クラスのイカれたメンバーを紹介するぜ!
まずは、後に朝日杯を制するハーディービジョン。
わがままで気の強い典型的なじゃじゃ馬。
2人目、サクラ軍団の大器と名高いサクラトウコウ。
スピード自慢らしいのだが、しょっちゅう足を気にしている。心配。
3人目、ルドルフのダービーで2着に突っ込むことになる、スズマッハ。
心身ともにタフなナイスガイ(娘)。
4人目は、マッハとは幼馴染らしいスズパレード。
のちの宝塚記念馬は、小さなことにもこだわる繊細なタイプ。
5人目、降着制度の産みの親ニシノライデン。
気は優しいが力持ち。その力強さが時には仇となることも……?
6人目、均整の取れたプロポーション、末はスーパーモデルか、ワカオライデン。
同じライデンだけど、ニシノさんとは関係ないらしい。
7人目、伝説的な曾祖母を持ち、桜花賞を勝つダイアナソロン。
そんな良血を鼻にかけない良い子。
8人目、オークスを制し、武豊の初めてを奪った女(笑)、トウカイローマン。
12歳にしておっとり熟女っぽい雰囲気を漂わせるやべーやつ。
9人目、皇帝のクラシックにおける最大のライバル、ビゼンニシキ。
実はまだ話せてない。他の子ともあんまりしゃべってない。孤高な天才?
そして、栄えある大トリはもちろんこの子、我らが皇帝陛下シンボリルドルフ!
前人未到の七冠を制した名バが見据える先は、フランスかアメリカか?
……ふぅ。なんか紹介するだけで疲れたぜ。
この世代の有名であろう子たち(モデル馬)をざっと書き出してみた。
一言ずつだけれども、こっちの世界の子の雑感を述べてみた。
そんなに知識があるわけじゃないし、こっちの子たちの印象も、
親しくなった子ばかりじゃないので、俺の所感を書いただけだ。
必ずしも合っているわけではないことを了承してほしい。
ルドルフが飛びぬけているのはもちろんだが、意外にもこの世代、
他に混合G1を勝っているのは、宝塚を取ったスズパレードだけなんだよな。
世代のレベル云々は単純に比較できるものじゃないし、
皇帝陛下の三冠について悲観的なことを言うつもりも全くないが、
本当に意外だと思う。
1個上にシービーとピロウイナー、1個下にミホシンザンとかサクラユタカオーがいるし、
さらに下にはダイナガリバー、ニッポーテイオー、メジロラモーヌと目白押しな状態なのだ。
その影に埋もれてしまっているというのが本当に惜しい。
ますます俺の出る幕なんてないと思えてくるな。
気が滅入るわ~。
「何を書いているんだ?」
かけられた声に反応した見上げると、そこには我らが皇帝陛下。
彼女は不思議そうな顔で、こちらをのぞき込んでいる。
「あ、や、ただの落書き」
そう言いつつ、慌てて机上のノートを閉じた。
詳しい中身までは見られてないよな?
のちに〇〇を制する、なんてのを見られたら、
お前どんな予言者だよってなるから、見られてたらまずいんだが……
「そうか? それにしては随分と真剣な様子だったが?」
「いやあ、はは、まあいいじゃない」
「そうか」
どうやら中身までは見られていなかったようだ。
完全には納得してないみたいだけどね。
俺がクラスで割かしうまくやれているのも、ルドルフの貢献が大だと思う。
もし彼女がいなかったら、ジェネレーションギャップと元男性の意識が邪魔をして、
下手したら孤立していたんじゃなかろうか。
ルドルフの人の上に立つ才気というのは早くも発揮されていて、
早くもクラス中から慕われているのだ。(約1名を除く)
そんなルドルフが親しくしているルームメイトということで、
みんなが俺にも話しかけてくれるのだ。
ついででもおまけでもいいから、ボッチになるよりは百万倍いい。
「それより、何か用?」
「用というか、次は移動教室だぞ。もうみんな行ってしまった」
「え? あ……」
周りを見てみると、ルドルフの言うとおり、教室内にはもう誰もいなかった。
うわ、やべっ。完全に忘れてた。
「ごめん、ありがと」
「これくらいわけないさ。一緒に行こう」
「うん」
慌てて支度を整え、ルドルフと一緒に教室を出る。
こんな感じで、彼女には仲良くしてもらい、割と助けられているのである。
「リアンはもう決めたのか?」
「え、何を?」
入学式から1週間ほど経過した、ある日の夜。
入浴を終えて部屋に戻ってきたところで、ルドルフからそんなことを聞かれた。
突然のことで見当がつかず、首を傾げてしまう俺。
「今日、トレーニング前に教官から言われたじゃないか。
来週1回目の選抜レースがあるから、各自出走するレースを決めておけと」
「そういえば」
そんなことを言っていた。
いわば実力テストのようなものだな。
ここで力を発揮してトレーナーの目に留まれば、契約、訓練、デビューの運びとなる。
といっても、今回は入学直後のそれなので、
いきなりそこまでの流れになるのは稀らしいけれども。
個人によって『本格化』の時期には大きなずれが生じるらしいし、
選抜レースは毎月あるようなので、出走するしないは個人の裁量とのこと。
ただし、1回目の今回は全員出走が義務付けられている。
能力というよりは、顔見せと個々人による
自己の適性の確認という意味が大きいのだろう。
「で、どうするんだ?」
「うーん、どうしよう……」
ルドルフの問いに、即答はできなかった。
実は、割と真面目に迷っている。
選抜レースは距離、バ場別に行われる。適性による差が大きいからだ。
人間にも向き不向きがあるように、ウマ娘にもそれは存在する。
短距離で強い子が長距離でも強いとは限らないし、逆であることがほとんど。
でもごく稀に、どんな距離、バ場でも強いオールラウンダー的なバケモノがいる。
往年ではスプリントから長距離、芝でもダートでも勝ったタケシバオー。
近年では芝ダート不問、地方でも海外でも勝利したアグネスデジタルなんかがそうだ。
逆に、その距離でしかダメ、なんて極端な例もある。
要は千差万別だから、なるべくその子の適性に合った場を設けましょうね、ということ。
「条件は何だっけ?」
「芝は1200、1600、2000のみっつ。ダートは1200と1600だな」
「う~ん……」
基本中の基本の根幹距離である。
これだけあれば、ほとんどのウマ娘の適性に合致するのだろう。
だが、俺はどうなのだ?
