗しろっ!!」

 

 

「はい!!」

 

 

整備員のトチローの怒号で愛機に搭乗した。護衛の零戦、紫電が滑走路を走り、洋介と進次郎の番が回ってきた。

 

 

「桜井洋介、行きまーす!!」

 

 

グオオォーン

 

 

「沖田進次郎、発します!!」

 

 

グオオォーン

 

 

 

 

 

護衛戦闘機 零戦24機 

 

      紫電16機

 

    一式陸攻24機

 

      桜花24機

 

 

 

 

 

神雷部隊が鹿屋基地から出動、鹿児島の開聞岳を越え、敵のアメリカ艦隊に向けて出撃した。

 

 

「桜井さん、護衛戦闘機で紫電が混じっていますよ!」

 

 

『「戦闘機40機の内、紫電は16機。だが、航続距離が短い局長戦闘機だ。最後まで護衛できるのは我々24機の零戦隊になる!」』

 

 

「84機の編隊で、敵機動部隊の元に近づけられるのやら……」

 

 

進次郎が呟いていると、陸攻と他の戦闘機の発動機が不調で唸りつつあった。

 

 

「またか、…時々息を点く…」

 

 

『「…仕方ない…最近の飛行機は女学生と中学生が部品を作って、組み立てている…元の材料は鍋やオカマでございまぁ~す♪」』

 

 

「だ~はははは~♪」

 

  

洋介の精神的な傷なのか、ラバウルとトラックの女装で磨きが掛かり、女性らしくなっていた。

 

その光景を無線で聞いた進次郎は爆笑した。

 

 

「ブリキの戦車に比べれば、飛行機はマシですかね…あ…(しまった…)」

 

 

戦車の言葉で気まずいことをした。洋介の弟、桜井勇介は戦車の車長、虎雄の妹、大賀晴香はドイツのベルリン攻防で戦死した。

 

 

「『気にするな、…戦争がおわったら、僕は必ずドイツに赴き、墓に花と線香を上げてやる…それが、せめてもの勇介と虎雄の妹、晴香さんの慰めだ…』」

 

 

「…はい…それに、これまでに散って逝った厚木隊長と虎雄さんの元に行かねばなりません…愚かな兵器を扱う犠牲になった者たちの…」

 

 

「『…そうだな…設計した技師たちも悲しかったに違いない…兵器を扱う人間も部品の一部だ…』」

 

 

暫く飛行していると、紫電隊が増槽を落下した。

 

 

「桜井さん、紫電隊が増槽を落下しています。引き返すんでしょうか?」

 

 

「『ここから引き返さんと、燃料切れになるからな…ん?』」

 

 

増槽を落下した紫電隊は、このまま飛行を続行した。

 

 

「『…いや、燃料が空になったんで捨てたんだ…』」

 

 

「…すまんな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ海軍 第58機動艦隊

 

『敵編隊、北方20度、高度4000に接近!!直衛戦闘機隊は直ちに発進せよ!!』

 

 

海上の濃霧の中、各艦艇のレーダーが日本機編隊を探知、警戒のサイレンが鳴り響いた。

 

 

空母エセックスから戦闘機が発艦、ランバートのヘルキャット、バッキーのベアキャットが大空を飛び立った。

 

 

「来たか、イカれたやつらめ!残らず叩き落としてやる!!」

 

 

「『俺も同じだ!このベアキャットでサムライを今度こそ落としてやる!!』」

 

 

バッキーとランバートの戦闘機が発進、発艦した空母の飛行甲板からパンサーが見送りながら、空を見上げた。

 

 

「バッキーさん、ランバートさん、みんな…武運を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

神雷部隊ー

 

 

護衛していた進次郎は、野上少尉が搭乗する陸攻の山岡機に気配を感じ、近付いた。

 

 

「(野上さん…?)」

 

 

進次郎が風防越しで機銃座を覗いた時、タイミングが早いのか、野上が自信の棺桶である桜花に搭乗した。

 

その光景を目の当たりにした進次郎は敬礼。そして、列機である洋介の元に戻った時ー

 

 

「『敵機だっ!!』」

 

