転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第15話 孤児ウマ娘、冬から春の様子

 

 

 

季節は秋が終わり、冬になった。

年末と言えば、レース界も毎年恒例の総決算を迎える。

 

まずは、阪神ジュベナイルフィリーズの結果から。

こちらは、史実で桜花賞馬のダイアナソロンが制し、世代最初のG1バになった。

史実ではまだ牡馬が出られた時代だから、参考にはならない。

 

続いて、ルドルフが不在の朝日杯とホープフル。

 

朝日杯は史実通りにハーディービジョンが勝利。

こっちも史実にはないホープフルステークスは、皇帝のライバル・ビゼンニシキが圧勝した。

 

原作では手の届かなかったG1の勲章を手にした彼女は、何を思う?

もう少し、周りと交流してくれてもいいんじゃないかな。

 

勝ちウマ娘インタビューでも、相槌くらいしか喋らなくて、

インタビュアーさん困ってたよ。

ウイニングライブでは見事なダンスを披露してたけど。

 

シービーが回避した有記念では、シービーと同世代のリードホーユーが戴冠。

2着にも同期のテュデナムキングが突っ込んで、

カツラギエース、ピロウイナーと並び、シービー世代の強さが際立つ結果となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年が明けた。

 

年越しの瞬間は、1人寂しく過ごしてましたよ。

というか、寮の部屋で普通に寝てた。

 

ルドルフ?

あいつは実家に帰ってるよ。

 

え? 俺は呼ばれなかったのかって?

 

もちろん呼ばれた。

でも、今回ばかりは遠慮させてもらった。

 

他の親族とかも全国から集まるらしいし、

スーちゃん合宿のおかげで、結構な頻度でお邪魔してるものだから、

正月くらいは本当の家族で水入らずさせてやりたかった。

 

たいそう不満そうな顔してたけど、そう伝えたらわかってくれたのか、

最後は笑って頷いてくれた。

 

とか思っていたんだけど、連日のようにアプリに連絡が届く届く。

ルドルフ自身だけではなく、お父様やお母様、

果てはスーちゃんを含んだ全員で写した記念写真みたいなのまで送ってくる始末。

 

冬休みの課題を早めに済まそうと思って机に向かってたんだけど、

数時間おき、早いと10分おきとかに携帯が鳴るものだから、

集中なんてできたものじゃなかったよ。まったくもう。

 

しまいにゃ電源切った。

 

で、新学期。

重要なのは、ここでクラス替えが行われたことだ。

 

これは所謂『クラシック登録』に関係することで、

トレセン学園のクラスには、A組、B組、C組の3つが存在している。

 

その中のC組に所属している生徒だけが、クラシック競争に出走できる関係で、

クラシック級に上がったところで、改めてクラス分けが行われるというわけだ。

 

ルドルフをはじめとして、現時点でオープンバになっている面々は、C組。

俺なんかの未デビュー、未勝利の連中は、A組。

他のメンツはB組といったようになる。

以後、オープンに上がった段階で、C組に転籍となるシステム。

 

よって、ルドルフと俺は、クラスが別々になってしまった。

これにも彼女は残念がっていたが、致し方ない。

一緒になるには俺がオープンに上がるしかないわけで、現状では不可能である。

 

中には、年明けデビューでクラシックを制した猛者もいることにはいるが、

今の俺にそれを求められても困ってしまう。

 

まあクラスが変わっても、ルームメイトであることは変わらない。

引き続きよろしく頼むよ、親友。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2月の頭。

俺はもとより、ルドルフですら思いもしなかったニュースが、

唐突に舞い込むことになる。

 

それは、1時間目が終わった後の、休み時間のことだった。

 

「リアンッ!」

 

突然、ルドルフが教室に飛び込んできた。

 

おま、どうした、そんなに血相を変えて。

違うクラスなんだから、一応は遠慮したらどうだ?

 

「これを見ろ!」

 

そう言って、ルドルフから1枚の紙を渡される。

 

「これは?」

 

「いいから読め! それでわかる」

 

「わかったよ」

 

こいつがここまで慌てているというのも珍しい。

いったいなんだというんだ?

 

えー、なになに?

トレセン学園、トレーナー試験新規合格者一覧?

