ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第26話 別れと再会の決意

 

 

 

西暦1945年、9月3日。

 

 

 

 

東京湾にアメリカ海軍艦隊が停泊。日本政府の代表者たちは、アメリカ戦艦ミズーリに降伏の調印式でサイン。

 

 

こうして、軍人軍属、民間人約660万人が犠牲になり地獄の第二次欧州大戦、大東亜戦争が終結した。

 

 

 

 

初陣のソロモン海戦から終戦直後の占守島の戦いまでの生涯、米英露の敵機60機を撃墜した元日本海軍少尉、沖田進次郎は生死を共にした愛機、零式艦上戦闘機64型を、アメリカ軍が進駐する横須賀基地へ空輸。

 

 

 

その後現地で除隊、故郷の四国、高知の四万十村へ帰郷した。

 

 

「…帰ってきた…帰ってきたんだ…四万十村だ…」

 

 

予科練へ入隊してから6年振りに帰って涙を流している時だったー

 

 

「…兄ちゃんだ…兄ちゃんだー!!」

 

 

「兄ちゃーん!!」  

 

 

「…喜四郎……佳代子……」

 

 

村の道で進次郎の兄妹が彼に気付き、駆けつけお互いに抱きしめた。

 

 

「…喜四郎…佳代子…大きくなったな……」

 

 

「「兄ちゃん!お帰りなさい!」」

 

 

「……うん、ただいま……」

 

 

兄妹は進次郎の手を引っ張りながら実家に帰郷、両親と喜三郎、信子は喜び、涙した。

 

 

進次郎は家族に長男である新一郎の最期を伝え、遺影に線香を焚き、彼の冥福を祈った。

 

 

「兄ちゃん…おれは帰ってきた…兄ちゃんの分も頑張っていくよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半月後、枕崎台風が接近、九州から沖縄へ飛行するアメリカ海軍の哨戒機、PBY-5カタリナが消息を絶った。

 

パイロットのウィリアム・J・スパロウ少佐、トム・K・五十嵐少尉、従軍看護婦シャルロット・トラインが行方不明になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枕崎台風が通り過ぎた後、父親と漁業をしながら闇市で魚を販売しながら生活。進次郎の今まで軍隊生活で貯めた金と兄、新一郎の恩給で暮らし、生活に不満はなかった。

 

 

 

高知市、闇市 ー

 

 

 

「ふぅ~…台風で綺麗さっぱりだが…相変わらず、人が溢れているなぁ~」

 

 

 

焼け野原になった市街地では民間人と復員兵、浮浪している孤児、占領軍の兵士が彷徨いていた。

 

 

時間を持て余している時、進次郎は新聞を購入、ある記事を目の当たりにした。

 

 

 

「『特別輸送艦、乗組員募集』(…旧戦地にとり残された将兵の引き上げ任務か…)」

 

 

 

進次郎は両親に申告した。

 

 

「…人として、掘っとく訳にはいきません。復員の人員回収の作業に往かせて下さい!」

 

 

 

「「父ちゃん、母ちゃん!ぼくたちからもお願い!」」

 

 

 

「……わかった、気が済むまで回収してこい!」

 

 

 

両親の了承を得た進次郎は、2ヶ月振りに呉の旧海軍軍港に赴いた。

旧呉海軍病院付近を歩いている時、門の出入口である人物と再会した。

 

 

 

「…看護婦さんか…このご時世でも大変だな……うん?雪さん…!」

 

 

「あ…沖田君…!」

 

 

そう、呉の軍港空襲で意識を失った桜井洋介の妻、桜井雪だった。

彼女は先月18日、奇跡的に意識を取り戻した。

雪は看護仲間の西澤澪から終戦の状況を把握しながら、赤ん坊の亜弥を世話しながら看護婦に復帰。

 

 

病院の中庭、進次郎は苦し紛れながら、元上官であり、戦友である桜井洋介の最期を妻、雪に伝えた。

 

 

「…そうですか……」

 

 

