転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第3話 孤児ウマ娘、出走する

 

 

クラスのイカれたメンバーを紹介するぜ!

 

まずは、後に朝日杯を制するハーディービジョン。

わがままで気の強い典型的なじゃじゃ馬。

 

2人目、サクラ軍団の大器と名高いサクラトウコウ。

スピード自慢らしいのだが、しょっちゅう足を気にしている。心配。

 

3人目、ルドルフのダービーで2着に突っ込むことになる、スズマッハ。

心身ともにタフなナイスガイ(娘)。

 

4人目は、マッハとは幼馴染らしいスズパレード。

のちの宝塚記念馬は、小さなことにもこだわる繊細なタイプ。

 

5人目、降着制度の産みの親ニシノライデン。

気は優しいが力持ち。その力強さが時には仇となることも……?

 

6人目、均整の取れたプロポーション、末はスーパーモデルか、ワカオライデン。

同じライデンだけど、ニシノさんとは関係ないらしい。

 

7人目、伝説的な曾祖母を持ち、桜花賞を勝つダイアナソロン。

そんな良血を鼻にかけない良い子。

 

8人目、オークスを制し、武豊の初めてを奪った女(笑)、トウカイローマン。

12歳にしておっとり熟女っぽい雰囲気を漂わせるやべーやつ。

 

9人目、皇帝のクラシックにおける最大のライバル、ビゼンニシキ。

実はまだ話せてない。他の子ともあんまりしゃべってない。孤高な天才?

 

そして、栄えある大トリはもちろんこの子、我らが皇帝陛下シンボリルドルフ!

前人未到の七冠を制した名バが見据える先は、フランスかアメリカか?

 

 

 

……ふぅ。なんか紹介するだけで疲れたぜ。

 

この世代の有名であろう子たち(モデル馬)をざっと書き出してみた。

一言ずつだけれども、こっちの世界の子の雑感を述べてみた。

 

そんなに知識があるわけじゃないし、こっちの子たちの印象も、

親しくなった子ばかりじゃないので、俺の所感を書いただけだ。

必ずしも合っているわけではないことを了承してほしい。

 

ルドルフが飛びぬけているのはもちろんだが、意外にもこの世代、

他に混合G1を勝っているのは、宝塚を取ったスズパレードだけなんだよな。

 

世代のレベル云々は単純に比較できるものじゃないし、

皇帝陛下の三冠について悲観的なことを言うつもりも全くないが、

本当に意外だと思う。

 

1個上にシービーとピロウイナー、1個下にミホシンザンとかサクラユタカオーがいるし、

さらに下にはダイナガリバー、ニッポーテイオー、メジロラモーヌと目白押しな状態なのだ。

その影に埋もれてしまっているというのが本当に惜しい。

 

ますます俺の出る幕なんてないと思えてくるな。

気が滅入るわ~。

 

「何を書いているんだ?」

 

かけられた声に反応した見上げると、そこには我らが皇帝陛下。

彼女は不思議そうな顔で、こちらをのぞき込んでいる。

 

「あ、や、ただの落書き」

 

そう言いつつ、慌てて机上のノートを閉じた。

 

詳しい中身までは見られてないよな?

のちに〇〇を制する、なんてのを見られたら、

お前どんな予言者だよってなるから、見られてたらまずいんだが……

 

「そうか? それにしては随分と真剣な様子だったが?」

 

「いやあ、はは、まあいいじゃない」

 

「そうか」

 

どうやら中身までは見られていなかったようだ。

完全には納得してないみたいだけどね。

 

俺がクラスで割かしうまくやれているのも、ルドルフの貢献が大だと思う。

もし彼女がいなかったら、ジェネレーションギャップと元男性の意識が邪魔をして、

下手したら孤立していたんじゃなかろうか。

 

ルドルフの人の上に立つ才気というのは早くも発揮されていて、

早くもクラス中から慕われているのだ。(約1名を除く)

 

そんなルドルフが親しくしているルームメイトということで、

みんなが俺にも話しかけてくれるのだ。

 

