さあ、運命の分かれ道、枠順抽選会がやってきたよ。
抽選はアルファベット順とのことで、
頭文字が『F』の俺は比較的早いほうでのくじ引きになるな。
4番目か?
「ファミーユリアンさん! またお会いできまシタね!」
抽選会場に入るなり、親しげに日本語で俺を呼ぶ声が轟いた。
この声と独特なイントネーションは……
振り返った先には案の定の人物。
「これ以上の喜びはありまセンワ!」
「ああ、うん、久しぶり」
「ええ!」
そりゃ顔を合わせるとは思っていたけど、いきなりとは驚いた。
俺からも答えるなり、手を取られてぎゅ~っと握られる。
だから手加減しろってんだよ
おまえウマ娘のパワー制御できてないんじゃないの?
あの走りっぷりといい、大いに怪しいところだ。
ああでもそうすると、日本の
でもスズカパイセンは、粗暴なところはないからセーフ。
「聞いてもいいかな?」
「なんナリと!」
もちろん顔にはそんなマイナス感情は微塵も出さず、
背中に隠した痺れかけの右手をひらひらさせつつ、
ちょうどいい機会だから、聞きたかったことを聞いてみよう。
「なんでアメリカに? それもダートで驚いたよ」
謎に尽きるローテについて。
いくら中距離が得意といっても、2000m路線ならイギリスのチャンピオンSだし、
アメリカだとしてもBCクラシックじゃなくてターフだろと。
「それはもう、あなたが出るからに決まっていますわ」
どんな返答が来るのかと思っていたら、
それはもう良い笑顔でこんなことを言われたんですが?
「ワタクシからトレーナーさんにお願いしましたの。
凱旋門賞の後、あなたはアメリカに渡ってBCに出走すると
お聞きしたので、ぜひもう1回一緒に走りたいと思いまシテ!」
「あ、そうなんだ……」
「はい! またご一緒できるのでうれしい限りデスワ!」
予想外……でもなかったけど、なんでこうなるのかなあ?
シリウスじゃないけど、俺に付きまとってくるヤツ多すぎ問題。
そのシリウスは、BCターフに出走する。
あいつも抽選に参加するので、同じ会場に来ているよ。
さっき見かけたから、軽くサインを送っておいたんだが、
相変わらずのツンデレぶりで目を逸らされちゃったけどな。
「ダートの経験はあるの?」
「ありませんワ!」
ないんかい。
そりゃヨーロッパの子だし、ある子のほうが少ないわなあ。
はぁ、やれやれ。
サンデーもそうだし、どうしてこう──
「ファミーユリアンさん」
「──!」
ニコニコしていたイブンベイから、
突如として放たれてきた、殺気含みの意味深な視線。
「
「……わかったよ」
「約束デスわよ! ではまた!」
言うだけ言って、イブンベイは離れていった。
……参ったねぇ。先に宣戦布告されちゃったよ。
これはもう逃げることは許されないなあ。
いや、レースでは逃げざるを得なくなったんだけど。
例のゲート位置のせいで、外枠引いたら、
後方作戦かなと思ってたんだが、外からでも逃げなきゃダメかい?
それはマジで勘弁してもらいたいな……
真ん中より外からハナに立つって、無理ゲー過ぎない?
下手しなくても体力消耗するのが目に見えているんですがががが。
「それでは、抽選を始めます」
主催側から声がかかり、抽選会が始まった。
BCは1日目と2日目に分かれていて、
1日目のほうはジュニア級の各レース、
2日目でクラシック級以降のレースが行われる。
よって、シリウスが出走するターフも、
俺が出走するクラシックも2日目だ。
抽選はレースごとに、施行される順番で招集されて行われる。
それ以外のメンバーたちは別室で待機だ。
クラシックはメインレースなので、1番最後*1。
モニターで様子を確認しつつ、のんびり待ちましょうかね。
途中、見知った顔が登場する。
ディスタフ*2に、ドバイで相まみえたバヤコヤが出走。
ターフでは、俺と同じく凱旋門賞からの転戦で、
インザウイングス、ソーマレズがくじを引いた。
そしてもちろんシリウスも。
結果は大外枠の12番。
引いた瞬間に不敵な笑みを浮かべ、
主催者に番号が書かれたくじを見せつける余裕な態度を見せた。
そうだよな、あいつはそういうやつだ。
大外枠を先に引いてくれたし、
不運はあいつが持っていってくれたと思うことにしよう。
ターフの抽選が終わって、クラシック出走組の招集がかかる。
はてさて、何番枠になることやら。
「ミズ・ファミーユリアン、引いてください」
予想した通り4番目でくじを引く。
外枠来るな来るな来るな来るな来るな……!
