転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

55 / 122
第53話 孤児ウマ娘、授賞式とチャリティに出る

 

 

 

 

URA賞ウマ娘部門 記者投票結果

 

年度代表ウマ娘

1 ファミーユリアン  256

2 サクラスターオー   30

3 ニッポーテイオー   9

4 ミホシンザン     1

 

最優秀クラシック級ウマ娘

1 ファミーユリアン  289

2 サクラスターオー   7

 

 

 

 

 

 

年度代表ウマ娘に選ばれました。

クラシック級とのダブル受賞で、競走と同じく二冠達成です。

 

どっちもスターオーちゃんから奪ってしまった形で、なんだか非常に申し訳ない。

ちなみにそのスターオーちゃんだが、有記念の勝利が評価され、

実績面では俺と甲乙つけがたい結果であり、2度の故障からの復帰もあって、

特別賞が贈られるとのこと。よかったね。

 

というわけで、URAから授賞式の開催案内と出席願いが届いた。

無論出席します。行ってくるぜ!

 

 

 

 

 

 

「栄えある年度代表ウマ娘は、この娘、ファミーユリアンさんです!」

 

司会者の紹介によって、舞台袖から出て行く。

万来の歓声と拍手によって出迎えられ、少し恥ずかしい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

肩出しのピンク色のドレスという格好もまた気恥ずかしい。

正式なパーティーだから、着飾るのは当然といえども、

何もここまで派手な格好をすることはないのでは、と思う。

 

まったく、ダービーの時のシンボリのパーティーといい、

上流階級では破廉恥な格好(偏見)をするのが常識だとでもいうのか。

まったくもう。

 

「年度代表ウマ娘受賞おめでとうございます!

 今のお気持ちはいかがでしょうか?」

 

「ありがとうございます。率直にうれしいです。

 サクラスターオーさんにまくられたかも? と思ってましたので」

 

インタビュアーさんの質問にそう答えつつ、同じく受賞者で、

脇に控えているスターオーちゃんにチラリと視線を送る。

彼女は、そんなことありませんよ~とでも言いたげに、

笑顔で手を振ってくれた。

 

「昨年を振り返ってみて、どう思われますか?」

 

「出来すぎでした。まさかここまでの結果を残せるなんて、

 微塵も思っていなかったので」

 

本当に、ちょうど1年前とは雲泥の差だよ。

 

原因不明の脚部不安から始まって、スターオーちゃんに煽り煽られ、

あれよこれよと言っているうちにダービー制覇。からの二冠達成、だもんな。

 

去年の今頃は、こんな場に立てるなんて、これっぽっちも考えてなかった。

 

「今年はどのような1年にしたいですか?」

 

「引き続き結果を残せれば、と思います。

 まあ何はともあれ、1年間ケガ無く走り切りたいですね。

 故障の怖さは誰よりも思い知らされてますから」

 

結果を残すことも、レースに出走し、走り切れなくては始まらない。

故障なんて悪夢は、1度経験すれば十分だ。

それを2回もやってしまったんだから、もうおかわりは要らんですよ。

 

健康面には十分気を付けて、そのうえで結果を残せれば言うことはない。

 

「あ、それと、私事ながらお知らせがひとつ。

 よろしいでしょうか?」

 

「はい、どうぞ」

 

許可を取って、ひとつ大事な告知をする。

この場でというのは失礼かという気もしたんだけど、

利用できそうな場面は利用しないとね。

 

「すでにこの旨をお伝えする動画を出したので、

 ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、私ファミーユリアンはこの度、

 世の中の恵まれない人たちのために活動していく決意をし、

 そのための基金を立ち上げました。

 ご賛同いただける方を随時募集しております」

 

この機会のために作ってもらった隠し持っていたポスターを、

こちらを映しているカメラに向けて広げて見せる。

今や走る理由の第一が、自分のためよりも、こっちの目的になってるからね。

何より賞金を稼がないといけないし。

 

「詳しくは、私のホームページもしくは、こちらの公益財団法人様の

 サイトをご覧ください。1人でも多くの方のご参加を、心よりお待ちしております。

 それと、もうひとつ」

 

ひとつと言いながら、()()()告知していくスタイル。

 

「その手のイベント等があれば、喜んで出演させていただきますので、

 オファーをお待ちしております。私のホームページまでお寄せください」

 

この手の話は、世間の周知度、認知度が1番だ。

そもそも知ってもらわなければ、寄付も何もあったものではないからな。

 

