転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第58話 孤児ウマ娘のお悩み相談室

 

 

 

今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー

 

 

(宝塚記念リアルタイム視聴組の反応)

 

:まーた雨が強くなってる

 

:リアンちゃん大丈夫かな?

 

:前の雨では滑って出遅れてるからな

 

:賢いリアンちゃんのことだから、

 今度は大丈夫でしょ

 

:きのうの朝に、事前スクーリングしたって記事出てたぞ

 

:予習も万全ってわけか

 

:しかし酷いバ場だな

 同条件の第7レース、2分20秒台だったぞ

 

:2300mのレースかな?

 

:少なくとも、普段よりも100mは長いと感じさせるような

 時計のかかる酷いバ場状態ということだな

 

:すんごいパワーが必要になってそう

 

:水かきも要るかな?

 

:ファンファーレきた

 

:枠入り順調

 

:好スタート

 

:いつもの

 

:いつもの

 

:またメジロが……

 

:メジロフルマー、お前ええかげんにせえよ

 

:とはいえレースだしなあ

 

:メジロの思惑がわからん

 日経賞であれだけコテンパンにされて、なお絡んでいくのか

 

:2人で引き離していく~

 

:59秒1!

 

:不良でこれは早すぎる

 

:言うてリアンちゃんだしなあ

 

:またメジロのほうが先にばてるぞ

 

:意外と粘ってるな

 

:後ろからは何にも来ない、再び

 

:このバ場じゃ、そりゃ伸びんわ

 

:勝利!

 

:おめええええ

 

:よかよか

 

:お疲れ様でした

 

:さすがの逃げ切り

 

:フルマー3着か、すげえ粘りだった

 

:ニッポーにはかわされたけど、がんばったな

 

:そうだよ、メジロフルマーも弱くはないんだ、弱くは

 

:改めて、日経賞での撃墜ぶりが目を見張るな

 

:珍しくガッツポーズした?

 

:したな、控えめにだけど

 

:珍しいというか、初めてじゃないか

 

:何か思うところがあったのかな?

 

:そりゃロボットじゃないんだし

 

:でもホント珍しい

 

:インタビューで何か聞けるかな?

 

:不良バ場で2分13秒9ってメチャクチャ早くないか?

 

:良バ場でも出るくらいのタイムやぞ

 

:阪神2200のレコードが2分12秒1だぞ

 1.8秒しか違わん、どういうことやねん……

 

:7秒落ちって言うてたやんか

 

:つまり本来なら、2分20秒近くて当然なわけか

 そういえば第7レースが20秒台って言ってたっけ

 

:2戦目こそ滑ったけど、

 実は重バ場得意なのかリアンちゃん

 

:というより、単にスピードの違いという気もするな

 

:良バ場ならどんなタイムが出ていたことやら

 

:あー良バ場で見たかったなあ

 

:なんにせよめでたい!

 宝塚制覇おめでとうリアンちゃん!

 

:お? メジロフルマーに歩み寄って?

 

:文句付けた?

 

:リアンちゃんそんな子じゃないでしょ

 

:笑顔じゃないか

 

:メジロのほうが困惑顔

 

:何を言ったんだか気になる

 

:インタビューで突っ込んでほしいな

 

:インタビュー始まるお

 

:Q ガッツポーズが出てましたが?

 

 A 思わず気が昂ってしまいました。申し訳ないです

 

:いやいや謝らなくてもいいのよ

 

:悪いことじゃないのに

 

:むしろ貴重なものが見られて感謝じゃけぇ

 

:本当に謙虚よのう

 

:まあそこがリアンちゃんの良いところさ

 だからこうやってファンをやってるんだ

 みんなもそうだろ?

 

:おうともさ!

 

:もちのろん!