そう念じながら引いたくじはなんと。
「5番です」
「ファミーユリアン、ナンバーファイブ!」
5番枠! やったね!
ねんがんの うちわくをてにいれたぞ!
スーちゃんが示したラインにも合格で、上々の結果だろう。
そう喜んでいたら
「2番ですわ~!」
「イブンベイ、ナンバーツー!」
イブンベイはさらに内側の2番枠を引き当ててんだよ。
俺よりひとつ前の順番だったから、度肝を抜かれたぜ。
同じ思いだったのか、
万歳して満面の笑みを見せているイブンベイ。
天はゴリラに味方するのか?
なんでやねん。
BC当日。
1日目は金曜、2日目は土曜日になる。
ドバイといい、メインレースを土曜日にやることも結構あるよな。
必ず日曜午後になる日本とは大違いだ。
日本との時差は14時間だから、日本では夜中から早朝になるのかな。
またまた生で観戦するにはつらい時間帯だ。
それでも結構な数の人が、わざわざ早起きしたり、
徹夜したりして見てくれるんだろう。感謝しかない。
彼らの思いに応えるためにも、
海外遠征を良い形で終えるためにも、勝ちに行くぞ。
開催1日目のレースは、何事もなく無事に推移した。
ジュニア級の若い子たちは、活気に満ち溢れていて、
見ているだけでこっちにも元気を与えてくれるようだ。
まあクラシック級以降が、元気がないってわけじゃないけどね。
で、だ……
俺たちも出走するBC2日目が始まったわけなんだが、
これが大問題だったんだな。
ケチのつけ始めは、ダート短距離ナンバーワン
決定戦であるBCスプリントでの出来事だ。
まずは、ミスターニッカーソンという子がレース中に疾病を発症して倒れ、
後方を走っていたシェイカーニットという子が避けきれずに激突、転倒。
2人とも競走中止に追い込まれる。
それだけでは収まらずに、今度は最終直線で、
欧州で結果を残し乗り込んできた現役短距離最強のデイジュール*3が、
抜け出して勝利目前というところで、何かに驚いて跳び上がる*4という事態が発生。
これにより減速してしまい、気を取り直して走ったが、
僅かに差されて2着という結果に終わる。
大本命がアクシデントで敗れたことに加えて、
前述の2人が救急搬送されるという、なんとも後味の悪いレースになってしまった。
そして極めつけは、ティアラダート路線の最高峰であるBCディスタフ*5。
圧倒的強さからニューヨークトリプルティアラ*6を達成し、
伝説的名ウマ娘と呼ばれるラフィアンの再来*7と謳われるゴーフォーワンドが1番人気。
続く2番人気は、ドバイで対戦したバヤコヤ。
レースも人気2人の争いとなり、直線で一騎打ちの模様を呈していたのだが、
突如としてゴーフォーワンドに故障発生。彼女はもんどりうって転倒し、
意識がないのか動かない。
再来の元となったラフィアンも、
レース中の故障が元で競走中止しているとかって話で。
二つ名だけではなく、同様のアクシデントに見舞われるとは……
実況によると、ラフィアンが故障したのもここ、
ベルモントパークだったというから、
何ともいたたまれない話である。
そんなところまで似なくてもいいのにという、
まさに『ラフィアンの悲劇』。
バヤコヤはそのままゴールして勝利したが、
喜べるような状況ではなく、表彰式では涙を流しながら、
トロフィーを受け取ることになった。
立て続けに起こった異常事態により、
レース場全体が異様な雰囲気に包まれる中、
プログラムは準メインのターフを迎えた。
大外の12番枠から、シリウスが出走する。
あいつのことだから、アクシデントが起ころうが何だろうが、
特に何も感じてなさそうだけど……
なんか気になってしょうがない。
このままでは落ち着けそうにないので、
ちょっと様子を見に行ってみようか……
自分の控室を出て、シリウスの控室へと向かう。
すると──
「……あ」
「来ると思ったぜ」
シリウスのヤツ、すでに勝負服を着こんで部屋から出て、
ドアの前で腕を組んだ仁王立ち状態で待ってやがった。
なんだと? 俺が来るのを予想できたってのか?
