転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第46話 孤児ウマ娘、激闘終えて

今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー

 

 

 

(ダービー・リアルタイム視聴組の反応)

 

:いよいよダービー発走だな

 

:リアンちゃん頑張れ!

 

:ここの住人は、もちろんリアンちゃんに投票したんだろうな?

 

:当たり前田のクラッカー

 

:古いwww俺も投票したけど

 

:ネタがわかるおまえも同類さ

 

:現地にいる俺に隙は無い

 

:現地ウラヤマシス

 

:よくここに書き込めるな。ごった返しているだろうに

 

:勝負服ええやん

 

:名前的に和風要素ないけど、似合ってるな

 

:スピードシンボリから贈られたんだってよ

 おさがりと言うと言葉が悪いが、それだけ期待されてるってことだ

 

:若かりし頃のスピードシンボリ氏の写真、拾ってきた

 

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:有能スレ民に感謝

 

:2番目はどういう写真だこれ

 

:ローアングラー歓喜

 

:3つめは天皇賞勝ったときのか

 

:どこに落ちてたんだ? ありがとん

 

:ポーズも同じやんけ!

 

 比較画像

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:マジで同じだw

 

:指導入ったかw

 

:よく拾ってこれたな。サンクス

 

:下は違うんだな。袴からミニスカになってる

 

:そこは現代っ子の感性だろう 

 

:さて、逃げ宣言してはいるが、上手く逃げられるか

 

:変に絡んでいくやつが出なけりゃいいが

 

:絶対逃げなきゃいけないタイプでもないし、大丈夫だろう

 ……と楽観してる。大丈夫だよな?

 

:3勝中2勝が逃げ切りなんですがそれは

 

:まあ大丈夫だろう、うん(根拠なし

 

:くそっ、1番人気には届かなかったか

 

:会員何やってんの、弾幕薄いよ!

 

:1番人気には何の意味もない。狙うは1着のみだ

 

:その通り、勝てばよかろうなのだ

 

:ファンファーレキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

:すごい歓声

 

:好スタートからのダッシュ! 決まった!

 

:単独先頭で1コーナー。これはもらったな

 

:同舞台の同距離逃げ切ってるリアンちゃんなら問題あるまい

 

:良い逃げっぷりだ

 

:ん? 2番手と詰まってきた?

 

:4コーナー手前でぴったり付かれちゃったぞ

 

:バテたわけじゃないよな?

 

:引き付けたんだと信じたい

 

:超前傾キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

:つwよwいw

 

:離す離すw

 

:勝ったどぉおお!!!

 

:リアンちゃんやったー!

 

:おめえええええ!!!

 

:今日は祭りじゃあああああ!

 

:これもう2400じゃ敵いないんじゃないかなってレベル

 

:9バ身www2分24秒7wwwファーwww

 

:「2400逃げ切るとはこういうことだ」

 カッコイイ!!

 

:1着2着が9バ身、2着3着が6バ身

 圧倒的ではないか、我がリアンちゃんは

 

:2着のメリーナイスが不憫すぎる

 例年なら圧勝だったのになあ

 

:勝負の世界ってのはそんなもんよ

 

:リアンコールwww

 

:すげぇ、こんなの初めて

 

:ファーwwwリアンちゃん、小物(小柄)界の超大物www

 

:今回のリアンちゃんが作った新記録まとめ

 

 ・ダービー史上最大着差(9バ身)

 ・芝2400m日本レコード&ダービーレコード

 ・最少キャリアでのダービー制覇(4戦目)

 ・青葉賞組からのダービー初制覇

 

 えーと、以上でおk?

 

:おk

 

:改めて見ると異常で草

 

:以上で異常、とな?

 

:審議拒否

 

:ここまで新記録が重なることってある?

 

:リアンちゃんが勝ってくれたのはもちろんうれしいけど、

 他陣営はもっと考えなきゃいかんな

 少なくとも、単独先頭で直線向かれたら勝てないぞ

 

:とはいえ、ダービーの大舞台で逃げるというのも勇気がいるだろうよ

 

:リアンちゃんが負ける要素が、今のところ見当たらない

 それこそ玉砕覚悟で逃げたやつが複数出て超ハイペースに巻き込まれるか、

 葉牡丹賞のときみたいにアクシデントで出遅れるか、これくらいじゃないか

 

:アクシデントはともかく、早くなりそうだと思ったら、

 リアンちゃん2番手3番手で控えるんじゃないかな?

