ラバウル六勇士 ~1944~ 戦場の軌跡   作:鷹と狼

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第6話 南洋のラバウルと騒動 後編

 

 

 

そして1943年2月、ガダルカナル島の日本軍が撤退。ニューギニア東部方面に作戦の重点を移した。

2月25日、ラバウル東飛行場本部。6人のパイロットたちは天沼の元に集った。

 

「上空援護…ですか…?」

 

「そうだ、明後日はニューギニア東部への輸送船8と駆逐艦8が出港する。諸君らはこの船団を援護して貰いたい!」

 

「はっ!!」

 

隊長である厚木十三が上空援護の段取りを整えた。

船団の先陣上空援護としては輸送船を母船として沖田新一郎少尉と金城幸吉三等飛行兵曹ペアの零観、大賀虎雄一等飛行兵曹の二式水上戦闘機。

ラバウル基地からの反復飛行としては零戦隊の厚木十三中尉と桜井洋介飛行兵曹長、そして沖田進次郎二等飛行兵曹であった。

 

2月28日早朝、輸送船8隻、護衛の駆逐艦8隻がラバウルから出港。その内の1隻の輸送船には零観と二式水戦を搭載。新一郎と幸吉、虎雄の3人のパイロットが乗船した。

 

「じゃあなぁ~!!」

 

「必ず生きて帰って来いよぉ!!」

 

ラバウルの港には先日、空母瑞鶴からラバウルに着任したトチローとトチコの双子が見送った。

 

「エナーシャ回せ!!コンターク!!」 ブルルル   グオオオオン

 

ラバウル基地に到着以来、厚木小隊は出撃を迎えた。ラバウルから出撃して数時間、船団の上空に到達。厚木小隊3機は縦陣になって上空で飛行した。

そして、進次郎は輸送船に搭載している零観、二式水戦のパイロットが乗船している兄、新一郎を見つめた。

 

「兄ちゃん…」

 

輸送船ー

 

「進次郎!」

 

「沖田少尉!」

 

「ん…?大賀か……」

 

「弟さんが見守っているなんて、いいですね~」

 

「まぁな、今日は弟が戦闘機に搭乗して空を飛ぶのは初めての光景だ。これは近いうちに、俺は進次郎と空を飛ぶ日は近い!」

 

「あの零戦隊の桜井飛曹長と沖田二飛から訊いたが、ワシの妹も陸軍の戦車兵です。いつか、妹が扱う戦車の守りを」

 

「そうか!お互い兄弟がいて大変だな!」

 

「はい!」

 

新一郎と虎雄は互いに兄弟の存在を称え会う中、陰から幸吉が睨んでいた。

 

「はぁ…、二人は良いなぁ~…兄弟がいて…」

 

輸送船団上空ー

 

「今日は異常なし、ラバウルに引き返すぞ!!」

 

「「 了解!! 」」

 

本日は敵機の来襲が無く、進次郎たち3機編隊はラバウルに帰投した。

 

3月2日ラバウル、朝日が昇る前の早朝。

 

「エナーシャ回せ!!」

 

「「 はい!! 」」

 

トチローの指示で整備員たちはエンジンにハンドルを回して、爆音を唸らせた。

 

「厚木十三、出撃する!!」

 

「桜井洋介、行きます!!」

 

「(よしっ)沖田進次郎、出ます!!」

 

3機小隊の零戦はニューギニア東部方面に航海した輸送船団の護衛へ飛行再開した。

 

「いつもながら、高知と変わらないいい朝日だな~」

 

進次郎はいつもと変わらず洋上の朝日を眺めていた。するとー

 

「『ダンピール海峡にて輸送船団が襲撃を受けている!!急ぐぞ!!』」

 

「『 了解!! 』」

 

「了解!!(襲撃…兄ちゃんが危ない!)」  ギュオオオン

 

進次郎は十三の指示を受け、速度を上げてダンピール海峡へ向かった。飛行して30分後、進次郎たちは肉眼でダンピール海峡に接近、船団上空には米軍の戦爆連合が襲撃、数隻の輸送船が被弾、黒煙を上げていた。

 

「輸送船が……兄ちゃん!」

 

「『桜井、沖田!!急上昇だ、太陽を背に先頭のB-17を撃墜するぞ!!』」

 