「続けざまのアクシデントで、
私のことも心配になったとか言うんじゃあるまいな?」
「……」
ドヤ顔で言ってくるシリウス。
図星なので何も言い返せなかった。
「ハハッ、相変わらずナーバスなやつだ」
「……うるさい」
その、うれしそうな顔がむかつく。
し、心配したけど、そういうんじゃないんだからな!(意味不明)
「他人よりも、自分の心配をしろ」
「……わかってるよ」
急に真顔に戻って言うのはやめろ。
んで、正論を振りかざすのも禁止だ。
くそっ、来るんじゃなかった……
恥かかされただけの格好じゃないか。
「大丈夫だ」
「え? うわっ」
そう言って歩み寄ってきたシリウスが、
ぽんっと俺の頭の上に手を置いて──
「また世界をアッと言わせてきてやるから、
安心して見ていろ」
「ちょっ、待っ……髪が~!?」
ぐちゃぐちゃっと乱暴に髪をかきまぜた。
せっかくセットした髪が!
って、なんか前にもあったぞこんなこと!?
「じゃあな」
やるだけやって行ってしまうシリウス。
うぬぬ……おのれ~っ。
結果を出せなかったら承知しないからな!
「……がんばれ」
廊下の奥に進むにつれて小さくなっていくシリウスの背中を、
そう言って見送った。
『日本の皆さん、こんばんは。
もう、おはようという時間でしょうか』
日本向けの衛星中継が始まる。
『こちらアメリカはニューヨーク近郊、
ベルモントパークレース場です。
日本からファミーユリアンとシリウスシンボリが出走します、
北米レースの祭典、ブリーダーズカップの模様をお送り致します』
『ベルモントパークの天候は晴れ。バ場状態は、芝コースが良、
ダートコースも良となっております。
解説のゴーダさん、これについてはいかがでしょう?』
『はい、比較的良好なコンディションですね。
ファミーユリアン、シリウスシンボリ両人にとっては、
実力通りの力を発揮できる状態だと思います』
『問題なさそうですか?』
『そうですね。ただひとつご注意いただきたいのは、
ダートコース、こちらは砂というより土が主になっていますから、
水分を含むほどタイムが遅くなります』
『つまり、脚抜きが良くなってタイムが上がる日本とは、
まったくの逆だということですか』
『そういうことになります。良だと芝並みのタイムが出ますね。
高速決着が得意なファミーユリアンにとっては、
ドバイよりも期待できるというところでしょうか』
『なるほど、期待しましょう!』
こういったところで冒頭のやり取りが終わる。
次は、避けては通れない情報も、伝えなくてはならない。
『盛り上がっているところ、水を差すような情報で申し訳ありませんが、
今回のBC、アクシデントが相次いでおりまして』
『すでに事故発生で救急搬送された子が3名います。
また、BCスプリントでは、大本命デイジュールが
敗れるという波乱も起きております。
ゴーダさん、居たたまれない事故が起きてしまいました』
『そうですね……特にBCディスタフのゴーフォーワンド。
圧倒的な強さで勝ってきてまして、昔、それ以上の結果を残した
伝説的ウマ娘、ラフィアンの再来と謳われていたわけなんですが……』
『結果まで、ラフィアンと同様ということになってしまいましたね。
しかも、舞台も同じベルモントというのが、さらに悲劇性を増しています』
『はい……残念です。
とにかくこれからのレースの無事と、彼女たちの怪我が
少しでも軽いことを祈るしかありません』
実況席の何とも言えない雰囲気は視聴者にも伝わり、
日本勢が出走するレースを前にして、不穏な空気は伝染していった。