 

「(はっ!?)」

 

 

「『右上空30度敵機!!全機、戦闘態勢に入れ!!』」

 

 

紫電隊が次々と来襲する敵機の大群に向かって飛行。

 

 

「『9時方向から敵機だ、太陽から突っ込んで来るぞ!!』」

 

 

「了解!!」

 

 

進次郎と洋介は機体の増槽を捨て、太陽から突飛来する敵機の迎撃に向かった。

 

 

ダダダダダ ドカアァン  「よしっ!」

 

 

「『指揮官機が被弾…ちくしょう!!』」

 

 

進次郎と洋介が敵機を撃墜した時、桜花の母機たる指揮官機が火を吹き、撃墜。

 

 

「『リーダー機を撃墜!うん、母機共がパニックになっているぜ!!…さて、どこにいるんだ!!桜井洋介!!』」

 

 

バッキーが指揮官機を撃墜した時、陸攻部隊が混乱に陥ったのを見計らい、宿敵である洋介を探した。

 

空域は大混線となり、敵味方の戦闘機がお互いに被弾、撃墜されて海に落下した。

 

 

ダダダダダ  ドカアァン 

 

 

「(どこだ…?野上さんの母機の陸攻はどこだ…?)」

 

 

進次郎は敵機を撃墜しながら、山岡機を探した。

 

 

「(そうだ、桜井さんみたいに精神を集中すれば……)」

 

 

以前に進次郎は、勘が鋭い洋介のやり方を真似をした時、気配を感じた。

 

 

「(どこだ……どこに…?…いたっ!!)」

 

 

混乱の中で山岡機の陸攻は積乱雲の影に向かって飛行した。だが、後に連れて一機のヘルキャットが追いかけて来た。

 

 

「やらせるか!!」  ギュイイイィン

 

 

進次郎は速度を加速、操縦桿を握りしめながら山岡機を追い掛けた。

 

 

「『進次郎、今…はっ!?』」

 

 

洋介も進次郎の後に向かうにも、別方向から敵機の機銃掃射を回避、発砲した方向にはベアキャットを扱うバッキーが飛来した。

 

 

「(やはり来たか、バッキー・五十嵐…64型、力を貸してくれ!!)」

 

 

洋介は闘志を燃やし、愛機と共にバッキー機に挑んだ。

 

 

そして、進次郎は山岡機を追跡するヘルキャット、ランバート機を照準に捉えた。だがー

 

 

ダダダダダ シュッ

 

 

「くそっ!!雲と陸攻の煙で照準が捉え難い!!」

 

 

さらに、陸攻の回避とランバートが扱うヘルキャットの左右上下の機動により照準が捉え難かった。

 

陸攻の両翼が被弾してさらに炎上、操縦席にも被弾しつつも飛行していた。

 

「今だっ!!」 ガチャガチャ 「ん…しまった…弾切れだ…」

 

 

愛機の機銃弾が切れた時、操縦桿を強く握りしめた。

 

 

「……かくなる上は……」

 

 

この時、進次郎は決意した。敵機に体当たりしてでも守ることを心の底から覚悟した。

 

 

「(…桜井さん…トチローさん、幸吉、新一郎兄ちゃん…さようなら…厚木隊長と虎雄さん、純子さん…今、そっちに……)っ!?」

 

 

進次郎が加速スロットルを全開にした時、気配を感じた。

別方向から零戦が接近、機銃を発砲せずヘルキャットに突入、空中で爆発した。

 

 

「(…土方さんが…)」

 

 

進次郎は気配を感じた。体当たりした零戦のパイロットは、出撃前夜に兵舎で頭部を負傷し、包帯で巻かれた土方少尉だった。

 

 

山岡機が火に包まれた頃、アメリカ艦隊を視認。野上少尉が搭乗した桜花が切り放された時、ロケットが点火。艦隊に向けて発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空母エセックス、飛行甲板ー

 

 

 

「『敵一機、高速で接近!!』」

 

 

「なっ…なんだって!?…」

 

 

各艦艇、本艦の右舷から高角砲、機銃が放たれた桜花に狙いをつけるも、速すぎて当たらなかった。

 

