転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第68話 孤児ウマ娘、後輩たちのダービー

 

 

 

時間が前後して悪いが、大阪杯の前日の土曜日。

タマちゃんが2戦目のアザレア賞を迎えた。

 

阪神2400mなので、俺とタマちゃんは、

同時期に関西へ遠征していたわけだ。

しかし移動や宿舎で一緒になるなんてことはなかった。

 

え? スターオーちゃんとは一緒だっただろって?

彼女の場合が特別だっただけだよ。

 

普通は、遠征の車中で相席したりしないんだって。

ましてや一緒のレースに出るわけでもなく、

そもそも学年もクラスも違うんだからさ。

 

それはともかく、結果がどうだったかといえば、

またもや後方から追い込んで見事に1着。

しかも、メンバー中での最速の上がりを記録して、

2着に4バ身の差をつける圧勝だった。

 

遠征からの帰還後に、俺の大阪杯勝利と合わせて、

2人でカフェテリアにてささやかな祝勝会を開いた。

 

「おめでと~」

 

「おめでとさんや~」

 

まずはニンジンジュースで乾杯。

タマちゃんの笑顔が眩しい。

 

「しっかしまあ、先輩は相も変わらず圧勝やったなあ」

 

「タマちゃんこそ、追い込んで4バ身差の圧勝じゃない」

 

「ウチなんてまだまだや。見てみぃ」

 

そう言って、タマちゃんが見せてきたのは今朝の新聞。

 

「野球押しのけて1面でっかく先輩やで。

 『日本レコード圧勝! まさに異次元の1分56秒台突入!!』やって。

 ほんま羨ましい限りや。ウチも1面飾れるようになりたいわぁ」

 

「恐悦至極。でもね」

 

派手な見出しとともに、ゴールした瞬間の俺の写真がでかでかと載せられている。

プロ野球を差し置いての1面には、我ながら誇ってもいいかなとは思う。

 

しかし俺も負けじと、別のスポーツ紙を取り出した。

 

「タマちゃんも、小さくだけど載ってるよ。見て」

 

「え、ホンマか?」

 

「ほら、ここ。アザレア賞、4バ身差圧勝タマモクロス。

 ダービー目指す宣言、白い稲妻炸裂や! だってさ」

 

「いやー、あの記者さん、書いてくれたんやなあ」

 

しっかり取材受けているじゃないかタマちゃん。

自分で言っていたように、本当に売り込んでたんだね。

 

「切り抜いて保存しとこ。先輩、もらってもええか?」

 

「いいよ」

 

「おおきに」

 

スクラップブックでも作る気か、タマちゃんよ。

俺が差し出した新聞を、嬉しそうに受け取るのを見てほっこりする。

 

そういや、院長もそういうの作ってるって言ってたなあ。

俺が載ってる新聞とか雑誌の記事、かき集めてるとかなんとか。

そんなところにまでお金使わなくてもいいのに。

 

恥ずかしいことこの上ないので、実物は見たことない、

というか見せてこようとしても断固拒否するけど。

 

「次は青葉賞でしょ?」

 

「当然やな」

 

そう尋ねると、タマちゃんは力強く頷いて見せた。

 

「身体のほうは大丈夫?」

 

「それが、自分でも恐ろしいくらいに軽いんや。

 さすがに2戦目で疲れるんとちゃうかな~って思ってたんやけどな」

 

「そう。何よりだけど、そういう時こそ危ないから、一応気を付けてね?」

 

「わ~っとるって。身体のケアはトレーナーからも

 口酸っぱく言われとるし、研究所のチェックも入るんやから」

 

研究所も上手く機能してくれているようで何よりだ。

紹介した身としてはうれしくなるね。

 

「先輩のほうこそ大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ。そこまでやわじゃないってば」

 

「2回も骨折してるくせによう言うわ」

 

それを言うなって。

あの頃は俺も若かったんだよ。よく言うじゃないか。

若さゆえの過ち、って。

 

現実に、葉牡丹賞後の脚部不安が治って以降は、

まったくと言っていいほど問題は出てきてないんだからさ。

 

