第34回有馬記念のファン投票結果が公表された。
1位はもちろんリアンで、40万近い票を集めた。
もちろん史上最多の得票数である。
2位タマモクロス、3位トウショウファルコ、
4位メジロフルマー、5位イナリワンと続く。
開催当週の木曜日、出走予定のウマ娘たちが集まって、
枠順抽選会と事前記者会見が行われる。
厳正なる抽選の結果、枠順は以下の通り確定した。
第34回有馬記念 出走ウマ娘
1枠1番トウショウファルコ
1枠2番ミスブレンディ
2枠3番ダイナカーペンター
2枠4番ファミーユリアン
3枠5番ギリギリパワー
3枠6番ドクターダッシュ
4枠7番リアルアニバーサル
4枠8番カトリウイング
5枠9番フリーラン
5枠10番ハワイアンスコール
6枠11番フレッシュボイス
6枠12番タマモクロス
7枠13番ミスシクレノン
7枠14番メジロフルマー
8枠15番イナリワン
8枠16番スルーオダイナ
「ただいまより、第34回有馬記念事前記者会見を始めます」
司会者の言葉により、会見が始まる。
参加者は、ファン投票の1位から5位までのウマ娘。
すなわちリアン、タマモ、ファルコ、フルマー、イナリの5人である。
それぞれが紹介されて、各人がそれぞれ所定の席へと着いた。
奇しくも、リアン以外の娘たちが、いずれもリアンと何らかの繋がりがあり、
親しい間柄という珍しい事態だ。
「それでは代表質問という形で、まずは私から尋ねさせていただきます」
司会者によって、最初にそれぞれへの質問がなされる。
1人目に選ばれたのは、枠順同様となるファルコだった。
「トウショウファルコさん。1枠1番を引かれましたね」
「はい。狙っていた枠番なので、百点満点です」
「以前からファミーユリアンさんは大恩人だと公言されていますが、
そのファミーユリアンさんとの初対決ということになります。
今のご心境はいかがでしょうか?」
「非常に高揚しています」
淀みなく答えていくファルコ。
自分の気持ちを確かめるように、うんうんと何度か首肯した。
「相手がファミーユリアンさんでも臆せず、
自分のレースをするだけだと思っています」
「自分のレースをするというのは、今回も逃げる、
という宣言だと見てよろしいでしょうか?」
「はい、構いません」
ファルコがそう答えた瞬間、カメラのシャッター音と
無数のフラッシュが乱舞する。
リアンを前にしての堂々の逃げ宣言だ。それは注目もされる。
「トウショウファルコさんありがとうございました。
続きまして、メジロフルマーさんにお聞きします」
「どうぞ」
マイクを渡されたフルマーは、短くそう応じた。
「念願のG1タイトルを手にされてのグランプリ挑戦になります。
レースに臨むお気持ちに変化はございますか?」
「何もありません。私は常に“挑戦者”ですので、
そうあり続けるだけです」
何も変わらない、とフルマー。
何を
「トウショウファルコさんが逃げ宣言をなされましたが、
メジロフルマーさんはいかがなされますか?」
「もちろん逃げます」
再びフラッシュの嵐。
配信されている画面が白く染まった。
「どなたが何を仰ろうとも、私は私で、
ファルコ、フルマー両人が同じ文言を使って『逃げ宣言』をした。
お互いを意識しての発言であることは疑いようがない。
「外枠に入られたということで、不利が予想されますが?」
「どんな枠だろうと、最善を尽くすだけです」
「メジロフルマーさんありがとうございました。
続いて、タマモクロスさん」
「おう、どんと来いや!」
マイクが渡ったタマモクロスは、力強く応じて見せた。
「クラシック級では二冠を手にする大活躍でした。
シニア級と対戦するのは初めてになりますが、いかがでしょう?」
「まあ二冠っちゅうても、ファルコとはほんの僅かな差しかなかったことやし、
シニア級が相手になれば、もっと厳しいやろうことは承知しとる。
やってみなわからんけど、ひとつ確かなんは、
全力の全力を出し切らな、勝てへんってことやろな」
タマモクロスの視線が、右へと移動する。
彼女から見て右隣に座っているのは、ファミーユリアンだ。
「タマモクロスさんも、ファミーユリアンさんには