 

 

 

:ファミーユリアン、メジロフルマーにライバル宣言

 「また一緒に逃げられるといいですね」

 https://www.hucyuucatv.com/umamusumenews/*******

 

 思わず出てしまったガッツポーズには理由があった。

 

 宝塚記念でG1・4勝目を飾ったファミーユリアンだが、

 ゴール時に小さくではあるがガッツポーズを見せた。

 常に謙虚な彼女にしては珍しい行為だったが、

 それにはレース中での出来事が深く関係していた。

 

 というのも、道中はメジロフルマーに激しく競り掛けられ、

 2人で1000m通過59秒1という、不良バ場にしては、

 異例とも言えるハイペースを刻んで逃げたのが原因だ。

 

 ファミーユリアンにとっては、メジロフルマーに絡まれるのは

 日経賞に続いて2回目。菊花賞の時は、大々的に逃げ宣言をして

 わざわざ他の逃げウマ娘を封じたくらいであるから、

 普段から温厚な彼女でも内心は腹を立てていたのかと思いきや、

 むしろ歓迎したのだという。

 

 厄介とは思いつつも面白いとすら感じたそうだ。

 ついてこられるものならついてきてみろ、との心境だったとか。

 

 だからついついテンションが上がってしまい、それに伴って

 ペースも上がり、気が昂ってのガッツポーズだったとのこと。

 実は日経賞でもそうだったんですよ、

 さすがにガッツポーズまでは出ませんでしたけど、と明かしてくれた。

 

 日経賞での日本レコードの裏には、こんな話があったわけだ。

 

 挙句には、レース後にメジロフルマーに向かって、

 「良いレースだった、ありがとう。また一緒に逃げましょう」

 と声をかけてしまったんだとか。

 

 メジロフルマーからの返答は聞かなかったそうだが、

 両者が再度顔を合わせたときの展開が気になるところだ。

 

 

:ktkr!

 

:そんなこと言ってたのか、リアンちゃん

 

:なるほど、そういうことか

 

:そりゃガッツポーズも出ちゃうよね

 

:唯一自分についてきてくれたウマ娘、かあ

 

:取材元どこかと思ったら、府中CATVやんけ

 

:さすがの取材力

 

:探したけどウマ娘ニュースには載ってないやん

 独占スクープやな

 

:これからもついていくぜ府中CATV!

 

:ウマ娘放送局にも期待

 

:これを聞いたメジロ側は何を思うか

 

:現状じゃ一方的な矢印だが、はたして?

 

:聞かなかったのか、聞けなかったのか

 

:あの困惑顔が象徴してないか?

 

:ぜひとも受けてもらって、高速逃げコンビを結成してほしい

 

:受けたらもれなく自分が死にますけどね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上半期の総決算、宝塚記念を無事に勝利することができた。

心配してた道悪でも、特に何事もなく終わったし良かった良かった。

 

6バ身差の圧勝ならば、タマちゃんにも怒鳴られなくて済むだろう。

大手を振って帰れそうだ。

 

あとは夏休みを待つだけだよね~と思ったら、

期末テストが残ってたよねの巻。

そういえば俺たちはまだ学生だった。学生のつらいところよ。

 

宝塚と言えば、10着に沈んだスターオーちゃんは大丈夫だろうか?

 

故障でもしちゃったかと思って焦ったが、レース後に話してみた限りでは、

少なくともレース中に何かがあったというわけではないらしい。

となると、道悪が堪えたか、考えたくはないけど、衰えか。

 

ウマ娘の全盛期は、人によっては、非常に短いこともある。

本人もすごく落ち込んじゃってたんで、あまり話せなかったこともあって、

もし後者の可能性だったらとても悲しい。

 

お互い春はこれで終わりだろうし、秋シーズン、

また一緒に走れることを願うばかりだ。

 

あ、そうそう、話しておくべきことがもうひとつあってね。

取材対応もそこそこに、宿舎に戻った俺を待っていたのは……

 

数人の白衣を着込んだ人物たちだった。

 

誰だ、何事かと思ったが、なんてことはない。

俺の身体を心配したスーちゃんが手配した、医療関係のスタッフさんだった。

よく見たら、例の研究所の人もいた。

 

さすがにこの場での診断はできないので、明日は朝イチで東京に帰って、

その足で研究所に行って診てもらうことに。

学園に戻るのはそのあとになる、とはスーちゃんの弁。

もしかしたら欠席することになるかもしれないから、すでに連絡は済ませているとのこと。

 