 

「銃身が焼き付いた!!パンサー、予備の銃身を……!!」

 

 

機銃要員が言っている間に、桜花はパンサー、バッキーの帰るべき場所の空母エセックスに命中した。

 

 

命中した衝撃で、パンサーが甲板で倒れた時、音が揺らいでいた。

 

 

「…あれが…桜花…人間爆弾…なのに…音速ってヤツを超えたのか!?…音があとから来た…」

 

 

パンサーの音速により、身体が震えていた。しかし、震えるのは束の間、艦内が次々と誘爆、大爆発を起こし轟沈した。

 

パンサーは放り出されて海に漂流、1時間後、駆逐艦に救助された。

空中戦でバッキーは引き分けに終わり、帰るべき空母が沈められ、別の空母に着艦した。

 

 

轟沈した海域で煙が上がり、遠くから見ていた洋介と進次郎は敬礼。残存した戦闘機隊と共に鹿屋基地に帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿児島、鹿屋基地ー

 

 

正午近い時刻に、進次郎と洋介は基地の滑走路に着陸した。愛機から降りた時、なにやら基地中が騒いでいた。

 

 

「基地中が騒いでいる…一体何が…?」

 

 

「進次郎!!洋介!!てぃへんだぁ!!」

 

 

「っ!?どうしたのですか…トチローさん?」

 

 

「ひっ…ひ…広島に、新型爆弾が落とされたってんでぃ!!」

 

 

「な…なんだって…!?」

 

 

進次郎はトチローの言葉に驚愕した。

 

8月6日、広島に新型の原子爆弾が投下され、都市は計り知れなく壊滅、夥しい死傷者が出た。

 

その中で厚木十三の妻、厚木柚子と産まれたばかりの娘、成美も亡くなった。

 

看護婦、勇介の恋人だった西澤澪、友人の沖田新一郎、部下の洋介と進次郎、金城幸吉は嘆き悲しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2日後、ハワイにて、ウィリアム・J・スパロウの家族であるキャサリン・スパロウと双子の愛娘であるエマとエミリーが日本軍の不発弾に触れ殉職。

 

知らせを聞いたウィリアムは沖縄の砂丘で嘆き、悲しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月9日、ソビエトロシアが日本に宣戦を布告。

 

早朝、洋介と進次郎は司令から新たなる転属命令が下された。

 

 

「北海道の千歳基地へ転属ですか…?」

 

 

「そうだ、本日付けでソビエトロシアが宣戦したため、満州は当然、南樺太まで押し寄せて来る。戦力が九州に集中している為に北海道の戦力はこの通り手薄だ、二人は千歳基地で、南樺太及び千島列島を守備して貰いたい!」

 

 

「「 はっ!! 」」

 

早速、進次郎と洋介、トチローの三人は千歳基地の転属の準備を急いだ。

 

荷物を整え終え、零戦の発進前の点検の時に零観のパイロット、沖田新一郎大尉と、ペアの金城幸吉一等飛行兵曹の姿があった。

 

 

「ん…兄ちゃん!!幸吉!!」

 

 

「おっ、進次郎か!」

 

 

「進次郎さん、洋介さん、トチローさん!」

 

 

「沖田さん、幸吉!」

 

 

進次郎は、兄の新一郎とペアである幸吉の、これから呉鎮守府へ飛行、最重要書類を空輸する任務に就いた。

 

 

進次郎と洋介は、新一郎と幸吉を見送りに水上機発着の桟橋に向かった。だが、トチローは二人の整備で見送りに行かなかった。

 

 

 

水上機離発着場

 

 

 

「沖田さん!幸吉!」

 

 

「兄さん!幸吉!」

 

 

「ん…桜井、進次郎…どうしたお前ら、お前たちも北海道の千歳基地の転属命令が出たんじゃないか?」

 

 

「それもそうですが、沖田さん。俺と進次郎がさっき参戦したロシアの戦いに生還して、そしてこの戦争が終結したら。腹一杯に飯を食いましょうね!」

 

 

