ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第5話 南洋のラバウルと騒動 前編

 

 

 

瑞鶴は呉から横須賀港を向けて出航、横須賀に到着後に陸軍の九九式双発軽爆と機材と関係者を乗せてトラック諸島に向けて12月31日に出航した。

 

元日ー瑞鶴飛行甲板上

瑞鶴のパイロットや乗員は、太平洋上の初日の出に向けて手を合わせて拝み祈った。

 

「四万十川の河川から見る初日の出とは…まっこと違うなぁ~」

 

高知の四万十育ちの進次郎の心は暖かく、そして奥底から興奮した。するとー

 

「オレはあの日の出を見る度に真珠湾を思い出すな~」

 

「厚木隊長…いつか真珠湾の武勇伝、聞かせて下さい!」

 

「あぁ、いつかはな!この新たなる年でも、必ず戦い生き抜くぞ!」

 

「はい!!」

 

「さて、食堂に行くか。桜井が炊事場で雑煮とおせち料理を作っているから喰おう!」

 

「おぉっ!!」

 

進次郎たち、厚木小隊は食堂で正月料理を堪能した。その後1月4日トラック諸島に到着後だった。

 

「転属ですか…?」

 

「そうだ、山本連合艦隊司令長官からの直々の転属命令だ。」

 

「…転属か……瑞鶴と暫く離れることになるんですか…………寂しいな………で…派遣はいつですか…?」

 

転属の話を聞いた洋介は呟いた。そして、次に派遣先の場所と日にちを尋ねた。

 

「派遣先はラバウル、明後日だ!」

 

「…明後日にラバウル……明後日にラバウルですか…!?」

 

「そうだ明後日だ、ラバウルだ!!ラバウルでは日に日にラバウルのパイロットがソロモンの海に散っている。そして、おれたちにも凄腕パイロット小隊として白羽の矢が立たされた。」

 

「…ラバウル……地獄への片道切符を手にしたようなものだな。」

 

「そうだ、地獄の片道切符を手にした以上、家族に手紙を書いて送ってもいい。以上解散」

 

「「 はっ!! 」」

 

今日の訓練、模擬空戦を終えた進次郎は家族と純子に手紙を書いた。手紙の内容としては新年早々にラバウルの派遣、生きるか死ぬかのソロモン。一度実家に帰省した兄の沖田新一郎のことが気がかりだった。

 

ラバウルに転属する当日の早朝。

 

「十三、洋介、進次郎!そして幸吉。気ぃ付けてラバウルに行くんでぃ!」

 

「トチローさん、ありがとう!」

 

3人はそれぞれの愛機に搭乗。瑞鶴の飛行甲板にトチローを始め、整備兵たちが3機の零戦22型甲がいつでも発艦の準備を整えていた。

 

「1番機、厚木十三中尉、出る!!」

 

「2番機、桜井洋介飛曹長、行きます!!」

 

「(行くぞ…ラバウルへ)3番機、沖田進次郎二飛曹、発進します!!」

 

瑞鶴の飛行甲板から3機の零戦がラバウルに向けて飛び立った。

ラバウルまでの飛行中、進次郎は愛機の風防を空け南洋の大海原を見渡した。

 

「先のソロモン海戦と南太平洋海戦の戦いが嘘みたい………」

 

「…そうだな…平和だな………」

 

「おれはラバウルの海亀が食べてみたいな…新一郎」

 

「…沖田さん…おらは狭い機体から出て早くラバウルに到着したいですよ」

 

「狭いのは余計だ金城、乗せてやっているだけでもありがたいと思え!」

 

進次郎の愛機、操縦席の後ろに進次郎の年と変わらぬ少年兵士、金城幸吉三飛曹が搭乗していた。彼に関して遡るところ数時間前、空母瑞鶴。

 

「ラバウルに転属するついでに補充要員の空輸の命令も受けた。」

 

「補充要員…!?」

 

「入れ!!」

 

ピストの出入口から、一人の少年兵が出てきた。

 

「金城幸吉三等飛行兵曹です!ラバウルへの転属を受け、厚木小隊と合流を命ぜられました!!」

 

「あぁ、よろしく。」

 

「お前もラバウルに行くのか。搭乗する機種は…?」

 

「観測機の観測手として味方部隊を支援します!」

 

「それは心強いな。…よし、…誰が金城幸吉を乗せるかじゃんけんで決めるぞ!」

 

「「はい!…「じゃんけん…!!」」」

 

そして、進次郎が負けて本人の機体に搭乗する結果に至った。

 

「はぁ~…ラバウルまで遠いなぁ~…」

 

トラック諸島から飛び立って5時間、隊長機の翼が上下に揺れた。

 