さすがはスーちゃん、手回しが速い。

でも事前に少しくらいは知らせておいて欲しかったかな、

なんて思うのは贅沢なんだろうな、うん。

 

前回の道悪からは脚部不安を発症しちゃったから、

念には念を入れて対応しようってことなんだろうね。

 

大変ありがたくはあるんだけど、仰々しくはしてもらいたくない、

腫物を触るような対応にはなってほしくないとも思う。

心配してもらっているのは当然わかるし、無理ないことだとも思うけど、

そこはやはり、俺だけの特別対応っていうのは気が引けてしまうわけで……

 

まあスーちゃんと相談かな?

 

スタッフさんの中には凄腕のマッサージ師さんもいて、

全身くまなくほぐしてもらいました。

 

すごくきもちよかったです、まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸い、前回の道悪後のような後遺症が出ることもなく、

期末テストも好成績で終えて、本当に夏休みを待つばかりとなったころ。

 

「リアン、悪いんだが、明日の放課後、

 生徒会室まで来てもらえないか。話をしたい」

 

ルドルフが部屋に帰ってきて早々、こんなことを言い出した。

 

「ああもちろん、トレーニングが終わってからで構わない」

 

「いいけど、何の話?」

 

「相談があるんだ。詳しくは明日話すよ」

 

「わかった」

 

ルドルフから相談? なんだろうな?

 

生徒会室でということは、生徒会関係だろうか。

でも役員でもメンバーでもない俺に来るということは、

簡単な話じゃないという気もする。

 

少しの嫌な予感が頭をよぎりつつも、承諾した。

生徒会からの、それもルドルフからの頼みというなら、

断るわけにはいかないしな。

 

「ん~、夏合宿前で出走予定も特にやることもないし、

 5時前には行けると思うよ」

 

「助かる。頼んだよ」

 

調子を整える程度に軽く走るくらいだからな。

1時間もあれば余裕で終わる。

それから着替えて向かうとなれば、うん、やっぱり5時くらいか。

 

お互い頷きつつ確認して、その日はそれで終わり。

 

で、翌日、放課後。

 

「ファミーユリアンです」

 

『開いているよ』

 

「失礼します」

 

予定通りにトレーニングを終え、生徒会室のドアをノック。

返事を確認してからドアを開け、中へと入る。

 

奥の執務机にルドルフの姿を確認。

室内を見回してみたが、他の役員の姿はなかった。

 

「来たよ」

 

「ああ、わざわざすまないな」

 

一声かけると、PCに向けていた視線を外し、

こちらを見て微笑んでくれた。

 

「他の人は?」

 

「今日は私だけだ。君と話をするからな」

 

「そっか」

 

「まあ座ってくれ。今お茶を淹れる」

 

「生徒会長自ら申し訳ないね」

 

「なに、造作もないことさ」

 

自室でのやり取りのように軽く挨拶を済ませ、

応接セットのソファへと腰を下ろす。

 

しばらく待っていると、お盆に湯飲みを載せたルドルフがやってきて、

お茶を双方に置くと、ルドルフも向かいへと座った。

 

生徒会室に来るのも久しぶりだな。

一時期は、毎月のように呼ばれていた時期もあって、なんだか懐かしい。

そんなことを思いながら、お茶をすすった。

 

「で、話って何かな?」

 

「ああ、その件なんだが、日を追うごとに、

 生徒会への要望が増えてきていてな」

 

「要望?」

 

どんな要望が来ているってんだ?

それが俺に何の関係があるんだってばよ?

 

「主に中等部の子たちからなんだが、

 君に色々な悩みや相談事を聞いてほしいというんだ」

 

「……は?」

 

一瞬だけど、本気で自分の耳を疑ったよ。

マジのマジで全く予想していないことだった。

 

「なに? 悩み相談? 私に?」

 

「ああ」

 

「……どういうこと?」

 

いや、マジで意味が分からない。

どういう経緯でそんな声が集まることになったのか。

そして、相談相手がなんで、よりにもよって俺なのか。

 

「サクラスターオーやタマモクロス、と言えばわかってくれるだろう?」

 

困惑して聞き返すと、苦笑したルドルフがそう切り返してきた。

 

スターオーちゃんとタマちゃん?

