転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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オグリ、『中央』に立つ

 

 

 

リアンがドバイへ発って、しばらくしてからのこと。

 

「タマ公! なんでぇこれは!」

 

「な、なんや藪から棒に、血相変えおって」

 

イナリがタマモのもとに怒鳴り込んでいた。

いきなりのことに戸惑うタマモクロス。

 

「これは本当かっ!?」

 

叫びつつ、イナリはタマモに持ってきたものを見せつける。

どうやらスポーツ新聞のようだが……

 

「ん~? 新聞かいな?」

 

「ここを見ろ!」

 

そう言いつつ、イナリは記事の中の一角を指し示す。

『次走報』との見出しが書かれている。

 

「『タマモクロス:阪神大賞典』って書いてる」

 

「ああ、こないだブンヤさんに伝えたんや。

 これがどないしたん?」

 

「どうした、じゃねぇ!」

 

本人が言うくらいだから、情報が正しかったようだ。

だが、淡々と言う様子が、イナリをさらに激昂させる。

 

「なんで大阪杯出ねぇんだ!

 フルマーの姉貴も、ファルコも、あたしもみんな出走するってぇのに、

 何考えてんだおめえさんはよぉ!」

 

王道路線のシーズン開幕戦であるG1大阪杯。

当然、錚々たるメンバーが揃うことが予想されており、

実際、『四強』と称されるメンツの出走が期待され、

リアン不在の中でも盛り上がりを見せていた。

 

すでにイナリは前哨戦である中山記念に出走し、見事1着。

中央編入後の2勝目を挙げている。

 

フルマーとファルコも、有記念以来にはなるが、

この時点で出走を表明していた。

 

これでタマモクロスも出走するとなれば、シーズン初戦にして

四強が最初から揃い、世間もさらに盛り上がってくれるだろうに、

蓋を開けてみればこれだ。

 

イナリが怒るのも無理もない。

それに彼女たちの間では、()()()()()が交わされていたのだ。

 

「姐御がいない間は、あたしらで盛り上げようって言ったの、

 アレは嘘だったのか。どうなんだええ!?」

 

「あー、うーん、そっか、そやなあ」

 

問い詰められたタマモは、バツが悪そうに頬をかく。

悪いとは思っているようだ。

 

「すまんっ」

 

そして顔の前で両手を合わせて、謝罪に走る。

 

「ウチとしても出たいのはやまやまだったんやが、

 ほら、ウチってデビュー戦以来、2400m未満の経験がないやん?

 だから2000っちゅうと短くないんかってな~んか不安でなあ」

 

確かに、2000mでデビューして以降は、

すべてのレースが2400m以上であった。

 

史実では、快進撃が始まる前に自己条件戦で、

中距離のレースを何回も経験していたために、

起こりえなかった問題だ。

 

「トレーナーも、少しでも不安があるならやめとくかって、

 言うもんやから……だもんで、すまん、今回だけは堪忍やっ!」

 

一応、理由としては筋が通っている。

この世界線では違うようだが、史実やアプリ版でのシナリオの

繊細さからしてみると、それ以上に妥当な判断なのかもしれない。

 

「……かぁ~っ!」

 

謝罪を受けたイナリ。

到底納得できていない様子ながらも、自らを無理やり納得させるように、

声を荒げて頭を掻きむしった。

 

「天皇賞には出るんだよな?」

 

「ああ、それは確定や」

 

「ふん、蚊帳の外にされて後から泣いたって知らんからな」

 

イナリはそう言って睨みつけると、踵を返し大股で歩き去っていった。

その背中に、タマモは再度、謝罪の言葉をかける。

 

「すまんイナリぃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアンのドバイワールドカップ制覇に、日本中が沸いた翌週。

日本国内でも、王道路線G1開幕戦の大阪杯が開催される。

 

前年クラシック二冠のタマモクロスを欠く中で、

1番人気に推されたのは、絶対王者最大のライバル・メジロフルマーである。

 

リアンから直接後を託された以上、出ないわけにも、

負けるわけにもいかない。

事前会見でも、堂々と『勝ちます』と言ってのけていた。

 

2番人気はイナリワン。3番人気にファルコがつけた。

 

当日は快晴のまさにレース日和。

咲き乱れる桜の花が出走者と観客を迎える中で、ファンファーレが高らかに響く。

 

『満開の桜が見守るG1大阪杯、全ウマ娘ゲートイン完了。

 スタートしました!』

 

『全員綺麗なスタートを切りました。

 その中でもやはりメジロフルマー先手!