前にも話したが、自分の適性って、どうやって見極めてるの?
「あのさ、根本的なこと聞いてもいい?」
「もちろん。相談に乗ると約束したからな。何でも聞いてくれ」
ちょうどよい機会だ。
他のウマ娘はどうしているのか、皇帝陛下に聞いてみよう。
「自分の適性って、どうやったらわかるの?」
「え?」
「……え?」
俺の質問は、本当に意外なものだったのだろう。
ルドルフの表情は、こいつ何を言っているんだ、と言っている。
言葉にしていなくてもわかる。
「何かおかしなこと聞いちゃった?」
「いや……そうだな。君の境遇を考えると、無理のないことかもしれない」
「……」
ルドルフは少し考えると、言葉を選ぶようにして、気まずそうにそう言った。
どうやら本当に、おかしなことを聞いてしまったようだった。
「いいか? そもそも私たちウマ娘には、
『ウマソウル』なるものが宿っていると考えられている。
ウマソウルのおかげで私たちは、人間にはないパワーと走力がある、と」
「……うん」
そこまでは理解できる。
公式がどういう設定になっているのか、詳しいことまではわからないが、
そういうことのようだ、というのは色々漁っているうちに知った。
「ウマ娘はウマソウルを持って生まれてくる。
その子の能力は、ウマソウルがすべてと言っていい。
だから、適性もウマソウルに依るものが大きいし、自ずとわかるものなんだ」
「自ずと……? どういうふうに?」
「なんというかな……ある日、ふと、自分とはこういうものだ、
と理解するというか、わかるという感じなのだが」
「………」
「すまない。私もこれに関しては、教えてくれた先生の受け売りだし、
自分ではこういう感じだったとしか言えないんだ。申し訳ない」
「いや、謝らなくてもいいよ」
ルドルフの説明から推測するに、ウマ娘であれば、労せずわかる、ということなのかな?
ゲームではよくあるステータス画面を開くようなもの、とか。
あーくそっ、俺にもゲーム版みたいな機能つけてくれよ!
おまけにスキルも欲しいぞ!
ルドルフ、君の固有スキルなんか、競争する上では極めて優秀じゃないか。
因子継承させてくれぇ! うまぴょいしようぜ!(錯乱)
「察するに、リアン。君は自分の適性が分からないのか?」
「ご明察。まったくもってわからないんだなこれが」
「バ場も、距離も、脚質も?」
「うん。まるっと全部」
「……そうなのか」
さしもの皇帝陛下も、二の句が継げないようだった。
そりゃそうだよな。自分でもおかしいと思うもん。
つくづくイレギュラーな存在だよなあ、俺って。
「参考までに、ルドルフの適性、聞かせてもらってもいい?」
「ああ。芝、中長距離、先行、差し、といったところだ」
ルドルフの適性を聞いてみたが、史実ともゲームとも合致する。
双方からかけ離れた世界線、というわけでもなさそうだ。
となると、やっぱり、宿っているのが転生者の魂というのが問題なんだな!(泣)
「じゃあ芝2000に出るの?」
「そのつもりなんだが、ありがたいことに既にあるトレーナーから
話をいただいていてね。彼女の意向で、マイルになるかもしれない」
「へえ、うらやましいなあ」
「……すまない」
「なんで謝るのよ」
これは単純に羨ましい。
ルドルフほどのウマ娘なら、レース前からスカウトの話があってもおかしくないか。
『彼女』と言うからには、その彼女とは“おハナさん”なのかな?
さすがのご慧眼、といったところか。ここはアニメ時空である可能性?
