ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第2話 初陣の翼

 

 

7月10日、厚木小隊は呉に進出して空母瑞鶴に着艦した。

 

「これが空母瑞鶴…」

 

「おぉ~瑞鶴、さすが神戸出身の空母や~!」

 

「確か桜井は神戸出身だったな!」

 

「はっ!厚木隊長は瑞鶴と関わりがあるのですね!」

 

「はっはっはっ勿論だ、重慶の作戦後にハワイを目指すために乗艦。そして、インド洋と珊瑚海海戦でも敵機と戦った!」

 

「(だから、あんなに傷が…)」

 

進次郎は心底激戦を経験していたことを感じた。

明後日、瑞鶴が配属する第1航空戦隊、第3空母艦隊が呉軍港から出港した。行き先は南洋諸島の連合艦隊在泊地、トラック諸島への航海が始まった。

1週間後、トラック諸島に到着。航海中を含め、トラック諸島到着後も厚木小隊の訓練が日々欠かせなかった。主に模擬空戦で別の小隊及び、別の空母部隊の戦闘機小隊と模擬空戦で日々勝ちを得ていた。

 

「凄い……厚木隊長…桜井さんもなんて手腕だ……」

 

だがー

 

「桜井、あの飛び方はなんだ!?あんな飛行で燃料切れは愚か、機体が空中分解するぞ!!」

 

「はっ!!あれは俺が本土の空襲で、B-25を撃墜した時に編み出した戦法であります!!」

 

「黙れ!貴様のようなヒヨッコが、戦法を編み出すなんて10年早い!!今夜の赤道祭でおれから刑罰をやる!!」

 

その後、日が水平線に沈む頃、トラック諸島の夏島で赤道祭が始まった。各艦艇から屋台が出回り、各艦艇の乗組員や本島の水兵、邦人、原住民たちが仮装しながな賑わい。進次郎は厚木のお供をしながら祭りを楽しんでいた。

 

「これが赤道祭…」

 

「そうだ、赤道祭は古き時代から存在する海の安全を祈る行事だが…、いつの日かこんな仮装祭りに定着している!沖田、お前は楽しいか?」

 

「はいっ!!とても」

 

「さぁさぁさぁ〜!!盛り上がれぇ~!!」

 

「「「わっしょい!!わっしょい!!わっしょい!!」」」

 

幾人の整備兵員たちが神輿を担ぎ上げ、大きな内輪を扇ぎ指揮していた整備班長が進次郎らの元に近づいた。

 

「おめぇか、十三の小隊、零戦22型の坊やのパイロットは?」

 

「は、はい!!」

 

「いい目をしておるなぁ~♪生きる為に闘え!」

 

嵐の様にこの場所を去った時、サイダーを2本持った厚木が戻ってきた。

 

「沖田、ほれサイダーだ!」

 

「ありがとうございます隊長!…ですが桜井さんがいないのがちょっと…」

 

「心配するな、あいつはな…」

 

進次郎が洋介を心配していたが、厚木が指を指した方向をみるとサイダーを購入した瑞鶴の部署が経営する酒保で、家政婦の格好をした女性販売員がいた。

 

「綺麗な人だ…すんませーん!オレにサイダー…さ…桜井さん!?」

 

進次郎が家政婦の販売員に近付くと、見覚えのある顔だった。その正体は桜井洋介であった。洋介は厚木隊長から女装して、家政婦の格好をしながら酒保の商品販売の任務を受けたのだった。彼は厚木十三に次ぐ男優であり、洋介の目は光りが無く、涙目だった。

 

「うぅ……沖田…ヒッグ…あの厚木隊長の刑罰が恐ろしい…」

 

「隊長…はなぜこんな家政婦の衣装を…それに…おっ…お似合いですよ桜井さん…!」

 

「何がお似合いだ…さっき何人かデートに誘われたんやで…どれだけ悲惨なことだか…」

 

「おい!可愛い娘ちゃ〜ん!オレとデートをしようや~!!」

 

「やっやめろ~!!俺は男だ~!!」

 

「ぷっ……あっはっはっは!」

 

この赤道祭で洋介の悪夢が幕を閉じた。だか、新たなる悪夢が幕を開けたのであった。

8月7日早朝、アメリカ海兵隊がガダルカナル島に奇襲上陸。ガダルカナル島を巡るソロモン海戦の戦いが始まった。

トラック・ラバウルの数隻の連合艦隊がガダルカナル島近海へ出撃。在泊中の艦艇及び輸送船団を大破、撃沈に至らせた。

 

8月16日、第3艦隊がトラックを出撃ー瑞鶴で艦長の艦内放送が発声られた

 

「『ガダルカナル島近海に米空母が確認されたと水偵の情報を得た、すべての米空母を撃沈してミッドウェーの仇を討つぞ!!』」

 

「「「 おおーっ!! 」」」

 

夜、瑞鶴の乗員やパイロット、整備員らは士気が高揚した。そして下士官室で待機してベッドで寝転んでいた進次郎は悩んでいた。

 