 2000m戦でどう出るのか注目されていましたが、

 お構いなしとばかりに逃げていきます』

 

『2番手1バ身差トウショウファルコつけました』

 

『メジロフルマーとトウショウファルコが前に行きます。

 2番人気イナリワンは最後方で1コーナーを回った』

 

フルマー先頭、ファルコが2番手、イナリは最後方で向こう正面へ。

ハイペースになったと見え、ファルコと3番手との間がかなり開いた。

 

『さあ飛ばしますメジロフルマー。

 ドバイを制し世界一になったファミーユリアンに、

 良い報告をしたいところ』

 

『前半1000mを通過。57秒5。

 これは昨年よりもコンマ1秒早いぞ!』

 

去年のリアンが作ったペースよりも早くフルマーが逃げる。

ぴったり1バ身でファルコが2番手。

イナリは相変わらずの最後方で、3コーナーを回る。

 

『さあ先頭メジロフルマー直線に入ります。

 1バ身差トウショウファルコ迫れるか』

 

『イナリワン中団まで上がってきている』

 

レースは佳境へ。

内ラチギリギリを回ってフルマー先頭。

ファルコも追いつこうと頑張るが、その差はなかなか詰まらない。

 

それはさながら昨年の宝塚記念で、

先頭フルマー2番手リアンの状況で直線を向いたときの再現であり、

そこからすぐさま並びかけていったリアンとの比較で、

まさに対照的となってしまった。

 

こうなると、キレる脚のないファルコには非常に厳しい。

 

『離した離した! メジロフルマー独走になった』

 

そこからはフルマーの独壇場。

ファルコを突き離し、単身で阪神の坂を駆け上がる。

 

『イナリワン脚を伸ばして上がってきたが2番手まで!』

 

イナリも末脚を発揮して追い込むが、前までは届かない。

 

『メジロフルマー圧勝でゴールインッ!

 イナリワン追い込んで2着に入りました!』

 

『ファミーユリアン不在なら、主役はこの娘を置いて他になし!

 レコード! コースレコードの1分56秒8が記録されました!

 昨年ファミーユリアンが作ったレコードをコンマ1秒更新です!』

 

5バ身差の圧勝で、フルマーがG1、2勝目を飾る。

さらには、昨年のリアンのレコードを更新。

世代交代などさせないという、フルマーの意地を見た一戦となった。

 

バ場の中ほどを追い込んだイナリワンが2着。

ファルコは道中のハイペースが響いたか、

イナリのほかもう1人にもかわされて4着に終わった。

 

 

 

第34回大阪杯  結果

 

1着 メジロフルマー  1:56.8R

2着 イナリワン      5

 

 

 

 

 

「メジロフルマーさん、大阪杯勝利おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

フルマーの、勝利インタビューの模様。

 

「負けられない一戦でした。

 見事勝利された今のお気持ちをお聞かせください」

 

「私が言うのもおこがましいとは思いますが、

 ドバイを制されたファミーユリアンさんのためにも、

 まさに負けられない一戦でしたので、ホッとしています」

 

ゆっくりと、噛み締めるようにして答えるフルマー。

頬はまだ赤く上気したままだった。

 

「昨年以上のハイペースで、さらにはレコードになりました。

 この結果についてはいかがですか?」

 

「はい、その……」

 

いつもはきはきと答えるフルマーが、一瞬だけ言い淀んだ。

それだけ、思いはひとしおだということだろう。

 

「ファミーユリアンさんの記録をひとつ破れたというのは、

 誇らしくもあり、どこか寂しくもあり、複雑な気持ちでおります」

 

「ファミーユリアンさんのレコードが破られたというのは、

 これが初めてのことになります」

 

「そうでしたか。……うれしいですが、

 やはりどこか複雑な思いがしますね」

 

リアンの記録を破ったのはこれが初めてと聞かされ、

フルマーは再び言葉に詰まった後、感慨深そうに2度3度と頷いた。

 

「次走は天皇賞でしょうか?」

 

「はい、そう考えております」

 

次の質問を、フルマーはきっぱりと肯定した。

距離不安が囁かれる中での、明確な意思表示。

 

「我がメジロの宿願であり念願であり悲願ですので、

 ぜひとも勝ちたいと思います」

 

「期待しています」

 

「はい。今の私にできる精一杯を、お見せしたいですね」

 

「大阪杯を制されましたメジロフルマーさんでした」

 

