『ウマ娘ファンのみなさんこんにちは。
今週も府中ケーブルテレビがお送りする、
週刊ウマ娘放送局のお時間がやってまいりました』
毎度おなじみの、番組冒頭でのあいさつ。
女性キャスターがぺこりと頭を下げる。
『それでは早速、春の天皇賞の回顧をしてまいりましょう!
解説の○○さん、よろしくお願いします』
『はい、お願いします』
挨拶もそこそこに、今日のメインテーマに入る。
『結果から申し上げますと、1着ファミーユリアンさん。
2着シリウスシンボリさん。3着サクラスターオーさんでした。
これについては?』
『上位人気の3人で決着しましたね。
順当に実力が反映された結果ではないかと思います』
『ファミーユリアンさんについては、後に回すとしまして。
先にほかのお二人について聞きましょう。
サクラスターオーさんの走りについてはいかがでしょうか?』
『彼女については、完全にペース判断を誤りましたね。
おそらくは有馬のときのようなレースを想定していたんでしょうが、
それとは真逆の展開になってしまいました』
『つまり、スローになると読んでいたと?』
『はい。逃げるファミーユリアンさんを早めに捕まえたかったんだと思います。
しかし逆のハイペースになってしまい、最後は追い上げる脚が残っていませんでしたね。
それでも3着を確保したのは地力の高さゆえです』
次走でも引き続き期待できます、とスターオー評を締めた。
『2着のシリウスシンボリさんについてはいかがでしょうか?
最後の脚は見事でしたね』
『まずは、最後方に控えたのが意外でした。予想外でしたね』
『同感です。私もてっきり、中団の前目くらいかと。
スターオーさんとシリウスさんの位置取りが逆じゃないかと思いましたよ』
『まあスターオーさんも、最後方というタイプではありませんけどね』
概ね同意します、という解説者。
これまで最後方から一気、というレースをしたことはなかったため、
予想できたファンがいたかと言えば大いに疑問だろう。
『結果としてはそれがハマりました。出走メンバー中、最速の推定34秒9
という上がりを記録して追い込みましたが、それでも届きませんでした。
改めてファミーユリアンさんの強さが際立つ形となっています』
『はいみなさんお待たせいたしました!
それではファミーユリアンさんについてお聞きしましょう。
○○さん! どうでしたか!?』
ちょうどよく名前が出たところで、と意気込むキャスター。
意気込み過ぎて、鼻息が少しマイクに入ってしまったのはご愛敬。
『強かったですね。その一言に尽きます』
『ですよね~』
『これまでも強かったですが、ここに来て完成された感があります。
彼女につきましては、「幻惑」の二つ名が示すとおり、
緩急自在のレース運びが魅力の一つだったわけですが、
それすらも超越してしまったんじゃないでしょうか』
『……と、仰りますと?』
なんだか触れてはいけないようなものに触れるような感じで、
おそるおそる尋ねるキャスター。
解説者のほうも、その表情は真剣そのものだった。
『これをご覧ください』
12.5-11.6-11.5-11.8-11.9-11.8-11.7-11.7-12.5-12.8-
12.7-12.2-11.8-11.4-11.8-13.5 3:13.2
4F 48.5 - 3F 36.7
そう言って、手元の机上にボードを差し出す解説者。
細かい数字がいくつも印字されている。
いつかのような手書きではなく、きちんと製作されたものである。
『それは、天皇賞のハロンタイムですね』
『はい。終始先頭で逃げ切ったわけですから、すべてファミーユリアンさんが
記録した実タイムです。注目してほしいのは、8ハロン目までの数字です。
どうですか?』
『スタート以外、全部11秒台のタイムなんですね。
ハイペースだとは思っていましたが、長距離戦でこれほどまでとは……
確か1000mが59秒3でしたよね?』
『その通りです。絡んでくる子もいなかったわけですから、
普通は自分のポジションを確立できたら、そこで後半に備えて息を入れるものですけども、
ファミーユリアンさんはそうするどころか、逆に加速していっています』
『うわ、本当だ……』
5ハロン目が11.9である。