 

ほう? 今年度のトレーナー試験の結果発表か。

こんなものをなぜルドルフが持ってきたのかは不明だが、

読めと言うんだら、中身まで確認しよう。

 

リストに載っている名前を、1人ずつ確認していく。

 

「……ん?」

 

その中に、気になるというか、1人だけ目立つ人物がいることに気づいた。

気づいて、しまった。

 

「ルドルフ、これ……」

 

「偽物だとしたら、我がシンボリ家は、経歴詐称で訴え出ねばならなくなるな。

 むしろ、よくぞ堂々とその名を名乗ったと褒めてやるべきかな?」

 

「……だよねぇ」

 

もう1度、視線を紙に落として確認する。

間違いなく、その名前が記載されていた。

 

「『スピードシンボリ』……」

 

はい、そうです。

スーちゃんこと、伝説のウマ娘スピードシンボリその人の名が、

そこには記されていたのだ。

 

1人だけカタカナの表記なものだから、目立ってしょうがない。

 

「ルドルフは――」

 

「知っていたら、こんなことしていない」

 

「だよねぇ」

 

聞きたかったことを先回りして言われてしまった。

もちろん俺も知らなかったから、2人して苦笑を浮かべる。

 

あの人、家族にも内緒で受験してたのかよ。

勉強しているというのは聞いてたけど、本格的にやってたのか。

 

というか、なんで今なんだ?

トレーナーになるというなら、現役を退いてすぐになりそうなものだが。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

ここで、2時間目が始まるチャイムが鳴ってしまった。

 

「時間か。私は自分の教室に戻る。また後で話そう」

 

「うん」

 

そう言って、戻っていくルドルフを見送る。

 

スーちゃんがトレーナーに……

ということは、当然トレセン学園に常駐することになる。

 

学園内でも指導してもらえるかな?

あわよくば、契約とかしてもらえちゃったり?

 

いや、期待するのはやめておこう。ぬか喜びするのは嫌だからな。

どこかぶっ飛んでるところもある人だから、彼女なりの事情があるのだろう。

 

ああ、でもそうすると、あのミニ合宿はもう終わりか。

トレーナーになったのなら、他の子の面倒を見ている暇なんてないはずだ。

 

合格をお祝いして、快く送り出してあげるのが、俺にできる唯一の……

って、俺なんかが言えたことではないな。

 

スーちゃんのトレーナー人生がうまくいくことを、祈るだけにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手配された会見場は、あらゆるメディアの記者たちでごった返していた。

このあと会見を開く彼女の、往年の、そして現在でも人気が高いことを示している。

 

午後1時、事前に発表された開始の時刻。

 

――ザワザワッ……!

 

記者たちからざわめきが漏れる中、スーツ姿の彼女は時間通りに現れ、

さすが名門出という優雅な動作で歩き、颯爽と用意された席へと着いた。

そして、1度、会見場を広く見渡すような仕草を見せてから、マイクを手にした。

 

それだけで、ざわついていた場内が一瞬で静まり返る。

 

「このたびはお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。

 すでに皆様にお配りした資料にてご存知のことかと思いますが、

 私スピードシンボリは、トレセン学園のトレーナー試験に合格したことを、

 ご報告させていただきます」

 

たくさんのフラッシュがきらめく。

そう、これは彼女の、トレーナー試験合格報告記者会見である。

 

「つきましては、この春からトレーナーに転身することになりますので、

 現役時代を含めまして、たくさんの応援とご愛顧を感謝するとともに、

 これからも引き続き、ご声援を賜りたく存ずるところでございます。

 以上です」

 

「ではこれより、質疑応答に移ります」

 

いったんスピードシンボリがマイクを置き、

司会の手によって、質疑応答の時間へと移された。

 

「スピードシンボリさん! どうして今なんでしょうか?

 現役を引退してすぐにトレーナーを目指さなかった理由は?」

 

「端的に申しまして、当時はそれほど意欲がなかったからです。

 時がたち、年を取ったことによって、広がる世界もある。

 そういうことです」

 

「どういうトレーナーを目指しますか?」

 

「担当と二人三脚で歩めるトレーナーです。

 まあこの通り私は老いぼれですので、

 文字通り並走しろとか言われても困ってしまいますけど」

 

「シンボリ家といえば、現在、お孫さんがトレセン学園に在学中ですね。

 成績も良好ですでに重賞で勝利しています。

 今後、お孫さんを担当するということはありますか?」

 

「彼女には彼女のトレーナーが付いています。

 私からとやかく言うつもりはありませんし、できません」

 