「はい、…洋介さんは…最後まであなたたち雪さんと亜弥ちゃんに会うために、北の空に……雪さんの…洋介さんが居なければ……僕は生きていません……」

 

 

雪の目元から涙を流しつつも手ぬぐいで拭い

 

 

 

「…洋介さん……沖田君…また、わたしと娘の亜弥の元へ遊びにきて下さい。この娘に、お父さんの活躍した話しを…」

 

 

 

「ありがとうございます…、僕はこれから復員輸送艦の任務があります。では、失礼します!」

 

 

 

進次郎は雪に対して敬礼。病院から立ち去り、乗組員募集を募る桟橋へ向かった。

 

 

 

「えぇと…ここかぁ……葛城…?」

 

 

 

進次郎が辿り着いた桟橋の先は、呉軍港の防空時代、水上の飛行場拠点だった元日本海軍、航空母艦葛城だった。

 

 

「元日本海軍少尉、沖田進次郎。本日着任しました!!」

 

 

「ご苦労!この特別輸送艦葛城艦長だ。海外に取り残された将兵、民間人を収容するために連合軍から指定された輸送艦だ。一人でも多く迎えに行くように、励んで欲しい。」

 

 

「はっ!!任務遂行のため、全力を尽くします!!」

 

 

しかし、復員輸送の準備は難航した。葛城は以前の空襲で飛行甲板に大穴が空き、その影響でめくり上がっていたが、航行に支障はなかった。

 

 

「あ~あ…あの影響で修理不足だな……」

 

 

カキイィン

 

 

「痛ってぇ~!!」

 

 

「何つっ立っているんでぃべらぼうめ!!」

 

 

スパナを所持した江戸っ子口調の乗員が、進次郎の後頭部を打った。

 

 

「お〜痛てぇ〜ん…?江戸っ子口調…スパナ…もしや!?…トチローさん!!」

 

 

進次郎が振り返ると、その人物の正体は、ラバウル六勇士の飛行機を整備担当した元日本海軍兵曹長、秋山敏郎ことトチロー整備員だった。

 

 

「おぉ~進次郎か、久しぶりだなぁ~!」

 

 

「トチローさん、なんであなたが葛城に…?」

 

 

「てやんでぃ!!俺っちは戦地に残された将兵と民間人は愚か、妹のトチコを迎えに行くために乗艦したんでぃ!」

 

 

そう、秋山敏郎の妹、秋山聡子ことトチコを迎え、葛城の整備員として赴いた。

 

 

「…ん?あっ、おーい!沖田さーん!!」

 

 

「ん…?あ、あいつは…」

 

 

千歳基地で短い間で共にした局地戦闘機紫電の元パイロット、里見一平だった。

 

一平が募った理由は、乗組員募集の内容の他、経験者優遇と書いてあったために参加した。

 

そもそも艦艇勤務は初めてであったために、この状況下で生きていくのに必死だった。

 

「なんでぃなんでーぃ!!俺っちの知った顔ばかりが揃いに揃ったな!」

 

その日から、葛城の復員任務の作業が始まった。

 

 

飛行甲板の修復、機関を動かすための機関取扱説明書や運転諸元帳など焼却処分されていた。

 

 

何が参考になるか至るところを捜索、葛城の姉妹艦、大破着底、横転する空母天城へ内火艇へむかった。

 

 

「……天城……」

 

 

「……あの、当時のまんまだな……」

 

 

「…さて、あの艦内部へ行くぞ!」

 

 

進次郎、トチロー、一平は艦内を探索。数時間して、トチローが戻ってきた。彼の手には多くの書類があった。

 

 

「てやんでぃ!!これで空母葛城を動かせるぜ!!」

 

 

こうして、書類を持って空母葛城に戻った。

 

復員輸送に向けての葛城の作業が再開、復員兵五千人を収容することを目標に、上下の両格納庫を二段に仕切り、畳を敷き詰めた。

 

そうこうしている内に、工廠で甲板に空いた穴を塞ぎ、応急修理が終わった。

 

