ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第25話 終戦の蛍火

 

 

 

 

 

8月11日ー

 

 

北海道、千歳基地から航空機が出撃。

 

 

 

 

 

零戦64型 2 (ロケット弾8×16)

 

哨戒機 東海 1 (250キロ爆弾×2)

 

南樺太、陸軍落合飛行場から30機が出動。

 

 

 

 

向かう先は北海道、宗谷岬を越えた南樺太、恵須取。

 

西海岸に続々とソビエトロシア軍が歩兵を載せた上陸舟艇で上陸。

 

 

 

北から歩兵、戦車と装甲車を備えた機甲部隊。

 

 

 

 

戦闘機と爆撃機などの約50機の編隊が飛来した。

 

 

 

「あれがソビエトロシア軍の主力戦闘機ミグ…いよいよか…」

 

 

 

今まで米英の航空機と戦っていた進次郎は、初めてソ連空軍の主力戦闘機と対峙するのを見て手が震えていた。だがー

 

「あぁっ!!」

 

 

敵ソビエトロシア軍は南の真岡、大泊へ避難する民間人を襲撃、男性は愚か、年寄りと女性、まして子供まで虐殺行為を行っていた。

 

 

無抵抗の証である白旗を揚げても無差別に難民を射殺、略奪や強姦行為をしていた。

 

 

「おのれぇ…白旗揚げても…武器を持たぬ民間人を襲うのか!!」

 

 

「『進次郎!やることはただ一つ、ソビエトロシア軍を撃退するぞ!!』」

 

 

ギュイイィン

 

 

 

「桜井さん……了解!!」 ギュイイィン

 

 

 

虐殺の光景を目の当たりにした洋介と進次郎は愛機の増槽を落下、速度を加速してミグ戦闘機隊の背後にくっ付けた。

 

「墜ちろ!!」 ダダダダダ   ドカアァン

 

 

スロットルレバーの引き金を絞り、発砲する。ミグの機体から火が吹き、落下した。

 

 

 

「(ロシア機ミグ、初撃墜っ!!)」

 

 

 

ミグの構造は金属と木製、フラップとラダー部分は布張りになっており。かつての初期の零戦の様に防御は無かった。

 

 

 

隊長の桜井洋介も、敏腕の腕で何機ものミグを撃墜、そして背後に敵機が付かれて撃ってきても、鋭い勘で機体にかすり傷程度で回避、返り討ちに撃墜した。

 

 

しかし、進次郎から見た洋介の姿はどこからかオーラが漂い、ミグを一機、また一機を地上に叩き落とした。

 

洋介機は急降下し、地上のロシア戦車T-34を標的に捉え、ロケット弾を8発発射した。放たれたロケット弾は8輛戦車の砲搭に命中、撃破。

 

 

「(さすが桜井さんだ、オレも!)」

 

 

それに続いて進次郎も急降下、残存する戦車と装甲車を目標に捉えロケット弾を発射、捉えた戦車と装甲車を撃破。

 

だが、二人の戦いが続いていた。低空飛行で歩兵に対して機銃掃射、次々と将棋倒しに倒れ、恐怖に震えたソ連兵は逃亡が続出、機銃を発砲するにも弾切れ。

 

洋介機は原っぱに着陸、零戦から降りて四式小銃と南部拳銃で手向かうソ連兵を撃ち、軍刀鷹狼で斬り倒した。

 

進次郎も続いて着陸、航空搭載機銃で発砲、次々と薙ぎ倒した。

 

ダダダダダ 「民間人を襲った代償だ!!一人足りとも生きて還さん!!」

 

桜井洋介と沖田進次郎の二人が残存するソビエト歩兵を殲滅。

 

上空で飛行するパイロットたちからは地上に鬼神が現れたのを実感した。

艦船を爆撃した東海の機長、海人少尉は二人に発光信号を送った。

 

 

『「敵の第二波の機甲部隊が接近、直ちに空へ!!」』

 

 

「っ!?桜井さん、撤退です!!」

 

 

「了解した!!」

 

 

二人は急いで零戦に搭乗、すぐに離陸した。

 

夕陽が沈む頃、3機は北海道、千歳基地へ帰投する。

 

基地の滑走路に着陸すると、脇には秋山敏郎整備班長と新入りとして派遣されたパイロットの里見一平一等飛行兵曹が出迎えにきた。

だが、洋介と進次郎の姿は、飛行服と帽子はロシア兵の赤黒い返り血でびっしょりだった。

 

 