もちろん学園と生徒会には話を通してある。

ここで発言をすることも了解済みだ。

勝手に話してしまって、問題になるのはまずいからね。

 

たくさんのオファー待ってます。

なんでも……はしませんが、なるべく頑張ります。

 

「以上です。お耳汚し失礼いたしました」

 

カメラに向かって頭を下げ、告知は終了。

お時間取らせてしまって申し訳ない。

 

 

パチパチパチ

 

 

すると、どこからともなく……ではなく、率先してスターオーちゃんが拍手をしてくれた。

つれて、同席しているウマ娘たち、そして会場にいる人たちが総じて手を打ち始め、

ついには満場一致の拍手喝采となってしまった。

 

「っ……」

 

思わず目頭が熱くなってしまうが、落涙だけは寸でのところでこらえた。

こんなところで涙を見せるわけにはいかない。

 

……な~んて、すでに何回もそんな姿を晒している身で言うことじゃないな(汗)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、こちらからイベントの逆オファーをかけたわけなんだが、

なんと50件を超える案件が殺到してきてしまい、

とてもじゃないが捌き切れたものじゃない状況になってしまった。

 

せっかくオファーしていただけたんだから、なるべく応えたいとは思うものの、

どう見ても物理的に不可能だ。

基本は学生だから普段は勉学があるし、トレーニングだって疎かにはできない。

 

だからイベントを入れるなら必然的に学園が休みの週末になるわけだけど、

そのどちらにも予定を入れることは生徒会(主にルドルフ)とスーちゃんが猛反対した。

 

それでは過密スケジュール過ぎて、君の身体が持たないというんだ。

確かに言われるとおり丈夫ではない(むしろ虚弱?)し、身体を壊しては元もない。

 

協議の結果、イベント出演するのはレース間隔が開くとき(1月2月とか夏とか)に限り、

イベントは土曜日に行い、日曜日は完全休養日にするということで落ち着いた。

 

俺のわがままで方々に気を遣わせちゃって、本当にすいませんねぇ……

その代わり、出るイベントはきっちりしっかりこなさせていただきます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月13日、土曜日。

イベント1発目は、やはりというかなんというか……

 

「はいそれでは、『とある商店街のバレンタイン』イベントを始めていきます!」

 

三角巾と割烹着を身に着けた俺がそう宣言すると、

特設キッチンセットの周りに集まっているお客さんたちが一斉に歓声を上げる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

とある、なんて名ばかりで、実際はトレセン学園の地元商店街です、はい。

イベント名称がそういうのなんだもの。しょうがないじゃない。

どこかで不幸な人がなんか叫んでそうだけど、気にしない気にしない。

 

今までのお礼と時期的なこともあって、猛烈に売り込んできた商店街に、まずは恩返し。

こうやって自前でキッチンセット作るくらいだし、それなら応えてあげようと思ってね。

俺のイベントの出発点は、なによりこの商店街だしさ。

 

何をするかは、俺の格好とセットからお分かりだと思うが、

公開でバレンタインの手作りチョコを作って、プレゼントしちゃおうということである。

 

しかしまあ、イベントのためにセットはおろか、割烹着と和服まで用意するとは、

相変わらずこの商店街のイベント班はアグレッシブすぎる。

西洋的なイベントに割烹着というのも、なんともミスマッチだしなあ。

 

まあ、もはやバレンタインは日本独自のイベントと化しているし、

細かいところに突っ込むのは野暮ってものか。

 

「インターネットでご覧の皆様もこんにちは、ファミーユリアンです。

 不慣れですけど、今日は一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」

 

もちろん乙名史さんたちが取材に入っている。

ネットチャンネルで生放送しているようだ。

 

俺のチョコなんて誰が欲しがるんだと思っていたら、

限定300人の観覧席には希望者がひしめきあって大抽選になったらしいし、

ネットの生放送には、放送前にもかかわらず、数百人が待機していたらしい。

 

本当、物好きな連中の多いこと多いこと。

そんな方たちのおかげで助かってます。毎度ありがとうございます。

 

「割烹着かわいい? 和服似合ってる? ありがとうございます。

 用意されていたものを着ただけなんですが、お気に召していただけたのなら何よりです」

 

テーブルの脇にはPCが用意されていて、生放送に流れるコメントが読める。

多くの視聴者様にご好評のようで一安心。

 

「なぜ割烹着? さあ、私にもわかりません。

 エプロンするだけかと思ってたんですが……え? あ、はい。

 情報が入りました。これ、おっちゃんの奥さんの私物だそうです」

 

奥さんが普段使ってるものだったというオチ。

あのひと和装することあるんだ?

