『第48回菊花賞は、1番人気ファミーユリアンが逃げ切って優勝。
ダービーに続いて、シンボリルドルフのレコードを更新しての二冠となり、
同時にデビュー以来の連勝を6に伸ばした。
今にして思えば、事前の記者会見時からして勝負はついていた。
穏やかな彼女があれほど強く「逃げ」を意識させる勝気な発言をしたのは、
周りに対する意思表示だったのだ。私に絡んでくるな、という。
もちろん逃げ切れる絶対の自信がなければあんなことは言えない。
かくしてレースは彼女の思惑通り、彼女の単騎逃げという展開になったわけだ。
さて肝心のレース内容だが、先に書いた通りファミーユリアンが
圧倒的な差をつけて逃げ切った。菊花賞の逃げ切りはハククラマ以来久しぶりのこと。
このままいくと、我が国ウマ娘レース史上に残る逃げウマになるかもしれない。
根拠を示そう。
60.0 - 64.6 - 58.6
これは1000mごとのラップタイムだ。3分3秒2というレース自体の
レコードもさることながら、この緩急をつけたラップがまたえげつない。
前半は、長距離ということを考えると速い流れになる。
ここで後続にハイペースという印象を植え付けてからの、
中盤ごっそりとペースを落とし、しっかりと脚を溜めた。
細かくハロンタイムを見てみると、ファミーユリアンは最初の1000mを
飛ばした後、6ハロン目に13.0秒と1秒以上タイムを落としている。
当然、後続との差が詰まった。ここで後続が競り掛けて行かずに自重したとき、
私はファミーユリアンの勝利を確信した。
前走のセントライト記念で、彼女を差し置いて逃げた2人が、オーバーペースに陥って
最下位とブービーに沈んだということも大きかったのだろう。
ファミーユリアンよりも前に行く、あるいはついていくと、自分のほうが先にバテる。
そんな心理が働いてしまったのではないか。
長距離ということもあって、前走以上のプレッシャーがかかったに違いない。
あとは、ミスターシービーがやったように、下り坂を利用して加速して差を広げ、
いつもの前傾走法でさらに差を広げて圧勝した。
他バの思考をも利用したその手腕は、はっきり言って脱帽するしかない。
キャリアわずか6戦目にしてこれだ。末恐ろしい。
無理に逃げれば、自分のほうが先に潰れてしまう。
かといって、逃げさせれば周りを惑わす必殺のペースで悠々と逃げ、
上がりでは必ず34秒台以上の脚を使うのだ。
番手からでも確実に差せることはセントライト記念で証明済み。
打つ手なしとはこのことか。
今ごろ他のウマ娘たちの陣営は、頭を悩ませていることだろう。
はたしてファミーユリアンを止められる子は出てくるか。
現時点で、私にはその方策は思いつかない。
彼女が普通に自らの実力を発揮できれば、普通に勝てるのではないか。
あの皇帝陛下ですら追いつけないのではないか。
自らが作り出すそんな「幻惑」で、どこまでも逃げて行ってほしい。
次走はジャパンカップか、有馬記念か。どちらにせよ楽しみである。
デビュー以来の連勝が続いていくことを期待したい。
皐月賞ウマ娘サクラスターオーが中団から追い上げて2着。
彼女も決定的に劣るというわけではない。故障明けながら、最大限の力を発揮した。
例年なら二冠を手にできていた可能性は高い。
だが悲しいかな、今年のクラシックにはそれ以上の英傑がいた』
――とあるウマ娘レース評論家の菊花賞回顧より
今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー
:それにしても菊花賞すごかったよな
:メリーナイスもサクラスターオーも目じゃなかった
:これで今年のクラシック級最優秀賞は頂きだ
:まあ確定だろうね
:それどころか、年度代表すらあるぞ
今年はまだ他にG1複数勝ったやつがいないからな
:絶好のチャンスやん
:次走がわからんからまだ何とも言えんが、
G1で勝てば文句なし、負けても入着できれば濃厚だろうね
:このまま年内出走できなくても確率高いと思う
ダービーと菊花賞の勝ちっぷりがすごすぎる
:そうじゃなくても、クラシック二冠の価値は高いしな
前例もある
逃げダービーウマ娘の先輩、カブラヤオーとかもそうだ
:https://www.umamusumenews.com/*******
みんな、この菊花賞回顧見たか?
素晴らしいこと書いてくれてるぞ
:さすが評論家
:真っ当なこと言ってるオカシイナー?
