転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第21話 孤児ウマ娘、三冠ウマ娘に挟まれる

 

 

 

そんなこんなで、ダービーの翌週、6月の頭に無事に退院。

休学していた学園にも復学して、例の研究所でリハビリに励む日々だ。

 

約1年ぶり2回目の松葉杖生活も、もう慣れたものだよ。

機会がなければ一生慣れたくはないものだと思うけどさ。

 

ここで復学初日の様子を話したいと思う。

 

 

 

 

 

「ほんっ……とーに、ごめんなさいっ!」

 

朝、教室に入った俺をまず出迎えたのは、ニシノライデン嬢の後頭部だった。

いや、比喩でも何でもなく、頭の後ろ部分が目に飛び込んできたんだよ。

 

だって彼女、90度以上に腰を曲げて、大きく頭を下げる状態なんだから。

 

「ちょっとライデン! 段取り無視するな!」

 

「そうだよ! まずはクラッカー鳴らして、

 全員でお祝いする予定だったでしょ!」

 

「そう言われても、最初に謝らなきゃ気が済まなかったんだよ~!」

 

「うわあっ」

 

「ちょっ、あんた他より力強いんだから暴れないで!」

 

謝っているライデンちゃんに、他のクラスメイト達が予定と違うと騒いで、

駆け寄って取り押さえにかかると、ライデンちゃんはそれを振り払い、

それでも俺に謝ろうとして身体を揺すっている。

 

うん、これなんてカオス?

 

復学してきた俺になんかしてくれるつもりだったみたいなのは、なんとなくわかった。

よくよく教室内を見渡してみれば、黒板に大きく

『ファミーユリアンさん、退院&復学おめでとう!』と書かれている。

 

みんなの優しさが身に染みる。

本当にウマ娘は良い子たちばかりやでぇ……

 

とはいえ、このままでは収拾がつかない。

当事者本人がやるのも筋違いだろうが、ここは俺から申し出るしかないようだ。

 

何を隠そうこのクラスのまとめ役、委員長はこの俺なんだからな。

今の今まで言ってなかったけど、年明けのクラス替えの時、

それまで委員長を務めていたルドルフが異動になったんで、

それならと、ルドルフと一緒になって色々やっていた俺に白羽の矢が立ったというわけだ。

 

自分で言うのもなんだが、転生しただけあって、他の子より精神年齢が上だし、

この通りみんな個性が強くて自分の主張をしたがる子ばかりなので、

割と適任なんじゃないかと思っている。みんな受け入れてくれたし。

 

というわけで、今はこの場を収めなければ。

 

「あのー、何が何だかわからないけど、とりあえず落ち着いて。

 あんまり騒ぐと他のクラスの迷惑になるし、先生が来ちゃうよ」

 

「それもそうね」

 

「ライデンが約束破るから~」

 

「本当にもう、色々な意味でごめんなさい~!」

 

だから騒ぐなと言うとろうに。

特にライデン、おまえだおまえ。

 

「ライデンさん、謝罪ならお見舞いの時にも聞いたよ。

 もういいから頭上げて、ね?」

 

「うぅ、100%わたしのせいなのに、怒るどころか

 笑顔で許してくれるなんて……」

 

「はいはい、もう気にしてないからこの件はこれでおしまい。

 はい、握手握手」

 

涙ぐんでいるライデンちゃんと握手して、無理やり終わらせる。

いま言ったようにお見舞いに来てくれた時にも謝ってくれてたし、

そもそも、彼女を責める気持ちなんか全然ないし。

 

「ファミーユリアンさん、やさし~」

 

「マジ聖人。聖女」

 

「ライデンは反省ね。いろいろな意味で、いろいろ」

 

はい、外野も煽らない。

これだから若い女子パワーは侮れない。

おじさんはついていくだけで精一杯ですよ。

 

「ところで、用意したクラッカー、どうする?」

 

「せっかくだから鳴らしちゃう?」

 

「爆竹もあるよっ」

 

爆竹娘はどこから用意したっ!