そういえばあんまり聞かないけど、史実の皇帝は、
デビュー前の評判はいかほどだったのだろうか。
今のルドルフの話も、史実での1000mのデビュー戦で騎手が
『マイルの競馬を教えた』ってコメントしたことに基づくのかな。
「あー、一通り出てみるしかないのかな~」
「一通りって、まさか全部に出走するつもりなのか?
1日で5レースだぞ!? 合計したら7600mにもなる!」
計算早いな。さすが優等生。
いっぺんに走るわけじゃないじゃないし、
ウマ娘の身体能力なら大丈夫かなって。
「だって、適性計るには、実際に走ってみるしかないじゃん?
もしかして、ひとつしか出ちゃいけないとかって決まりがある?」
「いや、そんな決まりはなかったと思うが……」
唖然とするルドルフ。
俺だってそんなことしたくないけど、今後のためにはそうするしかない。
早いうちにわかっていたほうが絶対にいいはずだもん。
「大丈夫。これでスカウトされようなんて全然思ってないし、
全部本気で走るなんて真似しないから」
「……怪我だけはしないでくれよ。
少しでも違和感を覚えたら、すぐに棄権してくれ」
「わかってるわかってる」
「本当に頼むぞ……」
心配性だなあ、感覚を確かめるだけなんだし、
人間だって、大会じゃ1日に何レースか走ったりするでしょ。
大丈夫、大丈夫。
……な~んて甘く考えていた時期が、俺にもありました。
第1回選抜レース当日。
数人のトレーナーたちが、早くもトラックコースの客席部分に集まって、
今年度の新入生たちについて話していた。
「今年は何といってもシンボリルドルフだろう」
「ああ、1人だけ抜けているな」
「三冠を狙える、いや、確実にそうなるな」
やはり話題の中心はシンボリルドルフである。
名家出身で、一目見ただけでわかるほどの能力を備えている。
大本命も大本命だった。
だが、だからこそ、という話もあった。
「しかし、彼女はリギルさんが持っていくんだろう?」
「すでに話がついているという噂も」
「さすがナンバーワンチーム。実績も手も1番か」
すでにスカウト済み、という話。
よって、話題は2番手以降へと移っていく。
「その次となると……」
「ビゼンニシキ、ダイアナソロン、ハーディービジョン、サクラトウコウ、
といったところかな?」
「う~む、やはりルドルフと比べてしまうと……」
手元の資料を見やりつつ、彼らの表情が渋る。
明確な差を感じてしまった。
「スズパレード、トウカイローマンくらいになると、さらにもう1枚落ちるか」
「三冠はルドルフで決まりだが、ティアラ路線はわからんぞ」
「今年はそっち方面の発掘が醍醐味となるか」
「……ん?」
とここで、資料を見ていた1人のトレーナーが、あることに気づいた。
「どうした?」
「いや、この子なんだが」
「……ほお、全レースにエントリーしているのか」
「全レースに? 珍しいな」
全部で5条件あるレース、すべてにエントリーしている生徒がいる。
普通は多くても2つまでなので、目に留まったのだった。
「名前は、ファミーユリアン。聞いたことないな」
「どんな子なんだ?」
「……なんだ、全レースエントリーというからどんな体力自慢かと思ったら、
真逆のすごい小柄でほっそりした子じゃないか」
「体力保つのか、この子?」
「わからんな。自信があるのか、はたまた冷やかしなのか」
資料に載っているデータによれば、とてもとても、
全レースすべてをまともに走り切れそうには見えない。
どう捉えたものかと、歴戦のトレーナーたちも唸るしかなかった。
「とりあえず、お手並み拝見といくか」
「そうだな」
朝9時。
第1レース、芝1200m戦開始。
スプリント適性を持つ子が多いのか、千二では各条件中
最多の4組のレースが組まれている。
俺はそのうちの3組目の出走になる。
「はーい。芝1200m、第3組に出走する子たちは、招集所に向かってくださーい」
あっという間に自分の出番だ。
全力で勝負するつもりはないので、あえて他のレースは見ずに
離れたところで待機していた俺。
招集の声に立ち上がり、少し身体を動かしてから向かうとしますかね。
「リアン」
「おや、ルドルフ」
すると、ルドルフがやってきて声をかけてきた。
その表情は少し陰っている。
こいつ、まだ心配しているのか。しょうがないやつだ。
「がんばれ」
どんな言葉をかけてくれるのかと期待していたら、
月並みな、それも一言だけだった。
思わずガックリ来そうになるが、
気負わせないようにとの、陛下なりの気づかいなのだろう。
全力を出さないってことも話してあるしな。
「おー、武者震いがするのう!」
「なんだそれは」
「いってくる~」
苦笑するルドルフに見送られ、レースに向かう。
招集所では、ゼッケンとエントリーリストが合っているかの確認が行われ、
すぐさまゲートインとなった。
おお、さすがに、この狭いゲートの中に入ると緊張するな。
適性の確認とはいえ、出遅れには注意しないと。
「かんりょ~」
態勢完了の声がかかる。発走準備、よし。
ガシャンッ
「っ……!」
ゲートが開くのと同時に、俺は駆け出した。
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
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