「ファミーユリアンさん、申し訳ございません」
お話がありますと言われて、移動した先のカフェテリアで、
席について早々の開口一番で謝られた。
戸惑っていると、話の相手、メジロフルマーちゃんはさらに続ける。
「大阪杯との両睨みで調整してきたのですが、
私は日経賞に出走することになりました。
ですのでご一緒できません。ごめんなさい」
そう言って、頭を下げたフルマーちゃん。
何事かと思ったら、そういうことか。
別に悪く思う必要なんかないのにね?
ローテなんか個人の都合で変わるものだし、
彼女の場合は特に、家とかの事情もあるんだろう、たぶん。
「付け加えれば、天皇賞も私には距離が長すぎるので、
出走しません。ご了承いただければ、と……」
申し訳なさそうに言うフルマーちゃん。
いやいや、全然気にしないってば。
フルマーちゃん、微妙な距離適性してるからなあ。
2000だと短い、3000以上だと長すぎる。
2200~2500という、クラシックディスタンス*1にピンポイントな感じ。
メジロ家にとって、天皇賞は最優先目標だろうに、
そう決断したのも並大抵のことではないと思う。
「大丈夫、了解したよ。
全然構わないから気にしないでね」
「本当に申し訳ないです」
「いやいや。わざわざありがとね」
律儀な子だよ、まったく。
こちらから感謝を述べると、何度も頭を下げて、
申し訳なさそうに去っていった。
名家のご令嬢の面目躍如と言ったところだろうか。
俺との約束、そこまでこだわらなくてもいいのになあ。
むしろ彼女の重荷になってしまってないか心配だ。
ちなみにフルマーちゃんのこの春のローテーションは、
日経賞、目黒記念、宝塚だという話。
阪神レース場でまた会いましょうって言ったら、うれしそうに頷いていた。
さて、後輩たちの話ばかりしてきたが、
ここからは俺自身の話。
今年の初戦、大阪杯が目前に迫った。
そんな折に、スターオーちゃんが退院するという知らせが届く。
レースも大事だが、スターオーちゃんのことも大事。
スーちゃんに頼んで、退院する日だけはトレーニングを休ませてもらい、
病院へ直行。退院に立ち会うことにする。
そして、大阪杯前週の土曜日。
「リアン先輩、レース前でお忙しいのにすみません」
車椅子で病院を後にしたスターオーちゃん。
半年近くに及んだ入院生活。
いまだ自力歩行は困難な状況だが、焦らず腐らず、
自分のペースでリハビリ頑張ってほしい。
今後は、学園に登校しつつも例の研究所へ通うそうだ。
「チヨちゃんも、トレセン学園の入学控えて忙しいでしょうに、
来てくれてありがとうね」
「全然構いませんよ~」
申し訳なさそうに言うスターオーちゃんの車椅子を押しているのはチヨちゃんだ。
親御さん*2を差し置いて、私に押させてくださいって自ら申し出て、
その大役を任されている。
そんなチヨちゃんも、来週、トレセン学園に入学するんだな。
「スターオーちゃんの退院と、チヨちゃんの入学、
両方同時というとあれだけど、お祝いできるように頑張るね」
「はい、期待してますね、先輩」
「きょ、恐縮です。がんばってくださいね!」
2人にそう言うと、スターオーちゃんはどこかからかい半分に、
チヨちゃんは真に受けて恐縮しつつも、激励してくれた。
スターオーちゃんが復帰するまで負けないと決めているけど、
ますます負けられないね。
皐月賞時のルドルフじゃないけど、
あれくらいのインパクトのある勝ち方しないと、
こりゃ2人に満足してもらえないかな?
というわけで、大阪杯である。
去年の宝塚以来、2度目の阪神コース。
2回目ということもそうだし、今度は良バ場なので安心安心。
出走メンバーはまあ代わり映えしないので、
またもや9割超の支持を得て俺が1番人気。
2番人気はシリウス。
相も変わらず不敵な笑みを浮かべていて不気味だ。
あいつも今年初戦になる。
3番人気は、年下ながら腐れ縁と化しつつあるマティリアルちゃん。
前走中山記念を制し、久しぶり勝利の余勢を駆って、というところ。
千八で再び勝てたことだし、次走以降はマイルに回るのかな?
さてパドックもそこそこに、本バ場に入場して発走を待つ。
今回残念なことに、大外も大外18番枠に入っちゃったんだよね。
これは本当に飛ばしていかないと、最悪ハナを取れない可能性もある。
まあほかの子がどう出るかは始まってみないとわからないし、
とりあえず全力で先頭を奪いに行きますか。
枠入り完了。
――ガッシャン
よしっ!