「了解!!」

 

3機小隊は急上昇、太陽を背にして降下。

 

「『目標、B-17の操縦席、攻撃開始!!』」

 

先頭のB-17を目標に3機は機体を背に反転しながら縦陣連携、機首の7.7機銃のみの波状攻撃を行った。

 

ダダダダダ  ギュイイィン 「『よし、奴に止めを刺せ沖田!!』」

 

「了解!!墜ちろ!!」  ダダダダダ  ドゥン

 

B-17の防弾ガラス装備の操縦席に機銃を掃射、浴びせられた防弾ガラスは耐えられずに破壊、操縦席のパイロットは被弾、B-17はバランスを崩し墜落、海上に落下した。

 

「はぁ…はぁ…やったぞ…!!」

 

「『助かったぞ、進次郎!!』」

 

「あ…兄ちゃん!!」

 

進次郎機の右側に新一郎が扱う零観が隣接した。

 

「立派になったな進次郎!!」

 

「…兄ちゃん……」

 

「『油断するな新一郎、沖田!!互いに称え会うのはラバウルでしろ!!』」

 

「あ、あぁ十三!」

 

「『厚木隊長!敵機、P-40カーチス、P-39エアラコブラ、P-38ライトニングが多数接近!!』」

 

「『こちらも低空にB-24、B-17が十数機、輸送船団に接近しています!!』」

 

洋介と虎雄がそれぞれの指揮官機に報告。そして、零観の新一郎が指示を仰いだ。

 

「『十三!俺と大賀が爆撃機の襲撃を防ぐ、お前たち戦闘機隊が敵戦闘機の迎撃へ向かって来れ!!』」

 

「『了解した!!桜井、沖田!!敵戦闘機の迎撃に向かうぞ!!』」

 

「『了解!!』」

 

「了解!!」

 

新一郎たち水上機は爆撃機、進次郎たちは敵戦闘機の迎撃へ向かった。

 

「墜ちろ!!」 ダダダダダ ドゥン  「P-39撃墜!!……兄ちゃんと金城…いいペアだな…」

 

進次郎は隊長の十三、洋介、虎雄に引けを獲らない5機の敵機を撃墜。新一郎と幸吉ペアの零観は貧弱な武装であったものの、幸吉の弓の攻撃で、矢で射抜きながら爆撃機を撃墜。

 

「この調子なら船団を……」

 

「『沖田、背後に敵機!!』」

 

「え…?」

 

洋介の連絡で進次郎は背後に振り向くと、P-38が接近、機銃を掃射。

 

「しまった!!…なんの…っ!!」

 

スロットルを減速、機銃掃射を難なく避ける。進次郎はP-38ライトニングの背後に廻り、照準を入れた。

 

「墜ちろ!!」

 

引き金を絞り、ライトニングを狙い撃った。

 

ダダダダダ スッ 「なっ!?」

 

進次郎が狙ったライトニングは必殺の機銃を交わされた。

 

「くそっ!!……獲った!もう一度食らえ!!」 ダダダダダ  スッ

 

再び攻撃をひらと避けられた。そして、二度も続き三度まで進次郎の銃撃を避けられた

 

「(畜生っ…まるで厚木隊長と桜井さんを相手にしているみたいだ!)」

 

再度ライトニングの背後に憑いて、照準を入れた。

 

「入れた、止めだ!」  カチッ カチッ カチッ  「しまった、弾切れだ!」

 

進次郎の零戦の機銃弾が切れてしまった。そして、ライトニングは進次郎の背後に憑いた。

 

「(……これまでか……)」

 

進次郎は青ざめ、死を覚悟した時にライトニングが水平飛行のバランスを失い落下した。

 

「(なぜだ!?)」

 

「『進次郎!!』」

 

「!?」 ギュイイァン

 

進次郎機の横に新一郎、幸吉ペア機が隣接した。

 

「大丈夫か、進次郎!!」

 

「兄ちゃん…!」

 

「『戦闘機パイロットってのは危なっかしいなぁ沖田さん!』」

 

「…金城……」

 

進次郎の危機を救ったのは進次郎と幸吉だった。幸吉の弓で放たれた矢がライトニングの右翼フラップを射ぬいた。

 

「『少尉っ!ライトニングが…!』」

 