:まあ適当なこと言うやつばかりだからな
:この人のは、比較的いつもまとも
:幻惑の逃げウマ娘ファミーユリアン!
:普通に逃げてるように見えて、そんな裏があったとは
:1コーナー過ぎて急に詰まったからなんだとは思ったけど、
そこで駆け引きしてたんだな
:はぇ~そこまで考えて走っとるんか
:1000mごとに4秒5秒と変えられちゃ、そりゃ後ろはたまらんよなあ
:すげえなリアンちゃん
:ファンクラブで早速公認してて草
:マジじゃないかw
:動くの早いw
:ブログ更新
リアンちゃん「光栄です」
:賄賂貰ってないだろうなこの人www
:よぉし本人の公認も得たところで、この二つ名を広めていこう!
:幻惑!
:幻惑!
:いよっ、幻惑のウマ娘っ!
:リアンちゃんが勝ってくれて、
落ち着いた今だからこそ言うけどさ
:うん?
:どうした?
:実は俺、応援しに京都まで行ってたんだけどさ
行きの新幹線の車内で、リアンちゃんに会ったんだよね
:なんだと?
:ファッ!?
:マジかよ
:なんて羨ましいやつ
:見かけたってだけじゃないの?
そりゃ京都でレースなんだし、移動するでしょ
:いや、きちんと対面して話して、サインしてもらって、
握手までしてもらっちゃったよ
:有罪
:ギルティ
:死刑
:誰か! この裏切者をつまみ出せ!
:妄想乙
:証拠を出せ
:そう言われると思ったから覚悟はしてた
証拠のサイン画像うpする
https://www.*********
:うおおお日付入ってるし!
:マジもんだ、すげえ
:詳しく話せ。聞いてやる(興味津々
:なぜ今の今まで黙ってた?
:詳しくも何も、たまたま通りかかったときにリアンちゃんに気付いてさ
思い切って声かけたら、彼女のほうから率先して対応してくれたんだ
俺、リアンちゃんだって舞い上がっちゃってたから、
思わず大声上げそうになっちゃって、恐れ多くもシーってされちゃったよ
今まで黙ってたのは、みんなの反応がやっぱり怖かったのと、
リアンちゃんが勝ってくれたのを方々の反応で実感できたから
負けてたら俺の胸の内にしまっておくつもりだった
:くぅ~っ、いいなあ
:俺もリアンちゃんと面と向かって話したいぜ
:すげぇ緊張したよ。声をかけたのはいいけど、
何を言おうか迷ってるうちに、リアンちゃんから「サインしましょうか」だもん
:リアンちゃんすごい優しい
:神対応じゃないか
:さらには、何か希望はありますか、って
だから日付と俺の名前を入れてもらったんだ
:至れり尽くせりだな
:気遣いの達人
:ほんとリアンちゃん尊すぎる
:レース直前でピリついてるだろうになあ
そういう気配はなかったん?
:いや全然。動画で見たとおりのすごい穏やかな感じだった
:ほほう
:オンオフの切り替えがうまいんだろうな
:レースのときだけ本当に気合入る感じか
:そのあとは、菊花賞がんばってって伝えるのが精いっぱいだったよ
一生の思い出になりそうだ
:そうか、よかったな
言い残すことはそれだけか?(死刑執行
:ま、待って。もうひとつあった
:あるなら早く言え
:3秒間だけ待ってやる
:さ、3秒じゃ何も言えないよ
えっと、握手してもらった手、洗ってません!
:………
:えんがちょ
:(ベタ過ぎて)なんも言えねぇ
:良い子のみんなは、外から帰ったら手を洗うんだぞ
お兄さんとの約束だ
:も、もうひとつだけ……
リアンちゃん、なんで自由席に座ってたんだろう?
ガクリ
:さて、裏切者は粛清された
:これで平和が保たれる
:自由席? 移動って指定席じゃないのか
:案外ケチだなURA
:いや、関係者も揃って移動するから、指定席のはずだぞ
:自由席だと座れない恐れもあるからな
URAもそこまで鬼じゃない
:じゃあ、なんでだ?
:さあ?
