ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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最終話 我らは生きている

 

 

 

 

西暦1948年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争が終結して3年後の春、沖田進次郎は故郷の四万十村にて、豊田純子と結婚した。

 

 

「進次郎さん、おめでとう!」

 

 

「純ちゃん、綺麗ですね…うぅ…」

 

 

「お、おにいさん…おねえさん…おめでとう~」

 

 

進次郎の家族、戦友の遺族たる桜井志帆と西澤澪、おぼろげの言葉だが、桜井雪と娘の亜弥も感謝の言葉を伝えられた。

 

だが一時、幸せな行司がある騒ぎに変わった。

 

 

「進次郎さん、大変です!!大変だぁ~!!」

 

 

「一平、どうしたんだ!?」

 

 

式に参加した里見一平が駆けつけにきた。それには理由があった。

 

 

「アメリカ軍の憲兵だ!!」

 

 

「「「 なんだと!? 」」」

 

 

「…きっと…連中の復讐だ…進次郎さんを戦犯に…処刑される…」

 

 

「馬鹿野郎!!めでたい時に、不吉な事言うな!!」

 

 

進次郎が一平の襟首を鷲掴みしていると、出席した村民が指を差した。

 

 

「来たぞ~!!憲兵だ!!」

 

 

アメリカ軍の憲兵がジープごと会場付近に停車、降りたのはサングラスを架け、タバコを咥えた女性憲兵であり、そして一平を注視した。

 

 

「お前が、沖田進次郎少尉か?」

 

 

「い、いえ…あっしは里見一平です。元一等兵曹で、撃墜数は1機のみ…」

 

 

「おれが沖田進次郎、撃墜数60機だ。戦犯として逮捕するのか!?」

 

 

「ふん、お前に客だ」

 

 

「客だと…?」

 

 

ジープの後部座席からもう一人の女性兵が降りた。

 

 

「お久しぶりです、沖田少尉!」

 

 

「ん…?」

 

 

「進次郎さん、この女性は何者ですか…?」

 

 

「…ん~…わからん…わからん…」

 

 

純子の言葉でも、進次郎は頭を傾げるのみだった。

 

そして、女性兵が飛行帽を被った時、進次郎の目は見開いた。

 

 

「あ…あんたは…B-29の!!」

 

 

3年前、1945年3月の東京空襲で爆撃、撃墜されたB-29乗員の生き残り、マリー・熊井曹長。

 

日本の憲兵に捕らえられ捕虜として投獄された。

終戦後、解放されてアメリカ軍に復帰、彼女の命を助けてくれた恩人の進次郎を探していた。

 

 

「あの時は、ありがとうございました!あの、もう一人のパイロットは…?」

 

 

「あ…ぐ…」

 

 

 

マリーの言葉で進次郎は歯を噛みしめながら、戦友の桜井洋介の最後を伝えた。

 

 

「……そうですか…あの…雪さん…あなたの旦那さんは…命を助けてくれた、英雄です…」

 

 

「…マリーさん、…ありがとう…」

 

 

マリーは洋介の妻、雪に対して深々と頭を下げ、感謝を伝えた。

 

 

「(…洋介さん…)」

 

 

タバコを咥えた女憲兵が進次郎の前に赴いた。

 

 

「ふぅー…沖田進次郎、お前の元上官の桜井洋介と大賀虎雄は死んだのか…?」

 

「…えぇ…北方の、ソビエトロシア軍の戦いと、南方のマラッカ海峡上空で戦死した…しかし、なんで彼を…?」

 

 

進次郎は洋介と虎雄の存在を疑問に感じた。

 

 

「…奴らは、戦犯に指定している。」

 

 

「っ!?なんだって!!」

 

 

洋介と虎雄が戦犯になっていることに進次郎と妻の雪は驚愕した。

 

六勇士のパイロットたちの元上官だった、天沼俊介大佐は罪に濡れ衣を着せられて、戦犯として巣鴨プリズンに投獄されていた。

 

 

「(…これが、戦勝側のやり方…)」

 

 