本当に先生が来ちゃって大事になるから、マジでやめれ。

 

俺がいない間、先生たちは苦労しただろうなあ。

 

 

 

 

 

昼休み。

 

毎度のように、ルドルフからの介護(汗)を受けながら

食堂まで移動してお食事タイムです。

 

「選抜レースの映像が見たい?」

 

「うん」

 

食べながら、ルドルフにそんな相談をしてみた。

 

だってさ、ライデンちゃんがあそこまで謝らなきゃって思ってるってことは、

相当なことをしでかしたってことでしょ?

謝られても、俺自身がどういう事故だったかを把握できてないから、

全然実感がなかったんだよ。淡白だったのにはそういう理由もある。

 

なので、実際の映像を見て、確認してみるしかないでしょ。

 

「どこかに残ってないかな?」

 

「記録用のものがあるとは思うが……おすすめはしないぞ」

 

眉をひそめて良い顔はしないルドルフ。

 

まあそうだろうなとは思う。

俺も、何が悲しくて、自分が事故った映像を見なきゃならんのだと思うし。

 

でも、ライデンちゃんの誠意に応えるためには、必要なことだろう。

2回もあそこまで謝ってくれてるんだから、俺としても向き合わないと。

 

「どうしてもと言うなら、止めはしないが……どうしてだ?」

 

ルドルフも疑問ももっともなので、ライデンちゃんのことを説明する。

 

「そうか、ニシノライデンがな。

 今朝、騒がしかったのはそのせいか。何事かと思っていたよ」

 

やっぱり、他のクラスにも筒抜けだったか。

クラッカー止めておいて正解だった。

 

「正直、彼女の責任は大きい。学園側も事態を重く見て、

 謹慎と出走停止の処分を下したくらいだからな」

 

「え、そうなんだ」

 

ライデンちゃん、処分食らってたのか。

なるほど、掛かり気味になっていたのも納得だ。

 

「出走停止はもう明けたの?」

 

「ああ。1ヶ月だったからな。今月からは出走できるはずだ」

 

「そう、よかった」

 

いまだに俺と同じクラスということは、

同じようにまだ勝利を挙げられていないということだ。

 

そんな折に、スカウトされる大きなチャンスである選抜レースに出走できないことは、

下手をすれば将来の可能性を削いでしまう結果にもなりかねない。

たった1回でも影響はなくはないだろうが、最低限で済んだのは幸いだった。

 

「………」

 

「? どうかした?」

 

「いや……」

 

そんなことを考えていたら、ルドルフが訝しげな眼付きで俺を見ている。

首を傾げると、ルドルフは少し言い淀んだ。

 

「相変わらず、君は優しいなと思っただけだ」

 

「?? ところで、どこに行けば映像見せてもらえるかな?」

 

「そうだな、まずは生徒会に行って相談かな?

 それから学園側との交渉ということになるんじゃないか?」

 

「そっか」

 

よくわからなかったが、質問にはちゃんと答えてくれた。

 

生徒会かあ。

なんだか敷居が高そうで今まで近づきすらしなかったが、

今回ばかりはそうもいかなそうである。

 

「じゃあ放課後にでも行ってみるよ。ありがとね」

 

「待てリアン。私も行こう」

 

「え? なんで?」

 

「その、言っては何だが、私もあれ以来、レースを見るのが少し怖くてな……

 特に4コーナーになると、心が落ち着かないんだ」

 

え、マジで?

大丈夫? トラウマになってない?