そこから11.8、11.7、11.7とペースを上げているのだ。
ようやく息を入れたのは9ハロン目になってから。
レース全体の半分をとっくに過ぎている。
それも、わずかと言っていいほどのタイムでしかない。
『こんなチキンレースみたいなことをされては、後ろの子はたまったものではないです。
まあ現実に、彼女に競り掛けていく子は現れなかったんですが』
『セントライトの時とか、前走の日経賞を見ちゃうと、なかなか……
ついていきたくてもいけませんよねぇ』
『仮についていけたとしても、途中で潰されてしまうのは目に見えています』
頷き合う両者。
特に、メジロフルマーのことを鑑みるに、
リアンに
『その前走の日経賞と、今回の天皇賞のレースぶりを見ますと、
他の子が追随できないようなペースで逃げて、そのまま押し切るというのが、
確立されたファミーユリアンさんのレースなのではないかと思います』
『……大逃げする子は過去にもいましたけど、
それとはまた違う感じがしますね』
『まったく違いますね。過去のは、牽制や展開というあやがあったものですが、
ファミーユリアンさんの高速ラップは、最初から他の子を磨り潰そうと狙ったものです。
それを短距離ならまだしも長距離、それも春の天皇賞でやってのけてしまったんです』
『……なんかもう、次元が違う話になってきましたね』
『実際そうです。冷静に話しているように見えるでしょうが、
私も内心は心臓がドキドキしています。
逃げウマ娘の完成形のような子が、ついに現れたか、と』
話が進むうちに、最初興奮していたキャスターが落ち着き、
というより驚きのあまり引いていき、解説者のほうが逆に、
解説に熱が入るうちに興奮して、頬が紅潮していった。
『ですがそんなファミーユリアンさんも、
最後は13.5と脚が止まりかけてしまってますね』
『これは仕方ありません。むしろよくこれで収められたなという感想です。
並みのウマ娘ならばこれでは済まないというか、
ゴールまでたどり着けずに途中で競走中止するレベルです。
とてもとても、3200なんて距離を走り切れたものではないですよ』
『これほどまでに落ちてしまったのは初めてですし、
ゴール後に転んでしまったくらいですから、
彼女にしてみても、相当に堪えたんでしょうね』
『あれは心配しました。何事もなかったようで何よりです』
全国のファンが肝を冷やしたことだろう。
それくらいの殺人的ペースであり、信じられない偉業だった。
『あれ、ちょっと待ってください……』
ここでキャスターの女性が、とあることに気付いた。
あまりのことに息を飲んでいる。
『勝ち時計が3分13秒2で、上がりの最後が13秒5ということは……
3000m通過の時点のタイムが3分を切ってる……!?』
『……気付いてしまいましたか』
『え、えっと、菊花賞でファミーユリアンさんが作ったレコードって、
いくつでしたっけ?』
『3分3秒2です』
『………』
解説者からの答えに、あんぐりと口を開けて固まってしまうキャスター。
3000mで3分切り? どういうペースだそれは。
3200のレースで3000のレコードを大幅に更新するペースで逃げ、
しかも、それでいて逃げ切って勝ってしまっただと?
『なんかもう、言葉が出てきません』
『次元の違う逃げ足……まさに異次元の逃亡者。
そう、あなたが先ほど言われた通りのレースだったと思います』
『「異次元の逃亡者」……ですか。なんかこう、
自分の発言が基になったかと思うと、光栄というか恐れ多いというか……』
微妙に顔が強張っているように見えるキャスター。
これがきっかけで、この新たな二つ名が浸透していくことになるとは、
まだ微塵も思っていなかった。
『なんにせよ、これでファミーユリアンさんは9戦8勝! 2連勝です。
この勢いで再び連勝街道を、いつまでも先頭を突っ走っていってほしいですね!』
『その可能性が限りなく高いでしょう。
彼女についていけるウマ娘が現れない限りは』
『ありがとうございます! 以上、レース回顧のコーナーでした』
今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー
(天皇賞リアルタイム視聴組の反応)
:まさに現役最強決定戦
:もちろんリアンちゃんが勝つさ!