 

:んだんだ、普段の落ち着いた様子に加えて正確にラップ刻める冷静さがあるから、

 少なくとも共倒れということはないと思うべさ

 

:葉牡丹賞では、出遅れても最内突っ込んで勝ったしな

 判断力と洞察力も文句なし

 

:プラス直前大雨の泥んこバ場も経験克服済み

 

:ますます死角ないやん

 

:アレは特殊すぎて参考にならん

 でもクラシック級では1人抜けた存在だと思う

 

:あとは、夏の間に誰か力をつけてくるか、だな

 

:なんにせよ、リアンちゃんおめでとうっ!

 

:おうよ、心の底から祝福するぜ!

 

:孤児院から日本一かあ。どこかで何かが壊れる音したな

 

:エリート涙目

 

:スピードシンボリさんwww

 

:勝った本人よりも大喜びで草

 

:お堅いイメージだったけど、こういうところもあるんだな

 

:現役の時はダービー勝てなかったからね、しょうがないね

 

:いまさら取り繕っても遅いぞ女史w

 

:現役全く知らんけど、スピードシンボリも好きになったわ

 

:というより勝った直後なのにリアンちゃん落ち着きすぎやろ

 

:それも普通のレースならまだしもダービーだからな

 

:達観した子やわあ

 そりゃダービーも圧勝するよ

 

:すげえ落ち着いたインタビューだ

 

:この年でここまでしっかりと受け答えできるのもすごいな

 

:まあ事前イベでも質問の嵐を乗り切ったしな

 

:サクラスターオーに言及!

 

:なんやなんや、宣戦布告かいな?

 

:いや、約束ってことだから、事前にスターオーと話してたんだろ?

 

:交流あるのか?

 同じ学校通ってるんだから、面識くらいはあるかもだが

 

:前に何かの取材で、仲の良い後輩って言ってたような

 

:スターオーも、皐月賞後に憧れの先輩ですって言ってる

 身体が弱くて走れなかった時期があって、リアンちゃんの動画見て、

 励みになってたそうだ

 

:先輩後輩のライバル関係、いいね

 

:あのリハビリ動画か?

 実際に力になってた子がいたのか

 

:それがトレセン学園入って、同じクラシックを争うなんて、

 もう運命やん

 

:三冠目で皐月賞ウマ娘とダービーウマ娘の決戦だ

 

:「秋に京都で会いましょう!」

 俺も京都に行くぜ! 今から有休申請だしとく。

 続け皆の衆!

 

:ごめん、地方民にはやっぱ無理

 

:(´・ω・`)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピピピピピピ♪

 

 

「……んぁ?」

 

携帯のアラームで目が覚めた。

枕元の携帯を探して手にし、手動でアラームを止める。

 

「……なんか全然寝た気がしない」

 

まあ、そりゃそうか。

 

なんせ夕べは、いくつもの新記録を出してしまったせいで、

ウイニングライブの後もテレビにラジオに雑誌に新聞にと取材のオンパレードで、

寮に帰ってこられたのは22時を回っていたからなあ。

 

オリンピックとかでメダルを取った選手に取材が殺到して、

夜遅くになってもテレビなんかに出ずっぱりってことあるだろう?

あれと同じような感じ。

 

おかげで、院長たちともあんまり話せなかったし、

乙名史さんの取材もあんまり受けられなかった。

 

結局寝床に入れたのは日付が変わってからで、

興奮冷めやらぬ状態だったのか、なかなか寝付けなかったしさあ。

 

もちろん同室のルドルフにも色々と気を遣わせちゃって、

寝たのも俺と同じか、俺よりも遅いくらいだろうから、

普段から朝に弱いあいつが起きているわけ――

 

「おはよう、リアン」

 

――ファッ!?

あのルドルフが、俺より早く起きているだと?