えーと……もしかして……

 

「衆人環境で色々と話していれば、それは筒抜けだろうさ」

 

「……あー」

 

さらに苦笑度合いを増して言ってくるルドルフ。

 

確かに、彼女たちと色々話していたのは主にカフェテリアだった。

そこで彼女たちの悩みを聞いたり、時には励ましたり、

良い先方を紹介したりしてましたわ~。

 

周りにしっかり聞かれちゃってたのね(汗)

 

「君のことだから知らないだろうが、

 君は下級生たちからは絶大な人気だぞ。

 優しくて頼りになる素敵なお姉様、だそうだ」

 

「マジで?」

 

「ああ」

 

「……まじかぁ」

 

大マジにそんなことになってるんか……

まさかまさか、どこぞの百合ものゲームみたいな展開になってるなんて、

夢にも思ってなかった。

 

「まあ話を聞かれていたことに加えて、

 先述した2人が、いろいろと吹聴して回っているようだがな」

 

「何してくれちゃってるの……」

 

おいおいおい~、スターオーちゃんにタマちゃんや。

自分が少し良い思いをしたからって、それを言い触らすのはどうなのよ?

 

スターオーちゃんとの様子は、動画も上げちゃってるから仕方ないとしても、

タマちゃんとの一連のやり取りは一応、

あんまり大っぴらにできることじゃないと思うんだけどなあ。

 

「特にタマモクロスの威力が大きいようでね。

 彼女、新入生だった上にああいう性格だろう?

 話が広まるのは早かったし、言っては何だが、

 新入生ごときがそうなら自分も、となるのは自然だろう?」

 

「……そうだね」

 

「生徒会としても、もう無視はできないところまで来ていてね。

 これを見てくれ」

 

そう言って立ち上がり、執務机のほうから何やら段ボール箱を持ってくるルドルフ。

中にはぎっしりと紙が詰まっている。

 

「これらはすべて、君との面談を望む要望書だ。

 悪いが拒否権はないと思ってくれ」

 

「……ウソでしょ」

 

つまり、中の紙の数と同じだけ、希望者がいるという事実。

 

あまりの事態に、スズカさんお決まりのセリフを漏らすしかない。

どうしろというのよ?

 

「どうすればいいの?」

 

「生徒会として、正式に相応の場を設けるから、

 相談希望の生徒たちの話を聞いてやってほしい」

 

「わかった」

 

「すまないな」

 

半ばヤケになって尋ねると、そんな答えが返ってきた。

もう受け入れるしかない。こら、謝りつつ半笑いになるのはやめろ。

 

というわけで、今度の土曜日に、

『ファミーユリアンのお悩み相談室』が開かれることが決定した。

……自分で言うのは猛烈に恥ずかしいぞ、これ。

 

「これもトップスターの避けては通れない道だ。頼んだよ」

 

だから、笑いながら言ってくるのはやめい。

はあ、まったくやれやれだぜ。

 

夏合宿前の貴重な休日だから、いろいろ予定を入れようと思ってたのに。

たとえば? えっとー、ほら、チャリティ関連のイベントとか?

冬と夏にしかできないじゃん?

 

え? 外のことよりまず内側からだろって?

アッハイワカリマシタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タマちゃんっ!」

 

「あっ」

 

翌日、登校時に運よくタマちゃんを発見。

もちろん即行で突撃した。

 

「先輩、堪忍なっ」

 

彼女のほうも状況は把握していたらしく、

逃げはせずに、先手を打って両手を合わせて謝罪してきた。

 

さては、生徒会から事情を聞かれでもしたかな。

 

「クラスの子に、先輩となに話してたんやって聞かれてもうてな?

 あまりにしつこいから、ちょこ~っと、ほんまにちょこっとやで?