進次郎は戦勝側の行動を心底憎み、腹が立った。

 

 

「さて熊井、引き揚げるぞ!」

 

 

女性憲兵がジープに戻ろうとすると、マリーは乗車を拒んだ。

 

 

「あの、中佐……わたしは残ってもいいですか…?」

 

 

「ふん、勝手にしろ。私は先に帰る!」

 

 

「待て、あんたは何者だ……!?」

 

 

「アメリカ陸軍憲兵中佐、アリス・ミラー。奴らに関してのことがわかったら連絡くれ」

 

 

ミラーはジープに乗り、四国のアメリカ軍駐屯所へ戻り、残ったマリーは、四万十村の道で立ちすくんでいた。

 

 

「……マリー・熊井さん…?」

 

 

「はっはい!」

 

 

花嫁姿の純子が彼女に手を差し伸べた。

 

 

「あの戦争で生き残った者同士、敵も味方もありません。共に、この行事を楽しみましょう!」

 

 

「あ……」

 

 

マリーは進次郎たちの光景を見て、思い出した。ハワイでウィリアム家族の懐かしいホームパーティーを

 

 

「…おねえさん……」

 

 

「…あ…あぁ…エマちゃん…エミリーちゃん…」

 

 

マリーは亜弥を見て震え、涙を流した。ハワイで亡くなったなった双子を想いながら……

 

 

「さぁ、みんな! 私と一緒に歌いましょう」

 

 

純子は微笑みを浮かべてそう言うと、子供たちに呼びかける。

 

 

「ああ、よかった……。これで、もう大丈夫だわ」

 

 

その様子を見守る進次郎は安堵し、大きく息をついた。

 

 

「一平、飲み直すぞ…ん…?」

 

 

「…………///」

 

 

会場にいた一平はボーッとしていた。

 

 

「おい、一平!どうした、変な物喰ったか!?」

 

 

「…………///」

 

 

「はっは~!お前、一目惚れしたな~!」

 

 

「わわっ!進次郎さん……///」

 

 

「「「「 あっはっはっはっは!!  」」」」

 

 

この村では一時幸福に包まれた。

 

幸福の裏で事件があった。アメリカ陸軍憲兵中佐、アリス・ミラーは海沿いの道で走行中、崖崩れで殉職。

 

この不可解な事があった。事故で運転手を除き、彼女の遺体が行方不明になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦1950年 四万十村

 

 

沖田進次郎は漁村で漁師を営みながら妻となった純子と生活していた。

 

 

「ふう~…」

 

 

「あなた、お疲れ様です。」

 

 

「ありがとう、純子…空…飛びたいな……」

 

 

鰹漁から帰った進次郎は兄弟と共に海と空を見つめていた。

 

あの戦争終結で進次郎は今の仕事に馴染めなかった。

 

 

「進次郎さん、大変だ~!!」

 

 

「何が大変だ、一平!?」

 

 

新聞を持った一平が駆けつけにきた。

 

 

「新聞見てないんですか!?」

 

 

「新聞読んで、腹が膨れるか!どれどれ…?」

 

 

一平から渡された新聞の記事には、新設された警察予備隊の隊員募集内容だった。

 

 

「パイロット募集!!経験者求む!」

 

 

「進次郎さん!!」

 

 

「一平、また空へ飛べるぞ!!」

 

 

進次郎は新聞を握りしめながら涙を流した。再び、仲間と飛んだあの自由な大空へ

 

 

するとー

 

 

「よかったですね。進次郎さん、一平さん」

 

 

「マリー、久しぶりだね!」

 

 

「おぉ、マリーさんか。暫く振りだな~!」

 

 

マリー・熊井はアメリカ軍を除隊。国籍を日本に移し、生まれ育ったハワイを捨て、日本で暮らしていた。

 

 

「実は進次郎さん、純子さん。おれは、マリーと結婚します!!」

 

 

「「 え…?えぇ~!! 」」

 

 

里見一平の結婚の報告で、進次郎と純子の夫婦は驚愕した。

 

 

「お前が結婚とは、やるなぁ~!!」

 