ついででもおまけでもいいから、ボッチになるよりは百万倍いい。

 

「それより、何か用?」

 

「用というか、次は移動教室だぞ。もうみんな行ってしまった」

 

「え? あ……」

 

周りを見てみると、ルドルフの言うとおり、教室内にはもう誰もいなかった。

うわ、やべっ。完全に忘れてた。

 

「ごめん、ありがと」

 

「これくらいわけないさ。一緒に行こう」

 

「うん」

 

慌てて支度を整え、ルドルフと一緒に教室を出る。

こんな感じで、彼女には仲良くしてもらい、割と助けられているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアンはもう決めたのか?」

 

「え、何を?」

 

入学式から1週間ほど経過した、ある日の夜。

入浴を終えて部屋に戻ってきたところで、ルドルフからそんなことを聞かれた。

 

突然のことで見当がつかず、首を傾げてしまう俺。

 

「今日、トレーニング前に教官から言われたじゃないか。

 来週1回目の選抜レースがあるから、各自出走するレースを決めておけと」

 

「そういえば」

 

そんなことを言っていた。

 

いわば実力テストのようなものだな。

ここで力を発揮してトレーナーの目に留まれば、契約、訓練、デビューの運びとなる。

 

といっても、今回は入学直後のそれなので、

いきなりそこまでの流れになるのは稀らしいけれども。

 

個人によって『本格化』の時期には大きなずれが生じるらしいし、

選抜レースは毎月あるようなので、出走するしないは個人の裁量とのこと。

ただし、1回目の今回は全員出走が義務付けられている。

 

能力というよりは、顔見せと個々人による

自己の適性の確認という意味が大きいのだろう。

 

「で、どうするんだ?」

 

「うーん、どうしよう……」

 

ルドルフの問いに、即答はできなかった。

実は、割と真面目に迷っている。

 

選抜レースは距離、バ場別に行われる。適性による差が大きいからだ。

人間にも向き不向きがあるように、ウマ娘にもそれは存在する。

短距離で強い子が長距離でも強いとは限らないし、逆であることがほとんど。

 

でもごく稀に、どんな距離、バ場でも強いオールラウンダー的なバケモノがいる。

 

往年ではスプリントから長距離、芝でもダートでも勝ったタケシバオー。

近年では芝ダート不問、地方でも海外でも勝利したアグネスデジタルなんかがそうだ。

 

逆に、その距離でしかダメ、なんて極端な例もある。

要は千差万別だから、なるべくその子の適性に合った場を設けましょうね、ということ。

 

「条件は何だっけ?」

 

「芝は1200、1600、2000のみっつ。ダートは1200と1600だな」

 

「う~ん……」

 

基本中の基本の根幹距離である。

これだけあれば、ほとんどのウマ娘の適性に合致するのだろう。

 

だが、俺はどうなのだ?

前にも話したが、自分の適性って、どうやって見極めてるの?

 

「あのさ、根本的なこと聞いてもいい?」

 

「もちろん。相談に乗ると約束したからな。何でも聞いてくれ」

 

ちょうどよい機会だ。

他のウマ娘はどうしているのか、皇帝陛下に聞いてみよう。

 

「自分の適性って、どうやったらわかるの?」

 

「え?」

 

「……え?」

 

俺の質問は、本当に意外なものだったのだろう。

ルドルフの表情は、こいつ何を言っているんだ、と言っている。

言葉にしていなくてもわかる。

 

「何かおかしなこと聞いちゃった?」

 

「いや……そうだな。君の境遇を考えると、無理のないことかもしれない」

 

「……」

 

ルドルフは少し考えると、言葉を選ぶようにして、気まずそうにそう言った。

どうやら本当に、おかしなことを聞いてしまったようだった。

 

「いいか? そもそも私たちウマ娘には、

 『ウマソウル』なるものが宿っていると考えられている。

 ウマソウルのおかげで私たちは、人間にはないパワーと走力がある、と」

 

「……うん」

 

そこまでは理解できる。

公式がどういう設定になっているのか、詳しいことまではわからないが、

そういうことのようだ、というのは色々漁っているうちに知った。

 