 

「若かりし日のもの? ご本人が『あら~見立て通りピッタリ!』って喜んでる?

 はあ、それはよかったです」

 

奥さん、若い頃はスマートだったんだな。

まあ和服は帯で調節できるから、ある程度は融通利くとはいえ、

今現在は……げふんげふん。

 

「おさがりで良ければプレゼントする? は、はあ、わかりました。

 その話はイベントが終わったらしましょう」

 

いきなりプレゼントと言われても。

いやそれより、イベント進行しないと。

 

「えー、では早速、バレンタインチョコを手作りしていきたいと思います。

 とはいえ私、普段料理なんて全くしないので、上手くいかなくてもご容赦ください」

 

料理経験がゼロというわけではない(前世含めて)が、

簡単も簡単な自炊くらいしかしたことないし、こっちに来てからは、

孤児院時代にちょっとした手伝いをしたくらいだ。

 

華麗なテクニックとか包丁さばきを期待されても困ってしまうので、そこは勘弁してほしい。

もっとも、手作りチョコにそこまでの技術が必要なのかはわからないけど。

 

「最初に、市販のチョコを刻んでいきます。

 えー解説によりますと、角から斜めに包丁を入れて……」

 

手元に用意されている解説メモを読みながら、

何の変哲もない普通に板チョコを包丁で刻んでいく。

 

「大まかに切ったら、それを何度も細かく刻む、と。

 包丁の先端を片手で抑え、そこを軸にして動かしながら刻むのがポイント。

 ふむふむ……」

 

やりながらこんなことを言うのもなんだが、こんな地味な作業を見てみんなは面白いのか?

楽しく見てもらえていればいいんだが……

まあこれもお仕事だし、自分で引き受けたことだから、全力でやりますけどね。

 

「刻み終わったら湯煎します。ふたつのボウルを用意しまして……

 はい、ここにありますね。少し大きさの違うやつです。

 大きいほうにお湯を入れます。50から55度のお湯を使いましょう。

 えーと、絶対に沸騰したお湯を使ってはいけません?

 チョコレートに熱が入りすぎ、風味が飛んでしまいます、ですって。

 へえそうなんですか、勉強になりました」

 

熱いお湯のほうが早く溶けていいんじゃないかと思っていたが、

そうじゃないんだな。簡単そうに見えて奥が深い。

 

「お~溶けてきて溶けてきた。ドロドロです」

 

少し待つと、刻んだチョコが溶けて、ドロドロの液体状になった。

さあ型に入れて冷やすのかと思いきや、そうじゃないようだ。

 

「固める前に、『テンパリング』という作業が必要です? なにそれ?

 テンパリングとは、なめらかでつややかな仕上がりにする作業です。

 ココアパウダーを使うことで固めたときに型から外しやすくなります。

 ……だそうですよ皆さん」

 

もうひと手間、というやつかな、知らんけど。

本当に奥が深い。

 

「テンパリングで1番重要なのは温度管理です。

 溶かしたチョコを40度程度にし、湯煎したボウルの水を10から15度の冷水に替え、

 ゴムベラで混ぜながら冷やしてチョコを30度程度に下げ、

 チョコの重量の3%ほどのココアパウダーを加えてかき混ぜます。

 ……ふうん? よくわからないけどやってみましょうか。

 チョコの重さ計ってませんけど、大丈夫ですか? あ、はい、用意済みと。

 優秀なスタッフさんたちで助かりますね。ありがとうございます」

 

スタッフさんから材料を受け取って、冷やして加えてかき混ぜて。

これで下準備が完了。

 

「では型に入れて……言い忘れてましたが、今回は3人分作ります。

 ご観覧の皆様にプレゼントするとのことでしたが」

 

そう言うと、お客さんたちは大いに盛り上がった。

300人の中から3人か。ちょうど百分の一の狭き門。

 

「冷蔵庫に入れて1時間待ちます。はい、入れました。

 ちゃんと出来上がるのでしょうか。楽しみですが不安もありますね。

 失敗していたらどうしましょう。まあそのときはそのとき。

 何か別のプレゼントを考えます、はい」

 

むむ、誰ですか、今そのほうが面白いとか撮れ高になるとか言った人。

確かにそのほうが画としては良いのかもしれないけど、それは外から見た図であって、

中の人としては、無難に普通に終わってほしいのが本音なのですよ?

