ダンピール海峡の悲劇で生き延びた4機の(水上を含む)戦闘機と1機の観測機。6人のパイロットと、双子の秋山兄妹は意気投合した。十三と新一郎の様に互いに名前で呼んで親しむ程であった。
3月後半、ラバウル基地 滑走路で進次郎と幸吉が酒保物品の購入帰りの頃だった。
「進次郎さん、またやって来ましたねぇ~」
「そうだな幸吉。隊長から聞いたが、トラック諸島の空母艦載機が援軍として飛行して派遣に来たからな。」
「前にオラたちのように!」
滑走路の掩体豪などにずらりと艦上戦闘機や爆撃機、攻撃機が駐屯、待機していた。
「そう言えば、洋介さんの搭乗する戦闘機は?」
洋介は愛機を撃破した後、彼の搭乗する戦闘機の補充で一旦ラバウルからトラック諸島まで取りに行く。新型機の零戦52型を受領してラバウルに帰投。だが、洋介自信は新型機を隊長の十三に譲り、隊長の使い古しの22型と交換した。
「…ちょっと勿体ないが、桜井さんらしい…」
「そうですよね…これなら、新型機と派遣した機体とパイロットが居れば、米英軍に対して鬼に金棒ですよね!」
「…そうだな……うわっ!?」
二人の上空に二式大型飛行艇が飛来、ブランチ湾に着水した。
「二式大艇だ~!!」
「あれもトラックから飛来して来たのかなぁ~どんな人物だろう~」
夕食は洋介と虎雄が釣りで競った魚での食事。主に、洋介が大物の石鯛を釣り上げて勝利した。給仕のトチコは石鯛を刺身にした。
「これでよし、あとは…ん…?」
「チタタプゥチタタプゥチタタプゥ!」
幸吉は刻みながら刃物で魚を叩き、ミンチ状にして丸め、ラバウル現地の野草を刻み入れ、アイヌのチタタプゥ味噌汁の完成した。
完成した料理は、進次郎たちパイロットとトチローたち整備班が野外で食事を摂った。
「へぇ~、幸吉は沖縄の出身なのに、なんで北海道のアイヌ料理を…?」
「はい、オラの父親は沖縄人で母はアイヌです。主にオラは北海道で狩りと料理を学びました!」
「だから、ダンピール海峡の空中戦で敵機を落とし、弓矢の腕が百発百中か!」
「敵に回すと恐ろしいな~幸吉は」
「幸吉は勿論、トチコさんの献立の料理は美味いなぁ!!」
皆は食事を摂りながら談笑した。
翌日、ラバウルと空母パイロット。基地の整備兵、守備隊たちは司令部に集った。それは昨日、司令部に連合艦隊司令長官山本五十六の訪問。基地パイロットや整備兵、守備隊に激励の言葉を述べた。
その中で進次郎は緊張の余り、大半の言葉しか分からなかった。
夕食、本日の献立は海ガメのチタタプゥ鍋であった。
「海ガメかぁ~」
「案外美味いなぁ~♪」
「オラもです。アイヌの仲間で海ガメを獲るのは滅多にありません。」
「ん~♪」
進次郎たち皆は海ガメのチタタプゥを堪能していた。そして、トチローは海ガメであることに気付いた。
「あれ?なぁトチコ、この海ガメはどうしたんでぃ?」
「ん~?それは……」
「トチコ姐さぁ~ん!」
芋やバナナを摘めた籠を背負った少女がトチコの元にやって来た。
「おっ、サンじゃない!いつもありがとう~♪」
「おっ!?バナナじゃないか♪」
サンはラバウル現地の少女。貧しい家の大黒柱として、基地に糧食を運びながら運搬。トチコがラバウル基地に給士として派遣された時、休憩中に日本語や最低限の教育を施した。少女と親しい関係を築いた。
「トチコ姐さん、ワタシは失礼します」 グウゥ~