:頂上対決wktk
:スタート!
:いつもの
:もはや定番のロケット
:安心して見ていられるスタート
:それにしても早くない?
:59秒3!
:これは早い
:大丈夫か?
:3200のレースで中距離並みのペースで飛ばすウマ娘
:いや2000でも早いほうだろ
:日経賞に比べりゃこんなもの……(汗
:日経賞より700mも長いんですが
:縦長すぎる
:カメラ引きすぎィ!
:シリウス最後方か、不気味だ
:このまま菊花賞の再現オナシャス!
:スターオー上がってきた
:ますます菊花賞の再現ジャマイカ
:その菊花賞でも、ここまでは離してなかったぞ
:下り坂の加速えぐい
:あのスピードでよくインベタできるよなあ
:コーナリングも抜群だよね
:逃げろ逃げろ!
:あばよとっつぁ~ん
:ファミーユリアン改めファミーユルパン
:ふざけている場合ではない
:でもそれなら、絶対に逃げ切れるな
:勝負の直線
:スターオー伸びない!
:シリウス来た!
:ぐえーすごい伸び!
:うわあああ来るなああああ!!
:がんばれリアンちゃん!
:ねばれっ
:あと100!
:逃げ切り!
:やたああああああああああああ
:うおおおおおおお
:おめえええええええええええ!!!
:なんだこのタイム!?
:スーパーレコード!
:スーパーどころじゃない
:総合デパート並みってか
:5秒半も縮めるとか……
:しかしひやひやした
:最後危なかった
:もう50mもあったら差されてたな
:ん?
:リアンちゃん!?
:どうした!?
:倒れて動かない……
:なんだ……何が起きたんだ……
:わからん、いきなり倒れたぞ
:嫌な倒れ方だった
:前のめりだからな……
言っちゃ悪いが、力尽きる感じがして……
:スターオーとシリウスが駆け寄ってるが……
:あ、起きた!
:なんか苦笑してる?
:転んだだけっぽい?
:それだけならいいけど……
:スターオーとかの反応見る限り、大事はなさそうだ
:よかった
:安心した
:こっちが心臓止まるかと思ったよ
:立ち上がって手を振ってる
大丈夫そうだな
:変な汗出ちまった
:俺も両手びっしょりだよ
:手ならまだいいだろ
俺なんて全身だぜ。着替えようかな
:んもう人が悪いなあリアンちゃん
:最悪の事態想定した奴
……はい俺です、すんません
:あの倒れ方見たらしゃーない
:過去には、レース中やレース後に、
心臓発作起こして亡くなった子もいるからな
:そうなのか……知らんかった
:故障するよりえぐいかもしれん
:レースはすんなり確定
:勝利インタビューきた
:さあ本人の口から何が語られるか
:ふむ、顔色は悪くない
:疲れてそうだけど、大丈夫そうやね
:結論、転んだだけ
:足がもつれたようには見えんかったが、
まあ本人が言うんならそうなんだろう
:そうならそうで、なんですぐに起き上がらなかったん?
:まあ疲れててすぐには動けなかったんだろ
:着差1バ身1/2
これ以上の強さを感じた
:結果的には、2着につけた着差としては最小だけど、
もうそんな数字では測れない強さだ
:あのハイラップで3200押し切られちゃあなあ
:その結果が5秒以上も縮めたハイパーレコードです
:これもう永久不滅の時計じゃないか
:菊花賞以上の衝撃でした
:これで名実ともに日本のウマ娘トップに立った
:祝、現役最強!