「…桜井中尉……沖田少尉…」

 

 

「おめぇら、空だけじゃなく地上でも闘ったのか…すげぇ返り血だ……」

 

 

 

「…トチローさん……」

 

 

「…すいません…心配掛けて。」

 

 

「ちっ…全くだ…飯の前に風呂済ましてこーいべらぼうめ!!」

 

 

「はい!!」

 

 

進次郎と洋介は基地の浴場で身体を湯船に浸けて揺らした。

 

 

「…はぁ…桜井さん……」

 

 

「…あぁ…南樺太は…地獄だ…ドイツのベルリンで戦死した勇介と晴香さんも…あの光景を目の当たりにしたんだろうな……」

 

 

「桜井中尉、沖田少尉!!今から背中をお流しします!」

 

 

「あぁ、済まないな……」

 

 

二人が樺太の惨状を呟く中、里見一平が手拭いを持って入場。

 

 

彼は進次郎の二つ下の予科練後輩、受領機体は紫電11型。航続距離が短い局長戦闘機の為、樺太へ飛行せず、北海道防空に留まった。

 

 

「…少尉……すいません…」

 

 

「…里見…構わない。北海道の防空で空中と基地に待機するのも大事な任務だ!いざとなれば、おれたちも手を貸すぜ!」

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

8月14日 襟裳岬沖 ー

 

 

 

 

「海人少尉、南東に敵機発見!!およそ室蘭へ向かっています!!」

 

 

 

「なんだと!?庄吉、至急基地に連絡を!!」

 

 

 

「はい!!」

 

 

 

 

対潜哨戒機東海の海人機は敵潜水艦の哨戒中、空母から発艦し爆装したF4Uコルセア、SB2Dヘルダイバーの編隊を確認、基地へ連絡した。

 

 

 

 

 

千歳基地 ー

 

 

 

空襲のサイレンが鳴り響き、飛行服を纏った進次郎と洋介は、里見が搭乗する戦闘機に駆けつけた。

 

零戦と紫電の発動機のプロペラが回転する戦闘機の操縦席に座った。

 

 

 

 

「桜井洋介、行きまーす!!」

 

 

「沖田進次郎、出ます!!」

 

 

「里見一平、発進!!」

 

 

 

三機は濃霧が漂う室蘭へ向けて迎撃に出撃。

 

 

 

室蘭上空 ー

 

 

 

「いた、敵機だ!!」

 

 

 

「『全機に告ぐ、米軍機と共に英軍の機体も確認!!国籍マークは日の丸と酷似しているが、同士討ちは避けろ!!』」

 

 

「言われなくとも!特に里見、気をつけろ!!」

 

 

「『 はっはい!! 』」

 

 

ラバウルでいやほど戦った進次郎は敵機の国籍マークを把握しているにも関わらず、新入りの一平は冷や汗を掻いていた。

 

 

三機は室蘭を空襲する米英の編隊に突入、進次郎と洋介は次々と戦爆機を撃墜。

 

 

「敵機ども、よう目の玉を開けて見腐れ!!日本海軍パイロットの本当の実力を!!」

 

 

室蘭の空にて、進次郎は敵機を北海の地と海へ死に追いやった。

危機を感じた米英機は適当なところに爆撃を投弾、濃霧が漂う太平洋の母艦へ向けて引き返した。

 

 

「『全機集合!!基地へ帰投する!!』」

 

 

「「『 了解!! 』」」

 

 

 

 

三機は千歳基地に帰還、司令官の天沼俊介大佐に報告。

 

 

 

「桜井中尉、コルセア5、ヘルダイバー5機を撃墜。」

 

 

「沖田少尉、コルセア1、ヘルダイバー8機を撃墜」

 

 

「里見一飛曹、コルセア1撃墜。」

 

 

 

「うむ、よくやった。この北海道にてラバウル勇士の桜井と沖田、素晴らしい戦果を挙げていることを誇りに思う!」

 

 

「「 はっ!! 」」

 

 

進次郎たち三人は司令室から退出、格納庫へ向かった。

 

 

「やったぜ!おれは初めて敵機を撃墜したぜ~♪」

 

 

今まで里見は実戦に参加するも、敵機を落としたことが無かった。本日の迎撃で初撃墜をしたことで上機嫌で舞い上がっていた。

 

 

「桜井中尉、沖田少尉!あなたたちの経験と撃墜は及びませんが、必ず二人の期待に応えるパイロットになりますよ~!!」

 

 

「里見!!」

 

 