 

「お二人さん、おめでとう~♪また、志帆さん達に報告の手紙を送らなければならないわねぇ~!」

 

 

「飛行機のパイロット復帰と結婚の前祝いしようじゃねぇか!!それに、隊長たちに報告せねば…!」

 

 

 

その後、里見一平とマリー・熊井はめでたく結婚した。

 

 

6月25日、朝鮮半島で戦争が勃発した。

 

 

進次郎と一平は警察予備隊へ入隊。有事に備えて、二人は日々訓練に明け暮れた。

 

その後、アメリカ製L-5センティネル連絡・観測機に搭乗、再び大空へ飛んだ。

 

 

「空だ…大空だ-!!」

 

 

「進次郎さん、気持ちはわからなくないですが、操縦席ではしゃぎ過ぎです~!」

 

 

「馬鹿野郎〜!久しぶりの青空だ、この感動は未だに忘れられん!!あの空でみんなと会えたら……」

 

 

進次郎は旧海軍予科練時代の興奮を思い出しながら飛行、着陸するまで収まらなかった。

 

 

時は進み、1953年朝鮮戦争は休戦。

 

警察予備隊は後に自衛隊と組織を改名、沖田進次郎と里見一平が所属する組織は航空自衛隊となった。

 

進次郎は一等空尉、一平は三等空尉の階級が与えられ、旧海軍時代のパイロットを務めた経歴を持っていたために、アメリカ製の最新鋭戦闘機F-86セイバーを受領した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1964年 12月 埼玉 入間基地

 

 

 

「進次郎さん、東京オリンピックは最高でしたね~♪」

 

 

「そうだな、東京上空で五輪を書いた曲芸飛行は凄かったな~!」

 

 

「オレ達日の丸の空のサムライが復活です!!」

 

 

「ははっ♪さてと、司令室へ行かねばならん!」

 

 

「えぇ、おれ達に重要な任務…?もしかしたら、ゴジラの映画出演ですかね?地球防衛軍のパイロット。おれの子供が喜びますよ~♪」

 

 

「ははっ!うるせぇな。おれ達は航空自衛隊隊員だぞ!」

 

 

そう一平に言う進次郎だが、顔は笑っていた。

 

 

 

 

司令室

 

 

 

 

「沖田一尉、入ります!」

 

 

「同じく里見三尉、入ります!」

 

 

「よく来た、銃機弾を搭載しろ」

 

 

「は…?」

 

 

「銃弾!?」

 

 

司令の言葉で二人は動揺した。

 

 

「沖田一尉、里見三尉。お前たちに二人にある人物の護衛任務をして貰う」

 

 

「護衛?誰をですか?」

 

 

「アメリカ空軍参謀総長カーチス・ルメイ大将だ」

 

 

「「 っ!? 」」

 

 

20年前の戦時、ドイツのベルリン・ドレスデン空襲、日本本土空襲無差別爆撃を指揮した忌まわしい人物だった。

 

 

「司令、おれは昭和20年3月10日、東京上空に居た!燃え上がる東京は今でもこの目に焼きついて離れられない!一晩で10万人死んだ!!無差別爆撃の親玉ルメイを護衛しろと言うのですか!!」

 

 

「我々、自衛隊設立に功があったとして、日本政府より勲章が授けられる。そのための来日だ。」

 

 

「くそっ…なんてこった…死んで逝った民間人と防空パイロットたちはさぞ喜んでいるんでしょうよ…」

 

 

「皮肉は辞めろ、これは命令だ。以上!準備しろ!!」

 

「はいっ!!…ぐ……」

 

 

進次郎は敬礼、歯噛みしながら自身の愛機、機銃弾を搭載したF-86セイバーに搭乗、相棒の一平と共に出撃した。

 

 

「目標確認!距離30キロ!一平、左後方護衛位置に付く!!」

 

 

「『了解!!』」

 

 

「防空軍パイロット役でゴジラ退治の方が、マシな任務だったな…」

 

 