バランスを崩し、落下したライトニングは地面スレスレに水平を戻し、スタンレー山へ向かって飛行した。

 

「…しぶとい奴だ…」

 

「『武士の情けだ、進次郎!いつかその時まで腕を上げればいい!!』」

 

「あぁ…兄ちゃん!!」

 

「『桜井!!沖田!!燃料がそろそろ危うい、ラバウルに帰投するぞ!!』」

 

「「『了解!!』」」

 

進次郎機と洋介機は隊長機に集結、そして、水上機の零観の新一郎と幸吉、二式水戦の虎雄が集結した。

 

「『十三!俺たちの乗船した輸送船がやられた!!』」

 

「『そうか、なら共にラバウルへ帰投しよう新一郎!何かのよしみだ!』」

 

「『すまん!』」

 

新一郎たちは十三たち戦闘機隊と共にラバウルへ帰投しようと告げた時

 

 

「『隊長!俺は反対です!脚の遅い下駄履き飛行機と帰投するのは』」

 

「『遅くて悪かったな飛曹長!ワシもです沖田少尉!こんな空母組みの連中と胸くそ悪いです!』」

 

そう、零戦の洋介と二式水戦の虎雄はまだラバウルでの酒保の騒動でまだ歪みあっていた。愚痴りながら、ニューブリテン島のボルゲン湾上空に差し掛かった時ー

 

「『ぐっ……』」

 

「『どうした、大賀!?』」

 

虎雄の水戦のエンジンから黒煙を吹き上げ、不調を起こした。

 

「『エンジン不調!これより墜落する!!沖田少尉、厚木中尉!お世話になりました!!』」

 

「『大賀!!』」

 

虎雄機はボルゲン湾を目掛けて墜落した。だがー

 

「『馬鹿野郎!!』」

 

「桜井さん!!」

 

「『俺と変わらない年齢の奴が命を散らすな!!』」

 

洋介機は虎雄機を追いかけて片翼で水戦を支え、見事に着水させた。

 

「『こちら、桜井!編隊にもど……』」

 

「桜井さん!!」

 

翼の損傷で洋介機はバランスを崩し、海岸の砂丘に不時着した。

 

「桜井さん……よかった……」

 

進次郎は撫で下ろし、4人3機はボルゲン湾上空で旋回、地上と海上の二人の安否確認。機体の燃料が危うく、ラバウルへ進路を向けて帰投した。

 

ラバウル基地ー

 

太陽が東に昇る頃、進次郎と幸吉はいつでも救出できるように機上待機、十三と新一郎は司令室で天沼に洋介と虎雄の救助を直訴、申請した。だがー

 

「なんですって……救助が困難ですか!?」

 

「あぁ、ニューブリテン島は日本の勢力圏と言えども、ボルゲン湾周辺はアメリカ軍占領区域だ。」

 

42年末、アメリカ軍はニューブリテン島西部に上陸。ラバウル基地の日本軍はボルゲン湾へ派兵したものの被害が相次ぐばかりであった。

 

「今からボルゲンに航空機を飛ばしても、敵さんにやられてしまう」

 

「っ!?…そんな……桜井を……」

 

「大賀さんを見殺しにするのですか!?厚木中尉、沖田少尉!」

 

進次郎と幸吉は怒りと悲しみを十三と新一郎に怒鳴り散らしながらぶつけた。

 

「納得する訳がないだろ!あいつは大事なパイロットであり、仲間だ!」

 

「俺と十三は司令の指示を待っていても、埒がない。明朝まで俺たちは必ず、あいつらを救出しに出撃する!!」

 

「「 はっ!! 」(桜井さん、……どうかご無事でいてくれ……)」

 

「おいっおめぇら十三!!新一郎!!進次郎!!幸吉!!あいつらを助けたければ、整備を手伝えってんでぃ!!」

 

「はっはい、トチローさん!!」

 

「わかったよトチロー!相変わらず人使いが荒いな~…」

 

「愚痴ってないで手伝え!!」

 

進次郎たち4人は泣く子も黙るトチロー整備班長の指揮の元でそれぞれの愛機を整備、装備点検を施した。

整備終了後、4人は共同の兵舎で作戦を練っていた。

進次郎と隊長の十三の零戦2機で護衛、零観のみの出撃で当機の幸吉だけラバウルで通信手として待機、それは零観のボルゲン湾の着水で後部座席に洋介と虎雄を即座に搭乗して飛行してラバウルへ離脱する。以上が彼らの味方内部での隠密作戦であった。