毎度のごとくタイミングばっちり!
『18番ファミーユリアン絶好のスタート!
猛然と飛ばしていきます』
『17人を引き連れて、ファミーユリアン先頭で1コーナーを回ります』
『さあ離した離した! 向こう正面へ向いたところで
もう8バ身くらいはあります』
『さらに離れていく勢い!
これは誰もついていく気がない、いや、ついていけないか!』
後続の足音が聞こえなくなって、しばらくたつ。
まもなく1000mのハロン棒だが……
……通過!
体感57秒半ばから後半くらい。
『前半1000mを57秒6で通過!』
『いまだかつてないほどのハイペース!
これぞファミーユリアンのレースです!』
『2番手以降を大きく離して3コーナーへ』
『しかしこの娘の真骨頂はまさにここから。
さあ、逃げて差す末脚を見せてくれっ』
『4コーナーを回ってファミーユリアン、圧倒的リード!』
観客の大歓声が心地よい。
これがすべて俺1人のために上がっていると思うと、
これ以上の喜びはないとすら思えてくる。
だけど最後まで油断は禁物。
この急坂にも気を抜かずに、しっかり走り切りましょうか!
『後ろは完全に沈黙した。
仁川の2000mはまさにこの娘のための独り舞台だ!』
『ファミーユリアン終始の独走で完全勝利!
今年もまだまだこの娘の天下です! 今ゴールイーンッ!』
『勝ち時計は1分56秒9! 2000mで1分56秒台が出ました!
ファミーユリアンまたもや日本レコード!
なんとなんと57秒台を一気に超えて56秒台に突入です!
これはまさにただ1人だけ、これぞ異次元!』
『まったくもって恐れ入りました! G1・7勝目!
これで手に入れていない王道タイトルは秋の天皇賞のみです!』
はい、勝ちました。
現実のウイニングランよろしく、スタンド前まで戻る時間が最高に気持ちいい。
永遠に味わっていたいと思うほどだよ。
『リ・ア・ンっ! リ・ア・ンっ!』
そして巻き起こるリアンコール。
応えるようにして両手を掲げ、観客に向かって振り続ける。
歓声は、係員のお姉さんに連れられて引っ込んでも、
しばらく聞こえ続けていた。
第33回大阪杯 結果
1着 18 ファミーユリアン 1:56.9R
2着 13 リクドラゴン 8
3着 12 マティリアル 1/2
11.5 - 11.0 - 11.5 - 11.8 - 11.8 - 12.2 - 12.1 - 11.6 - 11.5 - 11.9 1:56.9
4F 47.1
3F 35.0
G1勝利後恒例のインタビュー。
「大阪杯を制しましたファミーユリアンさんです。
おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「文句のつけようのない完璧な逃げ切りでしたね」
「はい、狙い通りの展開でした」
大外枠発走だったから、最初はちょっと勢いをつけすぎたかも。
まあだからこそのレコードだとも言える。
「1000m57秒6の超ハイペースも想定通りと?」
「想定内です」
体内時計ちゃんもほぼ完璧。
「G1・7勝目を飾るとともに、日本レコード更新も7回目です。
いかがですか?」
「ええと、まあ、我ながらよくがんばってきたなと」
G1を7勝。史実のルドルフと同じなんだよなあ。
そう思うと感慨深い。
日本レコードそんなに更新してたんだ?
正直言って時計にはそこまでのこだわりはないから、
あんまり気にしてなかったけど、
努力の結果が数字として残ってくれるのはいいよね。
「先日退院したサクラスターオーさんに、
良い報告ができそうなのでよかったなと。
それと、今年トレセン学園に知り合いの子が入ってくるので、
いい入学祝いにできそうで良かったです」
あの2人のことだから、一緒に見てくれてたかな?
