この年末に行われる第29回有馬記念は、早くも3強ムード。
3強とは言うまでもなく、ミスターシービー、カツラギエース、
シンボリルドルフの3人である。
特に前走のジャパンカップでは、この3強で歴史的な3人同着優勝なんて、
信じられない奇跡を演じてしまったものだから、世間では
その再演をしてほしいなんて要望がちらほら、盛り上がり方が半端ない。
史実では、単枠指定制度があった当時において、
3頭がそろって単枠に指定されたそうな。
この3頭で単勝支持率が90%を超えるだろうと見られていたんだって。
有馬記念において3強対決が明確にされるのは、
第19回(ハイセイコー・タケホープ・タニノチカラ)、
第22回(トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラス)以来、
3回目となる。
ファン投票の結果は、1位は史実通りシービー先輩。
僅差でルドルフが続き、3位がカツラギ先輩という史実通りになった。
これでまたルドルフがシービー先輩に、「人気では君のほうが上だった」
なんてぼやくことになるんだろうか。
そんな有馬記念を目前に控え、学園内もどことなく
ピリピリムードが漂うようになってきた中、俺はまた生徒会に呼び出された。
なんか最近、生徒会に呼ばれるの多くない?
俺は何もしてないんだけどなあ? おかしいなあ?
首を傾げつつ、生徒会室のドアをノックした。
「ファミーユリアンです」
『どうぞ』
声をかけると、中からお許しが出た。
この声はグリーングラスさんだな。
「失礼します」
ドアを開け、声をかけつつ中に入る。
「ご苦労様。かけてください」
「はい」
正面の執務机には、いつものようにトウショウボーイ会長が席についている。
その脇にはテンポイント副会長がおり、グリーングラス書記は入ってすぐのところで
俺を迎え入れてくれて、目が合うと微笑んでくれた。
「グラス、お茶を」
「かしこまりました」
これも毎度のように、会長がグラスさんにお茶の用意を頼んで、
こちらのソファーへと移ってくる。
さて、今回の用とは何だろうね?
「今日来てもらったのは、あなたに頼みたいことがあるからです」
お茶が揃ったところで、会長がそう切り出した。
「地元の商店街より、依頼というか要請が来ていましてね」
「私にですか?」
「ええ、あなたに」
にっこり笑顔で、俺の問いに頷く会長。
地元の商店街というと、この前のあそこか。
うん、なんか嫌な予感しかしないけど、外れてほしいな?
……無理だろうな?(諦め)
「25日にクリスマスイベントを行うそうなんですが、
それに出演してほしいそうですよ」
「イベント……?」
「企画書を拝見するに、トークショーやプレゼント抽選会、
特売会などが行われるようですね」
会長から、その企画書とやらが渡された。
ざっと見るに会長の言うとおりのようだが、こんな直前になって出演依頼?
というかなんで俺なの?
取ってつけたように『ファミーユリアンちゃん出演予定!』
なんて書いてあるけど、これ絶対あとから付け足しただろ?
しかも、この間のことがあって、これ幸いとばかりにさあ。
「承諾しようと思いますが、構いませんね?」
「え、いやいや……私でいいんですか?」
どうせ呼ぶんなら、もっと有名な子のほうが良くない?
そのほうが人呼べるし盛り上がるよ?
「望まれているのは貴女ですよ」
「……」
そう伝えたら、ぐうの音も出ないくらいに黙らされてしまった。
どうせ、あの店のおっちゃんとかが中心になって決めたんだろう。
あの人たち、客向けじゃなくて、絶対自分たち向けでキャスティングしただろ!