『それでは準メイン競走、BCターフが間もなく発走となります。
今年、海外を転戦してドバイシーマクラシックと英インターナショナルSを制し、
G1を2勝しているシリウスシンボリが出走します』
『シリウスシンボリは締め切り直前で4番人気。
1番人気は凱旋門賞から転戦のインザウイングスとなっておりまして、
2番人気はアイルランドからの遠征で、前走2週前のカナディアン国際S*8を
制しているフレンチグローリー。3番人気は、インザウイングスと同様
凱旋門賞からの転戦組のソーマレズとなっております』
『実績でも、シリウスシンボリは彼女たちに引けを取りません。
大いに期待したいところであります』
『さあ発走時刻を迎えました。
各ウマ娘、ゲートに収まります』
『態勢整いました。ゲートが開いてスタート!』
特に問題は起こらず、BCターフがスタートする。
『カコイーシーズ先手を取った。
シリウスシンボリも出てきて2番手につけます』
まずはカコイーシーズが出てきてハナを奪う。
大外枠からシリウスも先行して、番手の位置を確保した。
『そのうしろソーマレズ3番手』
『インザウイングスはスタートが良くありませんでした。
後ろから2人目につけています』
1番人気のインザウイングスはスタートで後手を踏み、後方から。
しかし全体的にバ群は捌けず、ほぼ一団という形で向こう正面へ。
『先頭はカコイーシーズ逃げている。
シリウスシンボリ2番手変わりません』
『インザウイングス内から押し上げていっています』
先頭カコイーシーズ、1バ身でシリウス。
後方に位置していたインザウイングスは、
上手く内を突いてポジションを徐々に上げていっている。
レースはそのまま大きな動きを見せることなく、
3コーナーから4コーナーへと差し掛かった。
『カコイーシーズまだ先頭。
シリウスシンボリ外から並びかけて4コーナーを回ります』
『後ろからウィズアプルーヴァルとインザウイングス迫ってきた』
直線に向いたところで、シリウスが捉えにかかる。
その後ろからは、G1ではまだ実績のないウィズアプルーヴァルと
1番人気インザウイングスがやってきた。
『カコイーシーズをかわしてシリウスシンボリ先頭に出た!』
『ウィズアプルーヴァルとインザウイングス、
並んで追ってくる!』
直線半ば、シリウスがカコイーシーズを競り落として先頭に立った。
しかし、直後にはウィズアプルーヴァルとインザウイングスが迫る。
脚色はシリウス対ウィズアプローヴァルで五分五分。
シリウス対インザウイングスで、インザウイングスが優勢。
『がんばるシリウスシンボリ! がんばれシリウス!』
『インザウイングス追い込む! 差がほぼなくなってきた!
ウィズアプルーヴァルはやや劣勢か』
シリウスとインザウイングスが完全に並んだ。
その両者よりは勢いがなく、ウィズアプルーヴァルは3番手。
『残り100m!』
『シリウスシンボリ、インザウイングスの激しい叩き合い!
2人とも必死の形相でゴールへ向かう!』
脚色では劣勢だったシリウスだが、驚異の根性を見せて盛り返し、
共に死力を尽くした叩き合いへと移行。
『シリウスシンボリ! インザウイングス!
競り合ったまま並んでゴールインッ!』
『さあどっちだ!? まったくわかりません!』
2人は並んだままゴール板を通過。
半バ身遅れてウィズアプルーヴァルが3着で入線。
結果は、写真判定へと持ち込まれた。
5分以上に及んだ長い判定の末……
『……あ、いま結果が出ました。
1着インザウイングスです。インザウイングスBCターフ制覇!