椅子に座った進次郎は立ち上がり、里見の飛行衣の襟首を掴み上げた。

 

 

「簡単なことを言うなっ!!この馬鹿らしい戦争で、おれと桜井さんの様な殺戮のパイロットになりたいのか!?」

 

 

「…は…少尉…?」

 

 

里見からの視点では、進次郎はどことなく疲れ、哀しんでいた。

 

初陣のソロモン海戦で幾人の敵機を撃墜して以来、自身の手は拭い切れないほど血に染まっていた。

 

そして、護衛していた仲間、助けられた筈の味方を見殺し、45年から自身の関わる人物が、それぞれの戦場で散って逝った。

 

 

 

「…勝ち負けとは関係ねぇ……敵と戦っていることは…人を殺している事だ!!調子に乗っていると、いずれ誰か仲間を失う…自分自身が死ぬぞ!」

 

 

 

「…少尉………」

 

 

「…あっ…く……すまん……一人にしてくれ……」

 

 

 

「…少尉……」

 

 

 

里見の襟首を放して謝罪、その場をあとにした。

 

進次郎は草原で寝転び、空を見上げた。

 

 

「…兄ちゃん…純子さん…」

 

 

自身の戦死した兄と、呉で別れた恋人の名前を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月15日、正午から重大なラジオ放送が始まる為、進次郎と洋介たち飛行パイロット、トチロー整備員や基地関係者がピストに集合整列。

 

 

「これより、天皇陛下による重大放送が流れるそのお言葉を心して聞くように!」

 

 

『はっ!!』

 

 

正午、台に置かれたラジオから国歌の君が代が流れ、天皇陛下による肉声が流れた。

 

 

 

 

 

 

『朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク

朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ

 

 

 

 

 

 

       中略

 

 

 

 

 

 

然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス

朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ』

 

 

 

 

玉音放送と称された内容は普段使わない文章など難儀な言葉ばかりであった。

 

進次郎や兵士たちは困惑、どよめくばかりであったが、天沼大佐から言葉を告げられた。

 

 

 

「……諸君、辛く耐え難いが……戦争が終わり……日本は降伏した……」

 

 

「…っ!?…司令…つまり、負けたの…ですか…?」

 

 

「そうだ、…日本は…負けた…」

 

 

司令官が発した言葉を聞き、ある者は膝をつき、頭をさげた。ある者は嘆き、ある者は泣き出す。ある者は悔しさの余り叫んだ。

 

 

建前に凝り固まった日本の武士道は、この時点で精神も力も完全に叩き潰されたのであった。

 

 

沖田進次郎は自身の愛機へ歩き、機体の胴体を撫でた。

 

 

 

「戦争が…終わったんだ…日本は…終わりだ…」

 

 

 

「進次郎!!」

 

 

 

呟く中で洋介が赴き、語った。

 

 

 

「…桜井さん……日本は戦争で負けました…これから、アメリカとイギリスどもに蹂躙されますよ…」

 

 

 

「わかっている。戦争で負けたと言えども、僕たちは生きている。あの戦争で…死んだ者、この手で命を奪った者たちの分も、罪を償いながら、生きなければならん…ラバウル六勇士の言葉を忘れるな!」

 

「……はいっ!!」

 

桜井洋介はこの状況でも前向きであった。この戦争で弟の勇介はベルリンで戦死、姉の志帆は沖縄で行方不明。

 

だが、戦争が終わり、妻の雪は未だに意識不明、娘の亜弥の家族の元に帰れるのを喜んでいた。

 

 

 

「うぉーい!!洋介、進次郎~!!」

 

 

 

「…トチローさん……!?」

 

 

 

「戦争が終わったんでい!!忘れたくとも忘れられないことがあるかも知れんが、酒を飲もう!!」

 

 

 

「「 了解です!! 」」

 

 

 

その前に、天沼司令官がパイロットと整備員、基地関係者を招集、軍旗を奉焼。

 

 

 

「これまで、ご苦労だった」

 

 

 

光景を目の当たりにした兵士たちは涙ながら敬礼した。これが、敗戦する意味だった。

 

その夜、進次郎と洋介はトチローの誘いに乗り、兵舎で宴会が始まった。

 

泥酔した大先輩トチローの上海から重慶、そしてハワイなどの武勇伝。

 

洋介は酔いしれながら、故郷に帰ったらの将来を語っていたりした。

 

進次郎は、酔いを少しでも醒めるために外に出た。基地の外の市街地は灯火管制が解除され、一軒一軒が明るかった。

 