 

「だから、気持ちを吹っ切る意味でも、というわけだ。

 君と一緒にあのレースを見られれば、今後は大丈夫な気がする」

 

ルドルフもあのレースは見ていたはずだから、気持ちはわからないでもない。

親友が事故る様を生で、それも近くで見たとしたら……

 

弱弱しい笑みを見せながら言うルドルフに、俺は頷いて見せた。

 

「わかった、一緒に行こう。でも練習は?」

 

「トレーナーに言って、今日は休ませてもらう。

 ダメなら遅れていくさ」

 

「調整に支障出ちゃわない?」

 

「秋までレースには出ないんだ。問題ないさ」

 

それもそうか。

次走は9月のセントライト記念ですもんね。

 

「じゃ、一緒に行きましょ」

 

「ああ」

 

俺がそう言うと、ルドルフは笑顔を弾けさせた。

 

 

 

 

 

というわけで、放課後。

ルドルフもめでたく休みが取れたというので、2人で生徒会室の前へとやってきた。

 

生徒会というと、アニメでのルドルフのイメージしかないなあ。

エアグルーヴやナリブがいて、超多忙で厳格な感じ。

 

この時代はどうなんだろうか?

 

「いきなり来ちゃったけど、大丈夫かな?」

 

「生徒の要望に応えるのが生徒会の役目だ。

 少なくとも邪険にはされないさ」

 

「そうだよね」

 

アポとか必要だったらどうしよう?

でも、生徒会長(予定)が言うんだから、大丈夫だよね。

 

「それじゃ――」

 

ノックしようと、ドアの前へ向かおうとしたところで

 

 

――ガチャリ

 

「しっつれいしました~」

 

 

「――!」

 

ドアが開いて、中から誰かが出てきた。

いや、誰かじゃないな。

 

いま日本で、1番有名なウマ娘だと言っても過言ではない。

 

「ミスターシービー先輩……」

 

「おや?」

 

思わず口に出てしまったその名前。

その声に反応して、シービー先輩の視線が俺を捉えた。

 

「おやおやおや?」

 

先輩は渋い顔をしていたが、俺を見るなり、表情を緩ませる。

そしてドアを閉めると、こちらへ歩み寄ってきた。

 

「いったいどうしたんだい、その痛々しい姿は?」

 

「あ、えっと、ちょっと骨を折ってしまいまして」

 

「そっかー。アタシも骨じゃないけど、足元悪いから気持ちはわかるよ」

 

俺の話を聞いて、腕を組んでうんうんと頷く先輩。

史実のシービーも、蹄かなんかを悪くして、三冠以降は有馬も出られず、

翌年の秋まで休養してたんだっけな。

 

「お大事にね~。ファミーユリアンちゃん」

 

「はい、ありがとうござ――え? 私の名前……」

 

えっと、初対面だよね?

なんで俺の名前、というか顔を知ってるんだ?

 

「ルドルフのお友達として有名だからね」

 

「そうなんですか」

 

「そうなんですよ。ね~、ルドルフ~?」

 

そう言って、今度はルドルフのほうへ視線を向ける先輩。

一方のルドルフは、若干ではあるが、顔を険しくしていた。

 

「なんで君がここにいるのかな、シービー」

 

「なんでって、生徒会に呼ばれたからに決まってるよ」

 

「ほう、何か悪さでもしでかしたのかな?」

 

「さあ? ただ、まだレースには出られないのかって聞かれはしたね」

 

「そうか」

 

なんか、2人の間で火花が散ってそうな雰囲気なんですが?

今のうちから、三冠バ同士(予定)でライバル意識でもあるのか?

 

ルドルフってシービーにもわりとフランクな接し方してたと思うんだけど、

知り合いだったんだろうか? 年上のはずなのに呼び捨てだしな。

 

「そういうルドルフはどうなのさ?」

 

「私はリアンの付き添いだ」

 

「相変わらず仲良しさんだね~」

 

「何か言いたいことでも?」

 

「いやいや。結構なことだと思うよ。じゃ、そういうわけで……

 しっつれいしま~っす♪」

 

「ちょっ」

 

ルドルフとこんなやり取りをしていた先輩は、そう言うや否や、

たったいま出てきたばかりだというのに、ドアを開けて生徒会室の中へリターン。

 

ルドルフも俺も、止める間もなかった。

 

「ミスターシービー? つい今しがた出ていったと思いましたが?」

 

「今度はアタシのほうの用ができたから、また来たよ♪」

 

「そうですか」

 

そ~っと中を覗いてみると、シービー先輩は向こう側、

執務机についている茶色い長い髪のウマ娘と話している。

 

「おや、来客ですか?」

 

「!」

 

やべ、覗いてるのバレた。逃げるか?