お世話になったと公言されています。
初めての対戦を前にしての意気込みをお聞かせください」
「ウチがこんな大舞台に立てることになったのも、
家族をはじめとするいろんな人のおかげや。まずは感謝せんとあかん。
もちろんファミーユリアン先輩も含まれとる。おおきに!」
さらなる質問を受けてこう述べた後に、
大声で礼を言いつつ、大袈裟なくらいの仕草で頭を下げた。
「ほんでも勝負となれば話は別や」
そして正面に向き直ると、真剣な表情で言い切った。
「恩やなんやのはいったん置いといて、
全力で叩き潰したるから覚悟しとき!」
「十分すぎるほどの意気込み、ありがとうございます。
次はイナリワンさんにお聞きします」
「おうよ」
イナリワンもマイクを手にすると、一言で応じる。
「中央へ編入しての3戦目となります。
地方、大井時代と比べて、何か変わったことはありますか?」
「ん~なんだろな? これといったものはない気がするな」
こう言ってから少し考える。
そしてこのように付け足した。
「でも強いて言うなら、あたしは大井の期待を受けてるってことかな。
自惚れるわけじゃねえが、あたしは大井を代表して中央へ来たんだ。
最低限、無様な姿だけは見せちゃいけねえって思うようになったぜ」
「そんな期待を一身に受けられての初戦では、見事勝利なさいました。
中央でも通用するということを証明なされたわけですね。
しかし前走、秋の天皇賞ではファミーユリアンさんに完敗しました。
逆転する秘策、何かお考えでしょうか?」
「策? そんなもんはねぇ」
リアン対策を何か考えているのか、という問いには、
真っ向から首を振った。
「下手な策なんか弄しても姐御には絶対通じないからな。
正攻法で真正面からぶつかるだけよ」
笑みをこぼしつつこう述べる。
そしてタマモクロスがやったように、身を乗り出してリアンのほうへ向きつつ
「姐御! 今回も胸を借りさせてもらうぜ。よろしくな!」
自身の意気込みを表したのだった。
おーおー、みんな見事なまでにお互いを意識してるなあ。
お熱いこって。
タマちゃんとイナリ、わざわざこっち見てこなくてもよかろうに。
まあ2人の意気の高さはよくわかった。
ファルコちゃんとフルマーちゃんも、静かな受け答えではあったが、
内には秘めたる闘志が大いに見え隠れしてるし、
これは相当に熱いレースになりそうだ。覚悟しないといけない。
「では、ファミーユリアンさんにお尋ねします」
「はい」
代表質問のトリを飾る格好で、俺にマイクが回ってきた。
「皆さんから意識されていますが、どう思われますか?」
「そういう立場であることは自覚していますし、
受けて立たねばいけないこともわかっています。
今年1年を締めくくるレースですし、集大成をお見せできれば、と思います」
今に始まったことでもないしな。
俺は俺で、みんなが言うように、
「先にお二人が逃げ宣言をなされましたが、
ファミーユリアンさんはどうなさるおつもりでしょうか?」
「さあ、どうでしょうか。ゲートの中で決めますかね?」
そう返した途端、記者たちが総じてざわついた。
俺も逃げ宣言すると思ってたかな?
残念でした。駆け引きはもう始まっているのだよ。
フルマーちゃんには悪いが、逃げなくても許してちょんまげ。
いや、決してふざけているわけではないよ?
来年の話をすると鬼が笑うと云うけど、
海外遠征を控えている身で負けるわけにはいかないからね。
まあいつもそうではあるけど、負けないレースをするつもりだ。
「それはつまり、前走同様、後ろから行くかもしれないと?」
「当日、そのときの気分次第になりますね。
逃げるかもしれないし、後ろに控えるかもしれない。
ひょっとすると、好位差しなんてこともあるかもしれませんよ」
「は、はあ」
まるで想定外の返答だったのか、司会者さんも焦って固まってしまった。
記者たちのざわめきはさらに大きくなっている。
「とにかく全力で勝負するということに変わりはありません。
先ほど申したように集大成として、
今の日本を代表するウマ娘として、
誰に見せても恥ずかしくないレースをするだけです」
ああは言ったけどね?
