転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第35話 孤児ウマ娘、勝負する

 

 

 

 

『話がある。トレーナー室まで来い』

 

夏休みの直前、シリウスからそんなメッセージが飛んできた。

 

本当に前置きも何もなく、突然来るから困る。

俺もトレーニングがあるんだっつーの。

せめて午前中とかに連絡貰えませんかね?

 

『来い』

 

……はいはい、わかったよ。

ったく、既読スルーされるとでも思ったんだろうが、

2、3分くらいは、返信する時間をいただけませんかねぇ。

 

仕方なく、着替えるためにロッカー室に向かうところだったのを、

目的地をシリウスのトレーナーさんの部屋へと変える。

 

またスーちゃんから浮気メール来ないだろうな?

 

「ファミーユリアンです」

 

『入れ』

 

部屋の前まで行き、ドアをノックして声をかけると、

中からシリウスの声が返ってきた。

 

こら、部屋の主はおまえじゃないだろう。

なんでおまえが返事すんねんと思いつつ、ドアを開けて中へ。

 

「……トレーナーさんは?」

 

「今はいない」

 

すると、真ん中にシリウスが立っているだけで、トレーナーさんの姿がない。

余計に悪い状況だった。まさか勝手に使ってるわけじゃないよな?

 

さすがにそれはないと思いたい。

トレーナーさんが不在なら、鍵はかかっているはずだし。

 

「さてリアン、あの件だ」

 

「……」

 

あの件、あの件ね……

ドヤ顔で言うシリウスを、ジト目で睨んでやる。

 

「ははっ、そんな顔するなよ」

 

それでもまるで応えた様子のないシリウス。

むしろ喜んでいる感じすらする。

 

そうだよな、おまえはそういうやつだよ。

 

「それで、私は何をすればいいわけ?」

 

「私と勝負しろ」

 

「勝負?」

 

単刀直入に尋ねると、意外な答えが返ってきた。

何の勝負だというんだ?

 

「初めて会った時のこと、忘れたとは言わせねえぞ」

 

「……」

 

なるほど、そういうことか……

 

初めてシリウスと会った2年前の夏、こいつは顔を合わせるなり、

私と勝負しろと喚いた。

あまりに失礼な態度だったんで、もちろん一蹴してやったわけなんだが。

 

「それまで私はたくさん勝負してきた。

 勝負しろと言えば、断る奴なんていなかったんだ。

 もちろん負けたこともなかった」

 

典型的なお山の大将だったわけね~。

純粋な力勝負なのはいくつあったのか。

接待プレイされたレースもあったんじゃないの?

 

シンボリの名声というのは、想像以上に大きいと思うわけよ。

ウマ娘界隈に関係が深いところほどそうだろう。

 

そりゃこんな唯我独尊な奴に育つわけだな。

無論シリウスに力がないわけではなく、

実際才能はダービーを勝てるほどにはあるんだから、さらに困る。

 

本当、ルドルフとは正反対に育ったんだなあと強く感じた。

まさにシンボリの陰と陽だ。

 

それが年を置かずして誕生し、2年続けてダービーを制したんだから、

事実というのは小説よりも奇なり、だよなあ。

 

「今回は断らないよな? もっとも、断らせないが」

 

「いいけどさ……」

 

いや、もっと困らせられるようなことなんじゃないかと思ってたから、

正直拍子抜けしてしまった。

そんなことでいいの、ってすら思う。

 

「けど、なんだ?」

 

そういう気持ちが顔に出てしまったんだろう。

シリウスの眉間にしわが寄った。

 

「そんなことでいいのかなって。ほら、考えても見なさいって」

 

「ああ?」

 

「私と勝負したいって気持ちは痛いくらいによくわかったよ。

 でも、私はまだデビューもしていなくて、しかも故障明けだよ。

 対するあんたは現役のダービーウマ娘」

 

「……」

 

「もう正直に言っちゃっていい?

 勝負するまでもなく、あんたの圧勝だと思うんだけど」

 

「……っち」

 

そう言うと、シリウスは大いに不満そうに、盛大に舌を打った。

そして、露骨に顔を歪めて言う。

 

「そういうことじゃねえんだよ!」

 

言うのと同時に、近くにあったテーブルに掌を打ち付けた。

バンッ、と大きな音が響く。

 

あわわ……お、怒らせてしまった。

テーブル大丈夫か? 壊れてない?