 

「急に暇になってしまいましたね。ええと、台本には『トーク等で場を繋ぐ』

 としか書かれていません。どうしろと?

 え~それじゃあ、困ったときの質疑応答でもしますか。

 生放送のほうでも、ここにPCありますので、コメントしていただければ適当に拾います」

 

行き当たりばったりな台本にもほどがある。

おっちゃんらしいっちゃあらしいんだけどさあ。

もう少し計画性というものをだな……

 

「あ、えっちな質問はだめですよ。永久追放しますのでそのつもりで」

 

取って付けたように言うと、コメント欄は阿鼻叫喚となった。

好きだねぇ君たち。嫌いじゃないけどTPOを弁えよう。

脇に控えている乙名史さんは、俺の声に応えるようにして親指を立てている。

お願いします乙名史さん。

 

「彼氏はいますか? いません。いるはずないじゃないですか。

 好きな男性のタイプ? うーん、人間としては誠実な人が好きです。

 年上は何歳までOKですか? 別に素敵な人なら年齢は問いません。

 ……というか、なんですかこれは。恋愛関係の質問ばかりなんですけど?」

 

流れるのは色恋に関連したコメントばかり。

これだから男は。まあ俺も元男だから、気持ちはわかるんだけどさあ。

 

その後も、色々なコメントを拾っては答えてを繰り返し、

頃合いかという時間になってきた。

 

「そろそろ50分になりますね。じゃあ私の初めての手作りチョコの

 実験台になっていただける方を決めましょう。

 ……『モルモット君の出番だ!』、ですか? モルモット君?」

 

某、発光するトレーナー君のことなんて知らんなあ?

実験台ということなら合っているんだけれども。

はい、某超光速粒子の名を冠するウマ娘の出番もまだです。座ってなさい。

 

「決め方は……リアンちゃんにお任せ? はいはいわかりました」

 

そう言いつつおっちゃんの顔色を窺うと、俺次第だって。

どうせそんなことだろうと思ってました。

 

「では、そうですね、手っ取り早くジャンケン大会でもしますか。

 唐突ですが、観客のみなさん全員スタンダップ! 私に負けた人は座ってくださいね。

 3人に絞られるまで続けます。1回戦始めますよ~。じゃーんけーん、ぽんっ」

 

そうしてジャンケン大会が始まり、対戦を繰り返すことしばし。

ついに栄光(?)の3名様が決定した。

そのお三方には、こちらまで来ていただいて、一緒にチョコの出来を確認しましょう。

 

「おお、ちゃんと固まってますね、成功です!

 まあ味は保証しませんけど」

 

とりあえず見た目はきちんと出来上がっていた。

定番も定番なハート形のチョコ。

型から外して箱に入れ、これも用意されていた素材で綺麗にラッピングして、お三方へ。

 

「ジャンケン勝ち抜きおめでとうございます。

 よろしければ、SNSなんかでご感想を教えてくださいね。

 ハッシュタグファミーユリアンFCで呟いていただければ、

 すぐにお返事しますから」

 

お一人ずつ丁寧に手渡して、握手。

すると、その中の1人が

 

「一生食べないで宝物にします!」

 

なんて発言。

いやあんた、気持ちはわかるけど、一応生ものの食品ですから。

会場大爆笑。コメントでも草の嵐。

 

「いやチョコなんだから食べて」

 

思わず普段の調子で本音が出てしまったよ。

 

なんだかんだで、イベントは盛況のまま閉幕。

見てくれた人すべてに感謝を。

 

そしてよろしければ、関連団体どこでもいいので、覗いていってね。

さらに気が向いたら、少額でもいいので、寄付をよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月20日、ユ〇セフのチャリティーオークションイベントに出演。

 

なんと、まさかまさかの国連機関からの依頼ですよ。

地元商店街からの大飛躍。商店街には失礼だけど、まさに月とスッポン。

もちろん二つ返事でOKしました。

 

用意してもらっていたシャツにサインを入れたものと、

履き潰しても捨てられなかった靴、身体が成長して着られなくなったジャージなど、

持参した数点にもサインを入れて出品した。

 

……ブ〇セラとか言ったやつ、あとで屋上な?

使用済みには違いないけど、きちんと洗濯してあるやつだから。

確かにそういう需要もあるのかもしれないけど、言わぬが華だからな!