 

「おはよ。自分で起きたんだ?」

 

「ああ。今日くらいは、君に頼らず起きようと思ってね」

 

「悪いね、気を遣わせちゃって」

 

「なに。普段が君に頼りきりだからな」

 

そう言って微笑むルドルフ。

 

トゥインクルシリーズから退いたあとも、朝起こすのは俺の役目だったからな。

レースがなくても生徒会の仕事で疲れているだろうからさ。

 

「それより、身体に異常はないか?」

 

「ん~……」

 

ルドルフから聞かれて、布団の中で身体をもぞもぞと動かしてみる。

んむ~、さすがに疲れは残ってるかなあ。

 

「とりあえず異常はなさそう。疲れはあるけど」

 

「そうか。少し足をマッサージしよう。

 うつ伏せになってくれ」

 

「え? や、いいよいいよ。学校もあるし、

 天下の皇帝様にそんなことさせるわけには――」

 

「さあ早く」

 

「……はい」

 

というわけで、10分くらい、ルドルフに足を揉んでもらいました。

 

だからルドルフおまえさあ。

レースで使う機会が減ったからって、俺に威圧感使うのやめてって言ったでしょ!

こんなプライベートな場面で使ってどうするのよ……

 

まったくもう、ぷんすか!

あ、マッサージは大変気持ちようございました。

 

 

 

 

 

「いよっ、ダービーウマ娘っ!」

 

教室に入ると、どこからともかく、そんな声が飛んできた。

ハッとして教室内を見回すと、みんな笑顔で、声援と拍手を送ってくれている。

 

「おめでとうっ、ファミーユリアンさん!」

 

「ライデンさん……」

 

そして、真っ先に俺のところまで来て、俺の手を取り、

笑顔で祝福してくれたのがニシノライデンちゃんだった。

 

「私、のちのダービーウマ娘を吹っ飛ばしちゃったんだって、

 自慢してもいいかなっ?」

 

「え……」

 

「こらっライデン! 調子に乗るな!」

 

「また斜行しても知らないぞ!」

 

「えへへ。とにかく、おめでとうファミーユリアンさん!」

 

「うん、ありがと」

 

本気とも冗談とも取れないライデンちゃんの発言に、

クラス中からブーイングが飛ぶ。

そんな声にライデンちゃんは照れ臭そうに笑うと、自席へと戻っていった。

 

ブラックジョークってレベルじゃねえぞ、ライデンちゃん。

一瞬心臓が止まるかと思っちゃった。

 

自虐するのも程ほどにな?

 

「みんなも、ありがとね」

 

「いいってことよ!」

 

「貴女が苦労してるのはみんな知ってるからね」

 

「少しでも報われてくれたらいいなって、みんな思ってたよ」

 

「みんな……」

 

……なんだろう、クラスメイト達の思いが重い。

いや、洒落じゃなくて、本当にね?

 

苦労してるのは俺だけじゃないってのに、そこまで言ってくれるなんてなあ。

比較的恵まれた子の多いC組とはいえ、勝負の世界で、

ここまで他人を思ってくれることが、どんなに尊く、つらいことか。

 

「………っ」

 

そう思ったら、急に目頭が熱くなって、どうにもならなくなった。

我ながら恥ずかしいが、目元を抑えて泣き出してしまう。

 

「あ、あ~、リアンさん泣かないで」

 

「何か悪いこと言っちゃったかな!?」

 

「いやそうじゃないでしょ。……そうじゃないよね?」

 

俺の反応に焦った子たちが慌てだす。

違う、そうじゃないんだ。純粋にうれしかっただけなんだよ。

 

本当にもう、ウマ娘たちは良い子ばかりで……

 

「リアンは実は泣き虫だからな、みんな安心してくれ。

 みんなの気持ちが嬉しかっただけだろう?」

 

「……うん……うんっ……」

 

「よかったあ」

 

ルドルフの声にぐずりながらも頷くと、周りの子は安心したようだ。

しかし、俺自身の気持ちは全く収まらない。

 

「リアンも、泣いてないで席に着こう」

 

「……むりぃ。ひっく……」

 

「やれやれ、仕方ないな」

 

これでもかというくらいの泣き顔をルドルフに晒すと、

ルドルフは苦笑して俺を抱き締め、背中をポンポンと撫でてくれる。

 