:いや史上最強かも
:あのリアンちゃんがなあ
:すごい感慨深い
:走ることすら許されてなかった頃が懐かしい
:もちろん次走は宝塚か
:そこも勝って、次は……
:次は?
:ルドルフが果たせなかった夢を、今度こそ
:2人の仲が良いだけに期待せずにはいられない
:なんか話出てたっけ?
:今のところは出てない
:俺の妄想
:なんだ妄想か
:妄想くらいしたっていいじゃない
人間だもの
:近い将来、実現しそうやな
:実は2人の間では、すでに話し合ってたりしてな
:これだけの強さだ、当然、視界には入ってくるだろ
「なんてザマ晒してんねん!」
天皇賞の遠征から帰ってきた矢先、月曜日の放課後。
俺はタマちゃんに怒鳴られている。
「心臓止まるかと思うたでホンマに!」
「ごめんごめん」
「このドキドキどうしてくれんねん。
責任取ってもらわな困るわ」
タマちゃんの口撃が止まらない。
いやまあ心配してくれたんだってことはわかるから、
甘んじて受けなきゃいけないところなんだけれども。
「いろいろな人に言われたから許して」
そう言って、頭を掻きながら下げる。
スーちゃんをはじめ、いろんな人に怒られたというか、
心配されたから、もういい加減許してちょうだい。
目立つところでは、まずシンボリのお父様とお母様。
レースが終わって宿舎に帰るなり電話がかかってきて、
開口一番で悲鳴に近い心配のされ方をした。
無事で何ともないからってどうにかなだめたら、今度はルドルフからだ。
ご両親ほど取り乱してはいなかったが、多大なる心配と静かな怒りを感じた。
大丈夫ならすぐに立ちあがって、皆に無事な姿を見せるべきだと。
不必要に心配をかけるべきではないって。
確かにそうなんだけど、あのときは瞬時には立てなかったんだよ。
さすがに疲れてたみたいでさ。身体が動いてくれなかった。
自覚はないけど、もしかすると、一時的には意識が飛んでいたのかもしれない。
スターオーちゃんとシリウスからも、まるで安否を確認するかの如く、
寝るまで定期的にメッセが飛んできてたし、朝起きたら
1番で部屋に突撃されるし、帰りの新幹線でも介護の人みたいになってたし。
シービー先輩やマルゼン姉さん、果てはTTGの大先輩たちからも、
祝辞と共に心配するメールが来てた。
ファンクラブの人たち、特におっちゃんからも、
怒涛の勢いでメールが着信。
返信すれどもすれども、なかなか納得してもらえなかった。
学園に戻ってきたら、いきなり理事長室に呼び出されてお説教だ。
いや、説教という言い方はまずいな。
まずはお祝いされて、改めて体調や怪我の心配をされたというところ。
ファンたちの反応も、レース場にいた人たちは、口どり式の時は
素直に喜んでいいのかわからないといったなんか変な空気感を纏っていた。
ライブはいつも通りだったけど。
掲示板の様子も覗いてみたが、ゴール後のあの瞬間は阿鼻叫喚だったようだ。
中には、最悪の事態を想像してしまった人すらいた。
いやいや何もそこまでと思ったけど、レース映像を見返してみたら、
充分に考えうる倒れ方しちゃってた。
……重ね重ね申し訳ない(滝汗)
「いいや、許さへん」
「タマちゃん……」
「次は、誰もが納得するくらい、楽勝してくれな許さへんな」
「……」
「ええな?」
「わかったよ」
どんな条件出されるのかと思ったら、すごく気遣われた。
笑顔のタマちゃんが眩しい。直視できない。
すごくすごいかわいい顔なので、もっと見たいのに、だ。
「次はもっと楽に勝てるようにする。約束だよ」
「言質とったで。破ったら針千本やからな」
「それも勘弁」
ホントにいい子だよタマちゃん。
こう言っちゃなんだが、苦労してきているだけはある。
「しっかし、えらい時計出してしもうたな先輩」
「うん、自分でもびっくり」
「そればっかりやな先輩。自分で自分に驚いてちゃ世話ないで」
そうなんだけどね。
自分のことながら、自分のしたことが信じられないんだよ。
デビュー戦の時からずっとそう。
今でもこれは夢で、目が覚めたら病院のベッドの上で、
足つられてるんじゃないかって本気で思うときがあるんだからさ。
いやそもそも、
転生前の自分の部屋なんじゃないか、とすら思ってしまう。
「あれやな。先輩はもっと、自分に自信を持つべきやな」
「それも言われるんだけどね、なかなか」
「今や先輩は、G1を3勝、日本レコードを4つも持っとる、
トップ中のトップウマ娘なんやで? そのへん自覚しいや」
「うーん」
「あかん、糠に釘、暖簾に腕押しやこれ」
タマちゃんのジト目が痛い。
本当にそんなこと言われても、って感じしかしないのが、我ながら心苦しい。
「と、ところで、タマちゃんは上手くやれてる?