 

「航空母艦、葛城改めて、特別輸送艦葛城、抜錨!」

 

 

そして、葛城は最大の復員輸送艦として生まれ変わって、1945年12月18日午前9時に初めての復員輸送に出港した。

 

旗は軍艦旗からE旗に代えて、船体には日の丸とローマ字で『KATSURAGI』と艦名を大きく描いた。

 

一度目の輸送は沖縄、内地に帰投する軍人と軍属が乗艦。その中で、桜井洋介の姉、従軍看護婦の桜井志帆と再会。洋介の最後を報告した。

 

 

「……そうですか……あたしの弟が大変お世話になりました……」

 

 

「…いえ…あの人が…洋介さんが居なければ、僕は…復員輸送艦の乗員ではありません…」

 

 

「……沖田君、あたしも復員輸送の一員として参加させて下さい!」

 

 

進次郎は志帆に対して敬礼。以後、彼女も復員輸送の乗組員となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月28日、広島の似島に到着。年末年始の間、進次郎たち元兵士と看護婦たちは進次郎の実家に身を寄せ、身体を休めた。

 

 

1946年1月。短い正月が終わり、進次郎たちは呉の葛城へ戻った。

 

 

第2次1月15日、葛城は南方のラバウルへ向けて出港。2月8日、浦賀へ帰投。

 

第3次2月14日、再びラバウルへ向けて3月8日、大竹へ帰投。

大竹から呉へ移動、桟橋で終了を一月の間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月11日 アメリカ合衆国 フロリダ州 エグリン基地

 

 

「ベアキャットの調子はどうだ、パンサー?」

 

 

「ふぅ…バッキーさん、エンジンは快調です!」

 

 

海軍整備上等兵、パトリック・スペンサーは海軍大尉バッキー・S・五十嵐の愛機、F8Fベアキャットの整備を手掛けていた。

 

戦争が終結して1年弱、二人はフロリダ州エグリン基地に転属した。

 

パンサーとバッキーが転属したのには理由があった。それは、45年12月5日、5機のアベンジャー雷撃機が行方不明が行方不明になった、フライト19号事件の現場検証の調査飛行を志願した。

 

 

「しかしバッキーさん…自ら調査に打って出るなんて、リスクが高すぎますよ!」

 

 

「これはなパンサー、シンガポールで亡くなったステラが、ロサンゼルス上空以降、空に現れたフー・ファイター(おばけ戦闘機)を調査するのが、彼女の夢だ。」

 

 

「あ…ステラさん…」

 

 

パンサーが燃料と機銃弾、ロケット弾を補給していると、バッキーは弾薬庫からM-1半自動小銃とM-1カービン、M-1バズーカや手榴弾の武器をベアキャットの座席後部に設置した。

 

 

「やたら、武器弾薬を設置してますね…」

 

 

「日本の言葉で備えあれば患いなし、現場でどんな魔物や怪物が出てきても対処するさ!」

 

 

「え…縁起でも言わないで下さいよ…」

 

 

エンジンが唸り、プロペラが激しく回転。バッキーはベアキャットに搭乗した。

 

 

「ほんじゃバッキー!ちょっくら、行ってくるぜ!!」

 

 

「…バッキーさん、絶対に…絶対に生きて帰って下さいよー!!」

 

 

パンサーの言葉で彼はハンドサインで返し、滑走路へ移動。

 

 

「『バッキー・S・五十嵐、ベアキャット、出ます!!』」  

 

 

ギュイイイン

 

 

彼が扱うベアキャットは遥か彼方の青空へ向かって飛行する。

 

 

 

 

そして3時間後、無線のスピーカーからトラブルが発生、音声が途絶え、行方不明になった。

 

 

「バッキーさん、トムさん、アイリッシュ隊長……スパロウ機長…キャサリンさん…エマちゃん……エミリーちゃん…シャルロットさん…ステラさん…フィリップさん…マリーさん…ヴェン…ううぅ……おぉ~!!」