 話したことを少し教えただけなんや。そしたら、あっというまに……」

 

「……はぁ、もういいよ」

 

すまなそうに謝るタマちゃんを見たら、なんだか怒る気が失せてしまった。

いや、最初から責めるつもりなんかなかったけども。

 

ただ、ほんの少し、()()させてもらうだけでね?

え? 全力全開(スターライトブレイカー)

 

何を言っているのかワカリマセンネ。

 

「それより、中等部の子たちが私のことを『お姉様』って

 言って慕ってるっていうの、本当なの?」

 

「何を言うてるんや?

 とっくのとうにわかってたんやろ?」

 

「は?」

 

「ウチが入学する前から、そうやったって話やで?」

 

「………」

 

ひとつ気になったこと確かめてみる。

そしたら、またひとつ、衝撃的な事実を認識させられてしまった。

 

「え? ウソやろ? マジで知らんかったんか?」

 

「……うん」

 

「マジか! 疎いにも程があるやろ先輩!」

 

「………」

 

だってね?

 

基本的には、ルドルフとかとしかそこまで親しくは話さないし。

みんなわかってくれると思うけど、あのルドルフの口から、

そういうことが出てくるわけがないし。

 

スターオーちゃんも、自分のことはよく話してくれるけど、

俺以外のお友達のこととか、周りのことはあんまり話してくれないから。

 

あれ? もしかして、俺って……

 

浮いてる?(滝汗)

年下の子からは、高嶺の花みたいな存在だって思われてる?

 

「先輩の経歴考えたら、そらそうなるやろ……」

 

申し訳なさそうにしていたタマちゃんが、ついには呆れだした。

 

「言うのはなんやけど、出自が出自やん?

 前から動画とかで顔は広く知られとるし、

 そんな先輩が魅せるレースでの雄姿に加えて、

 後輩にも優しいってなれば、そりゃもう憧れの的やで。

 学園のアイドルやな」

 

「そそそそれなら、もっと気軽に声かけてくれても……

 わざわざ生徒会に持っていかなくたって、直接――」

 

「アホかいな! やから憧れやって言うたやろ!?

 遠くから見てるだけでも満足なんや、女子っちゅうもんは。

 自分からは声かけにくいもんやで。相手からならともかくな」

 

動揺がもろに出て、舌が回っていない。

 

しかしタマちゃんよ、自分のことは棚に上げて、よく言うねぇ。

それも入学直後に、単独で吹っ掛けてきたのはどちらさんでしたかねぇ……

 

確かにそう言われてみれば、遠巻きに視線を感じることは時々あった。

でもそれは単に、レースとかでの露出が増えたからだと思ってたし、

いわゆる有名税みたいなものかと納得してたんだけどなあ。

 

「先輩、急に身体おっきくなったし、イベントやなんやの件で、

 前にも増して『お姉さん』感が出てきてしもうたからなあ」

 

「………」

 

「ここに来て爆発してもうたんは、そのせいやな」

 

まさかの弊害発生。

いや、好意的なものだから、害というのはさすがに傲慢か?

 

「ウチが言うのもなんやけど、ウチみたいなんと話してるのが増えたしで、

 もしかしたら自分らにもワンチャンあるかも、なんて考えたんとちゃう?」

 

「……そっかぁ」

 

しかし、女に転生して育つこと18年になるが、

いまだに乙女心っていうのはよくわからん。

 

中身が実質男の存在に、『お姉さん』感を求めるとか……意味不明だって。

 

なんかそんなゲームもあったような気がするな。

あれはどう見ても女にしか見えない『男の娘』だったけど、

学園一のお姉様ってみんなに慕われてしまうってやつ。

 

そんな状況に自分が陥るとは思ってなかった。

 

兎にも角にも、お悩み相談室するしかないってことね。

……はぁぁ、やれやれだぜ。本当にもう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日、相談室当日。

 

談話室を宛がわれたので、とりあえず最初の相談者が来るのを待っている。

今日は1日相談に乗る予定で、1人10分の持ち時間で、

昼休憩を挟んで夕方まで、出来るだけ大勢の子の話を聞く、って感じ。

 

時間が短いので、質問相談はひとつだけ。

延長はなし、満足できなくても逆恨みしない、という条件らしい。

 