いや、そもそも生徒会に話があって来たんじゃないか、逃げてどうする。

 

「あの~私、ちょっと相談があって来たんですけれども……」

 

「付き添いですが、私も構いませんでしょうか?」

 

ドアから顔だけ覗かせて、様子を窺ってみる。

ルドルフは俺の後ろから、堂々と姿を見せて言い放った。

 

こういうところ性格出るよなあ。

さすがルドルフは物怖じしない。尊敬する。

 

「あなたたちは……よろしい、お入りなさい」

 

許可は下りたが、どうなるかわからないので、

おそるおそるゆっくりと室内へと入っていく。

 

「ふふ、そう怯えずとも、とって食べたりはしませんよ」

 

そんな俺の様子がおかしかったのか、奥の彼女はおもしろそうに笑う。

 

「適当に座ってください。テン、彼女たちにお茶を」

 

「副会長にお茶汲みさせるな。グラスにやらせろ」

 

「はいはい、私がやりますよ」

 

……うお、他にも人がいたのか。全然気が付かなかった。

 

えっと、奥の彼女に『テン』って呼ばれてたのが、栗毛の短い髪の人だな。

前髪の流星が見事で、腕組みしている姿は、どことなく雰囲気がナリブに似ている。

 

そして、テンって人から話を振られた『グラス』って人が、

黒髪ロングの落ち着いた雰囲気だが、すごい大柄な人だ。180くらいありそう。

お胸もアケボノクラスだ。

 

「リアン、座らせてもらおう」

 

「あ、うん」

 

ルドルフに促され、室内中央にある応接セットのソファーに腰を下ろす。

 

「アタシも~♪」

 

「ぇ……」

 

このソファー、3人座っても余裕があるくらいの大きさがあるのだが、

なんとシービー先輩も俺のすぐ横に座ってきた。

図らずも俺は、現役三冠バと、三冠バ(予定)にサンドイッチされる格好。

 

2人合わせれば、史実のG1合計11勝というとんでもないことに。

 

なんだこの構図は……

というか、先輩は何がしたいんだ? さっぱりわからん。

 

「粗茶ですが」

 

「あ、どうも」

 

グラスさんが、俺たちの前に人数分のお茶を置く。

そして、反対側にも3人分。

 

奥にいた彼女と、栗毛の人、グラスさんも、

奥の人を中心にして対面のソファーに並んで腰かけた。

 

「まずは自己紹介から始めましょうか。

 私はトウショウボーイ。生徒会長を務めております」

 

ふおおお……『天馬』キター!!!

 

なんということでしょう。

ルドルフの先代の会長が誰だったのか、ウマ娘ファンなら誰しもが気になると思うが、

この世界線ではお助けボーイがその任に当たっていたようだ。

 

思わず歓声が上がりかけて、我慢するのが大変だったぜ。

ということは、会長から『テン』と呼ばれた彼女と、

『グラス』って呼ばれた彼女は、もしかしなくても……

 

「副会長をやっている、テンポイントだ」

 

「グリーングラスと申します。書記をやらせていただいてます」

 

やっぱりそうか。

『TTG』時代を形成した3頭が、先代の生徒会だったんだな。

 

『流星の貴公子』と『緑の刺客』かあ。

 

ダブル三冠バに加えて、いち時代を築いた超一流ばっかりや……

俺、とんでもなく浮いてない? 少なくとも、俺の心は浮きまくってます。

 