「ほら、良い子だから泣き止むんだ」

 

「……うぅ」

 

 

「てぇてぇ……」

 

「リア×ルドかと思ってたけど、ルド×リアもありかも」

 

「身長差からしたらそっちよね~」

 

 

なんか一部からは妖しげな声も聞こえてくるが、

号泣状態の俺にそんなことを気にしている余裕などない。

 

結局、先生がやってくるまでに、気持ちが落ち着くことはなかった。

 

虐めでもあったのかと慌てる先生に、

そんな先生の様子に誤解ですと大慌てになるクラスメイト達。

もはや収拾つかんかった。

 

 

その日はスターオーちゃんとは会えなかったけど、

昨夜のうちにメッセはもらっているから問題ない。

 

内容? 普通にお祝いと、

私も京都に行くから待っててくださいってことだったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パ、パーティー、ですか」

 

『ああ。ダービー勝利を祝して、盛大に祝勝会をしようと思うんだ。

 今度の土曜日は空いているかね?』

 

「平気、ですけど……」

 

『そうか、よかった。では土曜の夜は空けておいてくれたまえ。

 学園には申請しておくから心配ないよ』

 

「は、はい」

 

驚きの電話をかけてきたのは、もちろんお父様だ。

何でもこの週末に、俺のダービー勝利を祝して、パーティーを開くんだと。

 

もちろん、やってもらえるのはうれしいけど、その規模が問題で。

 

「あの、ちなみに、お宅でのホームパーティー、ということですよね?」

 

『はは、冗談だろう? すでに都内の有名ホテルを押さえてあるよ。

 財界人も相応に招待しなければね』

 

「そ、そうですか」

 

『ああ、そういうことか。なに、心配は要らない。

 今回のダービー勝利は君だけではなく、うちの母も関わっているからね。

 君を厚遇していたとしても、うちとの関係は公にはならんだろう』

 

「は、はあ」

 

今のところ、俺にシンボリ家がスポンサーとして付いているというのは、

門外不出のトップシークレットである。

 

確かにお父様が仰る通り、スーちゃんがトレーナーとして手にした最初のG1で、

しかもダービーだから、彼女の担当である俺が出席したとしても不思議ではない。

勝ったのは俺だし、むしろスーちゃんと並んで主賓ということになるだろう。

 

だけど、お父様、そうじゃない。そうじゃないんだ……

 

都内の有名ホテルで、財界人を招いて、盛大に祝勝パーティー?

どんな罰ゲームですか?

 

『ではそういうことだから、よろしく頼むよ』

 

「は、はい、わかりました。……ふぅ」

 

電話が切れるとともに、大きなため息が漏れた。

 

恐れていた事態になってしまった。

名門と付き合っていくうえで1番厄介なのが、こういう『社交場』への出席だ。

これまでは成績が伴わなかったから、たいした話もなかったけど……

 

ダービーを勝ってしまった以上は、もはや避けられない。

わかってる。わかっちゃいるけど、根が庶民も庶民な身の上では、

戦々恐々としてしまうのもわかってもらえるだろう?

 

何を言われ、何を求められることやら。正直怖い。

ああ見えて、ルドルフも色々と『お付き合い』してきたんだろうなあ。

 

もうホテル押さえてるってことだし、絶対断れない。

はあ~、どうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜、夜。

 

昼過ぎごろにお迎えが来て、大変お世話になっているいつものリムジンで、

ルドルフと一緒に会場となる某一流ホテルへと移動。

ルナちゃんがいてくれるのは心強いけど、いまだ不安がぬぐえない。

 

大丈夫かな……

 

「お待ちしておりました。さあさ、お召し物を変えましょう。

 こちらへどうぞ」

 

「え?」

 

控室へ通されるなり、用意されているという服への着替えを促された。

 

ええと、学園の制服じゃだめですか?

