転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第25話 孤児ウマ娘、世紀の一戦で胸躍る

 

 

 

 

クラシック路線以外のレースも、ここで軽く触れておこうか。

 

ティアラ3冠目の秋華賞は、ダイアナソロンちゃんが

オークスバ・トウカイローマンとの激闘を制して、

2冠目を手に入れる。

 

次のエリザベス女王杯では、ローマンが逆にやり返し、

今年のティアラ戦線は、2人で仲良く

2冠ずつを分け合う結果になった。

 

相変わらず色気むんむんのインタビュー(身体のほうの成長もしたものだから、

余計に色気アップ)をかまし、もはや目の毒である。

 

シービー先輩が久しぶりのG1出走となった秋の天皇賞。

その先輩が他バをまとめて差し切って、史実通りの四冠を達成する。

 

マイルチャンピオンシップは、ここも史実通り、

ニホンピロウイナー先輩が完勝。

 

天皇賞で2着に終わったニシキちゃんと、ハーディーちゃんも出走したが、

2人とも着外に敗れている。

 

ニシキちゃんはレース後、現役引退を表明。

同時にトレセン学園からも離れて、田舎へ引っ込むことを発表した。

引退会見では、小声ながらもしっかり喋り、最後の花道を飾った。

 

短い現役生活だったけど、原作では手に入らなかった

G1の勲章を2つも手にできたんだから、相応に満足だったんじゃないかな。

現に、会見での表情も晴れ晴れしてたしね。

 

ルドルフと一緒に彼女の会見をテレビで見ていたが、

ルドルフは一言「彼女の分まで頑張らないとな」と呟いただけだった。

 

そして、11月4週に入ると、世間は間もなく迎える『世紀の一戦』に釘付け。

 

 

『勝つのは四冠バか、それとも三冠バか、あるいは……

 世紀の一戦を見逃すな。11月25日、ジャパンカップ』

 

 

なんてフレーズのテレビCMも流れ出し、

三冠バ同士の対決ムード一色となっている。

 

当の本人たちは

 

「ん~? べーつにぃ?」

 

「相手が誰だろうと、ベストを尽くすだけだ」

 

なんて言って、周囲の期待なんてどこ吹く風だけどね~。

 

特にルドルフ、弥生賞前の様子とは大違いだ。

強敵を前にして震えていたあいつは、もういない。

 

 

 

 

 

週半ばの木曜日、放課後のカフェテリア。

 

今日は最初からリハビリの予定はない。

逆に頑張りすぎということで、無理やり挟まれた休養日である。

 

自分としては、全然焦ってるつもりなんてないんだけどね。

周囲からするとそうでもないらしい。

 

そんなわけで、購買で買ってきた雑誌を読みながらお茶でもしようと、

カフェテリアにやってきたわけだが……

 

「お、ファミーユちゃん。はろ~♪」

 

厄介な相手に捕まってしまった。

俺に対する呼称でお分かりだろうが、シービー先輩である。

 

「ここ、空いてるよ。どーぞどーぞ♪」

 

「……失礼します」

 

いや、他にも空いてるから他の席で、とは言えない。

先輩が誘うままに、相席の正面の席へお邪魔する。

 

「おや、その雑誌、君も買ったんだ」

 

「はい。私も、ということは?」

 

「じゃーん」

 

そう言って、先輩が差し出して見せたのは、俺と同じ雑誌だった。

お察しの通り、ウマ娘専門誌。

表紙を先輩とルドルフのドアップが飾っている、ジャパンカップ特集号である。

 

「先輩も、こういうの読むんですね?」

 

正直、意外だった。

世間の評判なんて気にしない人だと思っていたけど?

 

「んーまあ今回はね、ちょっと気になったから買ってみた」

 

海外の全然知らないウマ娘とかも来るし、まあ気持ちはわかる。

俺もそれが気になったから買ったんだ。なんせ知識がないから。

 

「で、どうです? 収穫はありました?」

 

「まだ見てないんだ。だからファミーユちゃん呼んだんだよ」

 

「なるほど、一緒に分析してほしいというわけですね?」

 

「そういうこと~♪ 報酬は弾むよ。

 カフェテリア特製大盛りプリンでどうだっ」

 

まったく現金な人だな。

 

よく見たら、テーブル上に3つも確保しているじゃないか。

もっとよくよく見たら、大人気で品薄必須な、

生クリームやら何やらがたっぷり盛られたジャンボな特別製だこれ!

 

もはやプリンと言わずパフェ。

そんなもので俺が……クマー!?

 

年頃の女の子の例に漏れず、甘いものにつられて呆気なく陥落。

これじゃマックちゃんのこと悪く言えないな。パクパクですわ!