最近はルドルフもシンボリ家の皆さんからも、

あんまり言われなくなってきているが、

新しく小うるさく言ってくる人物ができてしまったか(苦笑)

 

まあ心配してもらえるうちが華だよね。

 

「青葉賞は見に行くからね、がんばってよ」

 

「おう、先輩が見に来てくれるなら百人力や。

 もう勝ったも同然やな!」

 

激励すると、タマちゃんは豪快に笑い飛ばして見せた。

 

タマちゃんが青葉賞を勝って、ダービーへ。

ファルコちゃんが皐月どうなるかわからないけど、

2人揃ってダービーに出てくれれば最高だね。

 

あ、その前に、俺も天皇賞があるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ひとつ失念していた。

 

青葉賞の日程、天皇賞の前日だったのよね。

その日、俺は京都入りしているわけで。

 

つまり、現地には行けない。

開催日程を把握していなかった俺のミスで、ぬか喜びさせちゃったなあ。

 

気付いてすぐに謝罪したんだけど、勝ったら何か奢ってや、

の一言で済ませてくれたタマちゃんには大感謝。

 

というわけで、タマちゃんの青葉賞、

京都の宿舎の部屋でのテレビ観戦です。

 

『ダービートライアル、G2青葉賞、まもなく発走です』

 

画面に人気順が表示される。

 

1番人気は、オープン戦のすみれステークスで3着だった子。

タマちゃんは彼女に次ぐ2番人気に支持された。

 

『各ウマ娘、一斉にスタートしました。綺麗なスタート』

 

出遅れなどはない。

タマちゃんも普通に出て、過去2戦と同じく、後方へ。

 

レースは、1000mを61秒5で通過する淡々としたペースで進み、

タマちゃんは後方に控えたまま最後の直線に向いた。

 

『大外から6番とタマモクロス、並んで脚を伸ばす!』

 

『残り200』

 

『タマモクロス、6番を振り切ってさらに伸びる!』

 

『デビューから3連勝でダービーへ!

 タマモクロスやりました。白い稲妻タマモクロスです!』

 

そこから末脚を爆発させたタマちゃん。

一緒に伸びてきていた6番を競り落とした挙句、

さらに伸びて3バ身差の勝利である。

 

最後の1ハロンの伸びは、特筆すべきものがあった。

6番の子*1も、普通なら勝ちパターンだったと思うけどね。

タマちゃんが上回ったか。

 

これにて、皐月賞を制したファルコちゃんとの決戦が、

ダービーで実現することに。

 

逃げVS追い込みの対決かあ。

これは盛り上がりそうだなあ。

 

今度こそは直接応援しに行ってあげないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダービー前の水曜日。

 

最終追切を終えたタマちゃんとファルコちゃんをカフェテリアに呼んで、

激励する会を開くことにした。

2人は快く応じてくれて、いま向かいの席に座っている。

 

「タマちゃん、ファルコちゃん、追切お疲れ様。

 いよいよダービーだね。調子はどうかな?」

 

「おかげさまで絶好調や!」

 

「私もすこぶる快調です」

 

「それはよかった」

 

2人とも笑顔で頷いてくれる。

前走までの疲れが残ることもなく、ベストコンディションで臨めるようだ。

 

「こんな即席で悪いけど、激励会ということで来てもらいました。

 2人ともありがとね」

 

「いやいや、こっちこそおおきに」

 

「ファミーユリアン先輩にここまでしていただけるなんて、

 非常に光栄です。全力で頑張りますね」

 

ホントたいしたことできなくて悪いんだけど、

少しでも2人の力になれれば、大いに本望である。

 

ちらりと横目で周りを確かめてみると、居合わせた子たちが

固唾を飲んで見守っている節がある。

 

ダービーだけあって、やっぱりみんな注目してるんだろうな。

この2人が人気を分け合うことになるだろうし。

 

どっちが1番人気になるかな?

正直言って甲乙つけがたいと思うが、やっぱり先にG1、

クラシックを制したということで、ファルコちゃんかな?