……はい、ダメですよね。はい、わかりました。

 

「きっとお似合いになりますよ」

 

「だといいですね……」

 

はてさて、どんな服を着させられるのやら……

 

 

 

 

 

「ただいまより、ファミーユリアン、第54回東京優駿祝勝会を行います」

 

司会者によって、会が始められる。

立食形式の会場内は、すでに招待客で満員のようだった。

 

こんな中を、こんな格好で出て行かなけれならなんのか。

もう不安で不安でしょうがない。ここでも正直逃げたいよ。

 

「何を不安がってるの。よく似合ってるじゃない」

 

一緒に登場していく予定のスーちゃんが隣にいて、

こう言ってくれてるけど、本当ですかねぇ?

 

ちなみにスーちゃんはさすがに場慣れして落ち着いたものだ。

俺とは対照的な漆黒のドレスが良くお似合いです。

まだまだ現役で通じるんじゃないっていうくらい。

 

「こんなの初めてなんですから、緊張するに決まってます」

 

「そう? 私は最初の時も気にならなかったわね」

 

そりゃ生まれが違いますからねぇ。

あなたは生粋のお嬢様、俺は庶民の中でも底辺ですので。

 

「それでは、本日の主役お二方に登場していただきましょう。

 ファミーユリアンさん、スピードシンボリさん、どうぞー!」

 

「行くわよ」

 

「はい」

 

司会者と、スーちゃんからも促されて、舞台袖から登場していく。

大きな拍手が沸き起こった。

 

舞台中央に立って一礼し、会場内を見回す。

うーむ、すごい人。みんながみんな相応に立場のある人たちなんだろうから、

壮観ではある。あるけど、やっぱり場違い感は否めなかった。

 

「第54代ダービーウマ娘、ファミーユリアンさんです」

 

「ご紹介に預かりました、ファミーユリアンです。

 今回の勝利はひとえに、トレーナーをはじめとする皆様に支えられての

 ものだと思っております。どうもありがとうございました」

 

紹介されて一言挨拶すると、拍手が一層大きくなった。

 

「ファミーユリアンさんの専属トレーナーにして、

 ダービートレーナーのスピードシンボリさんです」

 

「トレーナーのスピードシンボリです。

 リアンさんはああ言ってますが、彼女の実力があってこその勝利です。

 私はおまけに過ぎません。リアンさんこそ褒めてあげてください」

 

続いて堂々と挨拶するスーちゃん。

いや、持ち上げてくれるのはうれしいけど、

この場では恥ずかしいだけだからやめてください。

 

「お二方に、花束の贈呈です」

 

「おめでとうございます!」

 

「ありがとうございます」

 

俺とスーちゃんの双方に、花束が渡された。

俺にはピンクの、スーちゃんには赤を主体にしたもの。

 

「写真撮影をされる方、前へどうぞ!」

 

マスコミ関係者もいるのか、ごっついカメラを持った人たちが前へと出てきて、

パシャパシャと撮影される。相変わらずフラッシュがまぶしい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

これが明日の新聞に載ったりするんだろうか?

うへえ、勘弁してくれよ……

 

レース中や直後の写真ならともかく、こういうのはなあ。

端的に言って、恥ずかしい。

 

「本会主催のシンボリ家ご当主様より、ご挨拶をいただきます」

 

司会者がそう言うと、正装したお父様が舞台へと上がってきて、

マイクを渡されて挨拶を始める。

 

「おかげさまを持ちまして、我がシンボリ家は、

 ここ5年で3人ものダービーウマ娘を輩出することとなり――」

 

お父様のご立派なご挨拶。

 

ここ5年で3人? ルドルフに、シリウスだろ?

もう1人は? もしかして俺?

しっかりシンボリ家にカウントされている俺ェ……

 

これ関係ばらしてるも同然じゃないの?

迂闊なこと言っちゃっていいのかなあ?