「いよいよ実戦か…オレはやるぞ!…父ちゃん母ちゃん…喜三郎、喜四郎、信子、佳代子、そして新一郎兄ちゃん…」

 

「沖田!!」

 

「はっはい!」

 

進次郎はベッドから飛び起き、彼を呼んだのは小隊長の厚木だった。

 

「貴様に話がある、ちょっと来い!」

 

「はっ!!」

 

二人が向かった先が飛行甲板の先端部分に立っていた。

 

「実はな…お前の兄、沖田新一郎はおれが海兵団の同期であり、友人だった。」

 

「えっ…えぇ〜!?厚木隊長が…新一郎兄ちゃんと同期!?」

 

進次郎の表情は驚き、いくつか質問をした。

 

「兄ちゃんは…どこにいるのですか…!?」

 

「待て待て、落ち着かんか!あいつは…新一郎はおれと甲乙付けがたい手腕のパイロットだった。」

 

「兄も…やっぱり凄腕のパイロットだったのですね!」

 

「そうだ、あいつなら戦闘機を希望するのかと思ったが、観測機を選んだ。おれより早く実戦で戦った。あの上海事変で観測機に!」

 

「兄が戦闘機乗りじゃなく…観測機乗りに…なぜですか!?」

 

「わからん!だか、あいつの事だ。あいつの手腕はどんなパイロットより優れている!上海事変の後、別の観測部隊に転属した。戦いより情報第一と言ってたな…今まで新一郎が主張して、訴えたことが実証した。あのミッドウェーの反省だ…」

 

「…ミッドウェーの反省…隊長…オレたちはこの戦いに勝てるのでしょうか…」

 

「新一郎は観測機乗り、お前は戦闘機乗り。己のやるべき任務を遂行しろ。それにいつ、敵が現れるか分からん。戦いに備えて身体を休め!」

 

「はっ!!ありがとうございます!!隊長、おやすみなさい!」

 

進次郎は厚木に敬礼して、下士官室に戻ってベッドで休んだ。

 

8月24日 瑞鶴の姉妹艦、空母翔鶴が米軍空母エンタープライズを攻撃、大破した。一方、瑞鶴の第1次攻撃隊が出撃に備えた。

 

「厚木小隊、出撃する!」

 

「「了解!!」」

 

厚木少尉が1番手に出撃。その次に洋介が出撃した。

 

「桜井洋介、行きまーす!!」

 

最後に進次郎の番だったが、緊張して手が震えていた

 

「(震えが…落ち着け、落ち着かんか!)沖田進次郎、出ます!!」

 

進次郎の零戦が飛行甲板を走り、先端を蹴って大空に飛んだ。

偵察機によると、エンタープライズの他に別の空母が航行している情報を掴んだ。瑞鶴の第1次攻撃隊(戦闘機9、爆撃機9)が偵察機が示した海域に飛行した。

 

「敵は…空母はどこだ…………………しかし、暑いな~…喉カラカラ…サイダー~♪」

 

初めて赤道を越え、南方の眩しい日差しの中で操縦席は暑かった。進次郎が飲用しているとー

 

「『11時方向、敵編隊を確認!!』」

 

「敵編隊だって...!あれは戦闘機…ざっと17機」

 

「『増槽投下!!攻撃体制に移れ!』」

 

『「「了解!!」」』

 

洋介は敵戦闘機の編隊を確認。厚木は二人に指示を仰ぎ、攻撃の体制に移るために太陽に向かって飛行する。

 

「敵空母を確認、サラトガだ!艦爆隊!攻撃体制に移れ!!」

 

「隊長!!左翼にグラマンF4Fです!!」

 

瑞鶴の攻撃隊が米軍空母サラトガの戦闘機隊が接近、敵機の編隊が照準機で攻撃隊を入れ掛けた時、指揮官機らしき機体が爆発した。その臨機も別方向からの機銃を受けて撃破した。

 

「よくやった、桜井!」

 

「厚木隊長の指示に従ったまでです!」

 

二人は敵の指揮官機と臨機を撃墜。指揮官を失った敵編隊は混乱に陥り、零戦隊は次々と落とした。進次郎は1機のF4Fと手こずっていた。

 

「く…なんて頑丈なヤツだ!!逃がすか~!(ぶ…ぶつかる…)」

 

進次郎が扱う零戦がF4Fに衝突した時、あることを思い出した。

 

「(なぁに、どんなに突っ込んだって簡単に衝突せん。敵さんだって必死のスピードで逃げているんだ)」

 

「そうだ!もっと肉薄してやる!うおおおおおー!!」

 

無我夢中で機銃を撃ち続けてた時、機体が爆発。進次郎の目の前には青い海と青空に雲が浮かんでいた。

 

「敵機が爆発したのか...!…背後に敵機!!」

 

進次郎機の後にF4Fが密着、だが直ぐに機銃に被弾して墜ちた。

 