そうに違いない。
「まあいいじゃないか。聞いたぞ、
そこらのアイドル顔負けの人気だったそうじゃないか」
「あ、あれはですね……」
この間のひと悶着のことがあって、副会長がおかしそうに笑う。
咄嗟に反論しようとしたが、次の言葉が出てこない。
それどころか、気恥ずかしさからか、全身に熱が生じる始末。
「照れるな照れるな。人気があるのはいいことだ」
なおも笑う副会長。
怖そうな人だけど、朗らかに笑うとかわいい人だな。
ってそうじゃなくて、今は俺のことだよ。
「25日って、まだ学校ありますけど」
「イベントは夕刻からだそうなので、25日は午前中に終業式があるだけですから、
午後からは空きますよね? 充分に間に合うでしょう?」
「……そうですね」
「では、よろしくお願いします。ファンサービスは重要ですから。
学園の地元ということもありますし、くれぐれもよしなに頼みますよ」
「……はい~」
苦し紛れの質問は、余裕綽々で返される。
こうして、レースとは全く関係のないところで、
俺のイベント初出演が決まった。
12月23日、有馬記念当日。
ジャパンカップのときに約束させられてしまったので、
今日はシンボリ家の皆様と一緒にレース観戦です。
というわけで、いつものリムジンで中山レース場へと移動。
これまたいつものように、VIP待遇で貴賓席に案内される。
毎度のごとく、入場制限がかけられてごった返している場内をしり目に、
涼しい顔で入っていけるのはいいんだけど、なんだか申し訳なくてね。
こういうのはダービー以来だけど、慣れる気はしないし、慣れてはいけないと思う。
「リアンちゃん、あの子は何か言っていた? 調子は良さそう?」
「前走同様の仕上がりだ、と。聞いてないんですか?」
「こういうの、親からとやかく言うのもあれじゃない?」
「レース直前は、連絡を取るのを控えているんだ。
余計なプレッシャーを与えないようにね」
「そうなんですか」
ここにきて知った驚愕の事実。
お父様お母様も気を遣ってるんだな。
「リアン君は、このレースをどう見るね?」
「そうですね、3強対決なのは明らかですが……」
「ですが?」
「カツラギ先輩の逃げ次第で、すべてが決まります」
お父様の質問に、少し考えてからこう答えた。
「ほう、その心は?」
「単騎逃げでスローペースなら、ジャパンカップの再現。
誰かが鈴をつけに行くとしたら、まったく違った展開になると思います」
史実では、その鈴つけ役をルドルフ自らが買って出た格好なんだよな。
逃げるカツラギを単騎2番手に上がって追いかけて、マークする格好。
絶対雪辱するんだという、陣営の気迫が感じられた。
カツラギの引退が決まっていたから、余計に力が入っていたんだろう。
勝ち逃げは許さない、と。
こっちのカツラギ先輩も、有馬でもってトゥインクルシリーズを卒業し、
ドリームシリーズへの移行を発表している。
シービー先輩はどうするんだろう。
今のところは音沙汰なしだが、来年もこのまま走るんだろうか?
「シービー君はどう出るだろうね?」
「あの人は何が起ころうとも我関せずでしょう」
今回も大まくりするのか、はたまた最後の直線に賭けるのか。
何度も言うようだが中山の直線は短いので、後者の可能性は低そうだけど。
「ある意味、シービー先輩の位置取りがカギでしょうね」
「なるほど。いやいや、ルドルフが言っていたように、
大した分析力だ。なあ?」
「その通りですわね。あの子が称賛していたのも頷けますわ」
あいつ……またご両親に報告していたのか。
俺のプライバシーはどこ? ここ?
どうせ尾ひれが付きまくっているに決まってる。
これくらい、普通のファンなら普通に予想できると思うけどなあ。
史実の知識云々じゃなくてさ。
それこそあの『どうした急に』のコンビなら、
もっと熱く、いろいろと語ってくれそうだ。
さて、そろそろ本バ場入場だな。
レースのほうに集中しましょうかね。
思った通り、スタートからカツラギ先輩が逃げる。
ところがジャパンカップの再現とはならず、ルドルフが史実通りに2番手で追う。
意外だったのがシービー先輩で、いつもの最後方ではなく、
やや前方の中団の後ろあたりという位置取りになった。
向こう正面に入り、ルドルフがじわじわとカツラギ先輩との差を詰めていく。
3コーナーでは1バ身というところまでくっついた。
対するシービー先輩も上がっていったが、インコースを突いたせいか、
3コーナーで前に詰まってしまい、身動きが取れなくなってしまう。
そんな状況で、第29回有馬記念は佳境を迎えた。
最後の直線、ルドルフは肉薄していたカツラギ先輩をあっさりとかわして
先頭に立つと、あとは毎度のように突き放すだけ。
カツラギ先輩も決して足が上がったというわけでもないのに、
直線だけで5バ身差をつけ、レコードタイムで圧勝した。
シービー先輩に続いて、ルドルフもシンザン大先輩に並ぶ五冠目。
クラシック級での五冠制覇は史上初の快挙である。
しかも、ここまででいまだ無敗なのだから恐れ入る。
逃げ粘ったカツラギ先輩が2着。
シービー先輩は直線を向いたところでようやく前が開いて、さすがの末脚で追い込んだが、
カツラギ先輩から1バ身1/2の3着までというのが精いっぱいだった。
しかし4着とは大きく差が開いたので、3強の実力が垣間見える結果だ。
いやあ本当に、この調子だと、G1何個勝つことになるんだろうね?
