ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第3話 決戦、南太平洋海戦

 

 

 

ガダルカナル島の航空攻撃が失敗して1ヶ月、空母部隊はトラック諸島で待機が続いた。その中で水雷戦隊が浸出して2隻が沈没、2隻が大破。

戦艦金剛、榛名率いる少数艦隊がガダルカナル島のヘンダーソン飛行場を艦隊の砲撃で撃破した。

その影響でアメリカ海軍空母部隊が浸出を開始した。

 

10月25日、日本海軍空母部隊は再びソロモン近海に浸出。

 

空母瑞鶴ー食堂

 

「厚木隊長…」

 

「わかっとる、日ごとに損害が出る中、明日からは以前の激戦より激しくなる。何がなんでも敵空母を撃沈する攻撃を貢献するために護衛を、そして生きるんだ!」

 

「「 はっ!! 」」

 

進次郎は明日に備えて就寝、だが眠れずに格納庫に行って自身の愛機を拝んだ。

 

「愛機よ、明日は戦いに勝ち、生き残ろうな!」

 

「そうだな、明日は勝って生きていかなければな。」

 

「えっ?桜井さん…」

 

進次郎の背後から洋介が現れた。

 

「沖田、実は俺も明日の戦いで眠れない…」

 

「…桜井さんもですか…」

 

「なぁ沖田、君には兄弟はいるのか?」

 

進次郎は洋介と互いに親兄弟の話をした。

進次郎の実家は高知の漁師であり、家族は両親と5人兄妹。進次郎は次男、兄は上海事変から戦っている観測機のパイロット。

そして洋介の家族は3人姉弟。神戸の水害で両親を亡くし、残った姉弟はそれぞれの道を進んだ。姉は赤十字の看護婦。弟は陸軍幼年学校へ入学、新設した戦車乗りに志願。マレー攻略とフィリピンで戦った陸軍の戦車乗りであった。

 

翌日、10月26日

 

日本空母部隊は空母瑞鶴と翔鶴、瑞鳳の戦闘機、爆撃機、雷撃機を発艦させた。その中に厚木小隊に沖田進次郎も参戦した。

 

「隊長、敵空母はいるのでしょうか…」

 

「偵察機からの情報じゃこの辺りだ!」

 

「相変わらず、この雲の量…海面が見えんな…」

 

サンタ٠クルーズ近海に所々に雲が浮かんでいるその切れ間に空母が確認した。

 

「いた、敵空母だ!!」

 

「隊長!!後方に敵機!!」

 

「増槽投下!桜井、沖田、往くぞ!!」

 

「「 おぅっ!! 」」

 

空母ホーネットの上空にF4Fの大群が出現、厚木小隊は攻撃隊を襲う敵戦闘機隊の群れに突入した。

 

「…落ちろっ!!……やった…!」

 

厚木小隊の進次郎は次々と敵機を落とし殲滅した。だが、攻撃隊は敵機と防空艦艇の対空射撃で鳥の如く散り落ちた。

 

「くそっ!」

 

進次郎は怒りを立て、ホーネットに向けて急降下。

 

「喰らえ!!」

 

左舷の高角砲と機銃群に向けて機銃を掃射、空母の戦闘要員がバタバタと血を流し倒れた。

 

「…あぁ…」

 

敵空母ホーネットの飛行甲板に艦爆が投下した爆弾3発が命中、更に艦攻の魚雷攻撃で命中させ、航行不能に陥らせた。

目を覚ました進次郎は操縦桿を握っていた手が震えていた。

 

「…この海は…悪夢だ…」

 

「大変だ沖田!翔鶴と瑞鳳がやられた!」

 

進次郎の左隣から洋介が接近、厚木が前方から味方空母の情報を伝えた。

 

「母艦は…おれたちが帰る場所の瑞鶴は…!?」

 

「安心しろ、やられていない! 本隊からの指示で付近の空母隼鷹に合流の命令を受けた。今は生き残った艦爆隊と向かうぞ!」

 

「「 了解!! 」」

 

厚木小隊は残った艦爆と艦攻隊と共に艦隊の隼鷹に向かい着艦、進次郎と厚木、洋介は愛機から降りて格納庫で小休憩を執った。

 

「お前ら、握り飯とサイダーだ!」

 

「あっ…トチローさん、ありがとうございます!!」

 

「頂きます!」

 

あの時、赤道祭で盛り上がっていた江戸っ子口調の整備班長の秋山敏郎、愛称はトチロー。彼は急遽、瑞鶴から隼鷹に配属されて航空機を整備していた。進次郎が握り飯を口にしようとした時ー

 

「沖田、あの戦い方はなんだ!?」

 

「はっ…?」

 

「空母の戦闘要員の機銃掃射だ!!」

 

厚木が進次郎の飛行服の胸ぐらを掴み、持ち上げた。

 

「そんな…おれは目の前で味方の艦爆と艦攻部隊の突入を支援しただけです!落とされるところを黙ってちゃいられません!!」

 

「黙れ、艦爆さんと艦攻さん方々に貢献したかも知れんが、お前の戦い方は下手すれば敵機か対空射撃で撃ち落とされる!!それに、味方の巻き添えに喰らうこともあるぞ!!」

 

「は…はい…」

 

進次郎は一時黙り込み、そして握り飯を頬張り、サイダーで押し流した。食事を終えた後、急いで愛機の整備に着手した。

 

「(おれも兄ちゃんに…家族と会うまで、生きて戦わねば!)」

 