それでも残念ながらあぶれてしまった子の相談は、また後日ってことになるようだ。

2回目があるの? マジかよぐえー。

 

2回で済めばいいね、とはピロウイナー副会長の弁。

マジで勘弁してくれ。

 

 

――コンコン

 

 

「はい、どうぞ」

 

「し……失礼します」

 

控えめにドアがノックされたので、返事をする。

するとゆっくり扉が開いて、1人目の相談者が現れた。

 

「ようこそ、ファミーユリアンのお悩み相談室へ」

 

「は、はい」

 

ぐわー、自分で言ってて猛烈に恥ずかしい。

だけどもう、勢いで突っ走るしかないわけよ。

 

「どうぞ座って」

 

「失礼します……」

 

着席を促して、座る様子を眺めながら、

机を挟んだ対面の相談者を改めて観察してみる。

 

大柄で、鮮やかな金髪ロングのかわいい子だ。

その見事な容姿は、モデル業でもやっていけるのでは、と思わせるほど。

スタイルも抜群によさそうである。

まだ入学してきていないゴールドシチーみたいだ。

 

それに、えっらい大人びた子だな。

年下だとは思えないくらいの雰囲気を感じる。

 

しかしその恵まれた体躯とは裏腹に、少々気弱な感じも受けた。

緊張してるせいかな?

 

「緊張しないで、って言っても無理かな」

 

「お、恐れ入ります」

 

「まずはお名前を聞かせてもらえるかな?」

 

「は、はい。中等部トウショウファルコっていいます。

 まだデビュー前です。よろしくお願いしますっ」

 

自己紹介して、ぺこっと頭を下げたこの子。

 

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

 

初っ端からネームド来ちゃったー!?

それも、つい今しがた名前を出したシチーと双璧をなす、

グッドルッキングホースじゃないか!

 

もう1人の『ファル()』が来てしまった。

あわわ、一大事だ!

 

……いかん、俺のほうが慌ててしまってはまずいな。

ここは努めて冷静に、年上の頼れるお姉さん感を前面に押し出していかないと。

 

「ファルコちゃんね、ありがとう。それで、悩み事は何かな?

 時間がないし早速聞かせてもらえるかな」

 

「はい、その……私、足の踏ん張りが効かなくてパワーが出ないみたいで。

 それに、爪が弱くてしょっちゅう割れてしまって……

 選抜レースでも成績を挙げられなくて困ってます」

 

はい、そのー、なんて言いますか~……

いきなりガチな相談来ましたねぇ!?

 

ウソでしょ……

せめて最初くらいは、もう少しマイルドなことにしてほしかったよ。

 

「ファミーユリアン先輩も、失礼ながら、

 最初は強くなかったと聞きました。

 どうやって強くなられたのか、ずっと聞いてみたくて……

 練習のコツとかあったら、ぜひ教えてくださいっ!」

 

そう言って、再び頭を下げたファルコちゃん。

 

まあ、うん。選抜レースでオール最下位取るくらいには強くなかったね。

そんな俺が言えるのは、そうだな~……

 

「足の踏ん張りが効かないんだったね?」

 

「はい」

 

「だったら、障害走とか試してみたらどうかな?」

 

「障害、ですか?」

 

「うん」

 

脚部不安で暇だった時期に読み漁ってた本に、

トレーニング論の本があったんだよね。

その中に、足元が弱いとはまた別の意味の、

『足が弱い』子に対する指導法が載ってたんだ。

 

今のファルコちゃんの悩みにも合致してると思う。

 

「それって、ハードルとか、そういう……?」

 

「そうそう。やってみたことはある?」

 

「いいえ、ないです」

 

「そっか、じゃあぜひ試してみて。

 ジャンプ力を鍛えて、特に膝下の筋力の強化を意識してみると、

 バランスが良くなるかもしれないよ」

 

「ジャンプ……膝下……」

 

俺がそう言うと、ファルコちゃんは何やら考え込み始める。

 

踏ん張りが効かないっていうのは、要はバランスが悪いってことだと思う。

ある点では力が入っても、他の点では入らないってことだから。

下肢の筋肉を鍛えれば、多少はマシになってくれるんじゃないかな~?