 

「ほほぉ、そういうことなら、私も混ぜてもらえないかな」

 

「っ……ルドルフ!?」

 

なんと、ここでルドルフも登場。

初対決を目前に控え、2人の三冠バの接触に、周りも少しざわついている。

 

ここでスズカさん、渾身の一言をどうぞ。

 

 

『ウソでしょ。また巻き込まれてる……』

 

 

ええ、今の俺も全く同じ心境です、はい。

どうしてこう、俺の周りは平穏とは無縁なんだろうな(汗)

 

「トレーニングは?」

 

「追切はきのう済ませたから、あとは自分で調整だ。

 というわけでシービー、私もご相伴に預からせてもらうよ」

 

「別に構わないよ」

 

いいのか、先輩。いや、プリンの件じゃなくてね?

戦う相手と一緒に戦況分析って、いいのかなあ。

 

そんなわけで、まるで謀ったかのように

プリンがちょうど3人に行き渡ったところで、分析スタート。

 

「リアン、今年の海外勢はどんな感じだ?」

 

「ええと、北米勢はアメリカ2人、カナダが1人。ヨーロッパ勢は、

 イギリス、ドイツ、イタリア、フランスから1人ずつ。

 それと、オセアニア勢が、オーストラリア2人、ニュージー1人が招待されてるね」

 

「ファミーユちゃん、その中で1番の大物は誰かな?」

 

「ええと、ドイツのバーデン大賞勝ちで、凱旋門5着、BCターフ4着の

 オーストラリア代表のストロベリーロードですかね?

 いや、アメリカの芝G1勝ってるウインっていうのもいますね」

 

「リアン、他に注意が必要そうなのはいるか?」

 

「ええと……去年も来てて好走したフランスのエスプリデュノール?

 凱旋門でも4着で好調みたいだし、一発はありそうかな?

 あとは、G2までしか実績ないけど、11戦9勝のイギリスのベッドタイムも侮れないかも」

 

「ファミーユちゃん、展開はどうなりそう?」

 

「ええと……」

 

ちょっと待って2人とも。

なんで揃いも揃って、俺にばっかり質問してくるんですかね?

しかも競り合うかのように交互にさ。

 

なんだこの状況。

 

見る人が見れば、三冠ウマ娘に構われて羨ましくも思えるだろうが、

俺からしてみれば、罰ゲーム以外の何物でもないんですけど~?

 

「先輩は展開がどうなろうと、いつも最後方でしょう」

 

「もち♪ それがアタシの生きる道~ってね」

 

悪びれることもなく、さらっと言ってのけるシービー先輩。

その清々しいまでの潔さが人気の理由の一端なんだろうね。

 

「展開は……海外勢は正直わかりませんけど、

 逃げるのはカツラギエース先輩、でしょうかね」

 

「だろうな」

 

俺の予想に、ルドルフが頷いた。

 

「ペース的にはどうだ?」

 

「うーん……競り合う子がいなければ、少なくとも早くはならなそう。

 楽に逃がすと、捕まえきれないかもしれないよ?

 単騎逃げになったら要注意、早めに追いかけたほうがいいかも」

 

「そうか、気を付けよう」

 

「……」

 

史実知識を交えて説明すると、ルドルフは続けて頷く。

シービー先輩は無言だった。

先の毎日王冠では、実際に逃げ切られてしまったことを思い出しているのだろうか。

 

もしこのルドルフが負けるとしたら、史実通りのここが最初じゃないかと思っている。

三冠での勝ちっぷりからして、すでに史実からは大きく逸脱してしまっているので、

どんなことになるのか、想像もつかないけどさ。

 

まあ史実とは、レース間隔もルドルフの体調面でも違うし、

同じようなことにはならないはずだが、はたしてどうだろうか。

 

「というかこれくらいなら、2人とも、

 それぞれのトレーナーと一緒にやってるんじゃ?」

 

「やってはいるが、何回やっても無駄じゃない。

 復習になるし、思わぬところで新しい発見があるかもしれないからな」

 

「そうそう。いつもと違うメンツでやるのが楽しいんだよ」

 

ブリーフィングは、各々のトレーナーとしっかりやっているはずだ。

なのに、俺なんかの意見を聞きたがるのはなんなのか。

 

そんなことを伝えると、2人揃って、無駄じゃない、楽しいと言うんだ。

わからん。まったくわからん。

 

「それより私は、雑誌の記事をざっと読んだだけで、

 そこまでの判断ができるリアンのほうがすごいと思うな」

 

「そうだよファミーユちゃん。ほとんど覚えてないけど、

 トレーナーも同じようなこと言ってたような気がする」

 

いや先輩、そこは覚えておきましょうよ。

あなたのトレーナーさんが聞いたら泣きますよ?