シリウスシンボリ惜しくもハナ差で敗れました!』
のちの主催者発表によると、
両者の差はわずか3センチ*9だったという。
ブリーダーズカップターフ 結果
1着 インザウイングス 2:29.6
2着 シリウスシンボリ ハナ
3着 ウィズアプルーヴァル 1/2
惜しかった。
もう、そんな言葉しか出てこないくらいの結果だ。
欧州G1を勝っている一流と、堂々と真っ向勝負してのハナ差2着。
十分に誇っていい結果だと思うけど、
シリウス自身も、史実とは違って、向こうでG1勝ってるわけだし、
好走したから満足だなんて、とても思えないはずだ。
なんて声をかけていいものなのか悩むが、
とりあえず出迎えてはやるべきだと思ったので、
控室を出て、引き上げてくるのを待った。
「……!」
「おつかれ」
程なくして、悔しそうな顔のシリウスが現れた。
一声かけると、さらに悔しそうにそっぽを向く。
「惜しかったね」
「……負けは負けだ。惜しいも何もない」
搾り出すような声のシリウス。
両手はぎゅっと握られており、悔しさが手に取るようにわかる。
そうだよな……悔しいよな……
「っ」
そう思った途端、身体が勝手に動いた。
足早に歩み寄って、シリウスを正面から抱き締める。
「おまっ……!」
「がんばったね、よくがんばった。誇っていいよ」
「……」
最初こそ抵抗するそぶりを見せたシリウスだったが、
声をかけてポンポンと後頭部を撫でると、すぐに大人しくなった。
それどころか、俺の肩に顔を乗せてくる。
「……リアン」
「うん?」
「すまん……勝てなかった……」
「謝ることなんてないよ。言ったでしょ。
よくがんばった。誇るべき結果だよ」
「あぁ……」
シリウスの身体からさらに力が抜けたのが分かる。
完全に弛緩状態だ。
凱旋門の時といい、こうまでして俺に付き合ってくれたんだもんな。
これで奮起せずしてどうするんだって話で。
しばらく抱き合っていたところで、クラシック出走者の招集がかかった。
「ごめん、行かなきゃ」
「……ああ」
身体を離し、そう声をかける。
頷いたシリウスの顔は、なんとも形容しがたいものだった。
名残惜しそうでもあり、解放されてうれしそうでもあり。
お、そうだ。
不意に思いついたことを提案してみようか。
「ねえシリウス」
「なんだよ?」
「ベルトについてるそれ、貸してくれない?」
「ああ? なんだって?」
眉をへの字に曲げて、たちまちのうちに怪訝そうな顔になるシリウス。
勝負服のベルトに下がっている、なんていうのかわからないけど、
赤いテープ状のやつ。
「……コレか?」
「そう、それそれ」
シリウスが、自分で持ち上げて見せつつ言うので、頷く。
「帯に付けさせてもらおうかなって。
ほら、凱旋門の時と違って、今度はあんたがいないでしょ?
それ着けてれば、なんか一緒に走ってる気になるかな~、なんて」
「………」
我ながら、なんて即興で馬鹿らしい言い訳なんだ。
見ろ、シリウスの顔の怪訝さが、ますます増していくではないか。
「ふん……」
しかし次の瞬間、ふっと笑ったかと思うと
「ほら、持ってけ」
ベルトからソレを外し、渡してきた。
「いいの?」
「なんせ、私がいないとダメダメな
凱旋門賞ウマ娘様だからな、おまえは」
「そういうことにしておいて」
貸してくれるなら何でもいいよ。
後から考えると、なにしてんの俺って悶えそうな
言動と態度だったが、このときはそうするのが最優先だったんだ。
「ほらよ」
「ありがと」
シリウスから受け取ったソレを、
自分の勝負服の帯に付けようと……
……あれ? これってベルトがないとダメなやつかい?
ベルトの輪っかについてる金具を通さないと固定できないっぽい。
てっきりクリップかなんかで直接付いてるのかと思ってた。
専用の金具がないとダメじゃんこれ。
どうしよ?
「……ったく」
慌てる俺を見て、ため息をつくシリウス。
「きっちりやる必要なんかないだろ。
帯の中にでも仕込んでおけばいい」
「あ、そうか。なるほど」
確かにシリウスの言うとおり、身に着けられていればいいわけだから、
付け方にまでこだわる必要はないわけだもんな。
それでは早速、帯の中に入れておくとしよう。
「やれやれだな」
そんな様子を見て、苦笑しているシリウス。
つられて俺も笑った。
「ほら、さっさといけ。
遅刻して除外になっても知らねえぞ」
「うん、行ってくる。それじゃ」
よし、これで百万の援軍を得たにも等しい。
仇は取ってやるから見てろよ。
遅れそうなのも事実なので、早足でパドックへと向かった。
リアンが去った後のシリウス
「どこか抜けてる奴だ」
姿が消えたほうを見せつつ、呟く。
その顔には、相変わらずの苦笑が浮かんでいる。
「……リアン」
笑みが、優しげなものに変わった。
「勝ってこい。おまえがナンバーワンだ」
リアンが、リアンがデレた!?
遅ればせながら新年のご挨拶を申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
-
ドバイワールドカップ
-
ドバイシーマクラシック
-
ガネー賞(仏)
-
クイーンエリザベス2世カップ(香港)
-
アメリカ遠征