来年の春天、ジャパンカップ、有馬は確定として、それで史実越えの八冠。
宝塚はアクシデントで回避したから不確実、大阪杯も新G1だからわからんとして、
秋天でも油断しなければ勝つだろうから、九冠は硬いか?
無敗も継続してるし、すさまじいの一言に尽きる。
まさに不世出の皇帝陛下だ。
第29回有馬記念 結果
1着 シンボリルドルフ 2:32.8 レコード
2着 カツラギエース 5
3着 ミスターシービー 11/2
有馬も終わったことだし、これで無事に年も越せますね~。
……って、わかってるよ。
わかってますから、そうせっつかないでもらえますか。
例の商店街イベントの件ですね。
こっちが俺にとっての有馬記念だと思うことにします。
そうでもしなきゃやってられん。
「やあリアンちゃん、よく来てくれたね!」
「引き受けてくれてありがとうね!」
イベントの実行委員会、要するにあのお店へと向かうと、
おっちゃんおばちゃんの夫妻が満面の笑みで迎えてくれた。
実行委員長、という腕章を身につけて。
やっぱりあんたが委員長だったか。
「今日の段取りはこういう感じで……」
さっそく書類を渡されて、イベントの打ち合わせをする。
抽選会とか特売会とかはいいんだけどさ……
今日、商店街で1000円以上の買い物をしてくれたお客さんには、
1000円ごとに抽選券を1枚配布する。
特売ってのは要は安売りしますってことでしょ?
でも、トークショーってのがさ……
何を話せばいいのさ?
「適当に話を振るから、あとは流れで」
聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。
流れって何だ流れって。
どこぞの八百長みたいな物言いしおってからに。
ああもう、どうなっても知らないからな!
「じゃあリアンちゃん、ちょっと早いけど、これに着替えてくれる?」
「え……」
そう言って、おばちゃんが差し出した服。
それは……
商店街の一角に特設されたステージ。
といっても、ただの空き地に足場を盛って、一段高くしただけの簡易なもの。
その壇上に、いま俺はいる。
「本日のスペシャルゲスト、トレセン学園のファミーユリアンさんでーす!」
「ど、どうもこんにちは、こんばんは?」
おっちゃんの紹介で、ぺこりと一礼する。
いや、司会もあんたがやるんかい。
「ファミーユリアンさんは知る人ぞ知る、我が商店街では知らないやつなどいない。
そうだよなみんな!?」
「おおーっ!」
「待ってましたー!」
「サンタコスかわいいわよ~!」
おっちゃんの声に、集まった人たちが反応して声を上げる。
幸い客足は結構……
いやこれ集まってるの、みんな商店街の人じゃない?
どれだけお客さん側の人がいるのか……
いやいやそれより、自分たちの店はどうした!? 空けてていいのか?
「先に言われちゃったけど、サンタの格好かわいいよ!」
「ど、どうもありがとうございます……」
おばちゃんに渡された服というのが、これ、サンタのコスプレ衣装だった。
帽子だけがトナカイという変な衣装だけど。
別にコスプレすることに関しては、そこまで抵抗はなかった。
勝負服なんてもっときわどい格好する子もいるしな。
ブルマの体操服とか、水着で走るよりは幾分かマシだと思うよ。
ただね……
胸元とか腕とか、露出している部分が結構あるんだ。
時期的なものと野外ということもあって、寒いんだよ!