俺が逃げなくてもフルマーちゃんのことだからハイペースは必至。
控える作戦を取ったほうが有利なのは目に見えている。
だがしかし、俺は“ファミーユリアン”なのだ。
作戦としては逃げても、今回ばかりは、『勝負』から逃げるわけにはいかない。
当日の人気は、リアン、タマモ、ファルコ、フルマー、イナリの順。
以下ダイナカーペンター、ミスシクレノン、リアルアニバーサルと続き、
8番人気までファン投票の結果とまるで同じという、珍現象となった。
その中でも、リアンの人気はやはり抜けており、
クラシック級の各娘たちとの初対決でも、8割を超える支持を集めた。
パドックでのお披露目を終えて、出走各ウマ娘が本バ場へと姿を見せる。
入場曲がかかると、超満員の観客たちから、大歓声が巻き起こった。
『第34回有馬記念、本バ場入場となります。
出走する各ウマ娘たちを紹介してまいりましょう』
『1枠1番、絶好の枠を引いて今度こそ逃げ切りを図ります。
公言してはばからないあの人に、今こそ恩を返すとき。
黄金は今日も光り輝くか、3番人気トウショウファルコ』
真っ先に紹介されたファルコが、軽快に返しウマに入っていく。
そして枠番通りの順番で紹介されていく中、ひときわ大きな歓声が。
『今年も君臨した絶対王者、まさに王者のごとく年間無敗で、
どちらでしょうか。当然の圧倒的1番人気、2枠4番ファミーユリアン』
リアンは紹介に合わせて軽く頭を下げてコースへと入ると、
観客たちの声援に応えて、2度3度と手を振ってから駆け出して行った。
『今年のクラシック二冠ウマ娘の登場です。
年上との初対決で、世代のレベルの高さを示したい。
その爆発的な末脚は今日も健在か。
本日の2番人気、6枠12番、白い稲妻タマモクロス』
自分に気合を入れて、芝コースの上に足を踏み入れたタマモ。
「やったるで!」と叫んでいたのが、中継の映像上からでも、
口の動きではっきりとわかるくらいの気合の入り様である。
『王者との直接対決これで実に5回目。
G1タイトルを獲得しての勝負で、ついに一矢報いることができますか。
今日の私はひと味、いやふた味違うぞ。
4番人気は7枠14番、メジロフルマー』
落ち着いた様子で、誰よりもゆっくりとした足取りでコースインしたフルマー。
その後も芝の感触を噛み締めるようにして歩き、しばらくしてから走り出す。
『地方、大井からやってきた大物は5番人気。
中央でも通用することは既に証明した。あとはG1タイトルが欲しい。
勝って錦を飾ることができますか。
小さな身体に無限の闘志を秘めます、8枠15番イナリワン』
勢いよくバ場へと飛び出したイナリワン。
そのままの勢いで返しウマに入っていった。
『……以上、出走16人で争われます有馬記念です。
まもなく発走です』
12月24日、午後3時25分。
発走時刻を迎え、にわかに薄暗くなり、雨が降り出した中山レース場。
寒さも増してきていたが、場内の熱気はそれを上回る。
ファンファーレが鳴り響き、ゲート入りが始まった。
『枠入りは非常に順調。さあ態勢整いました。
1年の総決算グランプリ、スタートしました!
ギリギリパワー、ダッシュがつきません下がっていきます』
5番のギリギリパワーがスタートに失敗し、
後方からになった以外は、ほぼ揃ったスタートになった。
『ファミーユリアン、一気の出足で行った!
内からはトウショウファルコ続いていく。
外からメジロフルマーも行った行った!
3人によるハナ争い!』
まずは、いつもの出足の良さでリアンが先頭に立つ。
ダッシュ力では及ばずも、最内発走のファルコが枠番を活かして続き、
外からはメジロフルマーも加わって、3人での先頭争いとなった。
『ダイナカーペンター4番手。並んでリアルアニバーサルとフリーラン』
『タマモクロスとイナリワンは後方です』
激しい先頭争いとは対照的に、それ以降はさしたる争いは起こらず、
等間隔にバ群が続く展開に。
タマモとイナリは、自分の脚質通りの位置取りになる。
『1周目直線に入りました。
先頭ファミーユリアン、トウショウファルコとメジロフルマーを従えて逃げます。
4番手ダイナカーペンターとは早くも7、8バ身以上離れました』
リアンを頂点にして、右後ろ内にファルコ、
左後ろ外にフルマーというトライアングルが形成されている。
4番手以降との差はあっという間に開き、なおも拡大傾向。
『さあ1000m通過はいかほどのタイムか。57秒9!』
実況も思わず叫んでしまうほどの数字。
昨年(58秒0)を上回る、普通なら大暴走と断言される超々ハイペースになった。
いいねぇ、やるねぇ。
今回のスタートは本気の本気で出たんだけど、
ファルコちゃんもフルマーちゃんも離されずについてきてる。
2、3バ身くらいはリードできてるかと思ったんだが。
まあいい。
ついてきてようがきてまいが、俺は俺のレースをするだけ。
さてファルコちゃん、フルマーちゃん。
ここでファミーユリアンによる、ワンポイントレッスンだよ!
集大成を見せると言ったね?
アレは本当だ。
特にファルコちゃんへは、重要なレッスンになるよ。
目の前でやってみせるのは最初で最後だろうから、よく見ておくように。
『ペースコントロール』ってのは、こうやるんだ!