無事にトレーニングできてるかな?」
強引に話題を変える。
こうでもしないと、延々とこの件を責められかねないからな。
「まあ、トレーニングという意味では、そうやな」
「そっか、よかった」
そっちの状況を尋ねると、頷いてくれたタマちゃん。
入学して3週間余り。
最初の選抜レースの結果は芳しくなかったみたいだけど、
本格化の具合とかもあるから、今は気にしなくていい。
特にタマちゃんの場合は、モデル馬が古馬になってからの覚醒型だっただけに、
今はまだ無理をせず、基礎トレーニングに精を出す時期ということだな。
そんなことを、自分の経験も含めて、前に言ってあった。
もちろん史実だの実馬だのなんてことは内緒のままでね。
「ただ、な……」
「どうしたの? 何か困ったことがあったら、何でも言って?」
「……逆や。ここでは、何も不自由せんねん」
俺がそう聞くと、タマちゃんは少しためらうような仕草を見せた後、
呟くようにしてそう漏らした。
「ここはウマ娘のための学園なんだから、
生徒が不自由しないようにするのは当然なんじゃない?」
「ちゃうねん、そういうんじゃないんよ。
別に学園に文句言うつもりはないし、実際良くしてもろうてる」
何も不自然なことはない。
至極当然のことなんだが、タマちゃんには違うように見えているのか?
「ウチの実家、貧しいってことは話したやろ?
ウチが美味しいごはんを何の苦労もせずに食べている間にも、
家のみんなはまっずい冷や飯を、文句の一つも言わずに食べてるんやろな」
「……」
「そう思うと、なんかこう、胸が苦しくなってきてしもうて……」
……思ったよりもずっと深刻な話だった。
そっかあ、そういう風に考えちゃうかあ。
そういえばタマちゃんの育成シナリオも、鬼かというほど過酷でしたね。
問題になるほど食が細い、母親が倒れる、
模擬レース中に事故に巻き込まれてトラウマを抱える、
今度は父親が倒れる、引退すら検討する
あれ? そう考えると、タマちゃんと俺って、重なる部分多くね?
多いというか、そのものっぽくね?
家族がいるっていうこと以外は、信じられないくらい似てね?
いや、家族がいるっていう分、心情的に下手すると俺よりひどくね?
これが史実に基づいてるってんだから余計にひどい。
原作者出て来い!
……わかりました。
同じような境遇の身として、このお姉さんが優しく諭してあげましょう。
100%の経験談だから、効果あること間違いなしだよ!