終了の言葉と共に、深々と一礼するフルマー。

この点もリアンを彷彿させるとして、一部の界隈では盛り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園は新年度を迎えた。

期待を胸いっぱいに抱えた新入生が多数入学してきたのと同時に、

この娘もまた、中央トレセンの一員となる。

 

「いよいよ今日からか」

 

笠松から転入してきた()()()()()()()

後世ならば、誰もが知るウマ娘となるのであるが、

今はまだ、ごく一部の人が知るのみとなっている。

 

「……よし、がんばるぞ!」

 

気合も新たに、新学期の始業式に臨んだオグリ。

しかし、式の直後に理事長室に呼ばれた彼女を待っていたのは、

衝撃的な宣告だった。

 

「謝罪!」

 

「……?」

 

オグリの目の前で、頭を下げる理事長。

何の用で呼ばれたのかも知らされておらず、

唐突なこともあって、オグリは首を傾げるしかない。

 

「何分レアケースなもので、完全に見落としていたこちらの落ち度だ。

 この通り謝罪する。本当に申し訳ないっ!」

 

「その、謝っているのはわかった。

 だが、何のことやらさっぱりなんだが」

 

「理事長、オグリキャップさんもこう仰っていますし、

 具体的な説明をして差し上げませんと」

 

「おお、そうだった!」

 

続けて頭を下げている理事長に、

オグリはなおも首の角度を増すしかない。

 

たまらずに割って入ったたづなの進言により、

理事長はようやく、事の次第を伝えていないことに気付く。

謝罪したい気持ちのほうが先走ってしまったようだった。

 

「実は、君のクラシック登録がされていないことが判明した。

 よって君は、当該競走に出走することができない」

 

「………」

 

「重ねて申し訳ない。本来であれば、編入試験に合格した時点で、

 精査して気付いていて然るべきだった。

 まさか誰もが入学時点でしている手続きを踏んでいないとは思わず……

 すまない、何を言っても言い訳になってしまうな」

 

再び頭を下げる理事長。

 

トレセン学園に入学するほぼすべての生徒が、入学時点で、

クラシック競走に出走するための特別登録、

所謂『クラシック登録』を済ませる。

 

保護者達も、己の子供たちが夢の舞台で走ることを望むために、

()()()無理*1をしてでも、手続きをするのだ。

 

これをしないのは、よほどの道楽者か、

ハナからクラシックなど出れやしないという諦め気味の者くらいのものだろう。

ましてやオグリの場合は地方レース出身者だ。

 

そもそもクラシック登録がなされていない、

そんな者が中央へと移籍を望んで見事に果たし、編入直後に

クラシックに臨める立場にいるなど、誰が思えただろうか。

 

先ほど理事長が『レアケース』だと称したのは、

こういう事情による。

 

もっとも、仮に合格時点でその事実に気付いていたとしても、

1回目2回目の登録は既に済んでしまっていたため、

そこで慌てたとしても遅かったのではあるが。

 

「……質問いいだろうか?」

 

「ああ、何でも聞いてくれ」

 

沈黙していたオグリが口を開いた。

ショックで何も言えなかったと思った理事長は、

本当に何でも聞くとの気持ちで答えた。

 

「くら、しっく……? とは、なんなのだろうか?」

 

「……え?」

 

あまりの質問に、さすがの理事長も呆気に取られ、

目を見開いて固まってしまった。

そして、救いを求めるようにしてたづなに視線を送る。

 

「……そこからですか。仕方ありませんね」

 

理事長からの救いの視線に気付いたたづなはそう言って、

諦めたように首を振るった。

 

「いいですかオグリキャップさん。クラシックというのは──」

 

そして説明を始める。

オグリはおとなしく耳を傾けていた。

 

「──という次第です。おわかりいただけましたか?」

 

「……よくわからないが、大変なレースということはわかった」

 

「そうですね、とりあえずはそういうご理解でいいと思います」

 

とはいえ、理解してもらえたかどうかは怪しいものだったが、

話を先に進めなければならないため、たづなは100%の理解は諦めた。

 

「それで、私はそのレースに出られない?」

 

「はい、残念ながらそうなります。規則ですから」

 

「……」

 

さしものオグリも、それだけのレースに出られないのだと知って、

少しはショックを受けているようであった。

 

「どうしても? 絶対に?」

 

「安易に規則を曲げてしまうと、他に示しがつきませんので……」

 

「URAに掛け合ってはみるが、期待はしないでほしい。

 いや本当に、申し訳ないとしか言えないんだ……」

 