「あれは…桜井さん!?」

 

「『危なかったな沖田!それに敵機の撃墜は見事やった!』」

 

「はっ!桜井一飛曹、ありがとうございます!!」

 

「『あぁ!瑞鶴の艦爆隊が…やった!』」

 

瑞鶴の艦上爆撃機隊が敵艦サラトガの弾幕を恐れず、勇猛にすり抜けて飛行甲板に爆弾が命中、大破炎上した。

 

「サラトガが燃えている…」

 

「沖田!この戦闘で俺たちが勝ったぞ!」

 

「桜井さん、隊長は?厚木隊長はどこに!?」

 

「そう言えば、…あるF4Fと激しい空中戦を…」

 

『「オレならここだ!」』

 

二人の機上に厚木隊長機が飛来、互いに報告をした結果ー

 

厚木十三少尉 5機

 

桜井洋介一飛曹 6機

 

沖田進次郎三飛曹 1機

 

『「お前たち、よくやった!これから艦爆隊と空母に帰投、あとは第2次攻撃隊に任せよう!!」』

 

『「「 了解!! 」」』

 

そして、第2次攻撃隊が大破炎上している空母サラトガ٠エンタープライズを探したが居なかった。自力航行で、あっという間に海域を離脱してしまった。瑞鶴の攻撃隊は空振りとなってしまい母艦に帰投した。

 

空母瑞鶴、飛行甲板後部ー

 

「厚木隊長、敵さんいなくなりましたね」

 

「嘆くな、戦いはこれからだ!桜井、沖田!今日生きられたことに乾杯しよう!」

 

「「了解!!」」

 

3人は黄昏が海に沈む景色を堪能した。

 

本日の戦いで、日本海軍の空母龍譲が撃沈、駆逐艦1、輸送船が沈没。

 

一方、アメリカ軍は空母ワスプが沈没。エンタープライズ、サラトガが大破。

 

結果は引き分けになった。日本空母部隊は戦力を整える為にトラック諸島に帰投した。

9月、ガダルカナル島のアメリカ軍は飛行場を整えたと偵察機からの情報を得た。空母部隊は再びソロモン近海に侵出、飛行場の攻撃を決定した。

 

ソロモン海上空ー

 

厚木小隊を含む戦闘機隊9機と艦爆隊9機がガダルカナル島ヘンダーソン飛行場に向かって飛行、いつも通りに日照りが差していた。

 

「…暑ちいなぁ…」

 

『「そうだな…、この任務を終えたらラムネを飲もう…っ!敵機!!」』

 

大陽の中から敵機20が急降下、艦爆が3機落とされた。進次郎は増槽を落下して空中戦に突入した。

 

「この野郎っ!!」

 

進次郎はF4Fの背後にくっつき、機銃で撃って撃墜した

 

「やった!…うわっ!しまった!!」

 

進次郎機の背後で別のF4Fに追われた時、厚木が瞬時に落とした。

 

「あ…厚木隊長!」

 

「油断するな沖田!こいつらはガダルカナル島ヘンダーソンの敵機、手強いぞ!!」

 

アメリカ軍は日本軍の空戦技術を徹底に研究して格闘戦を避け、一撃離脱のサッチウェーブ戦法、2機のペアを組んでのロッテ戦法を編み出したのだった。

 

「隊長!桜井一飛曹が!」

 

一人で交戦行動していた洋介機の背後に2機のF4Fが憑かれていた。

 

「やられるか!!そこっ!」

 

洋介はスロットルを減速して落下、2機の真下から急上昇して同時に撃墜した。

 

「はぁ…はぁ…危なかった…」

 

艦爆隊の指揮官機が撃墜され、階級の高い厚木が指示を出した。

 

「こちら厚木!全機に告ぐ、艦爆隊の指揮官機がやられた!この空域より離脱せよ!!」

 

「「「『 了解!! 』」」」

 

艦爆隊の残存部隊は厚木の指示に従い、爆弾を落下して母艦に向けて離脱、厚木小隊は艦爆隊の殿として残り、敵戦闘機隊と対峙した。

空母瑞鶴に帰投した航空部隊は艦爆3、厚木小隊を含む戦闘機5機が帰艦した。

 

「桜井さん…おれは今日の撃墜は初出撃より多く撃墜しました。その引き換えなのか、味方の損害が酷いです…」

 

「……沖田…俺も同じ意見だ…空母を追っ払ったと言えども敵の数が減らん。」

 

「それがアメリカと言うべき国の軍隊だ!お前らっ!そんな弱音を吐くと、死に近づくぞ!戦うことより、生きることに執着しろ!!」

 

今日の戦いはまだ序の口であり、ここから沖田進次郎の決死の戦いが幕を開ける。

 

 




初陣が、日米の攻防と謳われたソロモン海戦。
初の空戦で進次郎は敵機を撃墜、落とした手が血に染められ、また、敵に命を狙われ、帰れる母艦に仲間と帰投した。

君は、生き延びることができるのか…?

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