 

備品破壊はまずいですよ!

しかもトレーナーさんが不在な時に!

 

「わ、わかった。勝負する、勝負はするから、落ち着いて」

 

「……最初からそう言えばいいんだ。余計な言葉は要らねえ」

 

「ご、ごめん」

 

「……ふんっ」

 

慌ててなだめにかかると、まだ不満げではあったが、怒りを鎮めてくれた。

 

やれやれ、焦ったぜ。俺が怒らせちゃってどうするんだと。

シンボリのお父様に土下座しなくちゃいけないところだった。

 

「それで、いつ、どこで?」

 

まさか、今すぐとは言わないよな?

相応の準備ってものが必要だと思うわけなんですが。

 

「おまえも、夏休みはシンボリ家に来るんだろ?」

 

「うん、話はいただいてるし、そのつもりだけど」

 

今年は、学園に入学した年と同じように、シンボリ家にお呼ばれしている。

8月は丸々合宿ということになる予定だ。

 

同じようにルドルフも、故障した影響でチームの合宿には参加せずに、

実家で怪我のリハビリとトレーニングをするという話である。

 

そういや、史実ではルドルフの海外遠征の帯同馬に選ばれ、

結局ルドルフのほうは中止になって、単身海外に渡ることになったシリウス。

 

この世界では、そもそもシリウス自身には遠征の話は出なかった。

よって引き続き国内に留まり、秋はセントライト記念から始動して、

菊花賞、ジャパンカップ、有と、

去年のルドルフと同じ路線を歩む予定だそうだ。

 

ジャパンカップではシンボリ同士の対決が見られそう。

せいぜい胸を借りてこいや。

全力で掛かって負けて、喚き散らすさまが目に浮かぶようだ。

 

「なら、シンボリ家のコースで、帰る前日にするぞ」

 

決行日は実家キャンプの最終日か。

気が逸ってるのは明白だから、初日にやるぞ!とでも言い出すかと思ったが。

 

「猶予をやるよ」

 

そんな俺の思考を呼んだのか、シリウスはニヤリと微笑むと、

得意げに言うのだ。

 

「私も鬼じゃないんでね。

 身体を作る時間くらいは与えてやろうじゃないか」

 

「そいつはどーも」

 

その時間で最低限の身体づくりはしろってことね。

……たったの1ヶ月弱でどうしろと?

急仕上げもいいところだ。しかも、俺は故障明けなんですよ?

 

もう少し優しくしてくれてもいいんでない?

 

「わかっているとは思うが、無様なレースだけは許さんからな」

 

「……努力はするよ」

 

「せいぜい頑張るがいい。失望させてくれるなよ」

 

シリウスはそう言って、手をひらひらさせながら部屋から出て行った。

 

にゃろう……約束したのをいいことに、好き勝手言いやがって。

まだ1度もまともにレースしたことのない身に、何を期待してるんだ。

 

「……スーちゃんに相談しなきゃ」

 

とてもじゃないが、俺個人だけではどうにもならん。

 

未契約で相談するのはどうかと思うが、背に腹は代えられない。

簡単なものでも構わないから、メニュー作ってくれないかな?

 

 

 

 

 

その日のうちにスーちゃんに相談したら、

身内から出た錆だから協力する、当日そっちには行けないけど、

なるべく早くメニュー作って送るって言ってくれた。

 

大変ありがたい。

 

また、スーちゃん経由で伝わったのだろう。

ルドルフがたいそう心配してきた。

 

「勝負するのはいいが、君の身体のほうは大丈夫なのか?」

 

「まあ大丈夫でしょ。トレーニングに復帰して半年以上たつけど、

 特に問題なくここまで来てるし。

 レースをまともに走れるかどうかは、ひとまず度外視だけど」

 

「そうか。無理だけはしないでくれよ。

 シリウスの我がままより、君の身体のほうが大事だ」

 

通常運転の過保護でございます。

俺のほうが大事って断言してくれるのはうれしいが、

同時にこっぱずかしいねこれ。

 

「心配と言えば、ルナのほうは大丈夫?」

 

「ああ、もう大丈夫だ」

 

俺の問いに、ルドルフはしっかりと頷いて見せた。

 