「ウマ娘はウマソウルを持って生まれてくる。

 その子の能力は、ウマソウルがすべてと言っていい。

 だから、適性もウマソウルに依るものが大きいし、自ずとわかるものなんだ」

 

「自ずと……? どういうふうに?」

 

「なんというかな……ある日、ふと、自分とはこういうものだ、

 と理解するというか、わかるという感じなのだが」

 

「………」

 

「すまない。私もこれに関しては、教えてくれた先生の受け売りだし、

 自分ではこういう感じだったとしか言えないんだ。申し訳ない」

 

「いや、謝らなくてもいいよ」

 

ルドルフの説明から推測するに、ウマ娘であれば、労せずわかる、ということなのかな?

ゲームではよくあるステータス画面を開くようなもの、とか。

 

あーくそっ、俺にもゲーム版みたいな機能つけてくれよ!

おまけにスキルも欲しいぞ!

ルドルフ、君の固有スキルなんか、競争する上では極めて優秀じゃないか。

 

因子継承させてくれぇ! うまぴょいしようぜ!(錯乱)

 

「察するに、リアン。君は自分の適性が分からないのか?」

 

「ご明察。まったくもってわからないんだなこれが」

 

「バ場も、距離も、脚質も?」

 

「うん。まるっと全部」

 

「……そうなのか」

 

さしもの皇帝陛下も、二の句が継げないようだった。

そりゃそうだよな。自分でもおかしいと思うもん。

 

つくづくイレギュラーな存在だよなあ、俺って。

 

「参考までに、ルドルフの適性、聞かせてもらってもいい?」

 

「ああ。芝、中長距離、先行、差し、といったところだ」

 

ルドルフの適性を聞いてみたが、史実ともゲームとも合致する。

双方からかけ離れた世界線、というわけでもなさそうだ。

 

となると、やっぱり、宿っているのが転生者の魂というのが問題なんだな!(泣)

 

「じゃあ芝2000に出るの?」

 

「そのつもりなんだが、ありがたいことに既にあるトレーナーから

 話をいただいていてね。彼女の意向で、マイルになるかもしれない」

 

「へえ、うらやましいなあ」

 

「……すまない」

 

「なんで謝るのよ」

 

これは単純に羨ましい。

 

ルドルフほどのウマ娘なら、レース前からスカウトの話があってもおかしくないか。

『彼女』と言うからには、その彼女とは“おハナさん”なのかな?

さすがのご慧眼、といったところか。ここはアニメ時空である可能性?

 

そういえばあんまり聞かないけど、史実の皇帝は、

デビュー前の評判はいかほどだったのだろうか。

 

今のルドルフの話も、史実での1000mのデビュー戦で騎手が

『マイルの競馬を教えた』ってコメントしたことに基づくのかな。

 

「あー、一通り出てみるしかないのかな~」

 

「一通りって、まさか全部に出走するつもりなのか?

 1日で5レースだぞ!? 合計したら7600mにもなる!」

 

計算早いな。さすが優等生。

いっぺんに走るわけじゃないじゃないし、

ウマ娘の身体能力なら大丈夫かなって。

 

「だって、適性計るには、実際に走ってみるしかないじゃん?

 もしかして、ひとつしか出ちゃいけないとかって決まりがある?」

 

「いや、そんな決まりはなかったと思うが……」

 

唖然とするルドルフ。

俺だってそんなことしたくないけど、今後のためにはそうするしかない。

早いうちにわかっていたほうが絶対にいいはずだもん。

 

「大丈夫。これでスカウトされようなんて全然思ってないし、

 全部本気で走るなんて真似しないから」

 

「……怪我だけはしないでくれよ。

 少しでも違和感を覚えたら、すぐに棄権してくれ」

 

「わかってるわかってる」

 

「本当に頼むぞ……」

 

心配性だなあ、感覚を確かめるだけなんだし、

人間だって、大会じゃ1日に何レースか走ったりするでしょ。

大丈夫、大丈夫。

 

……な~んて甘く考えていた時期が、俺にもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1回選抜レース当日。