艦内のブザーが鳴り、スピーカーから艦内放送が流れた。

 

「『 翔鶴、瑞鳳攻撃隊、敵空母エンタープライズ大破 』」

 

続々とスポーツ実況のように戦況が伝わってくる中、隼鷹に翔鶴と瑞鳳の艦上機が続々と着艦した。

 

「桜井さん、おれたち小隊のように続々と着艦してますね」

 

「仕方ねぇ、翔鶴と瑞鳳の飛行甲板がやられたんじゃ帰る母艦がない。」

 

「桜井、沖田!お前ら!もうじき出撃の準備を急げ!」

 

「「 はっ!! 」」

 

トチローたち整備員が格納庫から燃料と機銃の銃弾補充、増槽の装備を終えた進次郎たちの愛機が並べられ、いつでも出撃態勢を整えた。目標は敵空母の再攻撃だった。

 

「厚木十三、出る!!」

 

「桜井洋介、行きまーす!!」

 

「沖田進次郎、発進します!!」

 

厚木小隊を含む各空母の第2次攻撃部隊が発進、空母の止めを射すために出撃した。当海域に居たのは戦艦サウスダコタと巡洋艦、数隻の駆逐艦と駆逐艦に曳航していた空母ホーネットのみ。

 

「ホーネットだ!」

 

「2時方向、敵機襲来!!」

 

「お出でなすったか、増槽投下!!敵機を叩き落とせ!!」

 

ホーネットとエンタープライズ、ガダルカナル島の戦闘機部隊が第2次攻撃部隊に襲来、厚木小隊は倍ある敵機の群れに迎撃に向かった。

 

「落ちろ!!」

 

零戦を操作する進次郎も善戦。1機また1機が海に向かって落下して、海の藻屑になった。

 

「しまった!!(これで…最後か……)」

 

進次郎の背後に敵機が付きまとった時に、敵機が火を噴いて落ちた。落としたのは洋介であった。

 

「大丈夫か、沖田!!」

 

「さ…桜井さん…!!」

 

「厚木隊長は知らんか!?」

 

「いえ、…わかりません!もしかしてやられたんじゃ…」

 

「あの人は簡単に落とされるパイロットじゃねぇな!」

 

厚木小隊はあらゆる敵機を撃墜する中で、艦爆と艦攻が敵機の猛攻と艦艇の対空射撃の弾幕をくぐり抜け、敵空母ホーネットに止めを刺し込み、大破炎上させた。

 

「ホーネットが燃えている!」

 

「流石は対艦攻撃部隊だ!」

 

「厚木隊長!」

 

「お前たち、よくやったな。敵機はこの空域から退避、おれたちの任務は終わった。空母瑞鶴に帰投だ!」

 

「「 了解!! 」」

 

厚木小隊は残った瑞鶴の艦上機と共に瑞鶴に帰投した。

 

厚木十三少尉  6機

 

桜井洋介一飛曹 6機

 

沖田進次郎三飛曹 4機

 

本日の南太平洋海戦で日本海軍は空母ホーネットは攻撃隊と駆逐艦が止めを刺して撃沈。エンタープライズを大破、当海域を離脱。ソロモン海域でアメリカ海軍の空母が損失、作戦行動可能な空母がゼロになった。

戦略的に日本軍が勝利、この南太平洋海戦でミッドウェー海戦の仇を討った。

ただこの海戦で、勝利の引き換えに日本海軍はアメリカ海軍の艦上機や艦艇の猛烈な対空射撃によって多くの艦載機と熟練パイロットを失ったことは残念でならない。

 

空母瑞鶴ートラック諸島停泊海域

 

「翔鶴と瑞鳳が…」

 

「あぁ…こりゃまたヒデェ………だが、それ以上にハワイ以来のベテランパイロットの損失が著しい!……この先が見えにくい…」

 

進次郎と洋介の雰囲気が暗い中

 

「お前ら、辛気臭いことを言うな!」

 

「「厚木隊長…!?」」

 

「ここまで勝利を得たことはベテランパイロットとお前たちのお陰だ!散った連中の犠牲を無駄にするな」

 

「はっ!!」

 

「はっはっはっ!!いい報せがある。空母部隊の再建のため、空母の改装やパイロットの再編、航空機の整備で山積みだからな」

 

「…と…言うと……もしや………」

 

「内地に帰投する!!」

 

「やった!生きて日本に帰れるとは、夢にも思いませんでしたね桜井さん!」

 

「そうやな沖田、生きて日本の土を踏めるとは…」

 

二人は涙ながら感涙した。だが、厚木は追及した。

 

「もう1つ、おれたちは昇級することになった。」

 

「昇級!?」

 

「そうだ、おれは中尉に。桜井は飛行兵曹長、沖田は二等飛行兵曹だ!」

 

「おぉっ!!」

 

「おめでてぃな!お前ら~!!」

 

「はっはっはっ!!そうだなトチロー。ただし、内地に帰投してからだ!それまでおれのガンルームで飲もう!」

 

「「はいっ!!」」

 

「お前ら~、ほどほどにしてぇけよ~!」

 

数日後、夕日が水平線に沈む頃、空母瑞鶴を含む空母部隊は内地に向けて出航。3人はトラック諸島が見えなくなるまで眺めた。

 

 




長い1日の海戦にて、味方の犠牲で勝利を得た進次郎の小隊。

この戦場で散って逝った仲間たちの無念を秘めて、母国に帰還する。
そして、進次郎と関わる人と運命が。

君は、生き延びることができるのか…?
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