「痛みもないし、ぼちぼち通常のトレーニングに復帰できる。

 念のために合宿は辞退させてもらったが、

 リアンと一緒にトレーニングしても問題ないよ」

 

「そう。言葉を返すようだけど、ルナこそ無理しないでね」

 

「ミイラ取りがミイラになってしまっては格好つかないからな。

 十分に気を付けるし、君も気を付けるように」

 

「はいはい」

 

そう言って、怪我した足を曲げたり捻ったりして見せるルドルフ。

どうやら本当に問題ないようだ。

俺に釘をさしてくるのも忘れない、本当に心配症なやつだ。

 

「それにしてもシリウスは、いつのまに君とそんな約束をしていたんだ」

 

「いやあまあ、皐月賞を断念させるときに、

 ちょっとひと悶着ありましてねえ」

 

「自分の自己管理不足が蒔いた種なのに、

 まったく、リアンの優しさに付けこむなんてね」

 

「まあまあ、おかげでダービーは勝ってくれたんだし、まあいいじゃない。

 シンボリ家は2年連続でダービー獲ったんだよ。すごいじゃないか」

 

「ダービーの件は君の言う通りなんだが、そう聞くと素直に喜べないぞ。

 ……リアンも、確かにシリウスを頼むとは言ったが、

 あまりに度が過ぎたら、突き放してくれて構わないんだからな?

 もともとこちらの問題なのだから、責任はこちらで持つ」

 

さすがに少々お冠な様子のルドルフ。

以前の俺なら、即答で「うん」って言って、実際にそうしてたんだろうけど

 

「ああ、まあ、いいじゃない、うん」

 

「……ほどほどにな」

 

現状では、言葉を濁すしかないのである。

 

ここまで関わっちゃうと、逆に関わらないほうが違和感あるというか。

見事に奴の術中に嵌まっちゃったかな~、なんて気がしないでもない。

 

ルドルフの責任を感じているような、それでもどこかうれしそうな、

微妙な表情がすごく印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月。

もう何度目だかわからない、千葉のシンボリ家へのご訪問だ。

 

「やあリアン君。調子はどうかね?」

 

()()()()()()()、リアンちゃん」

 

お父様お母様が、笑顔でそろってお出迎え。

お母様から自然におかえりと言われ、少しウルっと来てしまったのは内緒。

 

シリウスは一緒じゃないのかって?

あいつはチームの合宿に行ってるよ。

 

自チームの合宿に参加して、数日早く上がらせてもらって、

こっちの最終日前日に合流するそうだ。

 

合宿で疲れるだろうに、前日移動、即レースであいつも大丈夫なのかね?

脚部不安を発症してる前歴があるんだし、あいつのほうこそ心配されるべきじゃね?

 

なんにせよ、俺は自分のトレーニングをこなすだけだ。

 

スーちゃんが渾身のメニューを作り上げてくれたし、

今キャンプでは、ルドルフが並走などのトレーニングに

全面協力してくれることになっている。

 

やはり恐れ多くて1度は断ったんだけど、シリウスの迷惑料、

そして自身は天皇賞にぶっつけで臨むことになろうから、

時間的にまだ余裕があるとのことで、強引に押し込まれてしまった。

 

海外遠征のこともある、とか言われて頭を下げられる勢いじゃ、

断るに断れないじゃん?

 

まあ正直、ルドルフと一緒にトレーニングできるのは、非常にありがたい。

現役七冠バと鍛錬できるなんて、普通は頼んでもそうそう実現しないよ。

 

がんばらないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな」

 

8月28日夕刻、シリウスが現れた。

自信ありげなドヤ顔を引っ提げて。

 

「焼けてるなあ」

 

「それだけトレーニングを積んだんだろうな」

 

「うん」

 

シリウスの顔が日焼けしている。

ルドルフも感心するほど、相当気合を入れて合宿を過ごしたようだ。

 

「リアン」

 

「また実力付けたみたいだね?」

 

「当然だ」

 

合宿前とは、明らかに様子が違った。

体つきも一層がっちりして筋肉が付いたのがわかるし、

なにより表情が精悍になった。

 

これはミホシンザンちゃん、彼女も故障明けになるし、

そうとう頑張らないと菊花賞危ういかもよ?