今度みんなで祝勝会でもしようか。
「次は天皇賞ですね?」
「そうなります」
「史上初の連覇、期待してます」
「はい、がんばります」
「ファミーユリアンさんでした。
ありがとうございました」
「どうもありがとうござました」
インタビュー終了。
さて、ライブの準備もあるし、
あんまりのんびりともしていられないんだが、気になることがひとつ。
インタビュー中ずっと誰かの視線を感じていた。
いや、誰かじゃないな。
明確に視界の中にいるんだから、正体も何もあったもんじゃない。
シリウスだ。
今回、掲示板も外して13着と大敗したシリウス。
俺の記憶が確かなら、俺と一緒に走ったレースでは、
最低でも複勝圏内には来ていたと思ったんだけど、
これでその法則も崩れてしまったか。
「……ふん」
インタビューが終わったから、奴に視線を向けてみたんだけど、
何か言うでもなく、途端に踵を返して引き上げていってしまった。
この結果を見るに、有馬のときに言っていた、
引退するつもりだったというのも、間違いではないのかなと。
あのときはまた負け惜しみかと思ったんだけどさ。
秋風は確実に吹いてくる。誰にも平等に。
そう考えると、少し寂しくなった。
さあさあ、来たよ。来てしまったよ。
何がって?
まあまずは列挙しようか。
準備はいいか? 行くぞ?
サクラチヨノオー
メジロアルダン
ヤエノムテキ
スーパークリーク
サッカーボーイ
アラホウトク
バンブーメモリー
コスモドリーム
ダイユウサク
パッシングショット
……どう?
来ちゃったでしょ?
おなじみのメンツが大挙して入学!
それ以外にも見知った名前がちらほら。
そして、笠松にはきっとオグリが来てる。
チヨちゃんは当然として、アルダンとヤエノ、
バンブーあたりはいいだろう。
何がいいんだかはとりあえず置いておいて……
1番やばいのはスーパークリークだ。
シングレでは入学当初は幼い描写もあったみたいだから、
いきなりオギャられることはないと思うが、警戒はしておこう。
嫌な予感しかしないので、なるべくなら顔を合わせたくはない。
くわばらくわばら、だ。
「あっ、リアンさーん!」
入学式の直後、俺を呼ぶ声に振り返ってみれば、
元気な“わんこ”がこちらに駆け寄ってくる。
「こんにちは」
「おおチヨちゃん。入学おめでとう」
「ありがとうございます! えへへ」
へにゃっと微笑むチヨちゃん。
相変わらずかわいい。
思わず頭に手が伸びてしまいそうになって、さすがに自重した。
「いよいよだね。焦らず頑張ってね」
「はい、ありがとうございます、頑張りますっ!
それではこれで。またお会いしましょうっ」
元気よく頷いたチヨちゃんは、ぺこりと頭を下げて、
早くも友達ができたのか、数人の輪の中に戻っていった。
なんとも心和むんだけど、なんだかなあ。
俺って、入学式直後に声かけられるのが、毎年恒例になってない?
最近の若い子は度胸があるのう……
いま思い返してみても、当時の俺にはそんな真似は無理。
当時のトップウマ娘、えーと、俺らの入学前年に活躍した人っていうと、
モンテプリンス先輩あたりだろうか?
……ダメだな。とてもじゃないが、入学直後に
そんな彼女に単身で声掛けに行くって、絶対無理だわ。
まあいいんだけどね。
「チ、チヨノオーさんっ」
「はい?」
輪の中に戻ったチヨノオーは、入学早々できた友人たちに囲まれる。
「今のって、ファミーユリアンさんでしょ!?」
「2年連続年度代表ウマ娘の、
「レコード連発、異次元の逃亡者の、あのファミーユリアンさん!」
「そうですけど」
首を傾げるチヨノオー。
彼女には、新しい友人たちがどうしてこんなに興奮しているのか、
すぐには理解できなかった。
「し、知り合いなの!?」
「はい。ちょっと前に、とある関係で紹介していただきまして」
「そ、そうなんだ」
「随分と仲良さそうだったよね?」
「何回かお会いしてますし、良くしていただいてます」
「う、羨ましい……」
「あたしもファミーユリアンさんとお話してみたい……」
「……」
友人たちの反応に、思わずぽか~んとしてしまったチヨノオーだったが、
ここに来てようやくにして思い出した。
(そっか……仲良くさせてもらってたから忘れてたけど、
リアンさんってスーパースターなんだよね……)
友人たちの反応は、まるでハリウッドスターにでも出くわしたかのよう。
所属クラブの先輩だった人のおかげで、何回も会って普通に接していたから、