:ファンと交流したいリアンちゃんの気まぐれだったりして
:リアンちゃんに試されてるぞ、おまえら
『ウマ娘ファンのみなさんこんにちは。今週も府中ケーブルテレビがお送りする、
週刊ウマ娘放送局のお時間がやってまいりました』
キャスターの女性が一礼し、番組冒頭恒例の挨拶を述べる。
『先週は今年のクラシック最後の一冠、菊花賞が行われました。
結果はもうみなさんご存知の通り、ファミーユリアンさんが圧勝も圧勝。
ダービーに続いてのレコード勝利となり、見事二冠を達成しました』
にこにこ顔で伝えるキャスター。
それもそのはず、なにせこの局は――
『彼女のデビュー前から追い続けてきている我が番組といたしましても、
非常に鼻が高いところですね!』
他の誰よりも、どこよりも
出されるテロップも喜びで震えている。
『今週も、解説の○○さんにお付き合いいただきます。
○○さん、よろしくお願いいたします』
『はい、よろしくお願いします』
キャスターから話が振られ、解説者の女性が映って頭を下げる。
『○○さんは、菊花賞をどう見ましたか?』
『すごい、の一言に尽きますね。ダービーもすごいレースでしたが、
それ以上でした。今後は彼女の天下となるかもしれません』
『おお、最上級の評価ですね。その心は?』
『まずはその逃げっぷりですね。
逃げて菊花賞を制したのが、実に久しぶりの出来事だったこと』
『ハククラマさん以来ですものね。ちょっと最近ファンになったという方には、
馴染みのない名前というか、初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか』
『私も、こういう仕事をするようになってから初めて目にしました』
プロの解説者でもこう言うのだから、
一般のファンには、まさしく初見という状態だった人が多かろう。
『ファミーユリアンさんの逃げといえば、逃げウマらしからぬ
伸びる末脚を使うことで有名で、「逃げて差す」とも云われてますね。
そういう意味でのすごいということですか?』
『もちろんそうなんですが、今回に限っては違います。
いや、今回もそのような脚を使ってますから、違ってはいないんですが』
思わず苦笑する解説者。
言いたいことがたくさんあって、取捨選択することに苦慮している。
『これをご覧ください』
そう言って、手元の机上にフリップを差し出す。
手書きというところが、低予算のケーブル局というところを物語っている。
『細かい数字が並んでいますね。これはなんですか?』
『ファミーユリアンさんが菊花賞で記録したハロンタイムです。
端っこには、1000mごとのラップも書き出してあります』
『最初の1000m60秒というのは、長距離戦にしてはハイペースですよね?』
『はい。これが後々重要になります』
『次の1000mは、一転して65秒近くもかかっているんですか』
『ええ。長距離ではない通常のレースでも極端なほどのスローペースです。
ハイペースから急にスローに落とされたら、どう思いますか?』
『あれ?って思いますよね?
速いのか遅いのか、判断に迷うんじゃないでしょうか』
『まさにその通りで、現実にそうなっていました。
ここで実際のレース映像をご覧ください』
ここで、菊花賞の映像が流される。
場面は、1周目の直線から1コーナーへ入ったあたり。
『後続にご注目ください。1コーナーを回って、どうなりますか?』
『先頭を行くファミーユリアンさんとの差が一気に詰まりましたね』
『ここでファミーユリアンさんが、それまで12秒フラット前後だったラップを、
13秒台にまで落としました。その影響で差が詰まったわけですね』
『なるほど。ですがその先、また開いていきますね?』
『ファミーユリアンさんにつられて、後続もペースを落とした結果です。
ハイペースだと思って走っていたのに、
急に差が詰まってしまったので、自分がオーバーペースなのでは、
という疑心暗鬼が生まれてしまったんです。
まさにこれがファミーユリアンさんの狙いでした』
『狙いというと?』
『後続に速いのか遅いのかの判断を迷わせることです。
ペースを正しく認識することは勝敗に直結しますのでね』
『で、ファミーユリアンさんの目論見通りになったと』
『その通り。レースと記録を見てもらえればお分かりになると思いますが、
その後もファミーユリアンさんは細かくペースを変動させてます。
これでは後続は判断も何もあったものじゃありません。
ついていっていいのか、あるいは自重したほうがいいのか、と悩んだ挙句……』
『後続は後者を選択してしまった、というわけですか』
『選択したというか、そうせざるを得なくなったというか。
ここで1人でも、思い切ってファミーユリアンさんに競り掛けていく子が
出ていたら、まったく違う展開、結果になっていたと思いますね』
唸るように言う解説者。
あくまで結果論ですが、と釘をさすことも忘れない。
『興味のある方は、URAのサイトに行ってみてください。