 

シリウスは確かフランスの長距離G1で入着していたはずだし、

3000の距離も問題ないはずだから。

 

「おまえのほうはどうなんだ?」

 

「少なくとも、できる限りのことはしたと思うよ」

 

「ほお、大した自信だな。楽しみにさせてもらおうか」

 

シリウスが歩み寄ってきて、意味ありげな視線と言葉を向けてくる。

ここで舐められるわけにもいかないので、精一杯強がった。

 

すると、この時点では満足のいく回答だったのか、

シリウスは俺の頭をひと小突きして、さっさと歩いて行ってしまった。

 

俺のほうが年上なんだけどな?

あいつが人を舐めた態度をとるのは毎度のことだが……

 

まったく、お姉さんぶってるのはどっちだと叫びたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、シリウスとの真剣勝負だ。

 

「勝負は芝2000m。先着したほうを勝ちとする。

 言うまでもないが、正々堂々と頼む。異論は?」

 

「ないよ」

 

「ないぜ」

 

「結構」

 

審判役のルドルフから説明を聞いて、スタート地点へ。

その移動の最中、シリウスは良くしゃべった。

 

「この日をどんなに待ち望んだか。

 一日千秋の思いで待ち焦がれたぜ」

 

「どうしてそこまで私にこだわるんだか……

 あの日、私に拒否されたのがそんなに悔しかったの?」

 

「悔しいなんてもんじゃねえな。

 なんせレースに誘って初めて断られたんだ。

 驚きを通り越して信じられなかったぜ」

 

まさか本当に、忖度されまくってたとでもいうのか?

ご愁傷さまだな。同情はしないが。

 

「そのあと譲歩しても一蹴されちまったしな。

 あの場じゃ頭に血が上ってすぐに帰っちまったが、即刻後悔する羽目になったぞ。

 なんだあいつ、いつか必ず勝負して見返してやる。そう思った」

 

うわあめんどくせえ……本当にめんどくさいやつだった。

自分の失礼な態度は棚に上げて、それはもう逆恨みじゃんかよ。

 

予想はできたが、本当だったとなると余計に質が悪い。

 

ここまで来ちゃったから勝負はしてやるけど、これっきりにしてくれよ?

勝っても負けても恨みっこなしでお願い。

 

変に粘着してきたら、それこそお父様に言いつけて、絶交だからな。

 

「だから、リアン。手は抜くなよ?

 抜いたら手を出すどころじゃ済まなくなるからな」

 

「安心して。現役ダービーバ相手に手を抜けるほど、

 私は強くないし速くも偉くもないから。

 いま出せる全力で勝負することを、三女神様に誓ってあげる」

 

「はっ、良い覚悟だ。私も全力で行くぜ」

 

ここまで喋って、あとはお互いに無言。

勝負がスタートするまで、それは続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっ……はーっ……」

 

レース後、ゴールした直後に限界を迎えた俺は、

大きく肩で息をしつつ、腰を曲げて膝に手をつく。

ついには力尽きて、そのまま膝を折って正座の体勢になってしまった。

 

「はあ、はあ……負けた~あ……!」

 

結果は、2バ身差でシリウスの勝ち。

 

まあわかりきってたことだよ。

今の俺とあいつとじゃ、基本的な実力差がありすぎるもん。

むしろ、よくここまで食らいつけたと褒めてもらいたいくらいだ。

 

もちろん悔しさなんてものはない。

 

それよりも、2000mを走り切れたことが嬉しいかな。

これほどの距離をレーシングペースで全力疾走したのは、復帰後初めてだから。

 

あれだけ言ったんだから、シリウスが手を抜いたということはなかろう。

そんな彼女についていくことはできたんだ。

2バ身差というくらいなら、善戦したと言えるんじゃないか?