それほど凄い人だという感覚が、綺麗さっぱり抜け落ちてしまっていた。
(懐かしい。私も最初はそうだったっけ)
初めて会った時のことを思い出すのと同時に、
自分の初心も思い出すことができた。
(……スターオーさんの分も頑張らなきゃ)
そして、決意を新たにする。
「ねえ、サインお願いすることってできるかな!?」
「お話ししたいって頼んでみてくれない?」
「わかりました。今度お会いしたらお願いしてみますね」
「きゃー、ありがとー!」
「持つべきものは友達だよね!」
「ああほら、早く教室に戻らないとー」
大騒ぎする友人たち。
そんな彼女たちをなだめながら、教室への道を行くチヨノオーだった。
入学式が終われば、クラシックシーズンが開幕する。
第49回皐月賞。
トウショウファルコちゃんが出走だ。
本人もすごく前向きで調子も良さそうなので、
俺も意気揚々と応援に出かけたんだけど、
当日は弥生賞の時のような大雨で、またもや不良バ場。
しかも、その弥生賞を制したシエルアンバーは故障で回避。
スプリングステークスを勝ったブラックナルシスは短距離向きと考えられ、
稀に見る混戦模様を呈している。
出走18人のうち、なにせ重賞ウイナーが5人だけ。
そのうち3人はジュニア級での実績であり、年明けは未勝利。
そりゃ混戦になるよなあ。
結果、押し出される格好で、それでも実績では上位の
ドクターダッシュが1番人気。とはいえ支持率は20%に満たない。
2番人気は、道悪実績を買われたのか、ファルコちゃんである。
3番人気は、2勝しているものの、弥生賞では3着だった子。
やはり道悪実績のある子が支持を集めているようだ。
クラシック1冠目という皐月賞で、重賞未勝利のうえに
デビューからわずか2ヶ月の3戦目で2番人気に推されているという時点で、
本命不在の大混戦だというのがおわかりいただけるだろう。
それにしても、ファルコちゃんの目立つこと目立つこと。
長身ナイスバディに、あの鮮やかな金髪だもんなあ。
遠目に見ても際立ってよく見える。
『いやー、惚れ惚れするようなバ体ですなあ。
髪の色も相まって、こんな天気でも光輝いて見えますよ』
手袋も金色だし、勝負服にも端々に金が散りばめられている。
状態のほうも、解説の人がべた褒めするほどの仕上がり。
彼女の調子の良さも表している。
そうこうしているうちに、いつのまにやら雨はやみ、急速に雲が去って、
発走時刻を迎えるころには、すっかり晴れ間が広がっていた。
しかしバ場は回復せず不良のまま。
ファルコちゃんにとっては追い風か。
ゲート入りが始まり、滞りなく態勢完了。
『第49回皐月賞、スタートしました。
1番トウショウファルコ好スタート。外からブラックナルシス続いていきます』
『1コーナーを回って、トウショウファルコ先手を取りました。
1バ身差でブラックナルシス』
先頭2番手と同様に、3番手以降も等間隔で並んでいく。
バ群がバラけずに一団という態勢だ。
『態勢変わらず3コーナーへ向かいます』
そのままの状態で最終直線へと向かうかと思いきや、ここでアクシデント。
『おっと10番転倒しました。競走中止!』
バ群の中ほどにいた10番の子が転倒して競争を中止。
ぬかるみに足を取られでもしてしまったか。
雨はこれがあるから怖いんだ。……と経験者は語る。
後続はうまく避けられたようだが、はたして影響はどうか。
『先頭トウショウファルコ、ここでブラックナルシスを突き離した。
3バ身のリードで直線へ!』
4コーナー手前でファルコちゃんがスパート。
どうやら抜群のタイミングだったようで、後続は反応が遅れた。
さらにリードを広げていく勢いで直線に入る。
「行けぇーファルコちゃんっ!」
一般客に交じっての観戦であることを忘れ、
応援に熱が入って思わず絶叫してしまった。
これは、それほどの大チャンス到来!
『トウショウファルコ逃げる!』
『大外から15番! 内からはドクターダッシュ伸びてきた!
さらにウィニングクラブ突っ込んでくる!』
粘りこみを図るファルコちゃんに、バ場の内外から強襲者が現れる。
行けっ、逃げ切れ! もう少しっ!
『しかしトウショウファルコ!
半バ身差、逃げ切ってゴールインっ!』
後続の猛追を半バ身凌いで、栄光のゴール。
よぉおおしよくやったぁ!
やったなファルコちゃんっ!
『わずか3戦目でクラシックを制覇!
西日を受けて光り輝く金色のファルコ!