 

 

 

パンサーこと、パトリック・スペンサーはベアキャットが飛び立った滑走路で命を絶った者達の名前を呟き、嘆き、悲しんだ。

 

 

生死、行方不明のバッキー・S・五十嵐が調査した現場は後にバミューダ魔の三角海域と呼ばれた。

 

 

「……みんな……生きてやる…僕は死に損ないの臆病者と言われても、みんなの分も生きてやる…!」

 

 

 

パンサーは胸を右手に秘め、決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7次。7月3日、浦賀から初めてのシンガポールへ向けて出港。

 

 

復員輸送艦葛城がシンガポールに到着、次々と復員兵と民間人が乗艦する中だった。

 

 

「トチコ!」

 

 

「兄ちゃん!」

 

 

トラック諸島で生き別れとなった双子の秋山兄妹がシンガポールで感動の再会をした。だか、その感動は束の間になるのはまだ分からなかった。

 

レンバンを経由して、日本に向けてフィリピン海を航海している時だった。

 

 

 

 

7月26日 夜 葛城 格納庫 

 

 

「よし、組み立て完了!」

 

 

トチローとトチコ、進次郎は葛城の格納庫で、沖田進次郎の元愛機、零戦64型を組み立て、復元した。

 

終戦後、横須賀基地でトチローは64型をバラバラに分解、木箱に詰めて葛城へ運搬した。シンガポールの出港後に復元を完了した。

 

 

「さて、この零戦を飛行甲板へ運ぶぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

「えぇ…」

 

 

三人は64型を飛行甲板へ移動、その後に志帆と澪が合流。機体の操縦席に花を摘めた。

 

 

「…十三……いつか、あの世で酒を酌み交わそう…べらぼうめ…」

 

 

「……十三さん…」

 

 

「隊長さん、弟が大変お世話になりました…」

 

 

「天国で柚子さんと成美ちゃんと安らかに…」

 

 

「厚木隊長…戦争で生き残ったオレは、必ずや、新しい日本を作り上げます!」

 

 

フィリピンで散って逝った、厚木十三と家族の冥福を祈りながら合掌しつつ、全員で零戦をフィリピン海に投棄しようとした時だった。

 

 

「ん…?あれは…」

 

 

葛城の艦橋付近にて、レンバンで収容した2人の復員兵が飯盒を持ち出し、薪をマッチで着火しようとした。

 

 

「あれは…あぁっ!!いかんぞ…」

 

 

薪の下に、ドラム缶から漏れた油が流れており、気付いた進次郎が駆けつけた。

 

 

「おいっ!!復員兵、火を着けるな!!」

 

「「 え…? 」」

 

 

マッチが着火して油に引火、火が導火線の如く走り、ドラム缶が炎上した。

 

 

「まずい!!」

 

 

進次郎は炎上したドラム缶を海に向けて力一杯蹴飛ばした。だが、荒波で葛城艦体が揺らぎ、ドラム缶がトチロー達に向かって転がった。

 

 

「きゃあぁ!!」

 

 

「おめぇら、離れろー!!」

 

 

「はっはいっ!!」

 

 

「トチローさん、トチコさん!!」

 

 

トチローの指示で志帆と澪は散開、しかし、トチローとトチコは零戦の側を離れようともしなかった。

 

 

「「離れるかよ、十三(さん)たちの棺桶を海に投げるまで…」」

 

 

「…あぁ……」

 

 

ドラム缶がトチローとトチコに衝突、零戦共々、海に落ちた。

 

 

「…トチロー…さん…トチコさん…」

 

 

「…停めて…葛城を…停めてっー!!」

 

 

葛城が緊急により海上で停止、短照灯で照らし捜索したが、機体の破片、彼ら兄妹の持ち物すら見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捜索は1時間で打ち切り、進次郎は飛行甲板で膝を着いた。

 

 