遥か東の空からアメリカの旅客機が飛来、機体の窓越しから葉巻を咥えたルメイを肉眼で視認。

 

そして、ルメイが進次郎機と一平機に敬礼した。

 

 

「(はっ…!)んっ!」

 

 

進次郎は風防越しでカーチス・ルメイに敬礼をした。

 

 

だが、護衛機と旅客機が日本領空に飛行した時、進次郎の周囲は無類の雲に包まれた。

 

 

「…雲…一平…どこだ一平!?応答を……応答を……はっ?」

 

 

無線のスピーカーから雑音が鳴り響く時、雲の中から突如3機、濃緑の飛行機が出現、進次郎機を囲んだ。

 

 

「あ…あれは……」

 

 

濃緑と日の丸を付けた二式水上戦闘機、零式水上観測機、そして零戦64型が出現した。

 

 

「…洋介さん……虎雄さん……幸吉…兄ちゃん!!…」

 

 

かつてのシンガポール、長崎、占守島で命を散らしたパイロットたちと愛機が飛行していた。

 

 

「……あ…ぁ……みんな……」

 

 

濃緑機の風防越しの4人のパイロットたちは進次郎に敬礼。

 

そして、ルメイが搭乗した旅客機が雲に包まれる中、ネイビーとシルバーカラーの正体不明機が出現した。

 

 

「っ!?…あ…あぁ……なんてこった……」

 

 

旅客機のメンテナンスとして搭乗したパトリック・スペンサーは窓越しで幽霊を見た様な顔で驚いていた。

 

肉眼で視認したのはF8Fベアキャット、P-51Hムスタング、PBY-5カタリナが飛行していた。

 

 

「あれは…バッキーさん…ステラさん、スパロウ機長、トムさん、シャルロットさん……」

 

 

2機のネイビー、1機のシルバーカラー機の搭乗員もパンサーに敬礼し、日米のグループごとV字編隊を組み、富士山方向へ飛行した。

 

 

「(っ!?…おい…みんな…どこに…)どこに往くんだ!?」

 

 

「待って……待ってくれ、みんなぁっ!!」

 

 

パンサーは窓を叩き嘆き、セイバーを扱う進次郎は全力で追い掛けた。

 

だが、最新鋭のジェット戦闘機の速度すら凌駕する6機は、富士山の遥か彼方に浮かぶ一筋の雲に向かって飛行する。

 

 

 

 

「…雲…?…あぁ…なんだあれは……なんだあれは!?」

 

 

 

進次郎が幼少期、夢に見たことを思いだした。

 

その雲の正体は、あらゆる国籍、時代の大戦で戦った航空機や、テスト飛行、旅客機の事故で損失した航空機が浮いていた。

 

 

6機の航空機もその雲の中へ合流した。

 

 

愛機セイバーはこれ以上、あの高さまで飛ぶことはなく、燃料のブザーが鳴った時、ヘルメットを被っていた沖田進次郎は操縦桿を強く握りしめ、泣き喚いた。

 

 

「……みんな……みんな頼む………おれも………おれも連れて往かせてくれ!!……往かせてくれぇ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……!?夢か…60年か…みんな……」

 

 

戦争が終結して約70年近く、年を摂った沖田進次郎は航空自衛隊を引退。

 

邸宅で自身の部屋のデスクにて、旧海軍、航空自衛隊パイロット時代の日誌を広げて眠っていた。

 

呉で撮った写真や激戦地ラバウル、純子との結婚写真と家族写真、空自での愛機との写真。

 

山本元帥から頂いた短剣が棚に置かれていた。

 

人生で故郷の高知を離れ、純子の故郷の茨城、大洗に移住。3人の息子、2人の娘が生まれた。

 

それから孫も15人、玄孫が2人いる。

 

その中の孫2人が祖父の進次郎が務めていた自衛隊に入隊。一人の孫は空佐に上り詰め、その玄孫は航空自衛隊のパイロットになることを夢見ている。

 

もう一人は大洗女子学園の入試で合格した。そして扉からノックが鳴り、玄孫の沖田桜が入室した。

 

 