見事な逃げ切り、トウショウファルコですっ!』
第49回皐月賞 結果
1着 1 トウショウファルコ 2:05.0 不良
2着 18 ドクターダッシュ 1/2
3着 11 ウィニングクラブ 1/2
「勝利ウマ娘インタビューです。
皐月賞を制しましたトウショウファルコさんにお越しいただきました。
おめでとうございます」
「ありがとうございました」
お決まりの口上からインタビューは始まった。
ぺこりと頭を下げるファルコ。
「率直なお気持ちを聞かせてください」
「もう……言葉にならないくらい感無量です」
スタートからゴールまで先頭を守り通したがゆえに、
ファルコは顔も服もほとんど汚れていなかった。
不良バ場のレースで、これは奇跡的なことである。
ちょうど西日が当たるようなロケーションでもあったため、
キラキラと光る髪が、まるで後光が差しているかの如し。
「弥生賞と同様の不良バ場になりました。
自信はありましたか?」
「はい、少なからずありました。
アンバーさんがいなければ、1番得意なのは私だと」
「実力も伴っていたのだと証明しましたね?」
「だとしたらうれしいです」
自信が確信に変わっての会心の笑み。
その美貌もあって、周囲を納得させるだけの説得力を醸し出している。
「前走同様に逃げました。作戦通りですか?」
「その通りです」
「仕掛けのタイミングも抜群でしたね?」
「上手く嵌まってくれました。
我ながら会心の出来だったのではないかと思います」
「これで今年のクラシックは、あなたを中心に回っていくでしょう」
「改めてそう言われますと、すごい重圧がのしかかってきますが、
プレッシャーを力にできるようにしたいですね」
受け答えも非常にしっかりしている。
大レースを勝った直後とは思えないほどの落ち着きだった。
「この勝利を、誰に1番伝えたいですか?」
「家族はもちろんのこと……」
それまでスムーズに返していたファルコが、ここでいったん言葉を切った。
逸る気持ちを落ち着けるように、2度3度と深呼吸してから、こう続けた。
「ファミーユリアンさんにお伝えしたいです」
「ファミーユリアンさんに? どういうことでしょう?」
「それはですね――」
「あ、申し訳ありません。時間が来てしまいました」
「……あ、はい」
ファルコが答えようとしたところで、
テレビ局側とURA側の双方とで時間が来てしまった。
全国の視聴者がなんだよと思ったことだろう。
「ダービーでも期待しています」
「がんばります」
「トウショウファルコさんでした。以上です」
今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー
(大阪杯リアルタイム視聴組の反応)
:大外発走がどう出るか
:他に目立った逃げウマいないし大丈夫ちゃう?
:いたとしても、絡んでいくのはメジロフルマーだけだから
:そのフルマーも先週の日経賞、余裕で逃げ切ったからなあ
:「G2番長」*3の称号が付きそうだ
:G1でも好走してるんだからそれはない
:圧勝だったしな
:去年エリ女に見向きもせずにアルゼンチンに出たの草
出てたら勝ってただろうよ
:有馬意識したんだろうな
:リアンちゃんにまっしぐらだなw
:脳を焼かれてしまったか
:さあスタートや
:いつもの
:いつもの
:安心と信頼のスタート
:ホント秋天はなんだったんや
:弘法も筆の誤りというだろ?
:さて前半のペースは……
:57秒6!
:はええ
:そりゃついていきたくてもついていけないわ
:いやー離れたなあ
:ここからさらに伸びるのがリアンちゃん
:強すぎる
:まだまだ世代交代なんかさせないぜ!
:1分56秒9!!
:一気に56秒台まで行ったか
:激しく今更だけど、なんなのこの娘(誉め言葉
:57秒台でも前人未踏*4だったのに……
:あれだけ飛ばして、後半も60秒切ってくるのは
もう化け物も化け物の領域なんよ
:実況「これぞ異次元!」
ほんとそれ
:G1勝利数もルドルフに次いでの7勝目
:日本ウマ娘レース史上の1位2位が同世代って、
改めて考えるとものすごいな
:こりゃ今年中に、ルドルフの記録も抜くんでない?
:王道皆勤を宣言してるから、秋天で並んで、
JCで11勝目を挙げて記録更新か?
:まあ待て、逸る気持ちはわかるが落ちつけ
:まずは春天と宝塚勝たなきゃ
:しかしライバルらしいライバルもおらんし
:一発あるとしたら次の天皇賞じゃないか
去年も割とギリだったし、
よりステイヤー適性の高い子がいたらわからんかも
:そんな奴いるか?
:去年のステイヤーズとダイヤモンドSを連勝してきた
スルーオダイナとか?