「そうだよ兄さん!幸吉!戦死した厚木隊長と家族、虎雄さんと妹さんの慰霊も兼ねて!」

 

 

それを聞いた新一郎は沈黙、そして幸吉と飛行衣服と航空備品、飛行帽を被り零観に搭乗した。

 

 

「桜井洋介中尉、沖田進次郎少尉!戦争終結したら俺の家で海を眺めながら食おう!ラバウルの思い出を語りながらな!!」

 

 

「「 はい!! 」」

 

 

「洋介さん、進次郎さん、オラのアイヌのチタタプゥを手伝って下さいよ!」

 

 

「おぅ、わかった!!」

 

 

「はははっ幸吉!兄さんを頼んだぞ!!」

 

 

幸吉の頼みを聞き入れた進次郎は笑みを浮かばせた時、零観のエンジンが唸り、一気にプロペラが回転した。

 

 

「敬礼ーっ!!」

 

 

洋介と進次郎は零観の新一郎と幸吉機に対して敬礼を行い、出撃する新一郎と幸吉は敬礼、笑みを浮かばせながら遥かなる大空へ羽ばたいた。

 

だが、この場にいた進次郎は兄の新一郎と言葉を交わしたのが最後になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てぃへんだぁ!!広島に続き、長崎も新型爆弾が落とされたぞ!!」

 

 

「何ですって!?」

 

 

「さっき幸吉からの無線で、B-29を迎撃に向かう連絡を受信したが、それっきりプツリと切れた……」

 

 

「はっ…?もしや……」

 

 

進次郎は不安を抱きながら水上機関連の飛行航路を調べた。飛行航路には零観の予定が記されていなかった。

 

 

そして、進次郎と洋介トチローは零戦64型に搭乗、滑走路を走り離陸、向かうは転属先の千歳基地へ向かった。

 

だが、進次郎はどこか胸が騒ぎながら、隊長の洋介に申告した。

 

 

「あの、桜井さん...! 不謹慎ですが、ちょっと呉上空を飛行してもいいですか…?」

 

 

「『ん……?それは時間が…』」

 

 

進次郎の言葉で洋介は悩みつつあったが

 

 

「構いやせん、俺っちも新一郎と幸吉が気掛かりだ!航路変更して広島方面へ向かえ、洋介隊長!」

 

 

「『トチローさんが言うならば…これより、広島方面へ飛行する!!』」

 

 

「「 了解!! 」」

 

 

洋介機と進次郎機は広島方面へ飛行した。広島市上空付近に差し掛かった時、市街の惨状を目の当たりにした。

 

 

「(…たかが…一発の爆弾で壊滅するとは…ピカって奴は…)」

 

 

そして、2機は呉鎮守府上空を飛行、水上機専用の桟橋に幾つもの水上機を確認した。

 

 

「トチローさん……どうですか…?」

 

 

「……進次郎…残念だが……新一郎と幸吉の零観がねぇ…」

 

 

進次郎の後部に座っていたトチローが双眼鏡を握りしめながら残念な言葉を聞き入れた。

 

 

「……そうですか…桜井さん…千歳基地へ向かいましょう……」

 

 

「『……進次郎……これより、……桜井小隊は厚木基地を経由して北海道、千歳基地へ飛行する!!』」

 

 

「了解!!」

 

 

洋介とトチロー、そして進次郎の考えは、沖田新一郎と金城幸吉は長崎上空にて、原子爆弾によって命を落としたのであった。

 

戦死した二人は二階級特進して中佐、飛行兵曹長になった。

 

進次郎たちは飛行ゴーグルを目元に被せながら涙を流し、北海道の千歳基地に向かい、飛行した。

 

 

 

 

 

 




有人ロケット兵器の歴史は、束の間の夢の如く、儚く短かった。

太平洋では、日本の桜花だけが戦場を掛け、血を流して死んだ。そして戦後、生き始めたのは巨大な熱核誘導ロケット核ミサイルだ。

世界が破滅する日、その瞬間のために息を潜めている。彼らには、心がない…

そして、北の地に向かって飛んだ進次郎たちは、最後の戦いに直面した。
君は、生き延びることができるのか…?
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