「……」

 

何か手段はないのかと訴えるオグリだったが、

たづなと理事長は力なく首を振る。

 

「……わかった」

 

「すまん……」

 

「申し訳ありません」

 

それからしばらく伏し目がちに沈黙していたオグリは、

一言それだけ言って理事長室を後にした。

理事長とたづなは、再度頭を下げて見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

なんとなくの理解でも、ルールというなら従うしかない。

自分をそう言い聞かせたオグリであったが、

誰しもがそうであるように、やはり不満は持っていた。

 

そこで、新たにルームメイトとなった人物に、

それとなく話を振ってみることにした。

 

「なんやそれ!」

 

ウマ娘ファンの皆様ならお分かりだろう。

オグリのルームメイトとは、タマモクロスである。

 

昨年度までルームメイトだった子が退学した*2ため、

そこへオグリが収まったというわけだ。

 

話を聞いたタマモは、声を荒げた。

 

「ちゅうかオグリ、あんた登録してなかったんかい」

 

「ああ。した記憶も、説明された覚えもない」

 

「いや、絶対どこかで説明はされてると思うで」

 

オグリの言い様に、どこか呆れているタマモ。

地方とはいえトレセンにいたのだから、どこかで説明はあったと思う。

忘れてしまったのか、そもそも聞いていなかったのか。

 

(会ってまだ2日目やけど、こいつ天然っぽいしなあ。

 あくまで個人の問題やから、自業自得っちゅう気がせんでもない)

 

2人は前日に初めて顔を合わせたばかりではあったが、

早くもオグリの気質を見抜き始めたタマモ。

両方かもしれんなあと思う次第である。

 

もっとも、クリークに続いて年下の下級生から愛称で、

しかも今度は『タマ』と呼び捨てで呼ばれたものだから、

そこはさすがに少々揉めたそうだ。

 

「とはいえ、規則っちゅうならどうしようもあらへんしなあ。

 オグリは強いんやろ?」

 

「ああ」

 

「えっらい自信家やなあ。

 まあそうでもなきゃ、編入なんか考えんかもなぁ」

 

生来の人懐こさと面倒見の良さで、真摯にオグリの話に付き合うタマモ。

だがそれでも、彼女の力ではどうしようもない。

 

「そんだけ強いなら、その『強さ』を見せて、

 頭の固い連中をどうにかするしか手はないんとちゃう?」

 

「そうか。……そうだな。がんばる」

 

「その意気や。気張るしかないで」

 

「ありがとう、タマ」

 

「……やっぱりその呼び方、勘弁してくれへんか?」

 

出来ることとすれば、意を汲んで慰めてやることと、

励ましてやるくらいであった。

 

 

 

 

 

深夜。

 

納得はした、いや、したつもりになっていたオグリだが、

それでも不満と不安は拭えなかった。

 

「……」

 

就寝していたものの、ふとしたことで目覚めたオグリ。

中途半端に目が覚めてしまったためか、

今すぐにでも不平不満を吐き出したい気持ちに駆られた。

 

しかし、時刻は真夜中。

ルームメイトのタマモも寝ているし、騒ぐわけにも、

こんな時間に部屋から出ていくわけにもいかない。

 

そこで思い出したのが、いつでもなんでも相談してきてね、

と言って連絡先を交換してくれた、『大先輩』の存在だった。

 

「っ……」

 

オグリは枕元に置いていた携帯を手に取ると、

メッセージを打って送信した。

 

返信は期待していなかった。

いや正しくは、すぐの返信は、ということだ。

 

単純に、すぐさま確認してもらえるわけではないだろう、

という予想からである。

時差というものを考慮したのかは、はっきり言ってわからない。

 

ところが、だ。

 

「……早いな」

 

返信は数分と待たずに来た。

思いがけないことに、オグリは少しうれしくなった。

 

日本とイギリスとの時差は8時間。

向こうでは夕方くらいだ。

 

『そっか、ルールというなら仕方ないね。

 こればっかりは私でもどうにもならないよ。ごめんね。

 でもそこで諦めないで。自分の力でルールを変える、

 むしろそれくらいの気概を持って臨まないと、

 クラシックと言わず、中央では勝てないぞ。

 がんばれオグリ! ファイトー୧(`•ω•´)୨⚑゛』

 

「………」

 

これを食い入るようにして見つめ、何度も読み返したオグリ。

 

「……タマと同じことを言ってる」

 