「ご用件は?」

 

「あ、は、はい。私、ファミーユリアンと言いまして……」

 

天馬様から直接尋ねられて、ドキッとしてどもってしまう俺。

い、いかん落ち着け。聞かれただけで動揺してどうする。

中身の小心ぶりがモロバレですな(汗)

 

「ミスターシービーでーす♪」

 

あろうことか、このタイミングで自己紹介するシービー先輩。

いや、全員知ってますって。なんでわざわざ言ったし。

 

「なぜ君まで自己紹介する必要がある」

 

「自己紹介から始めるって会長さんが言ったから。

 ルドルフはしないの?」

 

「……シンボリルドルフです。リアンの付き添いで来ました」

 

思わず突っ込んだルドルフに、さも当然のごとく、真顔で言う先輩。

これにはルドルフも呆気に取られたようで、

相手にしていられないとばかりに、諦めた様子でそう言った。

 

「話が進まん。ファミーユリアンとやら、早く用件を言え」

 

「は、はい」

 

テンポイント副会長から促されてしまった。

やれやれという感じから察するに、生徒会の皆様も、

シービー先輩の奇行には手を焼いているようだな。

 

「私は4月の選抜レース、2000m戦に出たんですが、

 そのレースで事故に遭い、この通り骨折してしまいました」

 

「聞き及んでいます。大変だったそうですね。

 学園としても生徒会としても、これは由々しき事態ですので、

 再発防止に努めていくことをお約束いたします」

 

「で、何が言いたい? 文句でも言いに来たってわけか?」

 

「あ、いえ、そうではなくてですね」

 

会長さんは物腰が柔らかく丁寧で、品もあってすごくやさしそうなんだけど、

副会長は貴公子なんて二つ名とは裏腹に、荒っぽい印象でちょっと怖い。

 

「そのレースの映像をまだ見ていなくて、

 残っているのなら見せてもらえないかと思い、

 こうして相談に伺った次第です」

 

「自分が事故に遭ったレースの映像を?」

 

「はい。実は……」

 

やっぱり自分の事故映像を見たいというのは変なのかな?

会長さんにも、副会長にも首を傾げられてしまった。

 

ライデンちゃんの件を説明する。

 

「そうですか、ニシノライデンさんが」

 

「はい。なので、自分でも確認したいんです。

 どういうレースで、どういう事故だったのかを」

 

「……」

 

「映像があるなら、どこにあるのかお教え願えませんか。

 それと可能なら、学園側との交渉もお願いしても?」

 

「わかりました」

 

会長さんはそう言って頷くと、立ち上がった。

そして、自分の執務机へと向かい、机上にあるパソコンを操作し始める。

 

「あの……?」

 

「映像はここにあります」

 

「え?」

 

何してるんでという俺の声に、会長さんは作業の手は止めずに言う。

 

「生徒の個人データの管理も生徒会の仕事のひとつですので、

 選抜レースの映像もすべて記録してあります。

 のちのちのトレーニングで必要になることもありますからね」

 

「本当ですか。見せていただくことはできますか?」

 

「もちろん。グラス、そっちのタブレットに映像データを送りますから、

 受け取り次第、見せてあげてください」

 

「了解です。……どうぞ」

 

いつのまにかグラスさんがタブレットを持っていて、

しばらくしてデータの受信が終わったのか、プレイヤーで再生して見せてくれた。

 

「………」

 

食い入るように、レース映像を見つめる俺たち。

ルドルフは昼休みでの発言通り、少しつらそうにしていた。

 

途中、意識してなのかはわからないが、手を俺の手に重ねてきて少し驚いた。

お母様と同じアクションだーね。さすが母娘。

大丈夫だとの思いを込めて、俺からも重ねてあげた。

 

さてレースだが、4コーナー手前までは、どこにでありそうな普通な展開。

しかし、残り600のハロン棒を通過した直後に、異変は生じた。

 