 

「なんにせよ、良いレースをしよう、シービー」

 

「もちろん、受けて立つよ、ルドルフ」

 

そう言って、お互い見つめ合い、頷き合う三冠バの両者。

この光景を間近も間近な特等席で見られているあたり、俺は幸せ者なんだろうなと思ったり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レース当日、11月25日。

奇しくもこの日は、気象庁から木枯らし1号が吹いたことが発表され、

終始北風の強い1日だった。

 

例によって、シンボリ家から今日も一緒に観戦しないかと誘っていただいたけど、

海外からVIPクラスがたくさん来てるらしいし、

午前中の早い時間の段階で入場規制がかかるような酷い状況になるらしいので、

今回も遠慮しておいた。

 

その代わり、有記念は一緒に行きましょうねって、

お母様から念を押されてしまったけどな。

 

というわけで、自室でテレビ観戦です。

 

パドックでの様子は、2人ともいつもと変わらない。

強いて言えば、シービー先輩のほうが若干強張っているように見えたって程度。

現地は、あの先輩でも緊張するんだっていうほどの、異様な雰囲気ってことだ。

 

レース直前の支持率が発表されて、現地の観客からどよめきが漏れる。

 

 

 シンボリルドルフ  35.0%

 ミスターシービー  35.0%

 

 

2人が全くの同率で1番人気を分け合う。

以下、ベッドタイム、マジェスティーズプリンス、ウインといった海外勢が続き、

カツラギ先輩は7番人気に留まった。

 

さて、発走時刻が迫る。

 

 

『四冠対三冠、はたしてどちらが強いのか。

 世紀の一戦の幕がいま上がる。第4回ジャパンカップ、スタートぉ!』

 

 

レースは予想したとおり、人気馬同士は牽制し合い、ペースは上がらない。

カツラギエースが2番手に10バ身の差をつけて逃げるという展開となる。

 

恐れていた展開になってしまった。

ルドルフ、これは早く行かないとまずいぞ。

 

と、3コーナーに差し掛かったところで、さすがにまずいと判断した各自が

追い上げを開始するも、そのさらに外側から大まくりをかけたウマ娘がいる。

 

 

『ミスターシービー、外を回って上がっていく!

 これはまるで三冠を決めた、京都の坂を登った時を彷彿させる動きだ!

 三冠ロードの再来か!?』

 

『続けてルドルフも動いた! 並んで上がっていく!』

 

 

そして、その動きに反応したのか、ルドルフも一緒に上がっていく。

他の子たちはその2人にすらついていけない。

 

4コーナーを回る時には、先頭カツラギエース。

5バ身後方に、ルドルフとシービー。

そのさらに5バ身後方にその他集団という展開。

 

 

『カツラギ逃げる! 3バ身のリードで坂を登る!

 シービーとルドルフ、並んで必死に追う! さあ徐々に詰まってきた!』

 

 

坂を登って残り200メートルの攻防。

実況が伝えるようにその差は徐々に詰まり、100メートル時点で1バ身。

50メートルで完全に3人が並んだ。

 

 

『並んだ並んだ! 三つ巴の壮絶な叩き合いになった!

 さあ勝つのは誰だっ! 四冠か、三冠か、はたまたグランプリウマ娘の意地かっ!』

 

『大接戦ドゴーン! これはわかりませんっ!』

 

 

そのまま3人はもつれあうようにしてゴール板を通過。

4着以下を7バ身置き去りにした。

 

「………」

 

なんという、なんというレース。

まさに手に汗握る大接戦だった。

見ている俺のほうが、大量の汗をかいている有様。

 

「……わからん」

 

テレビでは、ゴールした瞬間のスローリプレイを何度も流しているが、

何回見てもわからない。差なんてない。

 

長い長い写真判定。

これはもしかして、同着もありうるかと思い始めたころ、

ついに結果が発表された。

 

 

 1着 1 ミスターシービー  2:26.3

 1着 10 カツラギエース    同

 1着 12 シンボリルドルフ   同

 

 

なん、だって……?

同着もあるとは思ったが、3人同着?

 

これは……なんという結末。

驚いたが、最良の結果じゃないか。

3人とも勝者。3人そろって優勝だ、それでいいじゃないか。

 

テレビでは、3人がそれぞれ驚き、苦笑し、笑いあっている様子が映し出される。

そして3人は、揃って並んで手を繋いで、その手を掲げた。

 

こうして、日本勢の悲願だったジャパンカップの初制覇は、

3人同時優勝という前代未聞の事態をもって達成された。

 

ウイニングライブでは、3人ともが1着のソロパートを並んで歌って踊ったそうである。

 

 

 

 




同着という最終兵器をここで使ってしまった……

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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