 

僅差でタマちゃんが続くと予想。

 

改めて考えてみると、ダービーがキャリア通算4戦目というところは2人とも同じ。

3戦目で重賞制覇したという点も全く同じ。

脚質だけが、逃げと追い込みという正反対だ。

 

そんなところも盛り上がりそうな理由である。

 

「ファルコ、正々堂々勝負といこうや」

 

「望むところです、タマモクロスさん」

 

お互いの健闘を誓う2人。

普段の接点はほとんどないという彼女たちだけど、

こういうところは青春らしくていいよね。

 

握手して頷き合ったところを見守って、

俺も好勝負を期待したところで、

追切後の疲れを考慮して会は早々にお開き。

 

あとは無事に当日を迎えてくれることを祈る。

さてさて、どういったレースになるだろうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月28日。

第56回東京優駿競走の開催日。

 

ルドルフにお願いして、俺も東京レース場へ入場する。

やはり持つべきものは権力者の友人である。

 

「君が希望すれば、私を介さずとも入れるだろうに」とはルナちゃんの弁。

わかってないなあ。それじゃあVIP扱いになっちゃうだろ。

 

一般の人と同じ目線で、同じように楽しむのがいいんだよ。

アニメ2期のキタサトコンビみたいにさ。

それに、頼ってもらえてうれしそうだったの、見逃してないよ。

 

では早速パドックへ行ってみましょうか。

……ってさすがのすごい人込み。

久しぶりに変装しての外出なんで、人を搔き分けるのが一苦労だ。

 

ウマ娘なだけに、ちょっと力加減を間違えると、大事になっちゃうからね。

 

さてパドック。

やはり1番人気はファルコちゃんだ。

 

 

『栄えあるダービーの1番人気は、

 皐月賞ウマ娘、トウショウファルコです』

 

『今日も光り輝いてますね。出来は良さそうです』

 

『二冠達成となりますか、期待大であります』

 

 

どうやら熱狂的ファンが付いたようで、

『金色の輝きトウショウファルコ』という横断幕を掲げた一団がいる。

 

あの美貌に加えてのG1勝利だからね、当然だよね。

 

 

『2番人気、新バ、特別、青葉賞と、

 怒涛の3連勝でトントン拍子に出世してきましたタマモクロスです』

 

『小柄なウマ娘ですが、それに負けじと大変鋭い末脚を繰り出します。

 人呼んで「白い稲妻」。白い稲妻がダービーを制するでしょうか』

 

 

2番人気も予想通り、僅差でタマちゃん。

ファルコちゃんに勝るとも劣らない、芦毛のロングヘアが映えてるよ。

 

 

『タマモクロスが勝てば、ファミーユリアン以来、

 2人目の青葉賞からのダービーウマ娘誕生になります』

 

『そして、芦毛初のダービーウマ娘ということにもなります』

 

『さらに言えば、年明けデビューからのダービー制覇となると、

 URA発足以前にまで遡らないといけません。*2

 URA史上、デビュー後の最短勝利記録を更新することにもなります』

 

『彼女も調子は良さそうですね。好勝負が期待できます』

 

 

お、言われてるな。

 

そうだ、青葉賞のジンクスなんて吹き飛ばしてしまえ。

俺以降はまた惨憺たる結果なんだけど、

2人目が出れば、後世でももう何も言われなくなるだろうさ。

 

しかも、芦毛初のダービーか。

史実ではウィナーズサークルがその称号を持って行ったんだが、

こっちではウィニングクラブちゃんが該当するみたい。

 

こちらから見る限りでは、2人とも落ち着いていて良い気配だ。

実力を出し切れそうで安心した。

 

はたしてファルコちゃんが皐月に続いて二冠を達成するのか、

タマちゃんが史実ブレイクして初めての芦毛ダービーウマ娘になるのか、

史実通りになるのか、はたまたまったく別の結果になるのか……

 

期待は尽きない。ドキドキものだよ。

 

それじゃ、特等席でレースを見守るために、

再び人込みを掻き分ける作業に戻りましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『日本ダービー発走が迫りました。