「……厚木隊長機が……敵機か!?」

 

進次郎は慌てて風防から周囲を確認したが、敵の機体や影すら存在しなかった。すると洋介機が接近した。

 

「桜井さん…?」

 

進次郎と幸吉からの視点で、洋介は風防の窓ガラスに書き出した。

 

「えっと……メ…シ……?……メシ……飯か!?」

 

「飯か!随分と飛行しているから昼食ですよ!」

 

「ほんじゃ、飯を食うか」

 

「はい!」

 

昼食の弁当はいなり寿司で、先にサイダーを飲んで頬張った。

 

「旨いなぁ……」

 

「そうですねぇ~しかし、この零戦の無線はどの機体の感度が抜群なのに、なんで手信号ですか…?」

 

「確かにいい無線機だが、緊急時以外は使うなと隊長とトチローさんの指示だ!」

 

「あぁ……バッテリーの節約ですね、なるほど」

 

夕日が海面に近づく頃、小隊の前方に大きな島が現れた。

 

「水平線上に島だ……あれが………………ラバウルか!?」

 

小隊の目の前の水平線上に現れたのはニューブリテン島、そこに日本陸海軍最大のラバウル航空隊基地が見えた。

そして、進次郎たち3機はラバウル上空に飛来。東(主)飛行場に着陸した。4名は搭乗していた機体から降りて、基地の司令に報告をした。

 

「海軍中尉、厚木十三以下4名、本日付でラバウルに転属を命ぜられました!!」

 

「遠いトラック諸島から御苦労だった。儂がラバウル東飛行場の司令、海軍大佐の天沼俊介だ。命令があるまでゆっくり休め。」

 

「「「「 はっ!! 」」」」

 

「ただし、金城三飛曹は別の部署だから海岸へ」

 

幸吉を除く進次郎たち3人は兵舎に足を運んだ。

 

「厚木隊長、桜井さん。色々と航空機が並んでいますね」

 

「あぁ、戦闘機や爆撃機の他に水上機、俺たち海軍だけじゃなく陸軍の飛行部隊、そして高射砲部隊。」

 

「東飛行場の着陸前に、幾つかの飛行場。ブランチ湾内に艦艇や輸送船がある。このラバウルは要塞ですね隊長」

 

「ははは、そうだな…『冒険ダン吉』の気分だ」

 

「このラバウルに来て観光気分か…?」

 

「「「 !? 」」」

 

3人が賑わう中、ヤシの木に持たれている1人のパイロットが呟いた。

 

「誰だ?」

 

「人に名乗らせるにはまず自分から名乗るのが礼儀じゃないか、空母のエリートさん方」

 

そのパイロットの言葉に一理あるが、男優の下士官でありながら偉そうな態度であった。

 

「トラック諸島、空母瑞鶴から今日付けで派遣した。おれは海軍中尉、厚木十三だ!」

 

「海軍飛行兵曹長、桜井洋介です!」

 

「沖田進次郎、二等飛行兵曹です!」

 

「ワシは大賀虎雄、階級は一飛曹!ショートランドからラバウルへ派遣された水上戦闘機パイロットです!……ん?沖田二飛曹は何故ワシの顔を見ているんだ?」

 

「いえ、……初対面なのに……どっかで見た顔だなと……」

 

「俺もだ、……つい最近内地で会った気がするんだが……」

 

進次郎と洋介が頭を抱えて虎雄の顔を見つめていた。

 

「ワシには空母のパイロットに知り合いはおらん、失礼する……」

 

虎雄はその場を去った。そして3人が住まう兵宿に到着した。

 

「ここが兵舎か…」

 

その兵宿は壁はヤシの木、屋根はヤシの葉で重ねた簡素な兵舎であった。

 

「まだ作ったばかりだからいい匂いですよ~♪」

 

「はっはっはっ!そうだな。このあと陸上での久し振りの風呂と食事のあとに酒保でサイダーを飲むぞ!」

 

「「 はっ!! 」」

 

そして、時間が経つにつれて暁が水平線に沈んだ時ー

 

「明日から、おれたち小隊は気を引き締めて任務を遂行するぞ!」

 

「「 はい! 」(…純子…オレはこのラバウルで戦い、生き抜くぞ……)」

 

進次郎と厚木、洋介は酒保でサイダーを飲料する中、進次郎は懐から呉で撮った写真を眺めている時ー

 

パシッ

 

「記念写真か、恋人でも写って……ん……」

 

背後から水上機部隊の大賀虎雄が進次郎の所持する写真を取り上げた。

 

「あっ………大賀一飛曹、返して下さい!オレの大事な写真です!!」

 

「……すまんが、この写真をワシに譲ってくれ……」

 