 

おかげさまで完売御礼、相応の金額が付いた。

もちろん全額を寄付した。

 

 

 

 

 

 

 

 

2月27日。

 

今日はイベントといってもちょっと毛色が違って、

トレセン学園地元の府中市役所を表敬訪問。

 

市長さんにもお会いして、児童福祉面への予算拡充をお願いした。

その足で市内の関連施設を何ヶ所か回り、子供たちと戯れる。

 

そんな子供たちの中に、1人、ウマ娘の子がいた。

鹿毛のポニーテールのかわいい子。

あのロリテイオーを一回り大きくしたような感じだ。

 

しかし痛々しいことに、右腕を白い布で吊っている。

気になったので声をかけてみると、転んで骨折したのだという。

骨が真っ二つになるほど重度のもので、ボルトを入れて固定してあるそうだ。

 

ボルトと聞いて、俺と一緒じゃんって、勝手ながら親近感を持った。

 

「ねえ君、走るの好き?」

 

「好き。でも、また転ぶのが怖い。痛いの嫌だ……」

 

ふむぅ、なるほど。

真っ二つになるほどの骨折だから、よほどのスピードでコケちゃったんだな。

子供特有のありがちなことで、制御できないほどで走っちゃったか。

 

でもまだ足じゃないだけマシだぞ。

ここに両足折ってるお姉ちゃんがいるからね。

それも同時にじゃなくてそれぞれ1回ずつだ。

 

……これもはや、立派な殺し文句だな。

スターオーちゃんもそれらしいこと言ってたっけ。

苦笑するしかない。どうやら本格的に気に入っているようだ。

 

何はともあれ、そんな俺でもこうやって走って、結果をも出せて、

大勢の人に支持してもらってるんだから大丈夫大丈夫。

 

「実はね、お姉ちゃんも骨折してるんだ。それも足を、2回」

 

「2回!? 痛くなかった?」

 

「そりゃね。でもこうやってまた走れてるんだ。

 骨折しちゃったのは残念だけど、君の場合は腕なんだから、

 諦めずに頑張れば大丈夫だよ」

 

「そうかな? トレセン学園に行けば、またお姉さんに会える?」

 

「会える会える。今度はトレセン学園で会おうね」

 

「うん、わたしがんばる!」

 

指切りして、トレセン学園での再会を約束する。

 

よしよし、いい子いい子。

頭を撫でてあげると、うれしそうに目を細めてくれる。

 

その後、母親が海外出身のハーフということまで話してくれた。

言われてみれば、白人っぽい顔立ちしてたな。

 

彼女とは、改めて再会を約束し、手を振って別れた。

 

いけね、名前聞くの忘れちゃった。

まあいいか。きっと何年後かに再会はするし、

そのときはきっと、彼女のほうから名乗ってくれるさ。

 

 

 

 

 

「ファミーユちゃん、ありがとねっ」

 

「は?」

 

イベントを終えて学園に戻ると、早々にシービー先輩と出くわし、

なぜだか満面の笑みでお礼を言われた。

まったく心当たりがなくて、目が丸くなってしまう。

 

「えっと、私何かしましたっけ?」

 

「それが、アタシにもわからないんだ」

 

「……??」

 

どういうこと?

先輩にもわからないことが、俺にわかるわけがない。

 

「でも、アタシの中の何かが、君にお礼を言わなきゃって囁くんだよ。

 なんでかな? なんでだろうね?」

 

「私に聞かれても……」

 

先輩の中の何かって、なに?

リトルシービー先輩?

 

「とにかく、ありがとね。それじゃっ♪」

 

「あ、ちょ……」

 

言うだけ言って、止める間もなく、

陽気な笑みを浮かべながら去っていく先輩。

 

「……どういうこっちゃ」

 

なんだったんだ? 全然わからん。

久しぶりにまともに会話したかと思ったらこれか。

 

あの人がわからないのはいつものことだけど、

今回ばかりはいつも以上に首を傾げざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー

 

 

(年度代表ウマ娘決定)

 

:年度代表ウマ娘ゲットだぜ!

 

:思ったより差がついたな

 

:インパクトを考えれば順当だろう(ヒヤヒヤ

 

:やはり目の肥えた記者たちだったな

 

:肥えてない方が1人いらっしゃるんですが、それは……

 

:ミホシンザンに入れてるやつ、なんやねん

 

:レースを舐めているとしか思えん

 

:毎年必ずいるよな、なんでそんな票入れてんだってやつ

 

:全員名前と結果と理由を公表させろよ

 

:氏名非公表の奴いるのがおかしい

 

:それな

 

:なんや、シンザン関係者かいな?