 展開のまとめをお願いします』

 

『はい。まずは逃げて皐月賞を制したトウショウファルコが

 先手を取ると思います。対抗して逃げ宣言する陣営もいないですし、

 2番枠ですので、スムーズに逃げられるでしょう』

 

突発的な事態にならない限り、

トウショウファルコの逃げは固いと解説者は言う。

 

『2番人気タマモクロスも、前走までと同様に後方待機。

 3番人気ウィニングクラブと4番人気ドクターダッシュは中団でしょうか』

 

『ペースはどうなりそうですか?』

 

『無理に競っていく子が現れなければ、

 無難なペースに落ち着くんじゃないでしょうか』

 

解説者は平均ペースを示唆。

皐月賞でも極端な流れにはならなかったので、と説明する。

 

『スターターが台に向かいました。

 第56回東京優駿、日本ダービーのファンファーレです!』

 

時間を迎え、ファンファーレが盛大に生演奏される。

枠入りも順調で、特に問題なく、全員がゲートへと収まった。

 

緊張と静寂の一瞬……

 

 

――ガッシャン

 

 

『スタートしました!』

 

『外のほうで何人かがタイミングが合わなかったようですが、

 トウショウファルコ、予想通り一直線に出てハナを奪います』

 

外側のほうでややバラついたスタートになったが、

1番人気ファルコにとっては何の問題もない、快調な出だしとなった。

 

『先手を取りましたトウショウファルコ、

 2バ身のリードで1コーナーを回ります。

 美しい金髪が風にたなびきます!』

 

長い髪をたなびかせて疾走する様は、まさに“画”になる。

熱狂的なファンが付いたのも、当然という話だろう。

 

『2番手10番つきました。3番手1バ身差で18番リアルアニバーサル』

 

向こう正面に入ってペースも落ち着き、

バ群はあまりばらけず、ほぼ一団という格好になった。

 

その中でも、ファルコと同様に、定位置とも呼べる位置に陣取る芦毛が1人。

 

『2番人気タマモクロスは外を通って、最後方にいます。

 ここから再び白い稲妻を炸裂させることができますか』

 

一団なため、ぽつんというわけではないが、

付かず離れずという状態で追走しているタマモクロス。

 

『まもなく1000mを通過します。62秒2。

 これは平均というよりやや遅いくらいのペース。

 各バどのように動くでしょうか』

 

ファルコの溜め逃げという展開になり、

先頭から最後方まで10バ身ないくらいという差である。

その分、バ群は密集している。

 

『先頭トウショウファルコ、快調に逃げます。

 2バ身差変わらず10番。3番手も変わらずリアルアニバーサル追走。

 その後ろは相変わらず密集しています』

 

大方の態勢は変わらずに、レースは大欅を過ぎて佳境へ向かう。

ファルコがリードを保って4コーナーを回った。

 

『トウショウファルコ、先頭で直線へ向いた。

 後続は横いっぱいに広がった』

 

そのままの状態で最終直線へ。

 

長い直線を意識してか、ファルコは4コーナーで突き離した皐月賞とは違い、

後ろを引き付けたままウマなりで走っている。追い出しはまだまだ。

 

一方の後続勢は、密集しているだけあって進路を求めて横に広がり、

バ場の五分六分どころにまで達している。

 

『バ場の中ほどからウィニングクラブ!

 リアルアニバーサルも並んでやってくる!』

 

『そして大外からタマモクロス!