 

 

「綺麗だ…蛍みたいだな…ぬちどぅ宝…」

 

 

 

長崎の原爆で亡くなった金城幸吉の言葉を思い出しながら呟いた。

 

 

 

翌日、基地では忙しい日々が始まった。

 

下士官、士官も関係なく重要書類を焼却、武装を解除、飛行機の武装の撤去と燃料を引き抜いた。

 

 

「もう、二度と空を飛ぶことはないんだな愛機よ…」

 

 

中には帰郷するために荷物を整え、この食料難で基地の糧食を頂戴する者も続出。

 

大抵の作業を終えた進次郎は草原に寝転び、空を見上げた。

 

「…父ちゃん…母ちゃん…みんな…無事かな…純子さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月17日 ー

 

 

 

 

 

「大変だ!!ソ連軍がまだ進行しているぞ!!」

 

 

「何だって!?」

 

 

終戦を迎えても、ソビエトロシアは樺太の侵略を続けている。

 

未だに樺太の住民は真岡や大泊に押し寄せながら戦線を突破。

 

千歳基地は緊迫感が漂う中で海軍大佐、天沼俊介の命令が進次郎たちパイロットたちに下された。

 

 

「日本海軍のパイロットに自衛の戦闘命令を下す、ソビエトロシアの進攻を延滞、防衛せよ!!」

 

 

「自衛の戦闘…何ですかそれは!?」

 

 

「私にもよく分からん。だが、これは本部からの命令だ!」

 

 

「つまり、住民を襲撃する敵を殲滅せよってこと、とことん戦いますぜ!」

 

 

海人少尉が拳を手に打ち込みながら唱えた。

 

 

「あぁ、遠慮なくぶち咬ましてこい!!」

 

 

「「「 了解!! 」」」

 

 

 

沖田進次郎、桜井洋介、海人拓海以下2名、里見一平は飛行服を着用、解除した武装の拳銃と軍刀を纏った。

 

 

格納庫では急ピッチで戦闘機と哨戒機の機銃弾とロケット弾、爆弾など武装を施し、燃料を給油した。

 

 

機体の作業を終えた時、司令から攻撃目標の指示を受けた。

 

 

 

哨戒機 東海 海人拓海少尉以下二名 攻撃目標、南樺太 

 

 

 

零式艦上戦闘機64型 桜井洋介中尉 沖田進次郎少尉 攻撃目標 千島列島 占守島

 

 

 

紫電11型 里見一平一飛曹 北海道宗谷岬

 

 

「納得できません...! 沖田さん、機体を換わって下さい!」

 

 

 

北海道の宗谷岬の防衛を担うことになった里見は納得できない顔をしていた。

 

 

 

「馬鹿言うな里見…万が一ソ連が上陸したら、北海道の防衛は誰か担うんだ!」

 

 

 

「ぐ……」

 

 

 

「進次郎の言う通りだ里見、航続距離の短い紫電では、占守島どころか樺太まで片道飛行しか出来ないぞ。遠距離の飛行はベテランパイロットが最優先だ。戦争が終わっても自身の任務を全うするんだ!それに、自身の手を人間の血に染めるな。」

 

 

 

「……中尉……」

 

 

 

8月18日、深夜。

 

 

 

零戦64型が滑走路の脇に駐機、発動機の轟音を唸らす時、洋介と進次郎は再び操縦桿を握る操縦席へ搭乗した。

 

 

「桜井中尉、沖田少尉!ご武運を!!」

 

 

「一平、ありがとう。桜井洋介、零戦64型。行きます!!」

 

 

「お互いに任務を遂行するぞ一平!沖田進次郎、発進します!!」

 

 

基地の一平とトチロー整備員たちと関係者が帽子を振り、見送った。

 

 

 

千島列島の中間上空を飛行中、東の海と空から朝日が昇った。

 

 

 

「…空から見る朝日か…今、見られるのも最後だな……」

 

 

 

二機は一旦、幌筵島の飛行場に着陸、燃料を給油。完了次第、北方の島、濃霧が漂う占守島へ向かって飛行した。

 

 

 

飛行して3分後、島の竹田浜上空にソビエトロシア軍戦闘機ミグ10機がカムチャッカ半島から飛来した。

 

 

こうして、終戦直後で最初と最後の空中戦が始まった。

 

 

「墜ちろっ!!」 ダダダダダ  ドカアァン

 

 

『「そこっ!!」』 ギュオオオオオオオオン ダダダダダダ ドウウン

 