コスプレ衣装とか基本的に薄着だし、風を遮るものが何もない屋外ステージ。
うぅ、震えそうだ……
「リアンちゃんは、うちの商店街使ってくれてるのかな?」
「まあ、たまに。学園の購買で買えないものとかは買いに来ます」
「この前、俺の店で買い物してくれたんだよね。
どうだみんな、羨ましいだろ!」
「ぶーぶー!」
「おまえのところだけずるいぞ!」
「リアンちゃん、私のお店にも来てちょうだいっ!」
こらおっちゃん、観客煽るな。
客席からはブーイングの嵐。なんかもう、私的な席と化してないか?
「リアンちゃんの近況を聞かせてもらってもいいかな?」
「はい。まあ、あの番組を見てもらえた方ならご存知かと思いますが、
今の私は故障リハビリ中でして、復帰を目指しているところです」
「そう、あの番組! みんな見たよな!?
見てないモグリはいないよなあっ!?」
「おおっ!」
「見たぜ!」
「かわいかった! 泣いた! 惚れたっ!」
おっちゃんの問いかけに反応して、客席から声が上がる上がる。
やっぱりみんな見てくれたみたいだ。
「リアンちゃん、俺たちリアンちゃんのファンクラブ作ろうと思うんだけど、
公認してもらえない?」
「うえっ? ファンクラブ?」
予期していなかった事態に、素っ頓狂な声が出てしまった。
こんな一介なモブ娘にファンクラブ? 冗談だろ?
「入会資格は、とにかくリアンちゃんを応援すること、それのみよ!
みんな、ファンクラブが出来たら入ってくれるだろ!?」
「おおおお!」
「初回入会特典として、今ならリアンちゃんの直筆サイン入り
会員証をプレゼントするぜっ!」
「うおおおっ!?」
「直筆!」
「マジで? 欲しいっ!」
ちょっ……俺なにも聞いてませんけど!?
直筆サイン入りとか、マジでいま決めてますよね? 勢いで言ってますよね!?
「いいよね、リアンちゃん?」
「は、はあ」
「いよーし、リアンちゃんの許可は出たぞ。喜べみんな!」
「おおおっ!」
「やるな○○屋の旦那っ!」
「俺は入会するぞ!」
「私もっ!」
ははは、これもう撤回するの不可能だな。
あはは、笑うしかないな。アハハ。
「じゃあめでたくファンクラブ設立が決まったところで――」
そんな感じで、トークショーが始まってしばらくして……
「……ぶっ!?」
俺は、
というのも……
客席の最前列に、見知った顔がいたのだ。それも2人。
「リアンちゃん? どうかした?」
「いえその、お客さんの中に、知り合いがいることに気が付きましてね」
「リアンちゃんの知り合い?」
「おじさん、このトークショー、飛び入り参加ってありですか?」
「知り合いって、もしかしてウマ娘かい?
もちろんあり、大ありだよ! 盛り上がってくれるなら何でもいいさ!」
「そうですか。というわけで、そこの2人!」
許可もいただけたことだし、何の障害もないな。
顔を見せたことが運の尽きだと思って、少々付き合ってもらうぜぇお二方。
死なば諸共じゃ!
俺も変なテンションになってきているようだが、気にしない。
ビシッと指をさして、2人に対して言い放つ。
「今すぐ上がってきなさいっ!」
俺がそう言うと、1人は一瞬だけビックリしたが、やれやれという感じで動き出す。
そしてもう1人は、最初からのニコニコ笑顔を崩そうともせず、我先にという感じで、
颯爽と壇上へと上がってきた。
「見つかってしまったか」
「ファミーユちゃん目聡いな~」
隠れる気なんか微塵もなく、堂々と最前列にいたくせに、どの口が言うか。
というか、この人ごみの中で、よく身バレせずに前まで来られたもんだ。
2人とも私服姿だから、気付かれなかったのかな?