「…そんな…そんな……せっかく戦争で…生き残ったのに…トチローさん…トチコさん…洋介さん…幸吉…虎雄さん…勇介さん…晴香さん…厚木隊長………新一郎兄ちゃーん!!」

 

 

 

特殊部隊、通称ラバウル六勇士の生き残りの沖田進次郎は、関わった戦車兵、携わった整備員、戦った戦友の名前を呟き、夜空を見上げ、嘆いた。

 

 

葛城は日本へ向けて航海を再開する。

 

7月26日、呉に帰還。

 

志帆と澪、進次郎はフィリピン海の航海で乗組員と復員兵が行方不明になった責任を感じ、辞職。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は雪が勤める旧海軍病院へ足を運んだ。

 

 

「…志帆姉さん、澪ちゃん…お疲れ様です…」

 

 

「えぇ…」

 

 

「…せっかく、戦争が終わったのに…所々、人々が亡くなっているのが辛いです…」

 

 

終戦後、国内外で日本人が亡くなっているのは事実だ。

 

経済の混乱で物質高騰により人々の栄養失調による飢餓、治安悪化の殺人犯罪。海外での略奪暴行。

 

それぞれの復員艦艇の乗船、航海中で安して亡き遺体を船上での投棄。

 

 

連合軍による、戦犯に指定された人物の逮捕、重労働及び、デスバイハンキングによる刑罰を受けるのであった。

 

 

進次郎は月夜の闇市で酒乱、自暴自棄になり、ある時は元兵隊のヤクザ相手に投げ飛ばし、彷徨った。

 

 

「…あははは~ひっく…うい~…くそったれ~!!…なんで死んだんだ~!!」

 

 

旧海軍工廠が一望する丘へ歩き、一升瓶の酒をがぶ飲みしながら居座った。

 

 

旧軍服の上着の懐に、ラバウルで戴いた誓いの短剣を忍ばせていた。

 

 

上着とワイシャツの腹部のボタンを外し、短剣を鞘から抜いた。

 

 

 

「うぅ…厚木隊長…洋介さん…虎雄さん…幸吉…トチローさん…トチコさん…新一郎兄ちゃん……いま…そっちに逝……」

 

 

「やめて!!」

 

 

「止めるなっ...! オレはみんなの元へ…君は…君はっ!!」

 

 

 

進次郎が短剣で腹切りを阻止したのは、戦時中にドイツ留学した豊田純子であった。

 

 

 

「…純子さん……」

 

 

  パァン

 

 

「死なないで、進次郎さん!死んだらわたしが一生許さないから!!」

 

 

「…うぅ…純子…うわああぁ~!!」

 

 

進次郎は純子から頬を叩かれ、正気に戻り、彼女を抱きしめながら純子と共に泣いた。

 

 

その後、進次郎と純子は旧海軍病院で志帆たちと再会、中庭でささやかに祝った。

 

 

「…そうだったのね…欧州で悲惨な目に…」

 

 

ドイツのベルリンで勇介が殿をしてくれた犠牲により、純子はアメリカ軍の捕虜となり、1年後に日本へ帰国した。

 

先程、進次郎は自決しようとした誓いの短剣を握りながら、ある言葉を思い出した。

 

 

「ぬちどう宝………ぬちどう宝!!…おれは生きる…おれは生きますよ、厚木隊長、洋介さん、虎雄さん、幸吉、トチローさん、トチコさん、新一郎兄ちゃん!!」

 

「進次郎さん……わたしも、生きますよ!!勇介車長、晴香姐さん、アリシアさん、パウラちゃん!!」

 

 

「あたしと亜弥も生きるよ、洋介さん!」

 

 

「洋介、勇介!」

 

 

「勇介さん!」

 

 

 

進次郎、純子、雪、志帆、澪たちは、あの戦争で亡くなった者の名前を呟き、彼らの分も生きることを硬く誓った。

 

 

 

 

 

 





終戦後から幾人も命を落とした者に成り代わり、生き残った進次郎たちは新たなる目標を抱き、前に進むのであった。

そして、新たなる時代に進んで…
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