 

:あまりに私情の入った投票した奴は、資格剝奪でいいよ

 

:永久追放もお忘れなく

 

:そもそも記者投票なのがおかC

 せめて有識者か関係者の投票にしろ

 

:それだと有識者の線引きが難しいし、

 関係者はそれこそ票が偏りかねんぞ

 

:自分のとこのやつ以外に入れるようにすりゃいい

 

:プロ野球の選手間投票みたいにすれば?

 

:とにかくクラシック級との二冠おめでとうリアンちゃん!

 今年も頑張ってね!

 

:今年も『幻惑』する走りを見たい

 

:リアンちゃんに幻惑され隊

 

:何その隊。ウラヤマケシカラン

 

:入隊受付はどこでやってますか?

 

 

 

(バレンタインイベント生放送観戦組の反応)

 

:待ってました!

 

:三角巾と割烹着似合うなあ

 

:なぜ割烹着なんだ?

 かわいいからいいけどさ

 

:おっちゃんwww

 

:欲望が滲み出てるなw

 

:滲むどころか……w

 

:だがそれがいい

 

:いいぞもっとやれ。いやお願いします

 

:いいでしょ、俺の嫁さんなんすよ

 

:は?(威圧)

 

:寝言は寝て言いたまえ

 

:リアンちゃん料理できないのか

 

:ちょっと意外だ

 

:孤児院でやってなかったのか

 

:きっとやらせてもらえなかったんだろう

 普段から色々と手伝ってるんだから、

 そんなことまでやらなくてもいいとかって言われて

 

:危なっかしい手つきw

 

:千切りとか無理なんだろうな

 

:カンペ丸読みじゃないかw

 

:だがそれがいい

 

:相変わらず喋りがうまい

 

:作業だけ見てると退屈だけど、まったく退屈しない

 

:本当業界向きだなリアンちゃん

 

:物怖じしないし頭の回転速くてアドリブも効く

 

:まさに逸材

 

:引退後はほんとに放っておかれないだろうな

 

:見てるか~府中CATV?

 

:そもそもこの配信が府中CATVのチャンネルなんですが

 

:リアンちゃんの手作りチョコかあ

 

:やべえすげえ欲しい

 

:会場のやつらいいなあ

 

:さすがにここの住人で抽選当たった奴いなかったな

 

 

 

 

:えっちなことはいけないと思います

 

:おまえらwww

 

:自重せよ

 

:ここぞとばかりに張り切るのなw

 

:BANされてしまえ

 

:彼氏いなくて安心した奴の数

 

:誠実な人かあ

 

:なんだ俺のことか

 

:言ってろ

 

:俺、還暦だけどいい?

 

:還暦の人までここ見てるのか

 

:年齢問わないって。よかったね

 

:リアンちゃんのファン層の広さよ

 

 

 

:実験台w

 

:喜んで!

 

:リアンちゃんの作ったものなら何でもいい!

 

:ジャンケン!

 

:いつもの

 

:かあ~っ俺が行ってたら絶対最後まで残れたのに!

 

:順調に減ってますね

 

:残り何人?

 

:10人ちょっといるな

 

:うお、すげえ、最後一気に決まった

 

:勝った人おめ

 

:前に連れていかれるw

 

:強制連行www

 

:リアンちゃんの手作りチョコもらえる栄誉に比べりゃ、

 顔出しなんて屁でもないべ

 

:若者、若者、おじさん

 

:おじさん恥ずかしいw

 

:なに、自分に素直なのはいいことじゃないか

 

:1番堂々としてて草

 

:ガッツポーズまでw

 

:さてチョコの出来は……

 

:おお、ちゃんとできてる

 

:ラッピングもリアンちゃん自らとは

 

:ホシィ

 

:くっ、来年こそは!

 

:おまwww

 

:おいwww

 

:ちょwww

 

:ちゃんと食えw

 

:感想教えてって言われたのにw

 

:リアンちゃん「食べて」

 マジもんのトーンだったw

 

:間違いなく素だったなw

 

:俺もあんな感じでリアンちゃんに罵られたい

 

:特殊な性癖の方は帰って、どうぞ

 

:いやー楽しかった

 

:大満足!

 

:こういうイベントなら毎週でもいいぞ

 

:さすがにそれは

 

:レースもトレーニングもあるんだし

 

:それにみんな忘れているようだが、

 リアンちゃんまだ学生だからな。

 あまり無茶を言うんじゃないぞ?

 

 

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。