 

数人のトレーナーたちが、早くもトラックコースの客席部分に集まって、

今年度の新入生たちについて話していた。

 

「今年は何といってもシンボリルドルフだろう」

 

「ああ、1人だけ抜けているな」

 

「三冠を狙える、いや、確実にそうなるな」

 

やはり話題の中心はシンボリルドルフである。

 

名家出身で、一目見ただけでわかるほどの能力を備えている。

大本命も大本命だった。

だが、だからこそ、という話もあった。

 

「しかし、彼女はリギルさんが持っていくんだろう?」

 

「すでに話がついているという噂も」

 

「さすがナンバーワンチーム。実績も手も1番か」

 

すでにスカウト済み、という話。

よって、話題は2番手以降へと移っていく。

 

「その次となると……」

 

「ビゼンニシキ、ダイアナソロン、ハーディービジョン、サクラトウコウ、

 といったところかな?」

 

「う~む、やはりルドルフと比べてしまうと……」

 

手元の資料を見やりつつ、彼らの表情が渋る。

明確な差を感じてしまった。

 

「スズパレード、トウカイローマンくらいになると、さらにもう1枚落ちるか」

 

「三冠はルドルフで決まりだが、ティアラ路線はわからんぞ」

 

「今年はそっち方面の発掘が醍醐味となるか」

 

「……ん?」

 

とここで、資料を見ていた1人のトレーナーが、あることに気づいた。

 

「どうした?」

 

「いや、この子なんだが」

 

「……ほお、全レースにエントリーしているのか」

 

「全レースに? 珍しいな」

 

全部で5条件あるレース、すべてにエントリーしている生徒がいる。

普通は多くても2つまでなので、目に留まったのだった。

 

「名前は、ファミーユリアン。聞いたことないな」

 

「どんな子なんだ?」

 

「……なんだ、全レースエントリーというからどんな体力自慢かと思ったら、

 真逆のすごい小柄でほっそりした子じゃないか」

 

「体力保つのか、この子?」

 

「わからんな。自信があるのか、はたまた冷やかしなのか」

 

資料に載っているデータによれば、とてもとても、

全レースすべてをまともに走り切れそうには見えない。

 

どう捉えたものかと、歴戦のトレーナーたちも唸るしかなかった。

 

「とりあえず、お手並み拝見といくか」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝9時。

第1レース、芝1200m戦開始。

 

スプリント適性を持つ子が多いのか、千二では各条件中

最多の4組のレースが組まれている。

俺はそのうちの3組目の出走になる。

 

「はーい。芝1200m、第3組に出走する子たちは、招集所に向かってくださーい」

 

あっという間に自分の出番だ。

 

全力で勝負するつもりはないので、あえて他のレースは見ずに

離れたところで待機していた俺。

 

招集の声に立ち上がり、少し身体を動かしてから向かうとしますかね。

 

「リアン」

 

「おや、ルドルフ」

 

すると、ルドルフがやってきて声をかけてきた。

その表情は少し陰っている。

 

こいつ、まだ心配しているのか。しょうがないやつだ。

 

「がんばれ」

 

どんな言葉をかけてくれるのかと期待していたら、

月並みな、それも一言だけだった。

 

思わずガックリ来そうになるが、

気負わせないようにとの、陛下なりの気づかいなのだろう。

全力を出さないってことも話してあるしな。

 

「おー、武者震いがするのう!」

 

「なんだそれは」

 

「いってくる~」

 

苦笑するルドルフに見送られ、レースに向かう。

 

招集所では、ゼッケンとエントリーリストが合っているかの確認が行われ、

すぐさまゲートインとなった。

 

おお、さすがに、この狭いゲートの中に入ると緊張するな。

適性の確認とはいえ、出遅れには注意しないと。

 

「かんりょ~」

 

態勢完了の声がかかる。発走準備、よし。

 

 

ガシャンッ

 

 

「っ……!」

 

ゲートが開くのと同時に、俺は駆け出した。

 

 

 

 

 




仮想勝負服

【挿絵表示】

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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