 

『「よしっ、最後の1機を撃墜!!」』

 

 

 

「桜井さん、さすがは新型ですな!……64型がもっと早く戦場に出ていれば…」

 

 

 

『「言うな進次郎、…戦争は終わった………だが、今は火事場泥行為の露助の進行を食い止めて、守備隊を援護、戦死した幸吉の故郷を守らねば!!」』

 

 

 

「ですね!あの世にいる幸吉が死んでも死にきれんですよ!!…あっ!あれは…」

 

 

「『敵の増援だ!』」

 

 

上空の敵機が殲滅寸前の頃、地上の戦車隊が爆撃機1機の襲撃を受けて危機に瀕し、気付いた洋介は爆撃機を目標に急降下して銃撃した。

 

 

 

『「クソっ装甲が厚い、流石は空飛ぶ戦車シュトゥルモビク、後部銃座も厄介だ………」』

 

 

 

「桜井さん、おれが囮になります!奴が反らした時にロケット弾を!!」

 

『「 すまん!! 」』

 

進次郎は機銃で威嚇、後部機銃座の機銃が進次郎に向けられた時、洋介はロケット弾の発射を準備、慎重に照準で捉え、射った

 

 

『「喰らえ!!」』 バシュッ ドウウン 『「やったか……ぎゃっ……」』

 

 

ロケット弾でシュトルモビクを撃墜。

 

だが、撃破した敵機の部品が飛び散り、風防の防弾ガラスに当たり、割れた破片が洋介の左目元を引き裂き、流血で意識が危ぶまれていた。

 

 

 

「桜井中尉っ!!…桜井さんっ!!」

 

 

 

『「……ぐ………左……目……やら……れ…た…」』

 

 

 

常に勘の鋭い桜井洋介が被弾している光景を目の当たりにした進次郎は震えた。

 

 

 

「幌筵島の飛行場へ、俺が誘導します!」

 

 

 

心配した進次郎は、洋介機の前方に出て飛行誘導を行った。

 

 

 

『「…頼…む…………すま…な……い…」』

 

 

 

洋介の意識が朦朧していると突如、北方特有の濃霧が発生、2機は進路を変えずに霧に突入した。

 

 

 

「桜井さん、…必ず、雪さんと娘さんの亜弥ちゃんの元へ帰って下さい!この空で死んだら、承知しませんよ!!」

 

 

 

「『…あぁ…必ず…雪と……亜弥の元へ……ザザ…ガガー……』」

 

 

 

「桜井さん!?」

 

 

 

洋介の無線から突如雑音が鳴った。濃霧から突き抜けたのは沖田進次郎少尉の零戦1機のみであった。

 

 

 

 

「……っ!?…中尉っ…桜井中尉……………桜井…さん………桜井さん……桜井さんっ!!……洋介さん!!…」

 

 

 

進次郎は無線が切れた空域へ引き返し、空と占守島、海上を至るまで探した。

 

だが、どんなところを探しても遺体どころか、機体の破片すら存在しなかった。

 

 

 

「……洋介さん…すみません…」

 

 

 

進次郎の零戦の燃料が危うく、北海道の千歳基地へ引き返した。

この時点で、日本海軍中尉、桜井洋介は千島列島上空で消息不明、戦死した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歳基地へ帰還した沖田進次郎は司令官に戦果を報告した。

 

そして、涙ぐみながら桜井洋介の最後を報告。

 

 

 

「そうか…沖田少尉。最後の任務でご苦労。さがって良し…」

 

 

 

海軍中尉、桜井洋介は二階級特進で少佐になった。

 

 

 

基地、格納庫 ー

 

 

 

「バッキャロー、進次郎!!なんで…なんで…洋介の野郎を…うぅ…」

 

 

 

「……トチローさん…すいません…」

 

 

 

 

「謝るなら軍法会議は要らねぇんだべらぼうめ!!……あいつは…帰るべき家族が…待って……うぅ……洋介…新一郎…幸吉…虎雄……十三おぉーっ!!」

 

 

 

 

 

整備員のトチローこと、秋山敏郎は一升瓶をがぶ飲みしながら涙ぐまし、戦場で戦死したパイロットたちの名前を叫び嘆いた。

 

 

 

 

 




終戦を迎えた戦いにて、六勇士で1、2を争う敏腕の戦闘機パイロット、桜井洋介が北方の海で戦死した。

生き残った沖田進次郎は戦後を迎えても、新たなる戦いが待つのである。

君は、生き延びることができるのか…?
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