「もともとそんな食べるほうじゃないじゃないんやけど、
ここに来てからは、一層少食になってる気がするんよ。
おかげで、体重が減る一方でなあ」
「わかった、お姉さんに任せなさい」
「え?」
とりあえずは、食生活の改善からだな。
確かタマちゃんって、貧乏故の小食が続いたせいで、
多くを受け付けられない体質になっちゃってたって感じだよな。
まずはそこを治さないと、何より強いトレーニングに耐えられない。
となれば、どこよりも頼りになる
体重が減る一方か、ますます入学当初の俺の姿と重なる。
これはもう、お姉さんが一肌脱いであげるしかないでしょ。
「先輩? 急に携帯出してどうしたんや?」
「ちょっと待っててね? いま連絡してみるから」
「あ、ああ」
スマホを取り出し、さっそく電話をかける。
善は急げってね。
「もしもし、あ、お世話になっております、ファミーユリアンです。
はい、はい、ありがとうございます。毎度突然ですいません。
はい、また紹介したい子がおりまして……はい、はい」
「………」
「タマちゃん、今度の土曜日、空いてる?」
「え? ええと、特に予定は入ってへんけど……」
「はい、大丈夫です。では午前中に伺いますね。
はい、ありがとうございます。それでは、また」
「………」
「やったねタマちゃん。お話聞いてくれるって」
「いや、何もわからへん。説明せえや!」
研究所と電話している間、大人しく待ってくれていたタマちゃんだったが、
勝手に話が決まったのでおかんむりだ。
まあそれはそうだな。いま説明してあげるから、もうちょっと我慢して。
「――というところなんだけど」
「……」
「今度の土曜日に連れて行くって約束しちゃったんだけど、
よかったかな? 他に用事があるっていうなら変えてもらうけど」
「いや、予定はないからええねんけど……」
「けど?」
「そないえらいとこ、ウチなんかが使ってええんか?」
一通り研究所について説明すると、面食らった様子のタマちゃん。
ああ、ますます、当時の俺と同じ反応で笑えてくる。
もちろん表には出せないし出せませんよ。
大丈夫だタマちゃん。
貧富の差や、実績の有無なんて関係ないんだ。
「もちろんいいんだよ。
病気や怪我なんかで苦しんでるアスリートを手助けするのが、
あの研究所の存在意義だしモットーだからね」
「いや、しかし……カネかかるんとちゃう?
ウチそんなカネ払えへん……」
「うん、当然お金はかかるけど、そうだな、出世払いということでよろしく」
「……」
そう申し出ると、タマちゃんは泣きそうな顔になってしまった。
そんな気を紛らわすべく、指をグッとしながらわざと芝居がかって明るく言ってみる。
もちろん相手がただのモブ娘でも、同じことを申し出てるよ。
仮に賞金を稼げなくて終わっても、請求しようなんて思わないから安心して。
なにより俺自身がそういう状態だしね。
「先輩……ええんか?
先輩にそこまでしてもらう理由なんて、全然ないやん……」
「とある先輩の受け売りだけど、
かわいい後輩を助けるのは、お姉さんの責務なんだよ」
「……」
「だからタマちゃんは安心して研究所通って、プログラム受けて、
一生懸命トレーニングして、レースで勝てるように頑張ればいいの」
「………」
「いいね?」
「先輩……ホンマおおきに。おおきになあ……」
「ちょっ……こんなところで泣かないで!」
堪えきれなくなったのか、大粒の涙を流して泣いてしまうタマちゃん。
号泣と言って差し支えない状態になってしまった。
カフェテリアの衆人環境だから慌てるが、時すでに遅し。
翌日、俺が後輩を言葉責めして泣かせた、という噂が学園中を駆け巡った。
泣かせてしまったのは事実だけど、『言葉責め』ってなんやねん。
その単語選びに大いに悪意を感じつつ、生徒会や学園に、
なんて言って釈明しようかを考える俺であった。
> 永久不滅の時計じゃないか
ところがどっこい
3分12秒5っていうさらなる超時計で駆け抜けた馬がいましてね
ほら、そこのお祭り娘ですよ
うちには実装直後の無料ガチャで来てくれたタマちゃん
中距離チームレースでお世話になりました(過去形
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
-
ドバイワールドカップ
-
ドバイシーマクラシック
-
ガネー賞(仏)
-
クイーンエリザベス2世カップ(香港)
-
アメリカ遠征