どことなく、サンから音が鳴った。
「ふふっ♪皆と一緒に食べる?」
「うん♪」
「皆は異議ない~♪」
「「「「 な~し♪ 」」」」
「はい、お椀とおさじ」
「ありがとう♪」 パクっ 「美味しい~♪」
進次郎たちは、親しくラバウルの少女サンと海ガメのチタタプゥ鍋を美味しく食した。
4月7日、日本軍は伊号作戦を発動した。ラバウルの海軍航空部隊はソロモン諸島、ガダルカナル近海に出撃、その中に進次郎たちの姿もあった。
ギュイイィン 「墜ちろ!!」 ダダダダダダ ドカァン
「はぁ…やった……」
「『また味方が墜ちた……』」
「『この海は……鉄底海峡だ!』」
進次郎たち3機小隊は幾つもの敵機を撃墜。そして、12日にポートモレスビー空襲で陸攻の護衛。14日にミルン湾の在泊艦船及び、ラビ東飛行場の空襲で陸攻の護衛に就いて襲い掛かる敵機と交戦した。
15日、ブナ攻撃作戦は中止。基地の航空機と空母艦載機の消耗が激しく、山本司令長官の命令により、正式に終結した。
夕日が水平線に沈む頃、ラバウル基地のブランチ湾が望む砂丘にて、進次郎たち6人のパイロットと整備兵と女性給士、現地の少女と野外食をした。
「そうか……十三、進次郎。いろいろと苦労したんだな…」
「新一郎兄ちゃん……あぁ……」
「おれが経験したミッドウェイ、南太平洋海戦の戦闘以上に多くの航空機が空と海に散って逝った……」
「あぁ~…頭が狂いそうだ…」
「洋介……」
「洋介さん……」
ラバウル基地防衛を担っていた新一郎と幸吉、虎雄はダンピール海峡の空戦以上、3人は想像を絶する戦闘を感じた。
「皆!心気臭いことせずに、海ガメのチタタプゥ鍋を食いな!!」
「やった~♪トチコ姐さんと幸吉のチタタプゥ鍋だ~♪」
サンはチタタプゥをお椀に入れて、笑顔で食した。進次郎はサンの笑顔を観て励ましを貰い、お椀を手に持った。
「(…美味い…美味いなぁ~)」
進次郎は食して涙を流す姿を見て、十三と新一郎たちもお椀に容れて食した時ー
「美味い…」
「美味いなぁ~…」
「作戦で散って逝った奴らにも、食わせてやりたいなぁ~純子……」
「うん、そうだな~」
「……はっ!!山本長官!!」
「え...? はっ…山本長官!!」
初老の声がした時に十三が立ち上がり、それに気付いた新一郎、進次郎たちがうしろを向いた時、サン以外の隊員が立ち上がって敬礼した。
「旨そうだな、私にも酸味しても良いかね?」
「はっ!!どうぞ、長官。お箸とお椀です!」
進次郎は山本長官に箸と具材を入れたお椀を渡した。
「おぉっ…美味いなぁ〜!味は勿論、斬新な歯応えだな~♪何の具材何だね?」
「はっ!!海ガメの肉です!」
長官がパイロットたちに尋ねた時、トチコが応えた。
「海ガメ?」
「はい!!いつもラバウル現地の少女が送ってくれる海ガメです!」
「こんにちはー♪山本のおじ様♪」
「うん、いつもパイロットたちの為にありがとう。そして、この歯応えは?」
「はっ!!オラは北海道のアイヌ出身です!アイヌ郷土料理のチタタプゥです!」
「ほぉ~チタタプゥか…北海道のアイヌ料理もまた珍味だなぁ~♪」
幸吉も自身もアピールして良い反応を戴いた。山本長官も進次郎たち兵士と共にチタタプゥ鍋を堪能。
「君たちのチタタプゥ鍋は実に美味かった。わたしは後日、ブーゲンビル島へ前線訪問する。このラバウルに帰投したら、また、アイヌ料理を食べさせてくれ。」