レース結果に詳しく載っています』
『6ハロン目からのラップが13.0、13.2、12.8、13.0、12.6……
見れば見るほど、まさに周りを惑わす、可変式のリードペースですねぇ』
『どなたかがすでに仰られてましたが、
「幻惑」という単語が相応しいと私も思います』
『ですよねぇ。本人とファンクラブがすでに公認したと』
『相変わらず素早い対応で感心します』
朗らかに笑う両者。
その情報を仕入れているあたり、この2人も対応が早い。
『あとはもう、ファミーユリアンさんの独壇場でした。
下り坂を利用して加速して、一方的に差を広げるだけ。
サクラスターオーさんも久しぶりで頑張りましたが、
今回だけを見る限りでは、力の差を見せつけられる結果となりました』
『あの皇帝シンボリルドルフさんの時計を上回る、
レコードタイムについてはいかがですか?』
『ダービーに続いて、最初から最後まで自分で動いて作ったレコードですから、
ルドルフさんの記録をどうこう言うつもりはありませんが、
一層の価値があるものと思います。ましてや長距離戦ですからね。
スピードと、何より並外れたスタミナがなければ作れません』
『ファミーユリアンさんはこれで、6戦中4戦でレコードですね』
『そのうち2戦、2400と3000で日本レコードですからね。
まったく末恐ろしいですよ。彼女の天下、しばらく続くと思いますよ』
『なるほど~。ではここで、
ファミーユリアンさんの勝利インタビューを見てみましょう』
映像が、勝利ウマ娘インタビューへと切り替わった。
レース直後の、やや髪の乱れた姿が大写しとなる。
『菊花賞を制しましたファミーユリアンさんです。
二冠達成おめでとうございます』
『ありがとうございます』
さすがに汗だくで、幾分か疲労の色も見せるリアンは、
インタビュアーに言葉だけではなく、頭を下げることでも謝意を伝えた。
『宣言通りの逃げとなりました』
『そうですね。狙っていた通りの展開に持ち込めたと思います』
『道中はいかがでしたか? 最初ある程度離して逃げて、
いったん近づいた後続がまた離れましたが』
『ええ、はい……足音が近づいてきたときは少し焦りましたが、
すぐに離れてくれたので、安心しました』
『あとはお決まりの一人旅でしたね?』
『ええ、まあ……よかったです、はい』
少し言葉を選ぶようにして答えるリアン。
余計なことは言わないようにと考えているようだ。
『ゴールした瞬間のお気持ちは?』
『……疲れた、と』
さすがに長距離の逃げ切りは相当に堪えたようだ。
勝利の喜びよりも真っ先に出る気持ちがそれとは。
苦笑しながら言うさまは、視聴者に彼女の謙虚さをさらに印象付けるだろう。
『また「リアンコール」が起きましたね?』
『うれしいですが、同時に反応に困ります』
苦笑度合いを強めて言うリアン。
正直な反応に、インタビュアーも周りも思わず同様に苦笑してしまった。
『二冠を達成したことで、今年のURA賞、
最優秀クラシック級ウマ娘のタイトルは手中に収めましたね?』
『ええと、まあ、いただけるのであれば光栄です。
いま言われて初めて意識したので、正直実感も何もありませんが』
『今後についてはどうでしょう?
ジャパンカップに向かうなんてことは?』
『何も決まっていないので……
状態次第で、トレーナーとも相談して決めることになると思います』
少し困り顔で答えるリアン。
本当に何も決まっていないのだということを窺わせる。
『では最後に、ファンの皆さんに対して一言』
『え~……』
その要求が1番困るとでも言いたげに、
マイクを向けられて数秒は沈黙した後
『応援ありがとうございました。
今後もファンの皆様のご声援に応えられるよう努力しますので、
またよろしくお願いいたします』
『二冠を達成したファミーユリアンさんでした』
定型とも思える文言を流れるように言いきって、
最後にもう1度ぺこりと頭を下げた。
『はい、ファミーユリアンさんの勝利インタビューでした。
どうですか、○○さん?』
『いやあ、彼女の謙虚さが表れてますよね』
『二冠を獲ったんだから、もう少し勝ち誇ってもいいのでは、
なんて思っちゃいますよね~』
『そうですね。ゴールした瞬間の感想なんて、もっと他にあるだろって。
でもそれが彼女の人柄なんでしょうね』
映像がスタジオへと戻り、キャスターと解説者が和やかに談笑する。
このあとも解説を含めた話は続き、1時間番組のうち、
3分の2以上の時間が菊花賞と、独自に取材したという
ファミーユリアン関連のことで占められていた。
ここでオリジナル二つ名を取得
名付け親は、とあるレース評論家の方です
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
-
ドバイワールドカップ
-
ドバイシーマクラシック
-
ガネー賞(仏)
-
クイーンエリザベス2世カップ(香港)
-
アメリカ遠征