『向こう正面に出ていきます。先頭ファミーユリアン変わりません。
……ここでペースが落ちたか? ダイナカーペンターとの差が詰まっていく』
レース中盤に差し掛かり、一目でわかるような異変が起こる。
先頭集団と4番手ダイナカーペンターとの差が、見る間に詰まった。
『これは!? 久々に見せるファミーユリアンの「幻惑」か!?』
『菊花賞以来の幻惑炸裂!』
『さあトウショウファルコとメジロフルマーはどうする!』
ここで困ったのは、差が詰まった後続勢よりも、
直後に続いているファルコとフルマーだろう。
リアンとの対戦経験が豊富なフルマーにしても、
途中で極端にペースを落とされる
ましてやファルコにしてみれば、まだレース経験が浅いうえに、
リアンとの対決が初めてとあって、その対応が注目されるのだが――
『トウショウファルコそのまま前に行った!
先頭に躍り出て離していきます!』
咄嗟の事態にファルコは動揺を隠せず、
リアンをかわして前に出ると、そのままのペースで引き離していく。
『メジロフルマーは踏みとどまった!
ファミーユリアンの後ろにピタッとつけて3番手』
一方のフルマーは、突然のペース変化にも柔軟に対応し、
リアンの後ろをキープし続ける。
このあたりの対応の差は、やはりレース経験の有無からくるものであろう。
『4番手ダイナカーペンターとの差は3バ身くらいまで縮まった』
『先頭トウショウファルコ、4バ身のリードを取って
残り1000mにかかります』
『タマモクロスとイナリワンは、後方並んで12、3番手あたり』
3コーナーを前にして、先頭はトウショウファルコ。
4バ身開いてリアン。直後にフルマー。
さらに3バ身開いてダイナカーペンターという態勢。
タマモクロスとイナリワンは後方の外側に位置しており、
先頭からは15、6バ身といった程度か。
途中でペースが緩んだせいで、2番手から最後方までは密集傾向にある。
『3コーナーを回って、ファミーユリアン再び動いた!』
一気に沸き起こる大歓声。
リアンが
『メジロフルマーも離されない! ついていく!』
フルマーもここで離されては勝てないとばかり、喰らいついていく。
ダイナカーペンターには余力がなく、1周目と同様に離されていった。
『後方からはタマモクロスとイナリワン、並んで上がってきた!』
代わって浮上してきたのがタマモとイナリで、
後退していくダイナを外から呆気なくかわすと、
競り合いながら前へと迫る。
『600を通過!』
『ファミーユリアンとメジロフルマー、追い上げて
トウショウファルコに接近! 2バ身、1バ身!』
『400を通過して直線へ!』
ファルコとリアンたちとの差はさらに詰まって、
外側から並びかけるところで直線へ突入。
『逃げるトウショウファルコだが、さあファミーユリアン並んだ!
トウショウファルコ抵抗できないか? ああっと一気に後退!』
並ばれたところで、ファルコも必死に粘りたいところだったが、
さすがにあのペースで逃げたままでは、抵抗する力など残されているはずもなく。
あっさり前へと出られると、あとはずるずる後退していくのみとなった。
『ファミーユリアン先頭で坂! 1バ身差メジロフルマー!』
『タマモクロスとイナリワン、
トウショウファルコをかわして3番手争いだが離れている!』
『残り100m!』
『ファミーユリアン今日ももう一伸び! さらに伸びる!
メジロフルマーを突き離した!』
坂下まではフルマーも抵抗を続けたが、
坂を上がってからは、リアンの独壇場と化す。
ギアを上げてもう1段の加速を見せ、フルマーを突き離したところがゴール。
『まさに前人未踏の偉業、ここに成されり!