 白い稲妻が突っ込んでくるぞ!』

 

直線を向いた段階で依然最後方だったタマモクロス。

横いっぱいに広がった隙を突いて間を縫い、大外へと持ち出して差を詰める。

 

『トウショウファルコ坂を上って逃げる! 2バ身のリード!』

 

逃げるトウショウファルコも、坂を上りきったところで、

我慢に我慢を重ねた末に満を持してスパートし、懸命に逃げ切りを図った。

 

『タマモクロス2番手に上がった! さらに前を追う!』

 

タマモクロスは先行していたウィニングクラブと

リアルアニバーサルを並ぶ間もなくかわし、単独2番手となってファルコに迫る。

 

『さあタマモクロス迫った。トウショウファルコとタマモクロス、

 2人が完全に抜け出している。マッチレースの様相!』

 

残り200mの段階で、ファルコも脚を伸ばしてタマモ以外の後続を突き離した。

あとは、どちらが勝つか負けるかという勝負となる。

 

『内トウショウファルコ、外タマモクロス。2人の追い比べだ!』

 

タマモクロスは追いながら徐々に内へと進路を変更し、

ファルコに追いつくころには隣り合わせにまで迫って、

完全な叩き合いへと移行する。

 

『内か、外かっ』

 

興奮する実況、上がる大歓声。

 

『タマモクロスわずかに出たか!? わずかに外か!?』

 

『タマモクロス優勝! ゴールイーンッ!』

 

ファルコも粘りに粘ったが、最後の最後で浪速のド根性に屈した。

芦毛初のダービーウマ娘誕生の瞬間である。

 

「やった……やったでぇえええ!!!」

 

中継には、掲示板に着順が上がった瞬間の、

両手を挙げて咆哮するタマモクロスが、長々と映し出されていた。

 

 

 

第56回東京優駿  結果

 

1着 11 タマモクロス    2:28.8 

2着  2 トウショウファルコ   クビ

3着 18 リアルアニバーサル    3

 

12.5-11.9-12.5-12.7-12.6-13.3-13.2-12.8-12.5-11.8-11.3-12.0 2:28.8

1000m通過62.2 1000~2000m 63.3

2000m通過2:05.5

4F 47.6

3F 35.1

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー放送席、勝利ウマ娘インタビューです。

 芦毛初のダービーウマ娘となりましたタマモクロスさんです。

 おめでとうございます」

 

「おおきにっ!」

 

ターフビジョンに映し出されるインタビューの模様。

 

マイクを差し出されたタマちゃんは、満面の笑みでお礼を言うと、

ペコっと頭を下げた。そして

 

「ちょう貸してな」

 

「え? あ……」

 

なんと、インタビュアーさんからマイクを奪い取ってしまった。

 

「お父ちゃんお母ちゃん! チビたちぃ! 見とったかぁ!?」

 

さらには自分からカメラに迫り、

ドアップで家族に向けてそんなアピールする始末。

 

さすが関西人。ノリがいいね(汗)

俺にはあんなことはできないなあ。

 

「ダービーや! ダービー勝ったんやぁあああ!!」

 

再びの大絶叫。

ゴール前にいる俺には、ターフ上での最初の咆哮に聞こえていたので、

“再び”というわけです、はい。

 

「はあ……はあ……」

 

「もう、よろしいでしょうか?」

 

「……ぁ、えらいすんません。興奮してもうて……」

 

ひとしきり絶叫して少しは落ち着いたのか、

インタビュアーさんに言われて、謝りながらマイクを返すタマちゃん。

 

まるで、俺と初めて会ったときみたいだな。

感情が昂ぶると大噴火して、一瞬にして醒めるところは変わってないみたいだ。

 

「では改めまして……ダービー勝利おめでとうございます」

 

「おおきに」

 

「きっとご家族もお喜びだと思いますよ」

 

「そやったらうれしいなあ。ウチの家、貧乏やから、

 これでやっと楽させてやれる……うぅ、ぐすっ……」

 

今度は感極まって泣き出してしまった。

さすがタマちゃん、喜怒哀楽の激しさはウマ娘イチかもしれない?

 

「それと……ひっく……

 ファミーユリアン先輩にも感謝せなあかん……」

 

グズりつつも、なんと俺の名前を出したタマちゃん。

え? 君、何を言うつもり?