「やれる訳ないでしょ!見ず知らずのパイロットに譲ってやることができない!身体を張ってでも返して貰い………あてっ!」

 

進次郎は虎雄から写真を取り返そうとした時、すらりと避けて脚で蹴り倒された。

 

「あっ…沖田っ!」

 

「…沖田…?もしかして……」 バキッ 「ぐっ…」

 

進次郎の名字を耳にした時に洋介が殴り、倒れた。

 

「何するんだ!?てめぇ!!」

 

「それは俺の台詞だ、仲間を侮辱する奴は許さん!」

 

「この野郎!あんたが上官であっても……ぶん殴ってやる!!」 バシッ

 

虎雄は手刀で洋介の頭部を強打した。

 

「……ぐるぅっ!!……空手か……剣術の手腕を舐めるな!!はぁっ!!」  バシッ 

 

洋介も手刀で反撃。そして一本背負いで床に打ち付けた。

 

「ぐっ…柔道ならこっちが上だ!!」

 

洋介と虎雄の騒動が勃発。

 

「桜井さん!落ち着いて…」 

 

「大賀さんの仇だ!」 バシッ   

 

「ぐはっ……!?……お前は……」

 

進次郎を強打したのは観測部隊に配属した金城幸吉であった。

 

「金城、てめぇ……恩を仇で返すとは!!」

 

「へっへっへ!オラも混ぜて!!」

 

進次郎と洋介、虎雄と幸吉は酒保室で乱闘が発生した。

 

「馬鹿野郎!!乱闘をやめいっ」 ばしっ  「ぐはっ!」

 

それを見ていた厚木は4人に弾かれて、酒保に入ってきたばかりの1人のパイロットとぶつかった。

 

「いって~…」

 

「それはこっちの台詞だ!!」 バキッ

 

「何を!?……ん、お前は新一郎!?」

 

「十三っ!?面白い...! 前の続きだ!!」

 

「何を~!?」

 

「……っ!?兄ちゃん!!」

 

「お前は……進次郎!?」

 

偶然にも十三は友人であり、沖田進次郎の兄貴である沖田新一郎と再会した挙げ句、ラバウルの酒保区域で6人のパイロットが乱闘、約1時間も続いた。

 

「ばっかもーん!!」

 

ラバウルの司令室にて、天沼俊介海軍司令が6人の顔に絆創膏を貼ったパイロットに怒号を入れていた。

 

「エリート組の空母パイロットが喧嘩を吹っ掛けるとは情けない!」

 

「司令、申し訳ありません!!」

 

「謝るなら軍法会議は要らん!!指示がでるまで貴様たち6人兵舎で共同生活だ!!」

 

「「「「「「 え〜!? 」」」」」」

 

「…これ以上、意義を唱える者は飛行停止するぞ!」

 

「「「「「「 はっはい!! 」」」」」」

 

進次郎たち6人のパイロットは天沼司令の指示で、構築したばかりの兵宿舎の屋根の下で暮らすこととなった。共同になったばかりで特に4人は未だに歪み合っていた。

 

3日後、夕食ー

 

「あっ、俺の刺身!よくも食ったな!!」

 

「へっ!ワシを殴った恨みじゃ!」

 

「あ~!沖田さん、オラの筍のお浸しを食ったな!!」

 

互いに人の副食をつまみ食いや個人トレーニングで妨害しがちな行動をしたりの衝突が免れ兼ねない事態で日に日ににらみ合いが続いた時―

 

パカァァン

 

「「「「痛ってえぇ~!!」」」」

 

「あんた達!いつまで喧嘩しているの!!」

 

「「と……トチコさん…」」

 

進次郎たちをお玉で殴ったのは秋山敏子、通称トチコ。秋山敏郎兵曹長の双子の妹。彼女は給仕と整備の仕事も兼ねている。

 

「こんなところで仲間同士争っていたら得するのは敵さんだ!」

 

「「「っ…!?」」」

 

トチコの言葉で進次郎たちは固まった。

 

「(確かにこの戦時だ、………味方同士が争えば混乱、敵さんが有利になってしまう!!)」

 

「またやったら、食事抜きと1週間便器掃除よ~!」

 

「「「「 え~!! 」」」」

 

トチコの追加した言葉に驚愕、嘆き青ざめた。進次郎たち6人のパイロットたちは以前の酒保での騒動で飛行停止、他の飛行隊はガダルカナル島の空襲に出撃、日に日に犠牲が増すばかりであった。

 

 




空母から南洋のラバウルに転属した進次郎一行。だが、現地にて水上部隊のパイロットと闘争が勃発。
その最中に兄と再会するも、司令から罰則を受けた進次郎たち6人のパイロット。
新たな戦地で、生き延びることができるのか?
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