 

まあスーちゃんの教え子だから、関係あるっちゃああるんだけれども、

身内に含んでいいものなのかどうかは、俺っち、かなり疑問。

 

「……でありますから、今後ともファミーユリアンさんとシンボリ家を

 よろしくお願いいたします。舌足らずな面も多々ございますが、

 以上で私の挨拶といたします。ありがとうございました」

 

再びの拍手の中を、お父様が舞台から降りていく。

途中で、俺に軽くウインクをしていったお茶目な人だ。

 

今まさにシンボリの絶頂期、と言っていいんだろうな。

 

「それでは本日のご来賓の方々をご紹介いたします。

 ○○新聞社取締役○○様、○○銀行○○支店長○○様、○○出版スポーツ部部長○○様――」

 

続けて来賓の紹介に移ったんだが、まああれよあれよと。

新聞社だの、銀行だの出版社だの。

それも、取締役やら店長やら部長やら、幹部クラスがごろごろ来ていて、

改めてシンボリ家の影響力の大きさを思い知らされた。

 

乙名史さんたちも呼べればよかったんだけどなあ。

さすがに俺の一存で来賓までは決められない。

 

取材だって言えば許可してもらえたかな?

一部のマスコミは入っているみたいだし。

 

こうしてしばらくは舞台の中央に立たされて、

いろんな人の話を聞かされる格好で時間は進んでいき、ようやく解放されたのは、

開会から1時間以上も過ぎたころだった。

 

 

 

 

 

 

「はあ~っ、やっと解放された。やっとごはん食べられる」

 

「おつかれさまだ」

 

ルドルフと合流し、並んで、用意された豪華な食事に手を付ける。

せめておなか一杯食べないと割に合わん。

 

「さんざん待たされたからおなかペコペコだよ」

 

「はは、私もだ。よく食べて英気を養ってくれ」

 

「うん、そうする」

 

とはいえ、俺の小さな胃袋じゃ高が知れてるけどね。

だいぶ改善したとはいえ、ウマ娘の標準からすると、まだまだ小食の部類に入る。

 

お、アレ美味そう。……うむ、美味。

 

「それにしても、勝ったら勝ったで大変なんだなあ」

 

「そうだろう? 楽なことばかりじゃないぞ、勝っても」

 

「うん、いま身をもって体感してる」

 

ルドルフが言うと説得力が違うなあ。

現在進行形で体感していることもあって、2倍以上の実感がある。

 

思えばこいつは、こんなんじゃ比較にならないくらい、

社交界にも引っ張り出されてたんだろうなあ。

 

俺らと同じように、綺麗に着飾ったルドルフ。

まさにテレビや新聞の中の世界といった感じで、

実感しているとはいえ、どこか別世界という感じもしているのが本音だ。

 

「リアンがダービーを勝ってくれて、私も自分のことのようにうれしかった。

 君と苦楽を共にしてきたという自負もあったから、余計にね」

 

「うん、ありがと。ルームメイトがルドルフで、本当に良かったよ。

 ルドルフじゃなかったら、どこか途中で諦めちゃってたかもしれない」

 

「お互い様だ。私もリアンのおかげで救われたことがたくさんある」

 

そう言って、微笑み合う。

 

本当に、いろんなことがあったよなあ。

様々なことが走馬灯のように浮かんでは、鮮明に思い出される。

 

あ、いや、別に死ぬわけじゃないし、引退するわけでもないから安心して。

勘違いさせるような言葉使って申し訳ない。

 

「ドレス、よく似合っているぞ」

 

「そうかなぁ? 子にも衣裳ってことでしょ?」

 

「いや、お世辞でも何でもなく、似合ってる。

 君もウマ娘だっていうことを自覚したほうがいいな」

 

あれ、誉め言葉じゃないって知ってるか?

言うときはTPOをちゃんと弁えようね?

 

ルドルフは苦笑してるけど、だから俺は単なるモb――

 

なんて、とてもじゃないけど言えなくなってしまった。

なんせダービーウマ娘だもんな。

これでモブだったら、モブの定義が壊れてしまう。

 

「この先もレースは続くし、まだまだがんばるから、

 これからもよろしくね、親友」

 

「ああ、私からもよろしくだ、親友」

 

食事の手を止めて、右手を差し出すと、

ルドルフもにっこり笑って手を差し出し、力強く握り返してくれた。

 

 

 




「馬」子にも衣裳?
うま、ってなんですか?(すっとぼけ


スーちゃんの画像に関連して、動画を上げてみました。
躍らせてみたら、想像以上にかわいくてピッタシでした。
よろしければ以下のURLからご覧になってみてください。
https://youtube.com/shorts/_WcBqvpNi7c?feature=share
https://www.nicovideo.jp/watch/sm41379528

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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