「「「 はっ!! 」」」
進次郎と新一郎。十三と洋介、虎雄と幸吉、トチローとトチコは連合艦隊司令長官、山本五十六に対し敬礼をした。サンはご褒美として、金平糖を戴いた。
1943年 4月18日 山本五十六連合艦隊司令長官はブーゲンビル島上空で戦死。3日後、長官の訃報により、関わった進次郎たちは嘆き哀しんだ。
「……あの護衛で…おれ達も参加していれば…」
夜、進次郎は砂丘で横たわりながら星空を眺めた。すると
「進次郎!」
「兄ちゃん…!?」
「天沼司令に俺たちパイロットの招集が掛かっておる。今すぐ来い。」
「あぁ…何だろうなぁ~?」
「呼ばれたこと以外、分からん!進次郎、今さら悔やむな。長官はお前たち戦闘機パイロットの消耗を防ぐ為に拝領したんだな。」
「…………」
新一郎は進次郎に助言を与えつつも、どうも納得できなかった。
ラバウル基地司令部に進次郎と新一郎兄弟の他に十三と洋介、虎雄と幸吉が集っていた。
「貴様たち6人が集まったのは他でもない!これからの戦況はどう思う?」
「「「はっ…?」」」
天沼の言葉で進次郎たち6人は固まった。確かにこの幾つかの南洋諸島の作戦で陸軍は撤退や敗走。ソロモン海戦で艦艇の相次ぐ被害。ガダルカナル島とポートモレスビー上空による待ち伏せの消耗だった。
「ここだけの話だ。山本長官はこれらの被害が相次いで往けば日本は危うく、我が祖国の未来がない!」
「「「 !? 」」」
天沼の言葉で6人は絶句、言葉を失った。
「そんな……おれ達は、あいつら米英の侵攻を食い止めない限り、祖国の滅亡を待つばかりですか!?」
十三が進次郎たちの代わりに唱える時、司令室の棚の上にトランクケースを取りだし、封を開けた。
「貴様たち気休めになるか分からんが、長官がお前たちに渡す様に申告を受けた。」
「…短剣……?」
天沼がトランクの中を取り出したのは、6本の短剣であった。彼は一人一人のパイロットに短剣を譲渡。そして最後に言及した。
「山本長官からの伝言だ。『命ある限り生きて、守護者になれ!』そして、特殊部隊『ラバウル六勇士』として編成せよ!」
「「「 ……っ!?…はいっ!! 」」」
6人は司令天沼俊介大佐に対して敬礼した。
短剣の受領式を終えた後、進次郎たちはいつもの砂丘でトチローとトチコ、サンの元に集う時、ラバウル六勇士の結成で整備のトチローとトチコを含み、必要な訓示を考案していた。
1、 情報を持ち帰る
2、何度も生還してダメージを与える
3、命どぅ宝
6人のパイロットは短剣を鞘から抜き、音をたてながら鞘に収めた。
整備兵、給仕から手製の盃を受けた。
「それでは、一息に飲み干してください。」
クイっ
この場で盃を交わし、ラバウル六勇士が結成された。
山本五十六連合艦隊司令長官が戦死したブーゲンビル島方向に向けて。一人は三線を奏で、歌を唄った。
ラバウル航空隊、海の進軍。椰子の実、故郷の空。最後に我は海の子を合唱した。
「(純子さん、欧州の留学はどうですか…?)」
連合艦隊司令長官、山本五十六海軍大将から短剣を頂いた進次郎たち、零戦と水戦、観測機の有能なパイロットたちはラバウル六勇士を編成した。
そして、沖田進次郎はこの地で生きることを決意した。
次の話は、欧州のドイツに留学した豊田純子たち戦車隊員の任務は、ドイツの車輛で地を掛ける。