:確かに長距離適性だけなら上かもな
:前走、阪神大賞典でも失格とはいえ
ハナ差の2着だったし
:3000以上で実質3連勝の実績か
:とはいえシリウスシンボリのあの脚でも差せなかったんだ
そのへんのパっと出の子に負けるとは思わんし思えん
:前途洋々そうで何より
:スターオー退院したのか、よかったな
:あの子にとっては、何よりの退院祝いだろう
:知り合いが入学? 誰だ?
:リアンちゃん関係者がまた増えるのか
:いつだかのリアンちゃんのブログに、
スターオーのお見舞い行きましたって件で写真アップされてたけど、
そのときに見慣れない子が写ってたことあったな
その子か?
:この写真の子か?
https://www.umablog.com/*******
:そうそう、この手前に写ってる子
:かわいい
:一緒にお見舞いしてるってことは、
スターオー関連なのかしら?
:とするとヴィクトリー俱楽部の後輩かな?
:見かけの年齢的にもそれっぽい
:まあいずれ明らかになるだろうし、
どんな子なのか、今から楽しみだな
(皐月賞の結果を受けて)
:トウショウファルコ美しい……
:ふつくしい……
:新たな逃げのスター誕生か?
:デビュー3戦目でこの走り、資格は十分
:何よりこの容姿よ
:スター性は抜群だな
:不良のレースでこれだけ汚れてないのも運命を感じる
:西日に金髪が映えるのう
:キラキラだあ
:リアンちゃん以外に推しができてもいいよな? な?
:この年でよう落ち着いとる
:ファッ? いまリアンちゃんって言った?
:リアンちゃんに感謝?
:なんだ?
:おおい
:ちょっ
:いいところで打ち切りやがって……
:そこは続けろよぉ
:この子もリアンちゃん関連なんか?
:そのようだな
:スターオーをはじめとして、後輩にも慕われるリアンちゃん
:くそっ、どういう関係なんだ!
:「ファミーユリアン先輩は私の大恩人なんです」
https://www.umamusumenews.com/*******
皐月賞勝利後のインタビューで、感謝を伝えたい人物に、
家族と並んでファミーユリアンの名前を挙げたトウショウファルコ。
肝心のインタビューがそこで打ち切られてしまったので、
その真相は聞けずじまい。気になっていたファンも多いことだろう。
突撃取材の結果、判明したことを余すことなくお伝えする。
両者の出会いは去年の夏で、トレセン学園内の行事として、
稀代の強者ファミーユリアンに悩み事や相談したいことを
打ち明けるというイベントが開催された。
その席で、なかなか結果が出ないことを相談したトウショウファルコ。
走りのバランスが悪くパワーが出ないと聞いたファミーユリアンは、
その場で具体的な解決策を見出してくれたという。
以後アドバイス通りにトレーニングに励んだ結果、
バランスの悪さは解消され、タイムは伸び、レースでも結果が伴うようになる。
わずか3戦で弥生賞2着、皐月賞勝利と、誰もが認める結果を出したのだ。
それまでは学内のレースでも入着が精いっぱいだったというから、
ファミーユリアンがしたというアドバイスの正確性は疑うべくもない。
「大変感謝しています」とトウショウファルコ。
あの企画がなかったら今の私はないと断言し、大恩人とまで言い切った。
どうやらファミーユリアンの才能は、走りだけではないようだ。
彼女に相談したのはトウショウファルコ以外にも多数いたそうなので、
今後の活躍バの中に、ファミーユリアンのアドバイスを受けた子が
どれだけ出てくるのか、期待は尽きない。
:ほほお
:おほー
:これはすげえ
:リアンちゃんそんなことまでしてたのか
:その場でアドバイスできるのはすごいな
しかも、大的中だって言うんだから
:リアンちゃんの助言がクラシックウマ娘を誕生させた!
:チャリティ活動といい、後輩への指導といい、
リアンちゃんの才能多岐にわたりすぎだろ
:これは慕われますわ、間違いない
:スターオーに続いて、リアンちゃん教の信奉者が……
:同じ逃げウマ娘というのがまた
:逆だろ?
リアンちゃんに憧れているからこそ、逃げるんだ
:これは、逃げ娘たちに一大派閥が形成される予感
:逃げウマ娘ブームが来そう
:逃げ志望の子が押し寄せそうだな
ドクタースパートさんごめんね。
そして、ウィナーズサークルさんにも先に謝っておきます。
史実ブレイクでごめんなさい。
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
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ドバイワールドカップ
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ドバイシーマクラシック
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ガネー賞(仏)
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クイーンエリザベス2世カップ(香港)
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アメリカ遠征