 

「ファミーユリアンさんですか?」

 

「そや……。トレセン学園入学以来、色々と良くしてもろうて、

 今のウチがあるんは、みんな先輩のおかげと言ってもええ」

 

やっと自分を律したタマちゃんは、はっきりとそう言った。

 

「先輩もきっと見てくれてるはずやから、この場を借りて

 言わせてもらいます。先輩、おおきにな。大感謝や!」

 

人懐こそうな笑みを浮かべて言うタマちゃん。

俺の名前が出たことで、周りの人たちもざわついている。

 

感謝してもらえるのはうれしいけど、要らんことまで言わんといてよタマちゃん。

この場で具体的なことまで言ったらあかんでー?

 

なんかやばそうな雰囲気になってきたんで、

正体がバレないうちに、早々に退散したほうがよさそうだ。

特にマスコミ連中に囲まれたら大変厄介。

 

というわけで、急いで学園に帰ります。

 

あ、タマちゃん。ダービー制覇おめでとう!

これでご家族ともども、少しは安心できるといいね。

 

ファルコちゃんも惜しかった!

次走以降も引き続き頑張ってくれ。

 

2人ともお疲れさんでした。

祝勝会とお疲れ様会はまた後日。

 

それじゃ、ばいばいきーん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー

 

 

(タマモクロスのインタビューを受けての反応)

 

 

:おいおいおい!?

 

:またリアンちゃんの名前が!?

 

:今年のクラシックどうなってんねん

 

:ファルコに続いて、タマモもリアンちゃん関係だったのか?

 

:ファルコみたいに、

 タマモクロスもリアンちゃんに相談したって口?

 

:順当に考えればそうなるな

 

:で、リアンちゃんは的確な助言したと

 

:リアンちゃんの影響力でかすぎぃ

 

:朗報? 今年のクラシック、リアンちゃんの教え子が席巻する

 

:なぜに疑問形なんだ

 

:間違いなく朗報だろう

 

:教え子というか、教師でもトレーナーでもないから、

 うーん、なんて言うのが適切なのか

 

:助言した後輩、と言うしかないな

 

:ファルコもタマモクロスも、公の場でわざわざ言うくらいだ

 彼女たちの中で相当なウェイト占めてるのは確かだな

 

:着実に勢力を増していくリアンちゃん一派

 

:記録尽くめな点もリアンちゃんに似てるな

 芦毛初、デビュー後最短日数、年明けデビューで初のダービー制覇

 

:リアンちゃんと縁があるのがホント不思議

 

:まさに繋がるべくして繋がった感

 

:今年の春二冠は、どっちも年明けデビューの子が勝ったんだな

 

:それも史上初ちゃう?

 

:ダービーのほうがいなかったんだからそうだよ

 

:リアンちゃんの凄さはわかるが、

 2人のトレーナーは何やってんねんってことにならない?

 

:トレーナー契約の前かもしれない

 

:なる

 

:不振や不安を相談 → 秘めたる才能が開花 →トレーナー契約

 こういうことか?

 

:それなら納得だ

 

:しかしリアンちゃんはいったいどこまで行くのか

 

:自身のみならず、後輩の成績すら伸ばす

 

:他人の舞台で、自然と株が上がっていくスタイル

 

:こりゃ本当に、トレーナー・ファミーユリアンありえるで

 

 

 

*1
当時はまだオープン特別で、勝ち馬は6番サーペンアップ。主な勝鞍がここだった

*2
戦前には、デビューして1か月以内にダービー制覇とかもざらにいる。クリフジが代表例




芦毛初のダービーバの栄光はタマちゃんへ。
レース自体の上がりが35秒1ですから、彼女はおそらく33秒台の末脚を使ってます。
白い稲妻とは言い得て妙。

そもそも年明けデビューのダービー馬も、96年フサイチコンコルド(1月)、
2000年アグネスフライト(2月)しかおりません。
3月デビューからの制覇は、文字通りの最短記録となります。

ファルコの逃げ、ダービー時のリアンと比較してみてください。*1
憧れの背中はまだまだ遠いようですね。

*1
12.3-11.5-12.2-12.1-12.0-12.6-12.6-12.7-12.3-11.7-11.3-11.4 2:24.7
1000m通過60.1 1000~2000m 61.9
2000m通過2:02.0
4F 46.7 - 3F 34.4

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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