「り、リアンちゃん? もしかしてこの2人……」
「ええ、そうです」
司会のおっちゃんが、ステージに上がってきた人物を見て動揺し始める。
さすがにこの2人を前にしたらそうなるよな。
「お、おい、あれって……」
「まさか!?」
「うそ、ホントに?」
客席もざわつき始めた。
うん、当然の反応だ。いまダメ押ししてあげるから待っててね。
「紹介します。史上3人目の三冠ウマ娘にして、
先日のジャパンカップでシンザンの五冠に並んだ、ミスターシービー先輩です」
「はーいどうも~、ミスターシービーでーす」
『うわああああっ!!!?』
笑顔で手を振る先輩に対して、悲鳴とも絶叫ともつかない大歓声が沸き起こる。
やっぱり人気という点では、この人のものは一線を画すよなあ。
「そしてこちらは、4人目の三冠ウマ娘で、いまだ無敗のまま
有馬で五冠を達成した、シンボリルドルフさんです」
「どうもみなさん、こんばんは。ご紹介に預かりましたシンボリルドルフです。
その節は応援ありがとうございました」
『うおおおおおおっ!!!?』
ルドルフにも、先輩に勝るとも劣らない大歓声だ。
喜べルドルフ、少なくともここでは、シービー先輩に負けてないぞ。
「リアンちゃん……このお二人とお友達なの……?」
「ええ、仲良くさせていただいてます」
「……すご」
おっちゃんの短くも的確な一言。
考えてみれば、すごい人たちと繋がり持ってるよなあ俺って。
「その、お二人も、トークショーに参加していただけると……?」
「お望みとあらば」
「いいよ~」
「……」
おっちゃんは、2人の言葉に、一瞬だけぽか~んとした後
「誰かっ! マイク! マイクあと2本持ってきてっ!」
そう、絶叫した。
30分の予定だったトークショーは、予定を大幅に超えて
2時間に及んで大盛況、そのあとのプレゼント抽選会にも2人は参加。
当選者へのプレゼンターも務めてくれて、
より一層のクリスマスプレゼントとなったのである。
イベント終了後、寮への帰り道。
暗い夜道を3人並んで歩く。
「ごめんね、レース直後で疲れてるだろうに。
シービー先輩も、すいませんでした」
「なに、構わないさ。見つかったら出て行くつもりではいたんだ」
「ルドルフに説得されちゃってね~」
2人は2日前にレース、それも年末の大一番を走ったばかりだ。
勢いで壇上に呼んでしまったが、改めて罪悪感が浮かんでくる。
本当、2人の心の広さには頭が下がるよ。
「ファンサービスは大事だからな」
「エースも連れていくつもりだったんだよ。
でも文字通り逃げられちゃってね~」
「そうなんですか」
さすがの逃げ足カツラギエース。
この上カツラギ先輩まで揃っていたら、どうなっていたことやら。
とてもじゃないが、街の商店街が行うイベントどころの騒ぎじゃなくなる。
「でも安心したよ」
「ルドルフ?」
「リアンにもファンがついてくれたんだな。
ファンクラブができるそうじゃないか、おめでとう」
「や、あれは、そのぉ……あの人たちが勝手に言ってるだけで……」
「だけどファミーユちゃん、公認しちゃったよね?」
「……そうですね」
確かにシービー先輩の言う通り。
まんまと言質を取られてしまった。
間違いなく、今後も何か言ってくるだろうなあ。
差し当たっては、会員証の直筆サインか。
……サインの練習しとこ。
「よかったな、リアン」
「……うん」
ルドルフの優しげなが微笑みを直視できなくて、思わずそっぽを向いてしまった。
なんか気恥ずかしさでいっぱいだ。
「ファミーユちゃん、お金以外にも走る理由ができたね?」
「いえ先輩、あれは物の例えで言っただけで、
私は決してお金にがめついとか、そういうわけではなく……」
「あはは、わかってるわかってる♪」
「……痛いです。背中バンバン叩くのやめてください」
「ファンは大事にしないとね」
「……はい」
ファンの期待を盛大に受けている人が言うと、一味も二味も違うね。
まったくどいつもこいつも……
いまだデビューもできず、リハビリ中のモブ娘なんかには重すぎるよ。
とりあえず、早く復帰しないとな。
決意を新たにしたクリスマスの夜だった。
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
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