そして、思わずクスリと笑みを漏らす。

偶然にも、両者から同じようなことを言われた。

 

(そうだな、それくらいじゃないと勝てないな。

 ここは中央。笠松とは違うんだ)

 

2人から諭されたことで、オグリはここで完全に納得した。

 

笠松で勝てていたからといって、中央でも勝てるかはわからない。

レベルは明らかにこちらのほうが上。

心身ともにそのような覚悟で臨んで初めて、対等というものだ。

 

そして、ルールごと変えるんだ。

 

(うん、わかった。必ずやってみせるから見ていてくれ)

 

新たな決意をもって、オグリは携帯をスリープにし、

再び目を閉じた。

 

 

 

 

 

翌日、オグリは早速トレーナー探しを始めた。

一刻も早くレースに出たい一心だったからだ。

 

しかし、地方での成績は化け物といえども、あくまで地方でのこと。

編入試験での、リアンと互角に渡り合った経緯もほとんど知れ渡っておらず、

選抜レースで好成績を挙げたわけでもない。

 

極めつけは、クラシック登録がされてないという情報。

多くのトレーナーが、まずはクラシック制覇を目指すご時世に、

それは致命的な問題になった。

 

実際、オグリをスカウトする者はなかなか現れない。

中央への編入を果たしたという事実は認めつつも、

実力のほどについては、疑っている者が多いということだろう。

 

話を聞いた、編入試験の際の女性トレーナーが、

それなら私が預かろうかと、動こうとしたその矢先。

 

「君がオグリキャップか。よかったら、

 オレのチームに来ないか?」

 

オグリに声をかけるトレーナーがついに現れた。

帽子を被った初老の男性である。

 

「私はクラシックに出られない。

 それでもいいのか?」

 

問い返すオグリに、彼は豪快にこう笑い飛ばした。

 

「なーに、オレはこの通り、この先そう長くない」

 

寿命が、という意味ではなく、

定年が近い、ということのようである。

 

「いまさらそんなこと気にするタチじゃねえってことよ。

 クラシックに出られないからといって、

 なんら区別はしないし、他の子と同様に接するから安心してくれ。

 もちろん、おまえさんの意思は最大限尊重する。

 どうだ、この老いぼれの最後のひと花、咲かせてみねえか?」

 

「……いいだろう。契約しよう。

 いや、私と契約してくれ」

 

「うっし、契約成立だな!」

 

話を聞いて、2度3度と大きく頷いて見せたオグリ。

今すぐにでも引き受けてくれるトレーナーを求めていたところに、

望外の好条件を提示してくれる彼が現れてくれた。

 

もちろん渡りに船となり、最後には、自分からスカウトを希望する。

ここに、オグリキャップのチームシリウス入りが決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チームシリウスに加入したオグリは、早速トレーナーと相談し、

ニュージーランドトロフィーからマイルカップというローテを組む。*3

そのあとは、マイルカップの結果次第ということになった。

 

編入、即、レースという異例の日程ではあるが、

いつでもレースに出られるよう調整していたオグリにとっては、

なんら問題はなかった。

 

そしてレース当日。

大物が笠松から編入したらしい、という噂をファンも聞きつけ、

2番人気に推される。

 

1番人気は、前走で芝1400のオープン戦を制した子である。

 

レースは全バが綺麗にスタート。

オグリは中団につけて追走する。

 

直線に入るとリアンに迫った末脚を爆発させ、

先に抜け出した子を難なくかわし、

逆に3バ身の差をつけて快勝した。

 

中央での()()()()()が、ここに幕を開けたのだ。

 

 

 

*1
正規の手順を踏むと、クラシック登録には合計40万円かかる。なお、追加登録には5倍の200万円必要となる。参考ページhttps://enjoy.jbis.or.jp/column/ariyoshi/2017/009847

*2
独自設定。公式ではないので誤解なきよう

*3
史実では、ペガサスS、毎日杯、京都4歳特別、NZTというローテ。ペガサスSは現アーリントンカップの前身





悩んだ末に、オグリはクラシックに出走させないことにしました。
やはりダービーでは、チヨちゃんとアルダンに重きを置きたいので。
世界観は現代ですが、制度自体は、史実当時のままで行きます。

期待してくださった方がいたら申し訳ない。
「無礼るなよ」もなかったことに。

で、日程的にはかなり無茶なNZT出走になりますが、
当時とはスケジュールが変わっているから仕方ない。
というかあの連闘ばっかりが話題になりますけど、
それ以外も割かし大概なんですよねオグリ。

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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