内側にいたライデンちゃんが強引に進路を切り開こうとして、外側へと動いた。

急な動きだったので、見るものが見れば、いや、これは立派な斜行。

 

すぐ外側にいた子が、これに驚いて大きな回避行動をとり、

さらに外にいた俺と接触。バランスを崩した俺は、立て直せずにそのまま左側へと転倒する。

 

「うわあ……」

 

反射的に声が出てしまった。

自分のことながら、よく骨折程度で済んだなっていうくらいの吹っ飛び方だった。

外ラチ近くまで行ってるもんな。何メートル飛ばされてんだよ……

 

正直に言う。予想してた以上だったわ。

 

そりゃライデンちゃん、あれくらい必死に謝ってくるわ。

直接ぶつかった子が、お見舞いに来てくれた時に泣いちゃったのも納得。

 

俺が逆の立場だったら、自責の念で退学すら考えるくらいだもの。

まさに交通事故レベルの大事故だった。

 

「リアン、大丈夫か?」

 

「うん、なんとかね。ちょっと想像してた以上だったけど。

 ルドルフこそ大丈夫?」

 

「……ああ、私も何とかな」

 

やはりつらそうではあるが、目は逸らさないで見られたようだし、

本人もこう言ってるから大丈夫だろう。

 

途中、重ねられてた手に力が入ってたのは、内緒にしておいてあげるよ。

もちろん俺が事故った瞬間のことね。

 

「確認はできましたか?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「礼には及びませんよ」

 

尋ねてきた会長さんに頭を下げると、会長さんは微笑んでくれた。

が、その表情はすぐに引き締まる。

 

「先ほども申しましたが、この事故は私たちとしても痛恨の極みです。

 謹んでお見舞い申し上げるのと共に、再発防止を誓います。

 だからこそ、ニシノライデンさんにも処分を下したのです」

 

「その割には、甘めの処分だったけどな」

 

「禁忌を犯してしまったとはいえ、あの子にも将来があります。

 その芽を摘んでしまうわけにはいきません」

 

「わかってるよ。愚痴ってみただけだ」

 

「テンのそういうところ、私は好きですよ」

 

「よせよ、おまえに好かれてもうれしくない」

 

「ふふ、素直におなりなさいな?」

 

「よせと言ってるだろ!」

 

なんか、会長と副会長の間で口論?が始まってしまった。

いいんですか、という視線をグラスさんに送ると

 

「いいんですよ」

 

にっこり笑顔で肯定される。

 

「あの2人はいつもあんな感じです。放っておきましょう」

 

……さいですか。

まあ誰よりも2人を知るであろう貴女が言うなら、そうなんでしょうね。

 

「さあて、用も済んだし、アタシはお先に失礼するね~」

 

隣のシービー先輩はそう言って立ち上がると、

ん~っと伸びをしてから、部屋から出ていった。

 

あのひと足が悪いんだよな?

そう思わせないくらい軽そうな足取りだったのは気のせいか?

 

そういえば『用ができた』って言ってたけど、どういう意味だったんだろう?

特に何もしないで帰っちゃったぞ?

あそこで俺たちが出会ったのは偶然だし、全然わからん。

 

なんにせよ、目的は果たせたしよかった。

会長さんも、何かあったら頼ってきなさいって言ってくれたし。

 

とにかく、早く怪我を治さないとね。

話はそれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふうん、あの子がルドルフの()()()()()かあ。

 ……楽しくなりそう♪」

 

 

 




シービーのキャラもよくわからない……
こんなんでいいのかな(汗)

先代生徒会はTTGにしました。

シンザンは年代が離れすぎてるし、娘が入学している関係で出せない。
となると他に候補が……
ちょこちょことはいるけど、なかなか3人大物が揃わない。

となればTTGっしょ!
こんな流れで決まりました。

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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