 

3月4日 早朝。基地がまだ眠り、静かな時刻で救出する彼らは素早く起床。

 

「沖田、朝飯は持ったか~?」

 

「はい、トチコさんの特製オカカおにぎりとサイダーです!」

 

進次郎たちは装備を施し、それぞれの愛機に搭乗した。そして、十三は無線を開いた。

 

「『この救出作戦だが、ボルゲン湾に飛行して、ラバウル基地へ帰投した時に軍法会議の覚悟をしておけ!』」

 

「「『 了解!! 』」」   グオオォー   「(…爆音…?)あれは…?」

 

進次郎は操縦席から空を見上げると朝日の光りで反射して一機の二式水戦がラバウルへ向かって飛行していた。

 

「二式水上戦闘機……大賀機だ!!」

 

進次郎たちとトチローは二式水戦を追いかけ、当機はブランチ湾の水上機の桟橋付近に着水、砂丘に近付いた。二式水戦の操縦席からパイロットの大賀虎雄一等飛行兵曹。驚くことに、零戦パイロットの桜井洋介飛行兵曹長が降りて、それぞれの指揮官に敬礼、報告した。

 

「桜井洋介飛行兵曹長、0556時を持ってラバウル基地に帰還しました!!」

 

「同じく大賀虎雄一等飛行兵曹、以下を持ってラバウル基地に帰還しました!!」

 

「うん、ご苦労だった桜井、大賀!」

 

「よく、あの米軍の支配下から生きて離脱したな~……あ…」

 

十三と新一郎は二人が生還したことを誉めつつあったが、別のところからオーラを新一郎は感じ摂った。

 

「洋介、虎雄!!なんだ、この水戦は!?」

 

トチローが虎雄の愛機、二式水戦を見たところで幾つか改装を施していた。エンジンは22型の栄エンジン、20ミリ機銃の銃身は22型の長銃身。

言わば、洋介の愛機である零戦22型はエンジンと銃身以外は損傷が激しく、虎雄のエンジンが損傷して洋介の機体のエンジンを移植。22型で自慢の長銃身を装備した。

だが燃料が足りなく、夜間に米軍陣地へ侵入。燃料と糧食、最新式の小銃と弾薬を鹵獲。逃亡して、虎雄の二式水戦に搭乗、飛行して洋介の22型は米軍に鹵獲を防ぐ為に破壊されて離脱。そしてラバウルに帰還した。

そして、以前に険悪だった二人は最初は殴り合い、命からがら脱出した者同士で仲良くなった。

 

「そうか、よかった……あの二人は仲良くなったんだな~」

 

進次郎は二人の行動で和み、安心した。

 

「…良くねぇよ……」

 

「「「 !? 」」」

 

その場にいたトチローはスパナを片手に持ち、怒りを表した。

 

「よくも……よくもおれっちの整備する零戦を、おめぇら壊したな~!!」

 

「「と、トチローさん!……さっき言った行動が……」」

 

洋介と虎雄はトチローの怒りに青ざめ、身体が震え恐怖した。

 

「問答無用ってんでぃ~!!」

 

「「 ぎゃぁ~!! 」」

 

トチローはスパナで二人を殴り掛かり、洋介と虎雄は逃亡。昼食時、洋介はアメリカ軍陣地で鹵獲した最新式M-1小銃と土産品の缶詰を明け渡すまで基地内で追いかけられた。その場にいた進次郎と新一郎の兄弟、十三とトチコ、幸吉は朝食を摂りながら3人の行動を見物していた。

 

「相変わらず、トチローは機械の愛情が人一倍だな十三~」

 

「そうだな~」

 

「十三さん、新一郎さん。でも、洋介君と虎ちゃんが仲良くなってよかったよ!」

 

「トチコさん……そうだな♪」

 

「「「 あっはっはっは! 」」」

 




ダンピール海峡以来、進次郎たちパイロットの絆が半歩進んだ。
だが、この戦いにて戦局は暗雲の道を進むことになるのであった。

君は、生き延びることができるのか…?
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