「曾おじいちゃん、失礼します」

 

 

「あぁ、桜ちゃんか……今日は……休みかな…?」

 

 

「えぇ、休暇を取ったお父さんと帰宅しました。あらら……また、旧海軍と空自時代の日誌を読み開いていたのね~!」

 

 

「あぁ……お前の大叔父の新一郎や、戦友のことを読み返したんだ……」

 

 

「あっ、そう言えば……里見さんもきていましたよ。真澄お姉ちゃんの合格祝いに。」

 

 

「里見……あぁ、一郎君か……どれ、わしも彼に挨拶せねば……」

 

 

進次郎は椅子から立ち上がり、杖をついて歩いた。

 

 

あの激動の戦後、沖田進次郎に関わった者たちはそれぞれ歩んだ。

 

 

桜井雪、娘の亜弥と共に北海道の小樽へ移住。だが、彼女は54年12月に命を落とした。

 

娘の亜弥は、亡くなったショックでエゾオオカミと家を飛び出し、猛吹雪の中で消息不明。

 

桜井志帆は、日本赤十字病院関連の理事長に就任。高齢で引退、隠居で暮らしても自らボランティアを活動。未だに弟たちの帰還を信じている。

 

西澤澪は、広島の原子爆弾による救助活動にて、放射能を浴び、75年、白血球で命を落とした。

 

パトリック・スペンサー、ハワイオアフ島の飛行場で腕利きのメカニックマン。軍用機ならぬ、民間機や車輛を叩く間に修復する。

戦後、マリーと再会。桜井志帆、沖田進次郎とも友好関係にある。

 

里見一平は、70年代に戦闘機パイロットを引退。以降、操縦士を育成する教官に就任。練習機の墜落事故で殉職。

 

里見マリ。女手一つで2人の息子を育て、孫の一郎が成人した後、今でも進次郎と親好な関係だった。

 

沖田純子、夫の進次郎とオシドリ夫婦の如く。

ベルリンの武勇にて、陸上自衛隊の戦車搭乗隊員、西住、島田両氏から神の様に崇められている。

 

 

 

 

 

居間

 

 

 

 

 

「真澄ちゃん……今の大洗学園の情勢が厳しい……それでも入学するのか…?」

 

 

「うん、曾じいちゃん!わたしは心に決めた!そして、桜が自慢するお姉さんに、頑張りたい!!」

 

 

「そうか……何も言うまい……悔いのないように…良き青春を過ごすんだ…」

 

 

「……はい!」

 

 

真澄は進次郎の期待に掛けて返事し、退出した。

 

 

進次郎の執務室にて電気を付けず、月夜が照らされる窓際で椅子に座っていた。

 

 

 

 

「…おれの青春は…全て、あの戦争で費やした…生き残ったおれは、死んで逝った兄と戦友たちの姿が鮮烈な思い出として…今も脳裏に残っている……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先の世界大戦で戦った傷跡の証が残っている、戦争を愛に忘れ去ることの平らな忌ましめているかのように。

 

多くの戦友が、祖国の栄光を信じて死んで逝った者、戦後の混乱で消息不明になった者や事故で殉職した者たちは、戦後の繁栄と平和の上に築かれた。

しかし、彼らは何も語らず、謙虚な沈黙が悲しい…

 

自身が成し遂げられなかった青春を、沖田進次郎に対して生きろ、と告げているかの様に…

 

 

 

 

         完  

 

 

 

 

 

 

 

 





沖田進次郎と純子たちは、彼らの戦いの犠牲を踏まえ、生き延び、終結した。












フィリピン上空と近海、アルデンヌ、ベルリン市街地、シンガポール上空、マラッカ海峡上空、沖縄南西諸島近海、ハワイオアフ島海岸、長崎上空、占守島上空、奄美大島上空、バミューダ海域上空、北海道小樽など、彼らは命を落とした。

だが、それぞれの地域で散って逝った彼らは生きていた。









北欧の神の悪戯による神隠しにより、それぞれの異世界、あるいは未来へ送られ、彼らの新たなる戦いが始まった。







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