 

大きな筋肉である太ももやお尻に目が行きがちだけど、

脛やふくらはぎも鍛えることが重要。

特に、トレーナーが付く前の新入生が陥りやすい錯覚ではなかろうか。

 

デビュー前だというし、まだトレーナーがついてないんだろう。

教官もいるけど、それだと限界があるからね。

 

俺も最初は、坂路ばっかりやって、

バランスを悪くした末の骨折だったと思うわけよ。

もちろん疲労もあったと思うけど。

 

なんて、聞きかじりの知識を当然のことのようにして諭していくスタイル。

 

上手くアドバイスできたかな?

思い当たることが少しでもあってくれればいいんだが。

 

「わかりました、ありがとうございます!」

 

少しの間だけ考えて、顔を上げたファルコちゃん。

パアっと輝いている。

 

どうやら上手く踏ん切りがついてくれたみたいだな。

さっきまでの沈んだ表情とは大違いだ。

うん、よかったよかった。

 

「すごく参考になりました。さっそく試してみます!」

 

そう言って、ファルコちゃんは笑みを浮かべて退室していった。

笑顔の美少女というのは、それだけで存在価値があるというものだよ。

 

俺も気分が良くなった。

さあさあ、張り切って次の相談に参りましょうか。

 

 

 

 

 

午後5時。

 

「つ……疲れた……」

 

「おつかれだ」

 

ようやくにして、相談室が終了。

終わりを告げにやってきてくれたルドルフが労ってくれるが、

言葉だけじゃ非常に物足りない。

 

肉体的には疲れてないが、精神的にはものすごく疲弊した。

他人の悩みを聞くって、こんなに疲れるものなんだな……

 

今日だけで、いったい何人の相談を受けたんだか。

途中までは数えてたけど、いつしか面倒になってやめてしまった。

 

まあ俺のことはいい。

相談に来てくれた子たちの悩み事は、上手い方向へ向かってくれるだろうか。

 

「相談を終えた子たちにアンケートを取ったんだが、

 総じて好評のようだから、安心していい」

 

ルドルフがこう言うので、少しは安心した。

 

「まだ相談したい子がいるようだし、

 ぜひとも2回目をお願いしたいところだな」

 

「うげ~……ウソでしょ……」

 

「あの子たちには聞かせられないセリフに、

 見せられない姿だな」

 

机に突っ伏してしまう俺に、苦笑するルドルフ。

そんなこと言うなら、俺にも心の安らぎをくれよ~。

 

「リアン、身体を起こせ」

 

「……ん?」

 

「ほら」

 

「ん……」

 

ルドルフの言うことに従って上体を起こすと、

歩み寄ってきたルドルフに、正面から抱きすくめられた。

座っているので、胸元にすっぽりと収まる格好になる。

 

すぐに彼女のぬくもりと良い匂いに包まれて、脱力してしまう。

 

「これがご褒美では不満か?」

 

「……もう少し」

 

「仰せのままに」

 

「………」

 

なんというか、ね……

 

やっぱり心の奥底というか、本能的なところでは、

こういうものというか、母性的な接触ということに飢えているのかなと、

数々の出来事からそう思うようになった。

 

今だって、ほら、無防備な姿を晒しちゃってるし。

いつまでもこうしていたいと思ったりしてるし。

 

つくづくルームメイトがルドルフで良かったと思うよ。

部屋に戻れば、甘えたい放題だからね。

……スーパークリークの登場が少し怖い。

 

だけど、今はもう少し、この幸せを堪能させてもらうとしよう。

 

 

 

 




ルドルフママ?(違



おかげさまで本日をもちまして、
本作を投稿してちょうど1年が経ちました。

ここまでがんばってこられたのも、読者の皆様のおかげです。
引き続きよろしくお願いいたします。



2周年情報多すぎてワロスw
カツラギエース登場はうれしいけど、想定してた性格と全然違いそうでやばい。
何より社台解禁がやばい!

シービー天井でした(´・ω・`)

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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