年間無敗でグランドスラム達成*1です。ファミーユリアン勝ちましたぁっ!』
『メジロフルマーとのワンツーもこれで3回目!』
『3着争いはタマモクロスとイナリワン、写真判定となります』
写真判定の結果、3着争いはハナ差でイナリに軍配。
4着タマモ、ファルコは5着に逃げ粘って掲示板を確保した。
『そしてそして、我が国ウマ娘レース史上に残る大記録も、
たったいま更新されました。シンザンが持っていた19戦連続連対を上回る、
20戦連続連対の新記録も同時に達成しました!』
『20戦18勝2着2回。
まさに歴史的快挙! 歴史に残る金字塔が打ち立てられました!』
『ファミーユリアン、クラシック級の挑戦者も全く寄せ付けず、
絶対王政はまだまだ続きます。次なる戦いの舞台はいずこか!?』
中継映像は、もはや何度目かになるのかわからないコールに応えて、
観客に向かって手を振り続けるリアンの様子を、映し続けた。
第34回有馬記念 結果
1着 4 ファミーユリアン 2:30.4
2着 14 メジロフルマー 3
3着 15 イナリワン 2
4着 12 タマモクロス ハナ
5着 1 トウショウファルコ 3
……はふぅ、勝てたね。
第一感は、ホッとしたってのが1番大きい。
ファンの期待に応えられたってのもそうだし、
これで胸を張って、海外へ飛び出していける。
さて……
「フルマーちゃん」
「ファミーユリアンさん……」
悔しそうに歯ぎしりしてそうなフルマーちゃん。
こっちを見る目にも、悔しさと一部、負の感情があらわになっている。
話しておかなきゃいけないことがあったから、
近づいて声をかけたんだけど、ちょっと難しい雰囲気。
でも話しておかないといけない。
「悔しいです……G1ウマ娘になれても、
あなたに敵わなければ意味がない……」
「そんなことはないよ」
でも、少し安心した。
そこまで悔しく思ってくれているなら、“後”を任せても大丈夫だろう。
「フルマーちゃんは来年も走るの?」
「その予定ではおります」
「そっか」
よしよし、まだ引退はしないね?
ならOKだ。
「来年は頼んだよ」
「……!」
そう言うと、フルマーちゃんの表情が一瞬で驚きに染まる。
そして短い間隔で、意外、困惑、歓喜へと変化していった。
笑っちゃいけないが、百面相みたいで面白かった。
「こんな結果でもなおのこと、私に期待してくださるのですね」
何を言うかね。君だからこそ言うんだよ。
今日の結果から見ても、タマちゃんやイナリでは、まだ力不足みたいだからさ。
来年のレース界を引っ張っていくのは君だ。
「わかりました。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「うん、よろしくね。それじゃライブで」
「はい」
笑顔で頷き合って、握手をしてフルマーちゃんとはいったんお別れ。
さて次は……
「ファルコちゃん」
「……完敗です」
菊花賞の時のように、膝をついてへたり込んでいるファルコちゃんのもとへ。
やはり相当に無理をしたのか、疲労の色が濃いな。
「突然ペースを落とされて、混乱してしまいました。
……それが狙い、だったんですね?」
「うん」
「……やはり、流石です」
表情が悔しさから納得、苦笑へと変わる。
いきなりの実践編で申し訳なかったけど、
俺の意図、わかってくれたかい? ならば話は早い。
「今後の参考にしてね」
「がんばります」
うむ、大いに頑張ってくれたまえ。
まずはフルマーちゃんを目標にしてね。
来年は大阪杯でぶつかったり……しないかな?
両者ともに勝ってほしい。同着じゃダメ?
ええと、次は――
「おんどれぇ、絶対ウチのが前に出とったやろ!」
「てやんでぇ! 機械にいちゃもん付けるってのかおめぇさんは!」
――……。
いいや、あの2人は後にしよ。
3着争いじゃなくて、次は優勝争いしてくれな。
ではでは、ライブの準備……って、そうだ、インタビューもあるんだったな。
さ~て今日はどう乗り切ろうか。
連対記録のことは絶対聞かれるだろうし、コメント考えておかないと。
何かシンザン関連で気の利いたことないかな?
控室に引き上げたフルマー。
「来年こそは……」
椅子に腰かけて、再起を誓う。*2
だが、ここで
「……来年『は』?」
ゴール後にリアンからかけてもらった言葉の、
ちょっとした違和感に気付いてしまった。
来年も一緒に頑張ろうという意味だと理解したし、
また直接対決しようとの意思表示だと思ったのだが。
しかし、もしそうであるなら、来年『は』という言い方はしないはずだ。
今そう思ったように、来年“も”と言うはずなのである。
まるで自分はもう、
「……まさか?」
歓喜に沸いたウマ娘ファンたちだったが、翌日、
衝撃的なニュースが飛び込んだ。
『ファミーユリアン、明日緊急会見!
重大発表を予告、電撃引退発表か!?』
ダイナカーペンター(11着)
「いっぱい名前が出てうれしい。……複雑だけど」
ジュニア級戦線については、また別の機会で。
海外挑戦を知らない一同にしてみたら、
緊急会見しますと聞いたらそう思うだろうなと。
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
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ドバイワールドカップ
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ドバイシーマクラシック
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ガネー賞(仏)
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クイーンエリザベス2世カップ(香港)
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アメリカ遠征