「すいません、先ほどの質問に関することなのですが、

 先ほど仰った、広がった世界について、もう少し詳しくお願いできませんか」

 

ここまで淡々と、ときには笑いを誘いつつ答えていたスピードシンボリだが、

この質問には、答えを出すのに少し時間を要した。

 

「あの、答えにくければ……」

 

「いえ、そうですね」

 

空気を読んだ記者のほうが質問を取り下げかけるが、

スピードシンボリは軽く手を上げてそれを制する。

 

「率直に申し上げれば、そばで見てあげたい、

 共に頂点を目指したいと思える子ができた、ということです」

 

おおっ、歓声が上がる。

彼女ほどの人物が、それほど言う相手とは誰なのか。

 

「それは、お孫さんではないのですか?」

 

「違います。彼女はとても優秀ですので、

 わざわざ私が出ていかなくても大丈夫でしょう」

 

「すでにトレセン学園に在学中の生徒ですか? それとも別の?」

 

「前にトレーニング教室を開いていましたよね。

 そのときに見ていた子でしょうか?」

 

「申し訳ありませんが、相手方のプライベートにも関わりますので、

 ここでお答えすることは控えさせていただきます」

 

相手の正体については、毅然と情報提供を拒否する。

自分のことだけではないので、当然の反応だった。

 

「では相手の子は、承知済みということですね?」

 

「いえ、これは私が勝手に思っていることですので、

 現時点では彼女とは関係のないことです」

 

「その子とは別の子を担当することもある、と?」

 

「可能性の否定はしません。状況次第ですね」

 

ヒートアップした記者たちの質問はその後も続き、

スピードシンボリは怯むことなく、ひとつひとつに丁寧に答えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みのカフェテリア。

設置されているテレビにて、スーちゃんの記者会見が生中継されている。

 

当然、彼女の存在を知らないウマ娘はなく、

今ここで食事をとっている子たち全員の視線が、テレビに釘付けだった。

 

それは、俺とルドルフも例外ではなく……

 

「リアン、言われているぞ。良かったな」

 

笑みを浮かべながら、小声で言うルドルフ。

 

いや……待って。

確かに言葉の取りようでは、俺のためにトレーナーになった、

と聴き取れなくもない。ないけどさ!

 

「私とは、限らない、でしょ?」

 

周りを気にしつつ、動揺も隠し切れない中で、

ルドルフに顔を寄せて、俺も小声で言った。

 

「君以外にいるか」

 

ルドルフにしては珍しく、茶化すような視線と口調だ。

 

「確かにお婆様は他の子を見ていたこともあるが、

 最近では君だけだ。しかも、毎週のように呼び出すくらい熱心に、だ」

 

「……」

 

「孫の私が言うんだ、保証する」

 

「………」

 

はっきり言おう、そんな保証は要らん。

 

でも、まあ……あれほどの人に認められたというなら、悪い気はしない。

トレーナー問題も解決しそうで大歓迎。

 

しかし……

 

肝心の、俺のほうの実力が伴わないのではなあ。

俺だけが非難されるならまだしも、矛先がスーちゃんに向くこともあるだろうしさあ。

 

伝説のウマ娘がトレーナーになって最初に担当する子が、

鳴かず飛ばずで未勝利に終わりました、なんてことになったらもう……

 

うぅ、想像したくもない。

なんか、プレッシャーが大きくなっただけの気がする……

 

本当に、シンボリ家の人たちって、俺に対する特効持ってるんじゃない?

こうもピンポイントに、的確に突いてくるなんてさあ。

 

「おめでとう、リアン」

 

「早すぎる」

 

「そうだな。前祝いということにしておいてくれ」

 

「……」

 

まだスーちゃんの言っている子というのが、俺だと確定したわけじゃないし。

学園でも俺のことをスカウトしてくれるのかはわからないし。

 

ルドルフの言動にはとりあえず目をつむるとして、

何はともあれ、スーちゃんに連絡はしておこう。

 

「なんて送るんだ?」

 

「とりまお祝いと、隠してて騙し討ちされたって愚痴と、

 今後について話したいから落ち着いたら連絡してほしいってこと」

 

携帯を取り出してアプリを開き、文字を打ち始めると、

ルドルフがおもしろそうに聞いてくる。

 

「ほどほどにな」

 

そう言うルドルフは、本当にうれしそうだった。

 

 

 

 

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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