 

なんというか、うん……

かなりうれしくね? いや、すごくうれしい。

 

「リアンっ!」

 

座り込んでしまった俺を見て、異常発生とでも思ったか、

レースを見守っていたルドルフが慌てた様子で駆け寄ってくる。

 

「どうした、大丈夫か!?」

 

「……大丈夫。ちょっと……はあ……疲れただけ……」

 

「そうか、驚かせないでくれ」

 

ホッと胸を撫で下ろした様子のルドルフ。

 

言われてみれば紛らわしかったかも。すまんかった。

そこまで考える余裕はなかったのよ。

 

「立てるか?」

 

「うん。……っと。ありがと」

 

「なに」

 

ルドルフに手を取ってもらって、立ち上がった。

軽く足の状態を確認してみるが、疲労による重さはあるものの、

他に異常は感じられない。大丈夫そうだ。

 

ようやく息も整ってきた。

 

「………」

 

「シリウス……」

 

そんな折、折り返してきたシリウスが、無言で近づいてくる。

無表情で、顔からは感情が読み取れない。

 

あいつは多少息が荒いものの、俺みたいに大きく乱れてはいないな。

さすがに現役ダービーウマ娘は違う。

 

「勝利おめでとう。完敗です」

 

「……ふん」

 

俺のほうから祝福してやると、こそばゆかったのか、

軽く目を逸らして鼻息を漏らす。

 

「……」

 

「シリウス……? わぷっ」

 

「………」

 

さらに歩み寄ってきたシリウスは、俺の目の前に立った。

何をするつもりかと思ったら、頭の上に手を乗せてきたのである。

そして、ぽんぽんと2度3度、やさしく撫でたんだ。

 

「まあ、なんだ……」

 

さらには、こんなお言葉が。

 

「この距離で私にここまでついてこられたのは、現状おまえだけだ。

 だから、なんだ……褒めてやるよ。よくここまで持ち直したな」

 

「シリウス……」

 

確かに、若葉ステークスでもダービーでも、もっと差をつけた圧勝だったけどさ。

 

あのシリウスが、他人を認め、褒めた、だと……?

衝撃的すぎて、思わず顔を上げたら、やつとバッチリ目が合ってしまって、

さらにビックリすることになってしまった。

 

だって、あいつ、すんごいやさしい、労わるような目をしてたんだもん。

 

「……じゃあな、学園でまた会おう」

 

そう言って、踵を返すシリウス。

 

「え? 今日泊まっていかないの?」

 

「馴れ合いは御免なんでね」

 

俺たちが学園に帰るのは明日だ。

だから、シリウスも今日はシンボリ家に泊まって、

俺たちと一緒に帰るものだと思っていた。

 

……そうか、シンボリ本家だけど、あいつの生まれはここじゃないんだっけ。

親戚の子だってルドルフは言ってたな。

 

詳しいことはわからないけど、落ち着かないということもあるのかもしれない。

……好意的に見れば、の話だが。

 

「むーん、相変わらず素直じゃないやつ」

 

「ふふ、あんなことを言ってしまって、気恥ずかしくなってしまったのさ」

 

「そんなものかね」

 

自分で言って照れるくらいなら、言わなきゃいいのに、

なんて思ってしまう俺も、充分ひねくれてるな。

言われた俺も驚いたが、もしかすると、あいつ自身が1番驚いちゃったのかもね。

 

去っていくシリウスの背中を見ながら、そんなことを思った。

ともかく満足はしてもらった、ってことでいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いやはや、どうなることかと思ったが)

 

クールダウンしているリアンを見守りつつ、ルドルフは小さく息を吐き出した。

 

話を聞いた時には、またシリウスが無茶を言い出した、

故障明けのリアンにとっては厳しすぎるのではないかと思ったが、

とりあえず無事に終わってくれてよかった。

 

(シリウスも満足したようだし、リアンも完走できたし、

 結果オーライというやつかな。それにしても……)

 

手にしている時計に視線を落とす。

2人には知らせていなかったが、秘かにタイムを計っていたのだ。

 

(2分1秒7……)

 

シリウスが出したタイム。

並走トレーニングとして見るなら、かなり早い時計だ。

彼女が本気で走ったのは間違いない。

 

2バ身遅れたリアンは、これよりもコンマ3から4秒くらいだと思われるから、

2分2秒0程度のタイムで2000mを走破したことになる。

自身がデビュー戦で記録した時計が、2分3秒4だ。

 

もちろん本当のレースとは違うし、バ場も違う。

この通りに走れるとは限らないが、これを考えると……

 

(……ふふ、リアン、君はやはり()()だよ。

 一時的にとはいえ私を本気にさせたんだからね、そうこなくては)

 

ルドルフもまた満足そうに、笑みを見せるのだった。

 

 

 

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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